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- 421_00【Infrahyoid muscles; Strap muscles舌骨下筋 Musculi infrahyoidei】 Muscles located inferior to the hyoid bone that act to either stabilize it or draw it inferiorly. Accessory muscles of deglutition and respiration. Indirect flexion at head and neck joints. I: Ansa cervicalis (C1-C3).
→(舌骨下筋は舌骨、ひいては下顎骨に作用するが、頚部脊柱にも作用が及ぶ。 舌骨下筋に属するものは、胸骨舌骨筋、肩甲舌骨筋、胸骨甲状筋および甲状舌骨筋である。発生学的にはこれらの筋は腹側縦筋系に数えられる。肩甲舌骨筋はまた上肢帯の筋にも属している。神経支配:頚神経ワナの上根(舌下神経の下行枝とも呼ぶ)と甲状舌骨筋枝は舌下神経の枝のようにみえるが、実はC1とC2から舌下神経に合した神経線維が再び分かれたものとされている。オトガイ舌骨筋枝も同じであるという。なお、これらの筋は舌筋(舌下神経支配)と関係が深く、また大部分は直筋系に属する。)
- 421_01【Mandible下顎骨 Mandibula】
→(下顎を形成する。下顎を支え、頭蓋と顎関節をつくる骨で、水平な馬蹄形の部(下顎体)と、その後端から上方に向かう部(下顎枝)に分けられる。本来有対の骨として生じ、生後1年目で下顎底の前端で癒合して一つの骨となる。下顎体の上縁は歯槽部で、下縁は下顎底という。歯槽部には各側8本の歯をいれる八つのへこみ(歯槽)があり、全体として歯槽弓をつくる。各歯槽を境する骨壁を槽間中隔といい、大臼歯の歯槽はさらにその歯根の間を隔てる低い根管中隔で分けられている。体の正中線上前面で左右の骨が癒合した部分は高まり、その下縁は三角形をなして突出(オトガイ隆起)し、ヒトの特徴であるオトガイをつくる。その外側、下縁に接する小突出部をオトガイ結節という。外面ではオトガイ結節から斜線が下顎枝の前縁に向かう。また第2小臼歯の下方にオトガイ孔がある。下顎体の内面には前方正中部に四つの隆起からなるオトガイ棘があり、上二つはオトガイ舌筋、下二つはオトガイ舌骨筋がつく。その下外側で下縁に切歯て卵形のへこみ(二腹筋窩)がある。そこから斜めに下顎枝の前縁に向かう線(顎舌骨筋線)があり、左右のこの線の間をはる顎舌骨筋が口底をつくる。この線の上前はへこみ(舌下腺窩)、またこの線の下方、第2~3大臼歯の所もへこむ(顎下線窩)。下顎底が下顎枝にうつる所は下顎角といわれ、小児で鈍角であるが成長とともに直角に近づく。下顎枝の上縁は深い切れ込み(下顎切痕)によって二つの突起に分かれ、前のもの(筋突起)には側頭筋がつき、後のもの(関節突起)の先に横楕円形の下顎頭があて、側頭骨鱗部にある関節窩と顎関節を作る。下顎頭の下はすこしくびれ(下顎頚)、その前面に外側翼突筋のつく翼突筋窩がある。下顎枝外面は平らで下顎角に近く咬筋のつく咬筋粗面、内面には内側翼突筋のつく翼突筋粗面がある。下顎枝内面中央には下顎孔があり、その前縁は上内方に尖り(下顎小舌)口腔から触れるので、下歯槽神経の伝達麻酔の際、針をさす指標となる。下顎孔の後下から溝(顎舌骨筋神経溝)が出て前下方に斜めに向かう、この上の高まりが顎舌骨筋線である。下顎管は下顎孔からはじまり下顎体の中央で二分し、外側管はオトガイ孔で外側にひらき、内側管は切歯のそばに終わるが、その経過中に各歯槽に向かって小管を出している。有顎魚の下顎を支配する骨格は本来下顎軟骨(Meckel軟骨)で、上顎を支配する支持する軟骨は(口蓋方形軟骨)と顎関節をつくる。ともに鰓弓軟骨の変化したものである。硬骨魚類では下顎軟骨のまわりに若干の皮骨が生じて下顎を支え、そのうち前外面にあり、顎縁の歯をつけた大きい歯を歯骨という。顎関節は下顎軟骨と口蓋方形軟骨それぞれの後部の化骨物(関節骨と方骨)の間につくられる。両棲類、爬虫類も同じ状態であるが、哺乳類では歯骨のみが大きくなって下顎骨となり、顎関節は歯骨と燐骨(側頭骨鱗部に相当する骨)の間に新生されたものである。そして関節骨と方骨はツチ骨、キヌタ骨になっている。多くの哺乳動物では下顎骨は生体でも対をなした状態にとどまっている。Mandibulaはmandere(噛む)という動詞に由来し、語尾のbulaは「道具」を意味する接尾辞である。下顎骨にはすべての咀嚼筋が付。)
- 421_02【Body of hyoid bone舌骨体;体 Corpus (Ossis hyoidei)】 Anterior segment between the right and left lesser horns.
→(舌骨体は長楕円扁平の骨板で、上縁は鋭く、下縁はやや厚い。前面はややふくれた粗面で舌骨上筋および舌骨下筋群の数個の筋が着く面となる。後面は滑らかでややくぼむ。)
- 421_03【Median thyrohyoid ligament正中甲状舌骨靱帯;中舌骨甲状靱帯 Ligamentum thyrohyoideum medianum; Ligamentum hyothyreoideum medium】 Medial thickening of the thyrohyoid membrane containing elastic fibers.
→(正中甲状舌骨靭帯は豊富な弾性線維をもつ甲状舌骨膜のうち上甲状切痕と舌骨との間の肥厚部。)
- 421_04【Thyroid cartilage甲状軟骨 Cartilago thyroidea】 Largest laryngeal cartilage partly enclosing the others.
→(甲状軟骨は最大の喉頭軟骨で、喉頭の前壁と側壁の基礎となっている。右板と左板は正中部でほぼ直角に合する。正中部には上・下甲状切痕がみられ、上行上切痕の付近は前方へ突出し後頭隆起をなす。板の後端から上角・下角が伸び、外側面には上・下甲状結節がみられ、両結節間を斜線が走る。上甲状結節の下には、ときに甲状孔がみられ、上甲状腺動静脈の枝が通る。)
- 421_05【Cricothyroid ligament輪状甲状靱帯 Ligamentum cricothyroideum】
→(正中および外側輪状甲状靱帯に区分される。)
- 421_06【Cricoid cartilage輪状軟骨 Cartilago cricoidea】 Signet-ring shaped cartilage located at the upper end of the trachea that articulates with the thyroid cartilage.
→(最も下位にある喉頭軟骨。気管の上端に位置し、甲状軟骨と関節によってむすばれている。後部はほぼ正方形に近い輪状軟骨板で後壁の大部分を形成する。前部を輪状軟骨弓とよぶ。)
- 421_07【Thyroid gland甲状腺 Glandula thyroidea】 Produces thyroxine and triiodothyronine, hormones that increase metabolic processes. Pathological enlargement is known as goiter.
→(甲状腺は前頚部の後頭前側にある不規則な楕円形嚢胞からなる内分泌腺で、成人で25~40gである。甲状腺は舌根の上皮が落ち込んで生じた原基が、下の方へ伸びだして出して現在見る位置に落ち着いたものである。舌根の陥入部の名残りが盲孔であり、移動経路に尾を引いて残った原基が発達したものが錐体葉である。この一部が筋組織から成るmのを甲状腺挙筋という(出現率20~30%)。甲状腺挙筋が存在する場合は、舌骨または甲状軟骨から起こって甲状腺に停止している。甲状腺は2種類のまったく異なったホルモンを分泌する。主な甲状腺ホルモンはヨウ素を含むアミノ酸誘導体で全身の物質代謝を亢進させる。1分子に含まれるヨウ素原子の数によって、T4(チロキシン)とT3(3-ヨードチロニン)を区別する。もう一種の甲状腺ホルモンはポリペプチドでカルチトニン(またはチロカルチトニン)という、血中カルシウムイオンの濃度を低下させるホルモンである。ヨウ素をふくむホルモンは甲状腺濾胞を形成する濾胞細胞から分泌され、カルチトニンは濾胞の間あるいは濾胞の周辺に存在する濾胞傍細胞から分泌される。濾胞は甲状腺の構造単位であって中空球状の細胞集団であるが、細胞はその周辺に1層にならんでいるだけで、内腔はコロイドという濃厚な蛋白溶液で満たされている。この蛋白はチログロブリンとよばれ、ヨウ素を含む糖蛋白である。濾胞[上皮]細胞は機能状態によって形が異なり、単層立方または単層円柱上皮が普通であるが、コロイドが極端にたまっているときは、単層扁平上皮となる。この細胞はよく発達した粗面小胞体とGolgi装置をふくみ、糸球体も被い。分泌物はGolgi装置で径150~200nmの小果粒あるいは小胞につめこまれて、濾胞内腔に近い細胞表面の知覚に運ばれる。これは細胞先端部あるいはそのやや下方に集まっていることが多いので、subapical granule(またはvesicle)とよばれる。この果粒は開口分泌によって、その内容を濾胞腔に放出すると思われる。甲状腺が下垂体前葉ホルモンの一種であるTSH(甲状腺刺激ホルモン)によって刺激されると、細胞表面に偽足状の突起が現れて、コロイドを貪食する。そのようにして貪食されたコロイドをふくむ空胞を、コロイド滴という。これに水解小体が融合して、加水分解酵素を得ると、コロイド滴内でチログロブリンが分解され、甲状腺ホルモンであるT4およびT3が生ずる。これらのホルモンは低分子であるから、細胞内を拡散して、基底側に運ばれ、濾胞に近接して分布している毛細血管に吸収されるのである。濾胞傍細胞は動物によって発達が異なり、ヒトでは非常に少ない。細胞質が明るくみえるので、clear cellの略としてC-cellとよばれることがある。これは鰓後体に由来する細胞で、血中カルシウムを低下させるホルモンを分泌する。濾胞細胞のやや外方に位置するが、共通の基底膜で包まれる。しかし、この細胞は濾胞腔に面することはない。径200nm前後の小果粒を多数含んでおり、動物にカルシウムを注射するとこの果粒が著明に減少することから、カルチトニン産生細胞であることがわかった。この果粒は一般のペプチドホルモン産生細胞であることがわかった。この果粒は一般のペプチドホルモン産生細胞と同様に、Golgi装置で産生されて、細胞基底部(基底膜に面する表面)から、開口分泌の様式で放出される。)
- 421_08【Trachea気管 Trachea】 Elastic tube between the larynx and bronchi.
→(喉頭の下に連なる気道の管状部で、第6頚椎の高さにはじまり、気道の前を垂直に下り、第4頚椎の前で左右の気管支に分岐する。この分岐部を気管分岐部という。気管支鏡で分岐部を上から見ると、その正中部に左右の気管支を隔てる高まりがある。この高まりを気管竜骨という。気管壁には、硝子軟骨性の気管軟骨の輪が一定の間隔をおいて重なり、軟骨間は輪状靱帯で結合する。気管軟骨は幅3~4mmで15~20個を数える。気管軟骨は完全な輪ではなく、全周の4/5~2/3を占める馬蹄状を呈する。軟骨性の支柱を欠く部は正中部後壁をなし、膜性壁とよばれる。膜性壁には平滑筋(気管筋)を含む。気管内面は多列絨毛円柱上皮で、絨毛の運動の方向は上向きである。粘膜固有層には弾性線維が多く、粘膜下組織には胞状の混合腺(気管腺)を数多く含む。日本人の気管の長さは10cm前後である。)
- 421_09【Clavicle; Collar bone鎖骨 Clavicula】
→(鎖骨は胸骨上縁のところにある棒状の骨。鎖骨の内側端を鎖骨端といい、その内側面には四角形の頬骨関節面があって、頬骨の鎖骨切痕と連結する。また、外側端を肩峰端といい、その外側面には楕円形の肩峰関節面があって肩甲骨と連結する。鎖骨下面の胸骨端の近くには胸鎖靱帯圧痕、肩峰端のすぐ近くには円錐靱帯結節という粗面があり、それぞれ同名の靱帯が付着する。鎖骨は結合組織生骨であり、全身の骨の中では最も早く骨化がはじまる(胎生第5週)が、骨化の完了する時期は25最以後で長骨の中では一番遅い。鎖骨は一般の長骨と異なり髄腔がなく、内部は海綿質でみたされている。哺乳類のうち上肢を歩行以外にも使用する(たとえば、物をつかんだり、からだの前で上肢を交差させる動作など)動物では鎖骨は発達しているが、上肢を前後方向に動かして歩行だけに使用する動物では鎖骨はないか、あっても痕跡的である。したがって霊長目や齧歯目では鎖骨が発達し、食肉目や有蹄目には鎖骨がない。語源はClavis(腱、カンヌキ)の縮小形で小さな鍵という意味。)
- 421_10【Sternoclavicular ligament胸鎖靱帯 Ligamentum sternoclaviculare】
→()
- 421_11【Styloglossus muscle茎突舌筋 Musculus styloglossus】 o: Styloid process, i: Radiates from posterosuperior into the lateral part of the tongue and merges with the hyoglossus. It draws the tongue backward and upward. I: Hypoglossal nerve.
→(茎突舌筋は外舌筋の1つ。茎状突起(および茎突下顎靱帯)から放射して口蓋咽頭弓のレベルで舌に至る。茎突舌筋の線維の主部は舌縁で舌尖に向かって走り(筋の縦索)、個々の線維束は内側へ曲がり、横舌筋(内舌筋)の線維に付着する。)
- 421_12【Hyoglossus muscle舌骨舌筋 Musculus hyoglossus】 o: Body of hyoid bone and greater horn of hyoid bone, i: It attaches from inferior to the lateral parts of the tongue and extends anteriorly to the lingual aponeurosis. It draws the postsulcal part of tongue posteriorly and inferiorly. I: Hypoglossal nerve.
→(舌骨舌筋は長方形筋板として舌骨大角、ならびに舌骨体小部、および舌腱膜の外側縁の間に広がる。舌骨舌筋は下縦舌筋(内舌筋)および(存在する場合は)小角舌筋によってオトガイ舌筋から隔てられる。外側では、舌骨舌筋は顎舌骨筋、顎二腹筋及び茎突舌骨筋によって被われている。)
- 421_13【Geniohyoid muscleオトガイ舌骨筋 Musculus geniohyoideus】 o: Inferior mental spine, i: Body of hyoid bone. Aids the mylohyoid. I: Anterior rami of spinal nerves (C1-C2).
→(オトガイ舌骨筋は顎舌骨筋の上に(口腔の方向)に存在する。オトガイ舌骨筋はオトガイ内面のオトガイ棘から舌骨体まで走る。)
- 421_14【Retrohyoid bursa舌骨後包;胸骨舌骨筋包 Bursa retrohyoidea; Bursa musculi sternohyoidei】 Bursa situated between the body of the hyoid bone and the median thyrohyoid ligament.
→(舌骨帯と甲状舌骨膜の間の滑液包。(Feneis) 胸骨舌骨筋の停止部と甲状舌骨膜の間に介在する滑液包で、しばしば対側のそれと交通している。(解剖学辞典:佐藤達夫))
- 421_15【Thyrohyoid muscle甲状舌骨筋 Musculus thyrohyoideus】 o: Oblique line of thyroid cartilage, i: Greater horn and lateral one-third of the medial aspect of the hyoid bone.
→(甲状舌骨筋は、胸骨甲状筋の連続のように見える前頚部の舌骨下筋群の1つ。舌骨に向かって走る胸骨舌骨筋の上方への延長を形づくる。甲状軟骨から始まり舌骨体と舌骨大角の腹側半部に停止する。参考:この筋と甲状舌骨膜との間に舌骨下包、甲状軟骨喉頭隆起の前に喉頭隆起皮下包がある。)
- 421_16【Subcutaneous bursa of laryngeal prominence喉頭隆起皮下包 Bursa subcutanea prominentiae laryngeae】 Bursa situated between the skin and the laryngeal prominence of the thyroid cartilage.
→(喉頭隆起皮下包は皮膚と甲状軟骨後頭隆起の間の滑液包。)
- 421_17【Cricothyroid muscle輪状甲状筋 Musculus cricothyroideus】 o: Anterior and lateral from the cricoid cartilage, i: Inferior margin of the lamina of thyroid cartilage on the inner and outer surface of the inferior horn. If the thyroid cartilage is fixed, it tilts the cricoid cartilage with the arytenoid cartilages posteriorly, thereby tensing the vocal ligaments. I: External branch of superior laryngeal nerve (only one). It is composed in 50% of the following parts.
→(輪状甲状筋は前方で輪状軟骨の弓から起こり、傾斜した内側線維束および、より水平な外側線維束となって甲状軟骨下縁とその下角前縁へ停止する。臨床的に前筋anticusといわれる。作用は甲状軟骨を前方に引き下げる。この筋の作用によって甲状軟骨が前方に傾くと、甲状軟骨正中部の後面と披裂軟骨の声帯突起との間に張る声帯靱帯はややひっぱれて緊張する。すわなち、声帯ヒダの緊張筋である。)
- 421_18【Sternothyroid muscle胸骨甲状筋 Musculus sternothyroideus】 o: Posterior surface of manubrium of sternum and first rib. i: Oblique line of thyroid cartilage.
→(胸骨甲状筋も前頚部舌骨下筋の1つ。胸骨後面に起始を持ち、胸骨舌骨筋の背側およびやや内側にある。急角度上方に走り、甲状軟骨の斜線とそのうしろに付く。機能としては喉頭と甲状軟骨を下制する(ひき下げる)。神経支配は頚神経ワナ。動脈は上甲状腺動脈の輪状甲状枝から受ける。)
- 421_19【Interclavicular ligament鎖骨間靱帯 Ligamentum interclaviculare】 Ligament that extends across the jugular notch and connects the two clavicles.
→(鎖骨間靱帯は胸骨の鎖骨切痕より上に突出した両側の鎖骨胸骨端を結ぶ強い靱帯で(ただし、その強度は個人差がかなり大きい)、関節包の上面を補強し、一部は頚切痕の縁に付着しながらその上を通って対側の同種の線維とつながる。鎖骨の肩峰端が押し下げられたとき胸骨端が挙上されるのを制限する。)