Rauber Kopsch Band2. 379   

第三脳室脈絡組織の両柔膜層のあいだに含まれるクモ膜下組織のなかを2本の太い静脈が走っている.これらが内大脳静脈Venae cerebrales internaeであって,この2本の静脈は第三脳室脈絡組織の後端でたがいに合して大大脳静脈Vena cerebralis magnaとなる.各側の内大脳静脈は第三脳室脈絡組織の前端で脈絡叢静脈Vena chorioideaと視床線条体静脈Vena thalamostriataとを受け入れる.

b)第四脳室脈絡組織Tela chorioidea ventriculi quarti(図410, 427)

 このものは,側方は菱脳ヒモに,前方は後髄帆に達する第四脳室の上皮性の被いepitheliale Deckeとその上に接着している柔膜板Pialamelleとからなる.この脈絡組織の底は上方にあって,後髄帆に沿って片葉柄まで達している.つまりその底は左右の片葉柄の間にあって幅が広く中央の付着点として下虫の虫部小節をもっている.またこの脈絡組織の尖端は第四脳室の下端にある.

 ここでも各側に1つずつの外側の脈絡叢seitlicher Plexusと一見対をなさないようにみえる中央の脈絡叢mittlerer Plexusとがある.前者は虫部小節から側方に延びて第四脳室外側陥凹に達している.また後者はたがいに相並んでいる2本の条からなっていて虫部小節から後方にすすみ,菱脳正中口から外に出て,なおある長さだけ下虫に接して上つている.これらをみな合せて第四脳室脈絡叢Plexus chorioideus ventriculi quarti と呼ぶのである.

 第四脳室脈絡組織には二次的に破れてできた2種の孔がある.中央にある1つは菱脳正中口Apertura mediana rhombencephali,側方にある2つは第四脳室外側陥凹がもっている菱脳外側口Aperturae laterales rhombencephaliである.

 菱脳正中口は脳室蓋の後部で,閂のすぐ前にある.両側の菱脳外側口は第四脳室外側陥凹の両端を占めている.

 これらの孔の機能Funktionとしては脳室のなかに含まれる脳の髄液Liquor encephalicusの圧の調整がいっそう容易にできるためのものである.つまり脳内部の髄液がこれらの孔を通ってクモ膜下のリンパとまじって脳脊髄液となるのである.ところで脈絡叢Plexus chorioideiの作用は脳の髄液を分泌することである.脳室壁と中心管との上衣細胞もおそらくは髄液の形成にあずかっているのであろう.

 しかし他の人の意見によれば脈絡叢は吸収をするという.

 中枢神経系は血液のなかに含まれる多くの物質に対して保護されている.その関所(血液と髄液とのあいだを仕切るもの)としておそらく血管の内皮が役だっているのであろう.もっともその仕切る力は年令により,また身体のその他の状態によって変化する.

[図450]第三脳室脈絡組織Tela chorioidea ventriculi tertiiとその周囲を通る横断面(W. His1895)

II側脳室;III第三脳室;C. c. 脳梁;F 脳弓(弓隆):Th 視床;St. m. 髄条;St. t. 分界条;V. t. 視床線条体静脈;L 付着板.1 髄ヒモ;2 視床脈絡ヒモ;3 脳弓ヒモ.この図はこれらの3紐が脈絡叢の上皮層に移行することを示す.

 脈絡叢の絨毛は線維の乏しい結合組織とそれを被っている上皮およびその中に包まれた血管よりなっている.上皮は丈の低い円柱状のもので多くは単層であるが,2層あるいはそれ以上重なった上皮もかなり広い範囲にみられる.入ってくる動脈と出てゆく静脈とは絨毛の内部で豊富な毛細血管網をこしらえている.脈絡叢の絨毛は1~2mmの長さをもち,小ぎれいな形で若干数の第二次の高まり(長さ0.4mm)に分れ,これがさらに小さい第三次の小葉(長さ0.07mm)をもっている.

 ここでまた上にたびたび述べた脳の紐Taenien des Gehirnes,すなわち脈絡組織ヒモTaeniae telae(330,  346,  363,  371頁)をまとめて概括的に述べることにする.

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最終更新日13/02/03

 

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