by 船戸和弥

片山正輝

 

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更新日:12/04/17

硬膜静脈洞および大脳内側面の静脈

硬膜静脈洞正中面を左から見た模式図

 

    右大脳半球の内側面の模式図

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静脈系

 


1: Superior sagittal sinus 上矢状静脈洞 (Sinus sagittalis superior)

 上矢状静脈洞は大脳鎌の上縁に沿って、盲孔から静脈洞交会まで縦走する。この上矢状静脈洞は尾側にいくに従い大きさを増す。またこの縦走する静脈洞の中央部には、数や大きさがさまざまな裂孔すなわち静脈裂孔がある。

 

2: Falx cerebri; Cerebral falx 大脳鎌 (Falx cerebri)

 大脳鎌は大脳縦裂の中に入り、下方に刃の部を向けた鎌状をなし、前方は鶏冠にはじまり、上縁は前頭稜および上矢状洞溝に粗って後走し、内後頭隆起に付く。上縁はその中に上矢状静脈洞を含む。下縁は自由縁で、大脳縦裂の中で脳梁のやや上方を走り、その中に狭い下矢状静脈洞を含む。大脳鎌の後下縁は小脳テントの上面と癒着し、その癒着縁は直静脈洞を含む。

 

3: Inferior sagittal sinus 下矢状静脈洞 (Sinus sagittalis inferior)

 下矢状静脈洞は大脳鎌の下縁に沿って走り、尾方で大大脳静脈と合流して直静脈洞になる。下矢状静脈洞には大脳半球内側面からの静脈を少数のものが注ぐ。

 

4: Great cerebral vein 大大脳静脈 (V. magna cerebri) Galen, Vein of

 ガレン大静脈とよばれる。大大脳静脈は脳梁膨大部の下方で、両側の内大脳静脈が合流して始まり、脳梁膨大部の近くで後方および上方に走行し、大脳鎌と小脳テントの結合部の前方に流し直静脈洞となる。大大脳静脈の全長は平均12mm(範囲8~25mm)と短いが、非常に重要である。大大脳静脈には、1対の脳底内大脳静脈、1対の内大脳静脈、1対の脳底内大脳静脈、1対の脳底静脈、1対の後頭静脈および1対の後脳梁静脈が注ぎ込む。ローマ在住のギリシャの医師Claudius Galen (130-201 ?)による。

 大大脳静脈はもっとも静脈が集中する場所の一つであるだけでなく、周辺に多くの動脈も存在することより手術操作に際しては慎重でなければならない。同部に発生するvein of Galen aneuyrsmに大して静脈洞交会を経由するtranstorcular embolizationも手術に変わる方法として行われている。

 

5: Straight sinus 直静脈洞 (Sinus rectus)

 直静脈洞は、大脳鎌と小脳テントが融合する部位に存在し、静脈洞交会に注ぎ込む。

 

6: Sigmoid sinus S状静脈洞 (Sinus sigmoideus)

 S状静脈洞は横静脈洞に引き続いて側頭骨乳突部内面を下内側に屈曲して走り、頚静脈孔で内頚静脈につづく。

 

7: Jugular foramen 頚静脈孔 (Foramen jugulare)

 錐体後頭裂は前端と後端とで広く大きな孔となっている。前端で、錐体の前内側端にある孔は破裂孔といわれ、後端にあるのは頚静脈孔とよばれる。頚静脈孔には、前部を舌咽神経・迷走神経・副神経が通り、後部を内頚静脈が通る。

 

8: Confluence of sinuses 静脈洞交会 (Confluens sinuum)

 上方や後方から注ぎ込んできた硬膜静脈洞は、内後頭隆起の近くで合流する。この合流部分を静脈洞交会とよぶ。静脈洞交会は非対称的である場合が多い。

 

9: Transverse sinus 横静脈洞 (Sinus transversus)

 二つの横静脈洞は静脈洞交会から起こり後頭骨の横洞溝の中を、外側に向かってから前方に走る。そして左右のそれぞれの横静脈洞は、後頭骨と側頭骨の岩様部との縫合部でS状静脈洞とととなって下方に曲がり後方に向かう。横静脈洞には上錐体静脈洞、課題脳静脈、下小脳静脈、板間静脈などが注ぐ。

 

10: Superior cerebral veins 上大脳静脈 (Vv. superiores cerebri)

 上大脳静脈は大脳半球の外側の凸面および内側面からの血液を集めて、上矢状静脈洞に入る。この静脈は10~15本あって(流出する領域によって前頭前野静脈、前頭静脈、頭頂静脈、側頭静脈、後頭静脈の5群に分けられる)、斜め前方に走り上矢状静脈洞に入る。したがって上大脳静脈が静脈洞に入る血流方向は、静脈洞内の血流とは反対の方向に注ぐことになる。大脳半球の内側面から来る静脈の一部は下矢状静脈洞にも入る。

 上大脳動脈は上行して、正中部でクモ膜を貫き上矢状静脈洞に流入する。クモ膜を貫き静脈洞に流入するまでの間で外力によって破綻することがある。すなわち、外力でクモ膜が脳とともに移動するときに硬膜は動かないので、硬膜下腔で静脈はひっぱられ損傷を受けるのである。こうして硬膜下出血が起こる。

 

11: Posterior vein of corpus callosum; Dorsal vein of corpus callosum 背側脳梁静脈;後脳梁静脈;脳梁の後静脈;脳梁の背側静脈 (V. posterior corporis callosi; V. dorsalis corporis callosi)

 背側脳梁静脈は脳梁上面から血液を集め、後方に走って大大脳静脈に注ぐ静脈。後脳梁静脈は脳梁後部の下から血液を集め、後方に走って大大脳静脈に注ぐ静脈。脳外科領域では背側脳梁静脈と後脳梁静脈を同義語として扱われている模様なのでここでは併記している。

 

12: Internal occipital vein 内後頭静脈 (V. occipitalis interna)

 

13: Superior cerebellar vein 上小脳静脈 (V. superior cerebelli)

 

14: Superior thalamostriate vein 上視床線条体静脈;分界条静脈 (V. thalamostriata superior; V. terminalis)

 視床と尾状核の間の溝を前方へ走る長い静脈なので分界条静脈ともいう。付着板におおわれ、外側から数条の横尾状核静脈が流入し、Monro孔の尾側壁で脈絡叢静脈および透明中隔静脈と合して内大脳静脈となる。

 

15: Vein of septum pellucidum 前透明中隔静脈;透明中隔前静脈 (V. septi pellucidi)

 15a: Anterior vein of septum pellucidum 前透明中隔静脈;透明中隔前静脈 (V. anterior septi pellucidi)

 前透明中隔静脈は前頭葉髄質、脳梁膝など流入域から透明中隔をへて視床線条体静脈へ。

 15b: Posterior vein of septum pellucidum 後透明中隔静脈;透明中隔後静脈 (V. posterior septi pellucidi)

 

16: Basal vein 脳底静脈 (V. basalis) Rosenthals' vein

 ローゼンタール静脈ともよばれる。脳底静脈は小脳テント上部に存在する脳深部の静脈で、側頭葉前部内側にあり、島葉からの島静脈、大脳半球内面からの前大脳静脈、脳幹からの静脈などを集めてガレン静脈に注ぐ。脳底静脈は多くの静脈が合流し、以下のように3つのセグメントに分類されている。Ⅰsegment:前方に存在し、前有孔質(線条体)と密接な関係を有することより、anteriorまたはstriate segmentともよばれる。前大脳静脈Anterior cerebral vein、深中大脳静脈 deep middle cerebral vein、下直静脈inferior striate veinが有孔質の近傍で合流し、脳底静脈が始まる。そのほかに後前頭眼窩静脈posterior fronto-orbital vein、嗅回静脈olfactory veinが合流する。Ⅱsegment:中間に位置し、また大脳脚の周囲を走行することより、middleまたはpeduncular segmentと呼称される。Ⅰsegmentが後方へ走行し、大脳脚の前外側で大脳脚静脈と合流し、Ⅱsegmentとなる。また、脈絡裂をでてくる下脳室静脈inferior ventricular veinや側頭葉内側縁の静脈がⅡsegmentに合流する。Ⅲsegment:後半分あり、posteriorまたはposterior mesencephalic segmentともよばれる。Ⅲsegmentは視床・大脳脚などからの細静脈、太い外側中脳静脈lateral mesencephalic veinと合流する。 ドイツの解剖・生理学者Friedrich Christian Rosenthal (1780-1829)による。

 

17: Anterior cerebral veins 前大脳静脈 (Vv. anteriores cerebri)

 前大脳静脈は前大脳動脈に伴行し、通常は脳梁の前1/3から始まり脳梁膝部を走行し、前頭葉眼窩面、脳梁の吻側部と帯状回の吻側部からの血液を集める。前大脳静脈は対側の同静脈と吻合して、前交通静脈を形成する。