by 船戸和弥

片山正輝

 

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更新日: 12/05/28

頭部静脈系の側副循環の半模式図

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静脈系

1: Superior sagittal sinus 上矢状静脈洞 (Sinus sagittalis superior)

 上矢状静脈洞は大脳鎌の上縁に沿って、盲孔から静脈洞交会まで縦走する。この上矢状静脈洞は尾側にいくに従い大きさを増す。またこの縦走する静脈洞の中央部には、数や大きさがさまざまな裂孔すなわち静脈裂孔がある。


2: Diploic veins 板間静脈 (Venae diploicae)

 板間静脈は頭蓋冠の外板と内板の間にある板間層を流れる静脈である。弁を欠き、壁は弾性組織で支持された薄い内皮からなる。新生児には認められず、約2歳で板間層が出現したのちに形成される。硬膜静脈、硬膜静脈洞、骨膜の静脈などと連絡している。板間静脈相互も連絡しているが、大きく前頭板間静脈、頭側頭板間静脈、後側頭板間静脈、後頭板間静脈に区分される。


3: Inferior sagittal sinus 下矢状静脈洞 (Sinus sagittalis inferior)

 下矢状静脈洞は大脳鎌の下縁に沿って走り、尾方で大大脳静脈と合流して直静脈洞になる。下矢状静脈洞には大脳半球内側面からの静脈を少数のものが注ぐ。


4: Parietal emissary vein 頭頂導出静脈 (V. emissaria parietalis)

 頭頂導出静脈は頭頂孔を通って、上矢状静脈洞と浅側頭静脈などの頭皮の静脈と交通する。


5: Straight sinus 直静脈洞 (Sinus rectus)

 直静脈洞は、大脳鎌と小脳テントが融合する部位に存在し、静脈洞交会に注ぎ込む。


6: Transverse sinus 横静脈洞 (Sinus transversus)

 二つの横静脈洞は静脈洞交会から起こり後頭骨の横洞溝の中を、外側に向かってから前方に走る。そして左右のそれぞれの横静脈洞は、後頭骨と側頭骨の岩様部との縫合部でS状静脈洞となって下方に曲がり後方に向かう。横静脈洞には上錐体静脈洞、下大脳静脈、下小脳静脈、板間静脈などが注ぐ。


7: Superior petrosal sinus 上錐体静脈洞 (Sinus petrosus superior)

 上錐体静脈洞は側頭骨錐体部の上縁で天幕付着部を走る。海綿静脈洞の後部と横静脈洞とをつないでいる。錐体静脈、下大脳静脈などからの血流を受けている。


8: Occipital sinus 後頭洞;後頭静脈洞 (Sinus occipitalis)

 小脳鎌付着部に沿って正中線上を走る静脈洞で、上方は静脈洞交会または横静脈洞の左右どちらか(主に右側)に流入する。下方は内椎骨静脈叢、辺縁静脈洞と連続している。


9: Occipital veins 後頭静脈;後頭葉静脈 (Vv. occipitales)

 後頭静脈は後頭下静脈叢(後頚三角上部の床よりも深層の部位に存在)を介して椎骨静脈に注ぐ。ときに後頭静脈は前方に走り、内頚静脈に注ぐこともある。


10: Cavernous sinus 海綿静脈洞 (Sinus cavernosus)

 海綿静脈洞は静脈間が網目に吻合して大きい不規則な網状構造をしている。この海綿静脈洞は蝶形骨洞、トルコ鞍、下垂体などの両側にある静脈洞、上眼窩裂から錐体乳突部の岩様部まで広がっている。海綿静脈洞は、内頚動脈と外転神経をとり囲む。静脈洞の外側壁には動眼神経、滑車神経、三叉神経の枝である眼神経と上顎神経が存在する。左右の海綿静脈洞は脳底静脈叢および下垂体前面にある前海綿間静脈叢と後面にある後海綿間静脈叢により対側の静脈洞と連絡する。眼静脈と蝶形骨頭頂静脈洞は、海綿静脈洞に注ぎ込む。海綿静脈洞は、後方に向かい上錐体静脈洞と下錐体静脈洞に入り、上錐体動脈洞は横静脈洞に、下垂体静脈洞は、短い静脈網によって翼突筋静脈叢や喉頭静脈叢とも連絡する。


11: External jugular vein 外頚静脈 (Vena jugularis externa)

 外頚静脈は側頚部の皮下静脈であり、頚部のみならず頭部の表在性静脈血を集める。後耳介静脈と下顎後静脈が合して下顎角の後方ではじまり、広頚筋におおわれて胸鎖乳突筋の表面を斜めに下行し、大鎖骨上窩で鎖骨下静脈にそそぐ。下顎後静脈前枝を介して内頚静脈と連絡しているので、これら2静脈ならびに鎖骨下静脈とともに胸鎖乳突筋を斜めに取り囲む動脈輪を形成している。受け入れる静脈根は後頭静脈、後外頚静脈、頚横静脈と肩甲上静脈、前頚静脈である。


12: Deep cervical vein 深頚静脈 (V. cervicalis profunda; V. colli profunda)

 深頚静脈は深頚動脈に伴行する。頭半棘筋と頚半棘筋に被われる。


13: Retromandibular vein 下顎後静脈 (Vena retromandibularis)

 下顎後静脈は下顎頚の内側つまり耳管腺内で浅側頭静脈と顎静脈が合してはじまり、顔面静脈と合して内頚静脈に開口する。下顎後静脈は前枝と後枝と二分かれた形で耳下腺の下面から出る。そののち前枝は顔面静脈と合流する。後枝は後耳介静脈と合流し、外頚静脈を形成する。浅側頭静脈は表在性の静脈で、中側頭静脈、顔面横静脈を受け入れる。深在性の顎静脈は側頭下窩に広がる翼突筋静脈叢にはじまる。この静脈叢は顎動脈の分布域から血液を集め、中硬膜静脈などの硬膜静脈、深側頭静脈、前耳介静脈、耳下腺静脈、顎関節静脈、鼓室静脈、茎乳突孔静脈などを受け入れる。


14: Facial vein 顔面静脈 (Vena facialis)

 顔面静脈は顔面動脈の分布域である顔面浅部からの静脈を集める。顔面静脈は内眼角から始まり(眼角静脈)、顔面動脈の後ろに沿って斜めに下方に走り、内・外頚動脈、舌下神経との浅側を後下方に向かい、舌骨の高さで内頚静脈または外頚静脈にそそぐ。顔面静脈は吻合に富み、また顔面の深部の静脈や頭蓋内の静脈(硬膜静脈洞)とも連絡している。たとえば、顔面静脈は内眼角の付近で、眼窩内の上眼静脈の根もと吻合し、さらに頭蓋腔内の顔面静脈洞とも連絡する。また、鼻や上唇の近くでも深部の静脈と連絡する。

 顔面の静脈は弁をもたないので、血流は逆行しやすい。このために顔面の中央部に炎症があると、静脈を介して深部・頭蓋腔内の海綿静脈洞などに波及することもある(静脈洞血栓症thrombophlebitis)。とくに抗生物質が普及する以前には、眉間部から上唇にわたる顔面の中央部は危険域といわれ、そこに生ずる感染巣(面疔、顔面せつfacial furuncle)は警戒された。


15: Inferior ophthalmic vein 下眼静脈 (Vena ophthalmica inferior)

 眼窩底の近傍で細い静脈が集まってできる。大部分が眼窩底で下直筋の上面を後方に走行し、上眼静脈にそそぐ。下眼静脈は前方では顔面静脈と、下方では下眼窩裂を通過し翼突筋静脈叢と交通している。後方では上眼静脈に合流した後、海綿静脈洞にはいるか、るいは直接海綿静脈洞に注ぐ。下眼静脈は細いことが多く、眼窩静脈撮影でも抽出されにくい。


16: Angular vein 眼角静脈 (V. angularis)

 眼角での顔面静脈起始に相当し、滑車上静脈と眼窩上静脈の合一でつくられる。眼静脈と吻合。鼻前頭静脈を介して上眼静脈とむすばれ、弁を欠く。

 顔面(特に目がしらや鼻背)の炎症が、眼角静脈経由で眼窩から脳へと移り、髄膜炎などを起こすことがある。


17: Superior ophthalmic vein 上眼静脈 (Vena ophthalmica superior)

 上眼静脈は眼動脈に沿って走る。すなわち内眼角でおこり、この部で顔面静脈や眼角静脈と吻合し、眼窩上壁を内側に沿って走行する。おおよそ眼動脈の分布域からの静脈を集める。上眼窩裂を通って頭蓋腔に入り海綿静脈洞に注ぐ。


18: Pterygoid venous plexus 翼突筋静脈叢 (Plexus pterygoideus)

 翼突筋静脈叢は側頭筋、内側および外側翼突筋、それも主に外側翼突筋の間にある静脈叢。