目次骨格系関節系筋肉系消化器系呼吸器系胸郭泌尿器系生殖器系腹腔と骨盤腔内分泌腺心脈管系リンパ系神経系感覚器外皮

The integument(外皮)Integumentum commune がいひ Feneis: 470_01

[A16_0_00_001] →(表皮、真皮および皮下組織のほかに表皮に由来するもの(毛髪、爪、汗腺、脂腺、乳腺)をすべて含む。)

Skin(皮膚)Cutis ひふ Feneis: 470_02

[A16_0_00_002] →(皮膚は身体を保護しておおうもので、非常に異なる2成分、すなわち表層をなす表皮と深層をなす真皮よりなる。重層上皮である表皮を作る個々の上皮細胞は表皮の表面に近づくにつれて形が扁平となる。手掌や足底の皮膚では表皮の厚さが極端に大となっており、機械的刺激への抵抗力を増している。手掌と足底以外の部位では、例えば上腕や前腕の屈側面皮膚に見られるように表皮は薄い。真皮を作るのは密性結合組織であり、そこに血管、リンパ管、神経などが含まれている。真皮の厚さも体部位により異なるが、概して人体前面の真皮は人体後面の真皮よりも薄い。また、女性における真皮は男性における真皮よりも薄い。皮膚の真皮はその下の浅筋膜(皮下組織ともよばれる)を介して深筋膜、あるいは骨に連結する。真皮内では膠原線維がたがいに平行な配列を示すことが多い。外科的に皮膚を切開する場合に、膠原線維の走行に沿うように創を作れば膠原線維損傷が最も少なくすむことから、瘢痕の最も少ない創傷治癒が得られる。もしも膠原線維の走行を横断するような皮膚切開を行えば、多数の膠原線維の損傷を来たし、それに代わる再生線維群の存在のために大きな瘢痕が生じることになる。真皮内の膠原線維の走行の向きは、皮膚の裂隙線(ランゲルの線Langer's lines)の方向と一致するが、これは四肢では縦方向に、また体幹では横方向に走る傾向を示す。皮膚が可動関節を被うところではその一定部位に皮膚のヒダ(またはシワ)形成が見られる。皮膚のヒダあるいは皺の部位では皮膚は薄くなり、かつ真皮と皮下構造物との間での膠原線維性結合の強度が強まっている。皮膚に付属する機関として爪、毛包、皮脂腺、汗腺などをあげることができる。 [臨床]皮膚の裂隙線の方向についての知識は外科医が皮膚切開する場合のガイドとなり、手術後の瘢痕を最小にするために役立つ。特に女性の患者で手術創を通常は衣服で被われないような部分に作る場合に、このことは重要な意味をもつ。セールスマンでさえも場合によって彼の顔に大きな瘢痕が残ることで、彼の仕事を失うかも知れないのである。爪部、毛包、皮脂腺は黄色ブドウ球菌のような病原体が侵入しやすい場所である。爪部の炎症は爪周囲炎paronychiaとよばれ、毛包および皮脂腺の炎症はいわゆる「おできboil」の原因となる。ようcarbuncleというのは、ブドウ球菌感染による浅筋膜の炎症であるが項部にしばしば発生して、通常1個の毛包または毛包の1群の感染の状態から始まるものである。皮脂嚢胞sebaceous cystは皮脂腺導管の開口部が閉鎖されるために起こるが、この状態は頭毛をくしけずるときに生じた頭皮の損傷、あるいは皮脂腺の感染による。したがって皮脂嚢胞は頭皮にしばしばみられる。ショック状態にある患者の皮膚は蒼白で鳥肌状を呈するが、これは交感神経系の過剰な活動により皮膚の細動脈の狭窄ならびに立毛筋の収縮を来しているためである。皮膚の熱傷の際にはその深さが治療法とその予後を決める要素となる。熱傷が皮膚深層にまで達していないときは、傷面はやがて毛包、皮脂腺、汗腺をなす上皮細胞や傷周囲の表皮細胞の増殖により被われて治癒する。しかし汗腺の腺体よりも深い部位までの熱傷のときには傷周囲の表皮細胞からの、おしか上皮の被覆は得られず、治癒は著しく遅くなることともに、線維組織による傷面の収縮がかなりの強さで起こる。深い熱傷を治癒を早め、かつ収縮の起こるのを防ぐためには皮膚移植が必要となる。皮膚移植法は浅層皮膚移植と全層皮膚移植との2種に大別される。前者は表皮の大部分(真皮乳頭尖部をも含めて)を切り取って移植するもので、切り取られた残りの皮膚部位には真皮乳頭周囲の表皮細胞群が毛包細胞、汗腺細胞とともに残留するために、これらが切り取られた皮膚部分の修復にあずかることになる。全層皮膚移植の場合は表皮と真皮全層を移植するために、移植後に新しい血管循環路が早く成立することが移植成功のために必要となる。また、皮膚全層が切り取られた部位には通常さらに他の部位からの浅層皮膚片が移植される。状況によっては全層皮膚移植は有茎切除皮膚片を用いて行われる。すなわち、その際には弁状の全層皮膚がその基部を経由する血流を受けたままの状態で必要部位に植え込まれる。そして、移植された有茎皮膚片への新しい血流が確立したのちに、はじめて茎部切断を行う。)

Skin sulci(皮膚小溝)Sulci cutis ひふしょうこう Feneis: 470_03

[A16_0_00_003]

Dermal ridges; Papillary ridges(皮膚小稜)Cristae cutis ひふしょうりょう Feneis: 470_04

[A16_0_00_004] →(手掌および足底にある皮膚小稜で乳頭が真皮面に位置する。 (Feneis))

Skin ligaments(皮膚支帯)Retinacula cutis ひふしたい Feneis: 470_05

[A16_0_00_005]

Tactile elevations(触覚小球)Toruli tactiles しょかくしょうきゅう Feneis: 470_07

[A16_0_00_007]

Coccygeal foveola(尾骨窩)Foveola coccygea びこつか Feneis: 470_33

[A16_0_00_007_1] →(尾骨尖部近くにある皮膚の陥凹。皮膚への胚神経管の付着部であることを示している。)

Retinaculum caudale; Caudal retinaculum(尾骨支帯;尾骨皮膚支帯)Retinaculum caudale; Retinaculum caudale cutis びこつしたい;びこつひふしたい Feneis: 470_06

[A16_0_00_006]

Tension lines; Cleavage lines(割線;裂隙線)Lineae distractiones かつせん;れつげきせんLanger's lines Feneis: 470_08

[A16_0_00_008] →(割線は死体の皮膚にピンを刺したときできる線状の孔を結んだ線で、真皮の膠原線維が、ある一定方向に主として並んでいるために生じる。体表部位によって方向が異なる。)

Epidermis(表皮)Epidermis ひょうひ Feneis: 470_09

[A16_0_00_009] →(表皮は皮膚の最表層を占める重層扁平上皮で、その最表層は上皮細胞が死滅し、乾燥した鱗片となり、角質層とよばれる。角質はケラチン(keratin)という硬蛋白の線維状のミセルが密に集合してできており、角質を形成する現象を角化と呼ぶ。手掌、足底の表皮は非常に厚い角質層を有し、その底部はエオジンに好染する明るい層として、淡明層とよばれるが、角質層の一部と考えてよい。角質層の細胞は死滅して、核を失っているが、その下方にある数層の上皮細胞は核を有し、種々の代謝活動を有している。表皮の深部にある、そのような生きている細胞の層を一括してマルピギー層(Stratum malpighii)ということがある。表皮を真皮から剥離して下面をみると、真皮乳頭に対応する所が凹みとなり、その凹みの間がもり上がった網状にみえるので、これをマルピギー網(Rete malpighii)とよんだのがはじまりである。マルピギー層は3層に分けられ、角質層に接する顆粒層、中間部のやや厚い数層の細胞から成る有棘層、最深部で真皮に接触する基底層(円柱層ともよぶ)に区分する。基底層は通常1層のやや高い円柱あるいは立方形の細胞からなっており、ここで細胞が分裂して増殖するので、胚芽層ともよばれる。胚芽層という語はマルピギー層と同義語に用いられることがありその場合は有棘層、顆粒層をも含む。表皮細胞(epidermocyte)は基底層で分裂新生し、次第に表層に移行して、最後には角化死滅して、剥離する。この期間は通常15~30日といわれる。このように必ず角化する細胞であるから、角化細胞(keratinocyte)ともよばれる。この細胞は互いにデスモゾームによって連結し、細胞内には多量の張細糸(tonofilaments)が含まれ、細胞周辺にあるデスモゾームに集中付着している。張細糸はしばしば集まって束をつくり、張細線維(tonofibrilis)とよばれる。張細線維は光顕でみえるが、張細糸は電顕でなければ認められない。有棘層の細胞は多数の突起をもった多角形の細胞で、突起の尖端は隣接する同種の細胞とデスモゾームを形成して連結する。このように棘状の突起を有するので有棘細胞(spinous cell)とよばれるのである。有棘層の顆粒がふくまれている。一つはケラトヒアリン顆粒とよぶのである。電顕的には球状のケラトヒアリン顆粒もあるが、大部分は不規則な星状を呈している。表面に膜はなく、その物質は張細糸の間にしみこんで細糸間物質(interfilamentous substance)を形成する。第2の顆粒は板層顆粒(lamellar granules)で、Odland小体、MCG(membrane-coating granule)、ケラチノゾームなどとよばれる。この顆粒は、こまかい平行層板を内部にもっていて、膜によって包まれている。光顕では認められなかったが、電顕でよく観察できる。顆粒はしばしば細胞の表面に開いて、その内容を放出する。この顆粒の機能は不明なところが多く、ある人々は表皮細胞を互いに分離するに役立つ蛋白分解酵素を含み、一種の水解小体であるというが、他の人々は表皮細胞を互いに結合する役目があるという。基底層の表皮細胞は真皮との間を基底膜あるいは基底板(basal lamina)によって境され、細胞表面には基底膜に対する結合装置として、半デスモゾーム(hemidesmosome)を有する。半デスモゾームのない基底表面には微細飲小胞(micropynocytotic vesicle)がみられる。基底細胞に含まれる色素顆粒(メラニン細胞(melanocyte)によってつくられ、一種の食作用によって、表皮細胞がとりこんだものである。表皮に常在する非上皮性細胞は多数の突起を出すゆえに樹状細胞(dendritic cell)とよばれる。その一つはメラニン細胞であって、基底層にあり、多数の突起を上方に出している。この細胞でつくられたメラニン小体(melanosome)またはメラニン顆粒、突起の中に入り、表皮細胞が突起の尖端を貪食することによってメラニンをとりこむ。メラニン細胞内にある未熟なメラニン顆粒をメラニン前小体(premelanosome)といい、これは表皮細胞はLangerhans細胞とよばれ、大食細胞の一種と考えられている。有棘層の上部にあり、特有の板状あるいはラケット状の顆粒(Birbeck顆粒)を含んでいる。)

Corneal layer; Horny cell layer(角質層;角質細胞層)Stratum corneum かくしつそう

[A16_0_00_009_1] →(角質層は、ケラチンでみたされ、極度に扁平となった細胞の死骸が厚く重積したそうで、HE染色標本ではエオジンに濃染して濃赤色を呈する。これらの細胞の死骸は表面から次々に剥げ落ちてゆく。)

Clear layer(淡明層;明瞭層)Stratum lucidum たんめいそう;めいりょうそう

[A16_0_00_009_2] →(淡明層は角質層の最深部にある角質細胞層。主に手掌や足底の厚い表皮に見られる。内部構造の明瞭でない光を強く屈折する層で、HE染色標本では淡橙色に染まった明るい帯状の層として認められる。淡明層は強く圧平されて薄片状となった細胞が数層ないし十数層重積したものである。細胞には角はもはや認められず、胞体は光を強く屈折する粘稠な物質(エレイデンEleidin)で満たされている。エレイデンはケラトヒアリンからケラチンに移行する中間段階の物質であると考えられている。)

Granular layer of skin(顆粒層(皮膚の))Stratum granulosum かりゅうそう(ひふの)

[A16_0_00_009_3] →(顆粒層は比較的扁平な多角形の細胞が3~5層重積した層である。本層の細胞はヘマトキシリンで青黒く濃染する粗大な顆粒を含む。この顆粒はケラトヒアリン顆粒数keratohyaline granuleと呼ばれ、深部の細胞では比較的少ないが、浅部の細胞でははなはだ密で、核も見えない程に胞体を埋め尽くしている。ケラトヒアリン顆粒の本態はまだよくわかっていないが、これの出現は角化の第1段階である。顆粒層の細胞も細胞間橋によって互いに結合している。有棘層から顆粒層への移行は明らかな境を示さず、有棘層の最表層部の細胞に少量のケラトヒアリン顆粒が出現することによって顆粒層への移行が気付かれるのであるが、顆粒層から淡明層への移行は全く突然である。)

Spinous layer; Spinous cell layer(有棘層;有棘細胞層)Stratum spinosum ゆうきょくそう

[A16_0_00_009_4] →(有棘層は数層ないし、十数層重なった大型の多角形の細胞からなる。この細胞の胞体はヘマトキシリンで比較的濃く染まり、内部は核をよけて種々の方向に走る微細な線維でみたされている。この線維を張原線維tonofibrilという。細胞相互間には明瞭な帯状の間隙があり、これを横切って細胞相互を結合する細胞間橋がはなはだ著明である。光顕では張原線維が細胞間橋を通って1個の細胞から隣の細胞に侵入しているようにみえる。しかし、電顕によって、細胞間橋は細胞の表面から生じた細長い突起であり、細胞間隙のほぼ中央部で向かい合う細胞の突起どうしが高度に発達したデスモゾームで結合していること、およびそれぞれの細胞の張原線維はこのデスモゾームの内面で終わっていることが明らかになった。基底層および有棘層深部の細胞は有糸分裂をおこなって、表層に向かって細胞を送り出している。このことから、基底層と有棘層は表皮の細胞を生産する層として、まとめて胚芽層と呼ばれることがある。なお胚芽層には、互いに細胞間橋で結合した以上の細胞に混じって、胞体が明るく抜けて見える類縁形細胞が存在する。それらは基底層における米良のサイトと、有棘層の上部におけるランゲルハンス細胞である。メラノサイトmelanocyteは黒褐色の色素顆粒であるメラニンmelaninを産生する細胞で、表皮の基底層内および基底層直下の結合組織内に広く存在する。HE染色標本では、胞体が明るく抜けて見える球形ないし卵円形の細胞として認められ、細胞間橋による結合を欠いていることによって、基底層の細胞から区別される。この細胞は血液(組織液)からチロシンtyrosineを受け取ってこれをDOPA(dihydroxyphenylalamine)に変え、DOPAからさらにメラニンを産生する。新鮮な皮膚の小片をDOPA液の中に浸しておくと、この細胞が黒化し、胞体だけでなく胞体からでている多数の樹枝状突起も明らかとなり、樹枝状突起が枝分かれしながら基底層および有棘層深部の細胞間隙の中に侵入している状態が観察される。これは、メラノサイトが持っている特別の酵素(tyrosinase)によってDOPAがメラニンに変えられたことによる。しかし、正常状態ではメラノサイトの胞体内に産生されたメラニン顆粒を基底層や有棘層深部の細胞が受け取って、これを胞体内に貯えるのであるが、その授受のの家庭は未だ十分に解明されていない。発生学的にみるとメラノサイトは表皮とは異なった母地から発生する。個体発生の早期(ヒトでは受精後第3週から第4週にかけて)に外胚葉は体表をおおう外胚葉と神経管とに分かれる。この際、体表の外胚葉と神経幹の移行部から一群の細胞が遊離して、神経堤neural crestと呼ばれる細胞集団をつくる。メラノサイトはこの神経堤の細胞の一部が分離・遊走してきたものである。実験的に発生の早期に神経提の一部を切除すると、それに対応する体部にはメラノサイトが出現せず、したがってその体部にはメラニンによる着色がおこらない。ランゲルハンス細胞Langerhans cellは有棘層に散在する細胞で、HE染色標本では暗い表皮細胞の間に散在性にはめ込まれた明るい球形ないし卵円形の細胞として認められ、表皮細胞との間に細胞間橋による結合を有しない。この細胞はDOPAに反応せず、ATPase活性を示す点でメラノサイトから区別される。この細胞の最も大きな特徴は塩化銀液によって黒染することで、この方法によると、胞体から出る細長い樹枝状の突起が有棘細胞層の細胞間隙の中へ伸びている状態が染め出される。この細胞は抗原を提示し、免疫系の重要な構成要素となる。ランゲルハンス細胞の細胞質には特徴的なバーベック顆粒Birbeck granuleが散見される。この顆粒はは周期的な横紋をもつ桿状構造物で、ゴルジ(装置)近傍にもっとも多く分布する。桿状構造物の一端が時に拡張して球形嚢を形成し、テニスラケットのようにみえることがある。ランゲルハンス細胞は謙譲な皮膚にも少数存在するが、とくに慢性のアトピー性皮膚炎atopic dermatitisのようなアレルギーあるいは免疫反応に起因する慢性炎症性皮膚疾患において、細胞数が増加すると同時に樹状突起の広がる範囲や分枝の複雑度が増す。)

Stratum basale (clindricum)(基底層;円柱層(表皮の))Stratum basale; Stratum cylindricum きていそう;えんちゅうそう(ひょうひの)

[A16_0_00_009_5] →(基底層は1列の円柱状ないし立方状の比較的小型の細胞からなる。細胞は基底面からの多数の細い突起(小足)を出し、これで真皮に表面に存在する銀好性繊維の網工である基底膜に強く結合している。細胞と細胞の間には狭いが明瞭な間隙があり、細胞層後はこの間隙を横切る細い突起で結合する。基底層の細胞と有棘層の細胞の間の結合も同様である。この細い突起を細胞間橋intercellular bridgeという。基底層の細胞は種々の程度にメラニン顆粒を含んでいる。メラニン顆粒はしばしば核上部に集積して、核をおおう帽子状を呈する。メルケル細胞は(触覚差細胞tactile epithelioid cell)は数が少なく、正常皮膚では見つかりにくい。この細胞は基底層にあって通常の光学顕微鏡ではメラニン細胞に似ているが、電子顕微鏡でみると、細胞内に膜に取り込まれた神経分泌型の丸い顆粒をみることができる。メルケル細胞は、基底部で末梢神経終末とシナプス結合をつくり、隣接する角質細胞とはわずかな接着斑によってつながる。メルケル細胞は単一細胞として散在性に分布する他に、基底膜のすぐ裏側にある毛円板hair diskに不随して集合体としても存在する。このような集合体は感覚レセプターと考えられ、触小体tactile corpuscleと呼ばれることがある。)

Dermis; Corium(真皮)Dermis; Corium しんぴ Feneis: 470_10

[A16_0_00_010] →(真皮は表皮を裏打ちする厚い交織性緻密結合組織の層で、縦横に交織する膠原線維束とその間に含まれる多くの弾性繊維とからできている。表皮に接する真皮の表層部の一定の範囲では、膠原線維束弾性線維も細く、その配列もやや疎で、それ以下の太い線維束が密に交織している真皮に主体をなす部分から区別される。この表層部を乳頭層といい、真皮に主体をなす部分を網状層という。真皮は以下のもので構成される。①線維芽細胞、線維細胞およびこれらによって産生される細胞外マトリックス、②コラーゲン線維と弾性線維、③グリコサミノグリカンglycosaminoglycanを含む基質、④血管と神経、⑤少数のマクロファージ、リンパ球と肥満細胞。真皮には皮膚付属器、血管、神経ならびに排出リンパ管が存在する。皮膚に血液を供給する主たる血管は真皮に存在し、これらは皮下脂肪組織にあるより大きな血管から起こる。真皮には二つの明瞭な血管叢が存在する①深部血管叢は皮下組織との境界に近い真皮網状層下部にある、②浅部血管叢は真皮乳頭層に近い真皮網状層上部にある。浅部血管層からでる小血管ループをつくって真皮乳頭層内へ伸び、そこから出る毛細血管は表皮基底膜のすぐ近くに達する。但し、血管は表皮内には侵入しない。真皮には多くの動静脈吻合が存在し、なかでも指尖によくみられる短絡路は非常に特殊で、糸球glomus bodyと呼ばれる。真皮での血流変化は、皮膚が体温調節器官としてはたらく上で重要である。皮膚付属器への血液供給は、浅部と深部の両血管叢を結ぶ血管から出る枝によっておこなわれる。皮膚の支配神経は真皮に存在し次の2種類かならなる。①交感神経系の無髄神経:真皮に豊富に分布し、皮膚付属器の働きや血流の調節をおこなう。②求心性有髄ならびに無髄神経:皮膚感覚を感知する。皮膚感覚は種々の特殊な神経終末によって感知されるが、もっとも重要なものは以下の通りである。①自由神経終末free nerve ending(有髄および無髄)は痛覚(およびそれがわずかに形を変えた感覚である痒み)および温度を感知する。②層板小体lamellar corpuscle(ファーター・パチニ小体Vater-Pacinian corpuscle)は神経終末が被膜で包まれた特徴的な構造をもち、圧覚、そしてたぶん振動覚をも感知する。通常、手掌や足底の真皮深部あるいは皮下脂肪組織にみられる。③触覚小体tactile corpuscle(マイスナー小体meissner corpuscle)は真皮に乳頭層に限局して存在する構造化された神経終末で、手と足にもっとも多く分布し、触覚を感知する。④メルケル細胞とそれに付着する神経は、持続的でゆるやかな触覚の変化を感じるレセプターである。)

Papillary layer of dermis(乳頭層(真皮の))Stratum papillare dermis にゅうとうそう(しんぴの) Feneis: 470_11

[A16_0_00_011] →(真皮の乳頭層は真皮のうち、やわらかい上部層。多数の乳頭で表皮と結合する。乳頭層の表面には銀好性線維の網工である基底膜があり、これに表皮の基底層の細胞が小足をもって固く付着している。乳頭層は網状層にくわべて濃く染まる。コラーゲン線維や弾性線維が少なく、基質は逆に多い。細いコラーゲン線維や弾性線維がいろいろな向きに走るが、表皮垂直に向かう比率が高い。ここには毛細血管サイズの小血管、細い神経の枝および終末が含まれる。)

Papillae of dermis; Dermal papillae; Dermal ridge(乳頭(真皮の);真皮乳頭;真皮|隆線)Papillae dermis にゅうとう(しんぴの);しんぴにゅうとう Feneis: 470_12

[A16_0_00_012] →(乳頭は表皮中に突出した結合組織性突起。列をなしてあることもあり、分枝し、またその形と配列に非常に変化がある。表皮を裏打ちする乳頭層は、表皮の厚い手掌型の皮膚では、一定の間隔で胚芽層の中に深く侵入し、円柱状ないし板状の構造物を作っている。これを乳頭という。1個の皮膚小稜の中に通常2個の乳頭が浸出している。 乳頭の中には毛細血管のループがあり、これから浸出した血漿によって表皮細胞が栄養される。つまり乳頭は厚い表皮を効果的に栄養するための構造である。表皮の胚芽層に見られた著明な細胞間隙も、血漿(組織液)が乳頭から表皮の表面に向かって流れてゆく通路とみなされる。乳頭の内部では膠原線維も弾性繊維も、表皮の表面に対してほぼ直角に走る。乳頭には基底膜の直下を走る毛細血管のループに加えて、触覚の感覚装置であるマイスナー小体Meissner's corpuscleを含むものがある。このような乳頭を神経乳頭といい、血管のループのみを含むものを血管乳頭という。)

Reticular layer of dermis(網状層(真皮の))Stratum reticulare reticulare dermis もうじょうそう(しんぴの) Feneis: 470_13

[A16_0_00_013] →(真皮の網状層は真皮の大きな部分を占める。主として、皮膚の表面に対してほぼ平衡に走る太い膠原線維束が縦横に密に交織した厚い層である。膠原線維に混じってやや太い弾性線維が比較的豊富に存在するが、細胞成分は少なく、線維芽細胞が散在性に認められるのみである。結合組織線維束の一部は、網状層の下面からほぶれて皮下組織に侵入し、皮膚の表面に対してほぼ直角に走る索として皮下組織を貫き、網状層の深部の構造物(筋膜、腱膜、骨膜など)に結びつける。この結合組織索を皮膚支帯Retinaculum cutisという。コラーゲン線維は厚く密に束ねられ、その間に太く長い弾性線維が介在する。線維の多くは皮表に平行に走る。また、血管、リンパ管ならびに皮神経が存在する。)

Subcutaneous tissue; Hypodermis(皮下組織)Tela subcutanea ひかそしき Feneis: 472_29 (472_27)

[A16_0_03_001] →(皮下組織は皮膚と深部の構造物の間の空間を埋める疎性結合組織で、一般に脂肪細胞に富む。脂肪細胞は膠原線維によって大小の集団にまとめられ、真皮と深部の構造物の間を埋めており、皮下脂肪組織とよばれる。皮下脂肪組織は栄養分および水分の貯蔵所であるだけでなく、機械的な外力に対する緩衝装置であり、外界の温度変化が体内に波及することを防ぐ断熱装置でもあり、さらに体に丸みを与え体系を調えるなどの意義をもつ。皮下脂肪組織はいたるところおで皮膚支帯に貫かれている。皮下脂肪はまた大小の血管および神経によって貫かれている。皮膚に分布する動脈は皮下組織と網状層の移行部に置いて、皮膚の表面に平行に広がる動脈網を作り、これから真皮と皮下組織の両方向に枝を出す。真皮に入った動脈は乳頭層の基底部で再び動脈網をつくり、ここから乳頭に毛細血管を送る。乳頭内の毛細血管のループにはじまる静脈はまず乳頭の基底部の静脈に注ぎ、網状層内でさらに静脈網を形成した後、網状層と皮下組織の移行部に広がる静脈叢に注ぐ。網状債には動静脈吻合であるホイヤー・ボロッサー器官organ of Hyer-Grosserがみられる。皮下組織の表層部には圧覚の感覚装置と考えられ照り右ファーター・パチニ小体が散在する。)

Fatty layer of subcutaneous tissue; Superficial fatty layer of subcutaneous tissue; Subcutaneous adipose tissue(脂肪層(皮下組織の);皮下脂肪組織)Panniculus adiposus (Telae subcutaneae) しぼうそう(ひかそしきの);ひかしぼうそしき Feneis: 472_30 (472_28)

[A16_0_03_002] →(皮下によく発達した脂肪層。 (Feneis))

Loose connective tissue; Deepest layer of subcutaneous tissue(疎性結合組織;最深層(皮下組織の))Texus connectivus laxus telae subcutaneae そせいけつごうそしき;さいしんそう(ひかそしきの) Feneis: 472_34 (472_32)

[A16_0_03_006] →(疎性結合組織は、膠原線維がまばに不規則な走り方をする結合組織。ほとんど身体全般にわたり広く分布している。すなわち皮下組織、粘膜固有層などの上皮直下、腺の分泌部の周囲、筋組織内、腸管膜、大網などの結合組織、いろいろな器官の間質、血管、リンパ管、神経の周囲などに広くみられる。線維はあまり数多くなく、細胞性成分の方が比較的多い、膠原線維のほか弾性線維、およびあまり数は多くないが細網線維もみられる。線維の方向は不定である。無形の細胞間物質は柔らかく、ゼリー様である。細胞性要素としては、線維芽細胞、大食細胞(組織球)、肥満細胞、形質細胞などのほか、脂肪細胞がみられる。脂肪細胞が非常に大量認められる場合には、脂肪組織といわれる。疎性結合組織の主な機能は、組織同士をゆるく結合すること、身体各部に脈管、神経を導くこと、器官の間質を構成し、その器官をある程度支持すること、代謝産物、ホルモン、栄養などのいろいろな物質の通路(例えば毛細血管と上皮細胞間の結合組織)などである。)

Hairs; Hair(毛)Pili; Pilus け Feneis: 470_14

[A16_0_00_014] →(毛は、表皮が真皮内に陥入した形で生じた毛包から伸び出している。毛包は皮膚表面に対して常に斜めの方向をとっており、毛包下端の膨隆部(毛球hair bulb)は真皮の奥深くに位置している。毛球下面には陥凹部があり、そこに血管に富む結合組織が入り込み、毛乳頭hair papillaをなす。深部毛包壁を真皮浅層に結びつける平滑筋が立毛筋である。)

Downy hair; Primary hair(生毛;ウブゲ)Lanugo せいもう;うぶげ Feneis: 470_15

[A16_0_00_015] →(生毛は細く柔らかい、色素の少ない胎児の毛で、小さな毛幹と大きな毛乳頭を有する。とくに新生児で明らかで、通常は無髄である。)

Hairs of head(頭毛;カミノケ)Capilli とうもう;かみのけ Feneis: 470_16

[A16_0_00_016] →(Capillusの複数形で頭皮上の毛の集団を指す。一般的には頭髪(とうはつ)を用いることが多い。)

Eyebrows(眉毛;マユゲ)Supercilia びもう;まゆげ Feneis: 470_17

[A16_0_00_017]

Eyelashes(睫毛;マツゲ)Cilia しょうもう;まつげ Feneis: 470_18

[A15_2_07_037] →(睫毛は前眼瞼縁に近く。3~4列生える。)

Beard(須毛;ヒゲ)Barba しゅもう;ひげ Feneis: 470_19

[A16_0_00_018]

Hairs of tragus(耳毛;ミミゲ)Tragi じもう;みみげ Feneis: 470_20

[A16_0_00_019]

Hairs of vestibule of nose(鼻毛;ハナゲ)Vibrissae びもう;はなげ Feneis: 470_21

[A16_0_00_020]

Axillary hairs(腋毛;ワキゲ)Hirci えきもう;わきげ Feneis: 470_22

[A16_0_00_021]

Pubic hairs(陰毛;カクシゲ)Pubes いんもう;かくしげ Feneis: 470_23

[A16_0_00_022] →(恥丘に思春期以後、陰毛が生じる。陰毛の生え方の分類は水平型、矢印型、尖塔型、分散型などがあるが、実際にはこのように簡単にはいかず、どれにも属さないような生え方にもしばしば出会う。また全くあるいはほとんど陰毛のない陰毛発育不全症hypotrichoisis pubisは日本人では女性だけ数パーセント見られるという。)

Hair follicle(毛包;毛嚢)Folliculus pili もうほう;もうのう Feneis: 470_24

[A16_0_00_023] →(毛包とは毛根を包む組織で、毛嚢ともいう。毛根にじかに接する部分を上皮性毛包といい、その外側をなす真皮の連続部を、結合組織性毛包または毛袋という。両者の間に丈夫な基底膜の一種である硝子膜があり、これは電顕的な基底板の外側に、厚い結合組織基質と細い膠原線維が緻密になったものである。毛袋は2層に分けられ、膠原線維の走向によって、内輪層と外縦層と呼ばれる。上皮性毛包は表皮の連続が毛根を包む部分であるが、その内包は角化する内根鞘で、外包は表皮直下のいわゆる峡部とよばれるところから上は角化するが、大部分は角化しない外根鞘である。内根鞘はさらに3層にわけられ、外から順にHenle層または淡明上皮層、Huxley層または顆粒上皮層と根鞘小皮に分けられる。内根鞘の外包2層の細胞には表皮のケラトヒアリン顆粒に類似したトリコヒアリン顆粒trichohyalin granuleが出現するが、Henle層の方が速く角化するので、角化してしまうと顆粒はみえなくなる。多くの毛根の結合組織性毛包には立毛筋、脂腺、また特定の部位ではアポクリン汗腺が付着している。)

Hair papilla(毛乳頭)Papilla pili もうにゅうとう

[A16_0_00_023_1] →(結合組織性の乳頭。球根状にふくらんだ毛根の最下部へ突出する。 (Feneis))

Hair shaft(毛幹)Scapus pili もうかん

[A16_0_00_023_2] →(毛幹は皮膚からでる毛の部分。)

Hair root(毛根)Radix pili もうこん

[A16_0_00_023_3] →(毛根は毛包内に埋まっている毛の部分。その下方末端は毛包下部の毛球部で毛乳頭をおおっている。)

Bulb of hair(毛球)Bulbus pili もうきゅう

[A16_0_00_023_4] →(球根状にふくらんだ毛根の最下部。 (Feneis))

Arrector muscle of hair(立毛筋)Musculus arrector pili りつもうきん Feneis: 470_25

[A16_0_00_024] →(この筋は交感神経支配を受け、収縮により毛を直立させる動きを示すほか、皮脂腺を圧迫して同腺の分泌物は排出を促進させる作用を示す。さらに、立毛筋収縮が皮膚表面に小さな突出部の形成をもたらし、いわゆる鳥肌状とすることが知られている。毛は口唇、手掌、指の側面、陰茎亀頭および陰核、大陰唇内側面と小陰唇、足底と足の趾の側面、かかとには存在しないが、その他の人体の皮膚部分には例外なく存在する。しかし毛の分布密度はさまざまである。)

Hair streams(毛流)Flumina pilorum もうりゅう Feneis: 470_26

[A16_0_00_025]

Hair whorls(毛渦)Vortices pilorum もうか Feneis: 470_27

[A16_0_00_026]

Hair crosses(毛十字)Cruces pilorum もうじゅうじ Feneis: 470_28

[A16_0_00_027]

Nail(爪)Unguis そう;つめ Feneis: 472_01

[A16_0_01_001] →(手の指と足の趾の先端背側面を被う皮膚が作る角質板が爪である。この角質板の基部は爪根とよばれる。)

Nail matrix; Matrix of nail; Nail bed; Bed of nail(爪床;爪母基)Matrix unguis そうしょう Feneis: 472_02

[A16_0_01_002] →(爪の周囲の皮膚部分はヒダ状の高まり(爪郭)をしめす。また、爪で被われた皮膚部分を爪床と称する。)

Ridges of nail matrix(爪床小稜;爪床稜)Cristae matricis unguis; Cristae lectuli unguis そうしょうしょうりょう;そうしょうりょう Feneis: 472_03

[A16_0_01_002_1]

Nail groove; Sulcus of nail matrix; Groove of nail matrix(爪床小溝;爪床溝;爪溝)Sulcus matricis unguis そうしょうしょうこう Feneis: 472_04

[A16_0_01_002_2] →(爪床小溝は爪床にある溝。爪の外側縁がはいっている皮膚の溝。)

Sinus of nail(爪洞)Sinus unguis そうどう

[A16_0_01_002_3]

Nail wall; Wall of nail; Nail fold(爪郭)Vallum unguis そうかく Feneis: 472_05 (472_03)

[A16_0_01_003] →(爪を外側および根方向から囲む皮膚のヒダ。 (Feneis))

Body of nail; Nail body(爪体)Corpus unguis そうたい Feneis: 472_06 (472_04)

[A16_0_01_004]

Nail root; Root of nail(爪根)Radix unguis そうこん

[A16_0_01_004_1] →(爪渦中に入り込んでいる部分。(Feneis))

Lunule of nail(半月(爪の))Lunula unguis はんげつ(つめの) Feneis: 472_07 (472_05)

[A16_0_01_005] →(爪郭前方にある半月状の白くみえる部分。この前縁は爪形成組織の前縁に対応する。 (Feneis))

Hidden border of nail(潜入縁(爪の))Margo occultus unguis せんにゅうえん(つめの) Feneis: 472_08 (472_06)

[A16_0_01_006] →(爪洞中へ入り込んでいる部分。 (Feneis))

Lateral border of nail(外側縁(爪の))Margo lateralis unguis がいそくえん(つめの) Feneis: 472_09 (472_07)

[A16_0_01_007] →(爪郭の下にある爪の外側縁。 (Feneis))

Free border of nail(自由縁(爪の))Margo liber unguis じゆうえん(つめの) Feneis: 472_10 (472_08)

[A16_0_01_008] →(前方の自由端。爪の脱落縁または切断縁である。 (Feneis))

Perionyx(痕跡爪皮)Perionyx こんせきそうひ Feneis: 472_11 (472_09)

[A16_0_01_009]

Eponychium(上爪皮)Eponychium じょうそうひ Feneis: 472_12 (472_10)

[A16_0_01_010] →(爪根上にあり、爪郭の後縁から少しでる上皮。 (Feneis))

Hyponychium(下爪皮)Hyponychium かそうひ Feneis: 472_13 (472_11)

[A16_0_01_011]

Stratum corneum unguis(爪角質層)Stratum corneum unguis そうかくしつそう

[A16_0_01_011_1]

Stratum germinativum unguis(爪胚芽層)Stratum germinativum unguis そうはいがそう

[A16_0_01_011_2] →(細胞増殖のみられる爪床中の爪。 (Feneis))

Retinacula unguis(爪支帯)Retinacula unguis そうしたい

[A16_0_01_011_3] →(爪床から指節骨の骨膜へいたる結合組織性の支帯。 (Feneis))

Skin glands(皮膚腺)Glandulae cutis ひふせん Feneis: 470_29

[A16_0_00_028]

Sweat gland(汗腺)Glandula sudorifera かんせん Feneis: 470_30

[A16_0_00_029] →(汗腺はらせん状の形の長い管状腺であり、口唇、爪床、陰茎亀頭および陰核を除くすべての皮膚に分布している。汗腺は真皮全体を貫いており、その下端が浅筋膜内に存在することもありうるので、表皮の変形物である皮膚付属器のうちで最も深層にまで入り込んだ構造であるといえる。汗腺の開口を汗孔sweat poreという。)

Circumanal glands(肛門周囲腺)Glaudulae circumanales こうもんしゅういせん

[A16_0_00_029_1]

Ceruminous glands(耳道腺)Glandulae ceruminosae じどうせん

[A16_0_00_029_2] →(耳道腺は外耳道にある蛋白を含む分泌物を分泌するアポクリン汗腺。)

Sebaceous gland; Holokrine gland(脂腺;ホロクリン腺)Glandula sebacea しせん;ほろくりんせんHolokrine's gland Feneis: 470_31

[A16_0_00_030] →(おもに脂質を分泌する細胞の集まりからなる腺を脂腺という。皮脂腺がその例である。皮脂腺の腺体は毛包に接するようにして真皮内に位置している。皮脂には手をしなやかに保つ作用があり、また皮脂は毛包開口部付近の皮膚表面を一種の油性膜で被う。)

Breast(乳房;チブサ)Mamma にゅうぼう;ちぶさ Feneis: 472_14 (472_12)

[A16_0_02_001] →(乳房は女性の乳分泌器官。乳腺とその周囲および腺小葉内に侵入する疎線維性結合組織と脂肪組織からなる。乳房は女性ではとくに発達し半球状を呈し、胸部前面で第2~6肋骨の高さにわたり、その3分の2部は大胸筋の上に、3分の1は前鋸筋の上にある。表面中央に乳頭がある。男性では痕跡的である。)

Nipple(乳頭;チクビ)Papilla mammaria にゅうとう;ちくび Feneis: 472_17 (472_15)

[A16_0_02_004] →(乳頭は乳房の先端にあるいぼ状突起で、表面に乳管の開口がある。一般にほぼ第4肋間で、鎖骨中央線上にあるが、その位置は個体でかなり相違する。男性では、乳房は一般に発達悪く、小さな乳頭と乳輪をみるにすぎない。女性では、思春期以後、乳房は発達するが、その大きさ・形状にはかなり個人差がみられる。このような際は乳腺の発達のほうかに、主として脂肪組織の量による。)

Body of breast(乳房体;乳腺体)Corpus mammae にゅうぼうたい Feneis: 472_18 (472_16)

[A16_0_02_005]

Intermammary cleft; Mammary sinus(乳房間溝;乳洞)Sulcus intermammarius; Sinus mammarum にゅうぼうかんこう;にゅうどう Feneis: 472_15 (472_13)

[A16_0_02_002]

Mammary gland(乳腺)Glandula mammaria にゅうせん Feneis: 472_19 (472_17)

[A16_0_02_006] →(乳腺は乳房の中にある乳汁分泌線で、脂肪組織(乳房脂肪体)のなかに存在する。皮膚と深側にある大胸筋・前鋸筋との間には脂肪組織を貫いて、結合組織線維束ないし中隔が走る。この結合組織線維束を乳房提靱帯という。乳腺は15~24個の乳腺葉からなる。乳腺葉は乳房提靱帯でへだてられ、乳頭を中心として放射状に配列し、各葉は、それぞれ、1本ずつの導管、すなわち乳管をもつ。各乳管は乳頭に開口するが、開口のすぐ前で紡錘状に拡張する。この乳管は重層扁平上皮からなる壁を有し、横断面は不規則に角張っている。乳管は放射線状に乳房内に広がるが、乳輪の下で拡張して、乳管洞をなす。その先は再び細くなり、次第に分枝して細い腺胞管となり、腺胞管は弓状の腺胞につながる。休止期の乳腺では事実上腺胞はみとめられないが、妊娠とともに成長して腺胞が形成される。乳腺の腺胞は筋上皮細胞によって外方を取り囲まれている。この細胞は多くは桿状であるが、しばしば分枝して樹状または星状をなして腺上皮の外面に付着し、バスケット状を呈している。基底膜は筋上皮細胞の外方をおおっている。腺上皮は機能上体と分泌物すなわち乳汁の貯留状態によって形態を異にする。多くは単層円柱上皮であるが、単層立方上皮あるいは単層扁平上皮になることもある。腺細胞は1種類であるが、分泌物は蛋白(ガゼイン)と脂肪の2種がある。これに水分とそれに溶解した電解質や糖が加わる。乳腺細胞は非常によく発達した粗面小胞体とGolgi装置を有する。これは他の蛋白分泌腺と比較することができる。すなわち、乳蛋白であるガゼインは、粗面小胞体で合成され、Golgi装置で濃縮されて粒状となる。カゼイン粒子は、小胞の中に1個あるいは2~3個入っている。カゼイン粒子を開口分泌の形式で放出されるものもある。腺細胞の基底部にある滑面小胞体によって脂肪が合成され、脂肪滴が形成される。脂肪滴は次第に大きくなって細胞表面に対し、細胞膜をおし上げて、ドーム状に腺腔内に突出する。ついには球状の脂肪滴がほとんど完全に腺腔におし出されるようになるが、なお少量の細胞質によって細胞本体に連続しており、このような突起のくびれた基部には、しばしばカゼイン粒子を入れた小胞が集まっている。最後に脂肪滴は突起の基部の完全なくびれによって、腺腔に脱落するが、そのとき、突起の基部にある少量の細胞質とその中にふくまれるカゼイン粒子を有する小胞は同時に腺空に放出される。この分泌様式は古くから知られた離出分泌(アポクリン分泌)であって、その実在は電顕で証明されている。離乳期は乳腺細胞は急速に変性退縮し、腺細胞内に自家食胞ができて分泌物を処理すると同時に、大食細胞が侵入して腺細胞そのものを貪食して処理する。 乳房内の乳汁分泌腺。一種のアポクリン腺で10個ほどの乳腺葉からなり、脂肪組織(乳房脂肪体)に包まれる。乳腺で産生された乳汁は乳管ににより乳頭から分いつされる。なお、乳汁性産はプロラクチンによって刺激され、オキシトシンによって分泌が促される。(イラスト解剖学))

Axillary process; Axillary tail; Lateral process of mammary gland(外側突起;腋窩突起(乳腺の))Processus axillaris; Processus lateralis mammae がいそくとっき;えきかとっき(にゅうせんの)Spence, Tail of Feneis: 472_20 (472_18)

[A16_0_02_007]

Lobes of mammary gland(乳腺葉)Lobi glandula mammariae にゅうせんよう Feneis: 472_21 (472_19)

[A16_0_02_008]

Lobules of mammary gland(乳腺小葉)Lobuli glandulae mammariae にゅうせんしょうよう Feneis: 472_22 (472_20)

[A16_0_02_009]

Lactiferous ducts(乳管)Ductus lactiferi にゅうかん Feneis: 472_23 (472_21)

[A16_0_02_010] →(乳管は乳腺葉の乳分泌を行う15本または20本の導管。直径1.7~2.3mm。乳頭へ開口する。)

Lactiferous sinus(乳管洞)Sinus lactiferi にゅうかんどう Feneis: 472_24 (472_22)

[A16_0_02_011] →(乳管が乳頭にはいる直前の、乳管の紡錘状の膨大部。径5~7mmあり、乳頭へ開口する直前部にある。母乳保育ではこの部分が拡張して乳汁を貯え、新生児の吸啜で圧出される。催乳反射が持続する間、連続した吸啜を可能にする。)

Areola(乳輪)Areola mammae にゅうりん Feneis: 472_25 (472_23)

[A16_0_02_012] →(乳頭周囲の円形の色素沈着のある部分。乳輪には小隆起である乳輪結節がみられる。その表面には下層の乳輪腺の存在のため小突起が散在する。乳輪腺は一種のアポクリン腺で、約12個ありほぼ輪状にならぶ。妊娠すると、乳輪の色調は濃くなり、乳輪腺も発達し大きくなる。)

Areolar glands; Areolar sweat glands(乳輪腺)Glandulae areolares にゅうりんせん Feneis: 472_26 (472_24)

[A16_0_02_013] →(モンゴメリー線 Montgomery's glandとも呼ばれる。乳輪にみられる乳輪隆起(モンゴメリー結節)は同腺の開口部であり、イタリアのモルガニが発見したともいうが、1837年、アイルランドの産科医Wiliam Fetherston Montgomery (1797-1859)によって記載されたことからその名を冠している。)

Accessory breast(副乳;副乳房)Mamma accessoria ふくにゅう;ふくにゅうぼう Feneis: 472_16 (472_14)

[A16_0_02_003] →(乳腺は皮膚腺のひとつで、発生学的には上肢と下肢との原基の基部にわたって外胚葉性上皮の肥厚から生ずる。このような上皮の肥厚は乳腺堤といわれ、とくに胸部で発達して乳腺となるが、ほかの部では退化消失する。乳腺堤の退化が不完全で、部分的に残ると、副乳(房)を生ずる。乳腺堤は腋窩から恥骨上縁にわたる線(ミルクライン図5-23)にあたり、副乳はこの線上にみられる。(解剖学講義))

Areolar tubercles(乳輪結節;乳輪隆起;モントゴメリー腺)Tubercula areolae にゅうりんけっせつ;にゅうりんりゅうき;もんとごめりーせんMontgomery's tubercles Feneis: 472_27 (472_25)

[A16_0_02_014] →(モントゴメリー結節とも呼ばれる。女性乳輪にみられる赤く隆起した乳輪腺で妊娠授乳期に顕著になる。Montgomery, william F.(1797-1859) アイルランドの産科医)

Suspensory ligaments of breast; Suspensory retinaculum of breast(乳房提靱帯)Ligamenta suspensoria mammaria; Retinacula cutis mammae にゅうぼうていじんたいCooper's ligaments (breast) Feneis: 472_28 (472_26)

[A16_0_02_015] →(乳房の皮膚と大胸筋・前鋸筋との間に張る結合組織性中隔。クーパー靱帯ともいう。その弾力性によって乳房の形状保持に働くが、経産婦では弾性を失うため、乳房は下垂する。また、乳癌の浸潤などで瘢痕化や短絡をおこすと皮膚に陥凹を生じることがある(えくぼ症状dimpling sign)。(イラスト解剖学))

Subcutaneous tissue; Hypodermis(皮下組織)Tela subcutanea ひかそしき Feneis: 472_29 (472_27)

[A16_0_03_001] →(皮下組織は皮膚と深部の構造物の間の空間を埋める疎性結合組織で、一般に脂肪細胞に富む。脂肪細胞は膠原線維によって大小の集団にまとめられ、真皮と深部の構造物の間を埋めており、皮下脂肪組織とよばれる。皮下脂肪組織は栄養分および水分の貯蔵所であるだけでなく、機械的な外力に対する緩衝装置であり、外界の温度変化が体内に波及することを防ぐ断熱装置でもあり、さらに体に丸みを与え体系を調えるなどの意義をもつ。皮下脂肪組織はいたるところおで皮膚支帯に貫かれている。皮下脂肪はまた大小の血管および神経によって貫かれている。皮膚に分布する動脈は皮下組織と網状層の移行部に置いて、皮膚の表面に平行に広がる動脈網を作り、これから真皮と皮下組織の両方向に枝を出す。真皮に入った動脈は乳頭層の基底部で再び動脈網をつくり、ここから乳頭に毛細血管を送る。乳頭内の毛細血管のループにはじまる静脈はまず乳頭の基底部の静脈に注ぎ、網状層内でさらに静脈網を形成した後、網状層と皮下組織の移行部に広がる静脈叢に注ぐ。網状債には動静脈吻合であるホイヤー・ボロッサー器官organ of Hyer-Grosserがみられる。皮下組織の表層部には圧覚の感覚装置と考えられ照り右ファーター・パチニ小体が散在する。)

Fatty layer of subcutaneous tissue; Superficial fatty layer of subcutaneous tissue; Subcutaneous adipose tissue(脂肪層(皮下組織の);皮下脂肪組織)Panniculus adiposus (Telae subcutaneae) しぼうそう(ひかそしきの);ひかしぼうそしき Feneis: 472_30 (472_28)

[A16_0_03_002] →(皮下によく発達した脂肪層。 (Feneis))

Loose connective tissue; Deepest layer of subcutaneous tissue(疎性結合組織;最深層(皮下組織の))Texus connectivus laxus telae subcutaneae そせいけつごうそしき;さいしんそう(ひかそしきの) Feneis: 472_34 (472_32)

[A16_0_03_006] →(疎性結合組織は、膠原線維がまばに不規則な走り方をする結合組織。ほとんど身体全般にわたり広く分布している。すなわち皮下組織、粘膜固有層などの上皮直下、腺の分泌部の周囲、筋組織内、腸管膜、大網などの結合組織、いろいろな器官の間質、血管、リンパ管、神経の周囲などに広くみられる。線維はあまり数多くなく、細胞性成分の方が比較的多い、膠原線維のほか弾性線維、およびあまり数は多くないが細網線維もみられる。線維の方向は不定である。無形の細胞間物質は柔らかく、ゼリー様である。細胞性要素としては、線維芽細胞、大食細胞(組織球)、肥満細胞、形質細胞などのほか、脂肪細胞がみられる。脂肪細胞が非常に大量認められる場合には、脂肪組織といわれる。疎性結合組織の主な機能は、組織同士をゆるく結合すること、身体各部に脈管、神経を導くこと、器官の間質を構成し、その器官をある程度支持すること、代謝産物、ホルモン、栄養などのいろいろな物質の通路(例えば毛細血管と上皮細胞間の結合組織)などである。)

最終更新日: 19/10/13

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