Rauber Kopsch Band2.560   

6. 腸骨動脈神経叢 Plexus ilicus

 これは総腸骨動脈に伴ない,外腸骨動脈と大腿動脈と膝窩動脈に続き,そこでは大腿動脈神経叢Plexus femoralisおよび膝窩動脈神経叢Plexus popliteusと呼ばれる.これはまた内腸骨動脈に伴なって小骨盤に入る.

7. 上直腸神経叢Plexus rectalis cranialis

 これは腹大動脈神経叢の続きであって,対をなさず,腹大動脈の下部の表てにのっており,そこから大動脈が左右の総腸骨動脈に分れるところを下方に越えて岬角にまで続く.この神経叢は下部の腰神経節からでる小枝がこれに加わることによって強さを増している.この神経叢は下直腸神経叢に続く(図551).

パラガングリオンParaganglien, Nebenorgane des Sympathicus(交感神経の副器官)

 パラガングリオン Paraganglienと呼ばれるものはその由来と位置からして常に交感神経と密接な関係にある特別な器官であって,クローム酸塩を多量にとり,それとの親和性がつよい特別な細胞(クローム親性細胞chromaffine Zellen)および神経細胞と神経線維よりなり,かつ非常に血管に富んでいる.パラガングリオンの大部分がヒトでは生後間もなく退化してゆく.

 これに属するものとしては節状パラガングリオンParaganglion nodosum(476頁参照),および頚動脈糸球Carotisdrüse(頚動脈腺の意)があり,後者は生涯を通じて存在する(第1巻,544頁).また最も大きくて,いつまでも残っているパラガングリオンは,腎上体の髄質(201,  202頁)であり,また腹膜後組織のなかで大動脈のそばにあるNebenorgane des Sormpathicus(交感神経の副器官)もこれに属する.いま述べたいくつかの個所ではクローム親性細胞がかなり多量にあって,しかも比較的に独立した構造物として存在する.その他にこれらの細胞はもっと散在した状態で交感性の神経束と神経節との内部で,その数は大小さまざまであるが見られるのである.精嚢腺神経叢のなかにも4才の子供までははっきりと境された独立した2個ないし3個のパラガングリオンがみられる(Watzka, Anat. Ar, z., 66. Bd.,1928).これらはその後はもはや証明されず,腰部パラガングリオンと同様に小児期に消失してしまう.心臓ではパラガングリオンは次の2群をなしている.すなわち大動脈弓と動脈管とのあいだで右方かつ前方に開いた場所にある上心臓上パラガングリオンParaganglion supracardiale cranialeと左冠状動脈がでるところの上方にある下心臓上パラガングリオンParaganglion supracardiale caudaleとである(Palme).

 これらの研究を基にしてパラガングリオンに特別な位地と特別な名称をあたえるとすると,頚動脈糸球は頚動脈間パラガングリオンParaganglion intercaroticum,腎上体の髄質は腎上体パラガングリオンParaganglion suprarenale,腹腔内の副器宮は腰部パラガングリオンParaganglia lumbaliaと名づけてよかろう.

 近ごろはパラガソグリオソに2種類が区別されている.その1つはクローム親性細胞を有つもので腎上体パラガソグリオソや腰部パラガングリオンがそれであり,他のものはクローム親性細胞を有たないものであって,節状パラガソグリオン・頚動脈間パラガングリオン(その大部分).上下の心臓上パラガングリオンがそれである.これら両種のものはそのはたらきが違っている.前者からは1種の血圧上昇物質をうることができるが,頚動脈糸球からは1種の血圧下降物質がえられるという.Watzka, M., Vom Paraganglion caroticum. Verh. anat. Ges.,1934.

 

C. 交感神経系の骨盤部Beckenteil des Sympathicus
1. 分枝形成および結合関係(図551, 565, 572)

 骨盤部の神経節からは次にのべる枝と結合とがでている:

1. 節間枝Rami intergangliares, 神経節のあいだの縦の索であって,単一であったり,あるいは重複していたりする;--2. 交通枝Rami communicantes,脊髄神経の幹と結合している;--3. 横枝Rami transversi,両側の交感神経幹のあいだを横に結合する枝である.横枝は腰部および胸部でも必ず存在するとは限らないものである;--4. 交感神経幹からでて腸骨動脈神経叢および血管にいたる多数の枝.

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最終更新日13/02/03

 

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