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- 092_00【Orbit; Orbital cavity眼窩 Orbita; Cavitas orbitalis】 Orbital cavity that contains the eyeball and its appendages.
→(眼窩は眼球とその付属器とを容れる不規則な四角錐体状の大きなくぼみで、最深部はその後内方にある。錐体底にあたる部はほぼ四辺形の眼窩口で、軽度外下方に傾いており、顔面に開いている。その上縁を眼窩上縁、下縁を眼窩下縁という。眼窩上縁は前頭鱗からなり、その内側半分に2個の切痕または孔があり、その内側のものを前頭切痕(まれに前頭孔)、外側のものを眼窩上孔(まれに眼窩上切痕)とう。眼窩下縁は上顎骨体および頬骨からなり、その下方に眼窩下孔が開口している。眼窩は上・下・内側・外側の4壁を有し、7種類の骨による10部より形成されている。上壁は大部分が前頭骨眼窩面および蝶形骨小翼腹側面よりなり、外側には涙腺窩、小翼内には視神経管があり、ここに視神経および眼動脈を通す。下壁は大部分が上顎骨眼窩面によりなるが、外側の一部が頬骨眼窩面、後方の小部分が口蓋骨眼窩突起により形成されている。また後方から前方へ眼窩下溝その延長部である眼窩下管が走り、これが既述の眼窩下孔に開口する。内側壁は大部分が篩骨眼窩板により形成され、残りの部分のうちの前部は上顎骨前突起および涙骨、後部は蝶形骨体側面最前部によって形成されている。なお篩骨眼窩板上縁と前頭骨眼窩部との間には、前篩骨孔および後篩骨孔があり、前者は鼻腔に行く前篩骨神経および前篩骨動脈を通し、後者は篩骨蜂巣に行く後篩骨神経および後篩骨動脈を通す。また内側壁の前部にある涙嚢窩は、上顎骨の前涙嚢稜と涙骨の孔涙嚢稜との間にあり、稜骨の涙嚢溝が合して形成されたものである。外側壁は前半部は頬骨眼窩面、後半部は蝶形骨大翼眼窩面と上壁の蝶形骨小翼との間には頭蓋腔に通ずる上眼窩裂があり、動眼神経、滑車神経、眼神経、外転神経、上眼静脈などを通す。また外側壁後半部の蝶形骨大翼眼窩面と下壁の上顎骨眼窩面との間には翼口蓋窩および側頭下窩に通ずる下眼窩裂があり、眼窩下神経、頬骨神経、下眼静脈などを通す。)
- 092_01【Fossa for lacrimal gland; Lacrimal fossa涙腺窩 Fossa glandulae lacrimalis】 Depression for the lacrimal gland in the lateral angle of the eye.
→(外側眼窩角にある凹みに涙腺窩があって涙腺をいれる。)
- 092_02【Greater wing of sphenoid bone大翼(蝶形骨の) Ala major; Ala magna (Ossis sphenoidalis)】
→(蝶形骨の大翼は蝶形骨体後部の外側から前外側方へ翼状にひろがる部分である。3面および3縁を有する。上面は大脳面といわれ、凹面をなして中頭蓋窩の一部をなし、指圧痕、脳隆起、動脈溝、静脈溝が認め等えっる。この面で大翼と体の結合部近くに前内側から後外側に向かって三つの孔、すなわち正円孔、卵円孔、棘孔が並ぶ。正円孔は上顎神経、卵円孔は下顎神経、棘孔が並ぶ。正円孔は上顎神経、卵円孔は下顎神経、棘孔は中硬膜動脈および下顎神経硬膜枝の通路である。外側面は上・下の2部から成る。上部は側頭面といわれ大きく側頭窩の底をなすが、側頭加療より下内方部は側頭下面といわれ小さく側頭下窩の上壁の大部分をなす。内側面の大部分は眼窩面といわれ、ほぼ菱形をなし眼窩外側壁の形成にあずかる。その下方には上顎面があり、翼状突起に前面とともに翼口蓋窩に面し、ここに正円孔が開口する。なお眼窩面と上顎面の境は下眼窩裂の後縁をなす。上縁は前方で前頭骨と結合する短い前頭縁と、後方で頭頂骨と結合する短い前頭縁といわれ、また下部は遊離縁で下眼窩裂の上縁の一部をなしている。後縁の外側部は側頭骨鱗部と結合し鱗縁といわれ、その内側部は側頭骨錐体との間に蝶錐体裂をつくる。この裂の外側部に斜走する耳管溝がある。後縁の最後端は角をなし、そこから蝶形骨棘という小突起を出す。なお後縁と側頭骨岩様部との間に蝶錐体裂があるが、その外側部に斜走する耳管溝があり、ここに耳管軟骨をいれている。耳管孔は翼状突起根部の舟状窩につづいている。)
- 092_03【Zygomatic bone頬骨 Os zygomaticum】 The zygomatic bone is inserted between the temporal bone, frontal bone, and maxilla. It forms a large part of the lateral wall of the orbit and part of the zygomatic arch.
→(頬骨は頬の突出した部分を形成するほぼ菱形の骨で、前頭骨、上顎骨、側頭骨、蝶形骨の4種の骨に囲まれている。体および2突起を有する。体は3面を有する。外側面は前方に軽度突出しており、ほぼ中央に頬骨顔面孔がある。この面より大・小頬骨筋が起こる。眼窩面は体の内側面にあり眼窩の前外側壁をなす軽度陥凹した面で頬骨眼窩孔がある。側頭面は体の表面にあり側頭下の前壁をなす凹面で、頬骨側頭孔にそれぞれひらく。ここには上顎神経の分枝である頬骨神経がとおる。前頭突起は体より上方に向かい前頭骨の頬骨突起および蝶形骨大翼前縁と結合する。側頭突起は体より後方に向かい、側頭骨の頬骨突起と結合して頬骨弓を形成する。前面からみると、頬骨の内側縁は眼窩外側縁および下縁を、外側縁および後下縁は遊離縁をなし、前下縁は上顎骨の頬骨突起結合する。眼窩内における頬骨は蝶形骨大翼眼窩面および上顎骨眼窩面と結合し、後面では既述のように蝶形骨大翼前縁と結合する。前頭突起の後縁が前頭頬骨縫合のやや下方で小さい円形の突起を出すことがあるが、この突起を縁結節という。Zygomaticumはギリシャ語のzygon(軛 yoke, Joch)に由来する形容詞である。したがってこの骨のラテン名には「頬」の意味はない。日本名の頬骨はよい名前であるが、胸骨と同音になるので注意を要する。)
- 092_04【Zygomatico-orbital foramen頬骨眼窩孔 Foramen zygomaticoorbitale】 Foramen on the orbital surface of the zygomatic bone for the entrance of the zygomatic nerve.
→(眼窩面にあり、頬骨神経が通る骨管の入口。)
- 092_05【Inferior orbital fissure下眼窩裂 Fissura orbitalis inferior】 Opening between the greater wing of the sphenoid and the orbital surface of the maxilla. It transmits the zygomatic nerve, infraorbital nerve, and accompanying vessels.
→(眼窩の下壁と外側壁との間に長く大きな下眼窩裂(蝶形骨大翼と上顎骨眼窩部の間の裂隙)がある。下眼窩裂は側頭下窩・翼口蓋窩に通じ、眼窩下動・静脈、眼窩下神経、頬骨神経などの通路となる。眼窩裂の前内側縁から前方に向かって深い溝が出る。この溝を眼窩下溝といい、さらに下壁の下を走って眼窩下縁の下方で眼窩下孔となって上顎骨の前面に開く。)
- 092_06【Infra-orbital groove; Suborbital sulcus眼窩下溝 Sulcus infraorbitalis】 Groove at the beginning of the infra-orbital canal, beginning at the inferior orbital fissure.
→(眼窩下溝は眼窩面の後縁は側頭下面との間の縁で、下眼窩裂の下縁となり、そのほぼ中央から眼窩面に向かって眼窩下溝が起こる。)
- 092_07【Body of maxilla上顎体 Corpus maxillae】 Central part of the maxilla enclosing the maxillary sinus.
→(上顎体は角がまるい三角柱状で、前面、後面(側頭下面)、上面(眼窩面)および内側面(鼻腔面)がある。その内部は殆ど上顎洞という空洞で占められいる。)
- 092_08【Frontal sinus前頭洞 Sinus frontalis】 It can extend beyond the squamous part of frontal bone into the orbital part of frontal bone. It opens below the middle nasal concha above the sphenoidal sinus.
→(前頭洞は眉間の辺りにある副鼻腔をなす空洞。篩骨漏斗により同側の中鼻道に連なる。)
- 092_09【Superior orbital fissure上眼窩裂 Fissura orbitalis superior】 Opening in the upper part of the orbit between the greater and lesser wings of the sphenoid that connects the cranial and orbital cavities. It transmits the ophthalmic, oculomotor, trochlear, and abducens nerves and the superior ophthalmic vein.
→(眼窩の外側壁の後端には、上壁との間に上眼窩裂(蝶形骨の大翼および小翼の間にある上部裂隙)がある。上眼窩裂は頭蓋腔(中頭蓋窩)に通じ、眼筋の支配神経(動眼神経・滑車神経・外転神経)・眼神経・上眼静脈が通る。)
- 092_10【Foramen rotundum of sphenoid bone正円孔;正円管(蝶形骨の) Foramen rotundum (Ossis sphenoidalis)】 Foramen that opens anteriorly into the pterygopalatine fossa. It transmits the maxillary nerve.
→(蝶形骨大翼が蝶形骨体から出る根部を貫く3孔が前内方から後外方にならぶ。最前のものは正円孔で、前方に向かって翼口蓋窩に開く。中の最も大きい卵円孔と最後の棘孔はともに頭蓋底下面に開く。正円孔は上顎神経が通る。)
Vidian canalヴィディウス管
- 092_11Vidian canalヴィディウス管【Pterygoid canal翼突管 Canalis pterygoideus】 Canal that runs anteriorly in the base of the pterygoid process. It transmits the greater and deep petrosal nerves to the pterygopalatine ganglion in the pterygopalatine fossa.
→(翼状突起の根部は前後に走る翼突管で貫かれる。大および深錐体神経が合した翼突管神経及び翼突管動脈が通る。)
Highmore, Antrum of
- 092_12Highmore, Antrum of【Maxillary sinus上顎洞;ハイモア腔 Sinus maxillaris】 It measures over 3 cm vertically and sagittally and 2.5 cm in the frontal plane. Its floor is usually at least 1 cm below the floor of the nose and its lowest point is usually at the level of the first molar.
→(上顎洞は上顎体中にある最大の副鼻腔で、その形はだいたいにおいて上顎体の形に一致するが、尖端を外上方、すなわち頬骨突起の方に出しているので錐体状に近く、その底は鼻腔面にむく。ここにはなはだ大きい上顎洞裂孔があるが、完全な頭蓋ではこの裂孔は口蓋骨の垂直板、篩骨の鈎状突起および下鼻甲介の上顎、篩骨稜突起によりその一部がふさがれて著しく小さくなる。(生体では、さらに鈎状突起まで鼻粘膜に被われるため、中鼻甲介の下の半月裂孔に開く小さな開口を残すのみとなる。)上顎洞はその前壁が最も厚く、つぎは後壁、上壁の順で内側壁が最も薄い。下壁は歯槽突起に入り、場所によってその厚さが異なるが、大臼歯および小臼歯の歯根をおおう部、とくに第1、第2臼歯の付近で最も薄く、それらの歯根はしばしば洞に達する。また、下壁には歯槽中隔の為に多くの骨の高まりやくぼみを見るのを常とする。なお、上顎洞の前後稜壁には多くの細い歯槽溝または歯槽管および歯槽孔が見られる。『ハイモア洞』:イギリスの自然科学者Nathaniel Highmore (1613-1685)の名を冠するが、レオナルド・ダ・ビンチがすでに観察している。ハイモアは、この他にも精巣縦隔(Highmore's body)に名を残している。)