Rauber Kopsch Band2. 409   

d) 間脳

 第三脳室の中心灰白質は下方は中脳水道を囲む灰白質へと続き,後者がまた第四脳室底の灰白質に続くのである.上に述べた諸部分の中心灰白質は腔灰白質Höhlengrauと呼ばれる.第三脳室のそれは腹方では中断することなく脳底の灰白交連に続き(345頁),外側は視床内側核と続き(346頁),また中間質もこのものによって作られている.第三脳室の腔灰白質はその前方部において特に大きい.視神経交叉のところではほとんどこのものだけで第三脳室の壁ができている.ここには多数の神経緬胞があって,その多くは小形で双極である.また手網三角のなかで小さい多極神経細胞が棍棒状の特別な集り(348,  349頁)をしているのが手網核Nucleus habenulaeである(図436).ここからは反屈束Fasciculus retroflexus(=手網脚間路Tractus habenulointercruralis),あるいはマイネルト束Meynertsches Bündelという有髄線維の束(図505)がでて脚間核に達している(図433参照).乳頭視床束Fasciculus mamillothalamicus,すなわちヴィック・ダジール束Vicq d’Azyrsches Bündelおよび脳弓柱の没部については348頁図410とを参照せよ.

[図475]第三脳室の側壁における植物性機能の中枢

Grevingの説, Handb, m ikr. Anat., Bd. IV.,1928による諸中枢.

 上に述べた諸核めほかになお比較的小さい神経細胞の集りがいくつかあり,そこにば多くの枝をもつかなり大きい神経細胞も存在していて,これらの集りの或るものは一定の自律神経系の機能を調節する間脳中枢とみなされており,そのため植物性間脳中枢vegetative Zwischenhirnzentrenと呼ばれている.

 それは次のものである(Grevingによれば):視索上核Nucleus supraopticusは視神経交叉の近くで視索の上にあり,灰白隆起にまで達していて,これは水代謝との塩類代謝との中枢であるという.隆起核Nucleus tuberisは灰白隆起の全体を満たしていて,これは体温調節の中枢であるという.第三脳室の内面のすぐ下にある室傍核Nucleus paraventricularisは脳弓柱没部の内側にあって,脳弓柱よりも前と後に長く延びており,炭水化物代謝の中枢であるどいう(図475).

 視索上核の細胞は分泌物と考えられる封入体をもっている.この神経分泌Neurosekretionという現象は中枢神経系のそのほかの細胞にもあるとされている.

 しかしSpatz(S. ber. phys.-med. Ges. Würzburg)によれば,灰白隆起はいわゆる“間脳の生殖機能中枢diencephales Geschlechtszentrum”であり,ここが生殖細胞の成熟をつかさどるのであるという.

 乳頭体Corpus mamillareの内部には3つの灰白質核,すなわち乳頭体核Nuclei corporis mamillaris(343頁および伝導路の項参照)がある.これらの核には長さ20~30µの紡錘形の神経細胞がみられる.3つの核とは大細胞性核が1つ, 小細胞性核が1つ,それと小さい細胞からなる灰白核Nucleus cinereusである.

 乳頭体に入ってくる線維は,皮質乳頭路Tractus cortico-mamillarisであり,出てゆく線維は乳頭視床束Fasciculus mamillothalamicusと乳頭被蓋束Tractus mamillotegmentalisとである(図505).

 下垂体Hypophysis cerebri(図446)は脳の続きである小さい後葉,すなわち神経性下垂体Neurohypophyseではグリア,血管および結合組織がそれを構成していて,神経細胞や神経線維は含まれていない.

 腺性下垂体Adenohorpophyseの主部Pars principalisは主として上皮性であって,多くは空洞をもたないが,一部のみは腔所をかこむ細胞索からなり,細胞索の太さはすこぶるまちまちであって,比較的明るい細胞と暗い細胞とが集合してできている.明るい方の細胞すなわち主細胞は全部の腺細胞のおよそ半ばを占め,暗い方の細胞は粒子をもっており,この粒子の染色性の相違により酸好性細胞と塩基好性細胞(図476)とに区別される.

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最終更新日13/02/03

 

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