1018


- 1018_00【Eyelids眼瞼;マブタ Palpebrae】
→(眼瞼(まぶた)は、上・下2枚よりなる眼の蓋で、眼球前面を外傷からまもる。上眼瞼が下眼瞼より大きく上眼瞼挙筋をもつので可動範囲が大きい。眼瞼が開いているとき、その空間を眼瞼裂といい、まじりと目頭の上・下移行部を外・内側眼瞼交連という。外側眼瞼交連はより鋭角的で、眼球結膜面に密接している。内側眼瞼交連は鼻方へ数mm引き寄せられている。そのために生じる上・下眼瞼と眼球結膜との間の三角錐形の空間を皮膚の小島(涙丘)が満たし、その周辺を涙湖という。前眼瞼縁に睫毛がある。①眼瞼の構造は眼瞼前面から後面へ向かい皮膚、皮下組織、眼輪筋、瞼板、瞼板腺、結膜などの構造があり、上眼瞼には、上眼瞼挙筋腱が加わる。皮膚は全身中ここが最も薄く、後眼瞼縁で眼瞼結膜に移行する。皮下組織は脂肪が少ない。上の前眼瞼縁に平行な上眼瞼溝が著しい物を二重まぶた、溝がないかあっても上野皮膚に覆い隠されている物を一重まぶたという。めがしらの上眼瞼の皮膚が内側交連を越えてつくるヒダを蒙古ヒダ(瞼鼻ヒダ)といい、日本人などモンゴロイド人種の特徴とされる。②瞼板は楕円形の密線維結合組織板。上瞼板は、幅25mm、縦径10mm、下瞼板は幅25mm、縦径5mm。前縁は厚く直線的、後縁は薄く眼窩中隔を介して眼窩骨膜につづく。③瞼板筋は上眼瞼挙筋腱から上瞼板筋(Muller筋)が分かれ、瞼板上縁に付着する。下結膜円蓋下結合組織または下直筋から弱い下瞼板筋が分かれ、ともに交感神経支配の平滑筋で眼瞼裂の開き具合に関係すると考えられる。眼瞼を固く閉じるときには、眼輪筋の働きも重要である。瞬目(マバタキ)blinking, nictitationは眼輪筋の眼瞼部の収縮によって起こる運動で、1分間に約10~25回みられる。)
- 1018_00a【Lacrimal gland涙腺 Glandula lacrimalis】 Gland located above the lateral angle of eye. It is divided by the tendon of the levator palpebrae into an upper and lower portion. Its excretory ducts open laterally in the superior conjunctival fornix.
→(涙腺は眼窩上壁の前外側部に存在する扁平な小指頭大の線で、6~12本の導管によって上結膜円蓋の外側部に開口する。腺は漿液性の管状胞腺で、分泌部は比較的広い腺腔を囲む1層の円柱上皮よりなる。導線ははじめ単層立方上皮、太くなると2層の円柱上皮よりなる。涙腺には線条導管や介在導管はみられない。)
Meibomian glands
- 1018_01Meibomian glands【Tarsal glands瞼板腺;マイボーム腺 Glandulae tarsales】 Elongated string of holocrine glands in the superior and inferior tarsi with openings near the posterior palpebral margin. They produce a sebaceous discharge that lubricates the margins of the eyelids.
→(マイボーム腺ともよばれる。上・下瞼板に埋没している皮脂腺で、結膜の間に、上眼瞼に30~40、下眼瞼に20~30個の多房状腺があり、後眼瞼縁に導管口が開く。特殊化した皮脂腺で眼瞼縁を保護し、結膜面をうるおす涙の露出を防ぐ。眼瞼を反転すると平行に並んだ真珠首飾り状の腺体を結膜を透かしてみることができる。瞼板腺の急性化膿性炎症を内麦粒腫、慢性化膿性炎症を霰粒種という。ドイツの解剖学者Heinrich Meibom (1638-1700)によって、1666年に記載された。が、第一発見者は、Casserius (1609)であるという。)
- 1018_02【Skin皮膚 Cutis】 Collective term for the epidermis and dermis.
→(皮膚は身体を保護しておおうもので、非常に異なる2成分、すなわち表層をなす表皮と深層をなす真皮よりなる。重層上皮である表皮を作る個々の上皮細胞は表皮の表面に近づくにつれて形が扁平となる。手掌や足底の皮膚では表皮の厚さが極端に大となっており、機械的刺激への抵抗力を増している。手掌と足底以外の部位では、例えば上腕や前腕の屈側面皮膚に見られるように表皮は薄い。真皮を作るのは密性結合組織であり、そこに血管、リンパ管、神経などが含まれている。真皮の厚さも体部位により異なるが、概して人体前面の真皮は人体後面の真皮よりも薄い。また、女性における真皮は男性における真皮よりも薄い。皮膚の真皮はその下の浅筋膜(皮下組織ともよばれる)を介して深筋膜、あるいは骨に連結する。真皮内では膠原線維がたがいに平行な配列を示すことが多い。外科的に皮膚を切開する場合に、膠原線維の走行に沿うように創を作れば膠原線維損傷が最も少なくすむことから、瘢痕の最も少ない創傷治癒が得られる。もしも膠原線維の走行を横断するような皮膚切開を行えば、多数の膠原線維の損傷を来たし、それに代わる再生線維群の存在のために大きな瘢痕が生じることになる。真皮内の膠原線維の走行の向きは、皮膚の裂隙線(ランゲルの線Langer's lines)の方向と一致するが、これは四肢では縦方向に、また体幹では横方向に走る傾向を示す。皮膚が可動関節を被うところではその一定部位に皮膚のヒダ(またはシワ)形成が見られる。皮膚のヒダあるいは皺の部位では皮膚は薄くなり、かつ真皮と皮下構造物との間での膠原線維性結合の強度が強まっている。皮膚に付属する機関として爪、毛包、皮脂腺、汗腺などをあげることができる。 [臨床]皮膚の裂隙線の方向についての知識は外科医が皮膚切開する場合のガイドとなり、手術後の瘢痕を最小にするために役立つ。特に女性の患者で手術創を通常は衣服で被われないような部分に作る場合に、このことは重要な意味をもつ。セールスマンでさえも場合によって彼の顔に大きな瘢痕が残ることで、彼の仕事を失うかも知れないのである。爪部、毛包、皮脂腺は黄色ブドウ球菌のような病原体が侵入しやすい場所である。爪部の炎症は爪周囲炎paronychiaとよばれ、毛包および皮脂腺の炎症はいわゆる「おできboil」の原因となる。ようcarbuncleというのは、ブドウ球菌感染による浅筋膜の炎症であるが項部にしばしば発生して、通常1個の毛包または毛包の1群の感染の状態から始まるものである。皮脂嚢胞sebaceous cystは皮脂腺導管の開口部が閉鎖されるために起こるが、この状態は頭毛をくしけずるときに生じた頭皮の損傷、あるいは皮脂腺の感染による。したがって皮脂嚢胞は頭皮にしばしばみられる。ショック状態にある患者の皮膚は蒼白で鳥肌状を呈するが、これは交感神経系の過剰な活動により皮膚の細動脈の狭窄ならびに立毛筋の収縮を来しているためである。皮膚の熱傷の際にはその深さが治療法とその予後を決める要素となる。熱傷が皮膚深層にまで達していないときは、傷面はやがて毛包、皮脂腺、汗腺をなす上皮細胞や傷周囲の表皮細胞の増殖により被われて治癒する。しかし汗腺の腺体よりも深い部位までの熱傷のときには傷周囲の表皮細胞からの、おしか上皮の被覆は得られず、治癒は著しく遅くなることともに、線維組織による傷面の収縮がかなりの強さで起こる。深い熱傷を治癒を早め、かつ収縮の起こるのを防ぐためには皮膚移植が必要となる。皮膚移植法は浅層皮膚移植と全層皮膚移植との2種に大別される。前者は表皮の大部分(真皮乳頭尖部をも含めて)を切り取って移植するもので、切り取られた残りの皮膚部位には真皮乳頭周囲の表皮細胞群が毛包細胞、汗腺細胞とともに残留するために、これらが切り取られた皮膚部分の修復にあずかることになる。全層皮膚移植の場合は表皮と真皮全層を移植するために、移植後に新しい血管循環路が早く成立することが移植成功のために必要となる。また、皮膚全層が切り取られた部位には通常さらに他の部位からの浅層皮膚片が移植される。状況によっては全層皮膚移植は有茎切除皮膚片を用いて行われる。すなわち、その際には弁状の全層皮膚がその基部を経由する血流を受けたままの状態で必要部位に植え込まれる。そして、移植された有茎皮膚片への新しい血流が確立したのちに、はじめて茎部切断を行う。)
- 1018_03【Subcutaneous tissue; Hypodermis皮下組織 Tela subcutanea】
→(皮下組織は皮膚と深部の構造物の間の空間を埋める疎性結合組織で、一般に脂肪細胞に富む。脂肪細胞は膠原線維によって大小の集団にまとめられ、真皮と深部の構造物の間を埋めており、皮下脂肪組織とよばれる。皮下脂肪組織は栄養分および水分の貯蔵所であるだけでなく、機械的な外力に対する緩衝装置であり、外界の温度変化が体内に波及することを防ぐ断熱装置でもあり、さらに体に丸みを与え体系を調えるなどの意義をもつ。皮下脂肪組織はいたるところおで皮膚支帯に貫かれている。皮下脂肪はまた大小の血管および神経によって貫かれている。皮膚に分布する動脈は皮下組織と網状層の移行部に置いて、皮膚の表面に平行に広がる動脈網を作り、これから真皮と皮下組織の両方向に枝を出す。真皮に入った動脈は乳頭層の基底部で再び動脈網をつくり、ここから乳頭に毛細血管を送る。乳頭内の毛細血管のループにはじまる静脈はまず乳頭の基底部の静脈に注ぎ、網状層内でさらに静脈網を形成した後、網状層と皮下組織の移行部に広がる静脈叢に注ぐ。網状債には動静脈吻合であるホイヤー・ボロッサー器官organ of Hyer-Grosserがみられる。皮下組織の表層部には圧覚の感覚装置と考えられ照り右ファーター・パチニ小体が散在する。)
- 1018_04【Superior conjunctival fornix上結膜円蓋 Fornix conjunctivae superior】 Reflection of bulbar conjunctiva onto the palpebral conjunctiva located high up behind the superior eyelid.
→(眼球結膜が上眼瞼の上後方で、眼瞼結膜へと折り変えるところ。(Feneis))
- 1018_05【Lacrimal papilla涙乳頭 Papilla lacrimalis】 Single small, medial, conical elevation on each eye at the inner margin of the upper and lower eyelids on top of which the lacrimal punctum sits.
→(上および下眼瞼の内縁の内側にある小さな円錐状の高まり。尖端に涙点がある。(Feneis))
- 1018_06【Lacrimal punctum涙点 Punctum lacrimale; Punctum lacrimale inferius et superius】 Punctate beginning of the lacrimal drainage system situated on the lacrimal papilla.
→(涙点は上および下眼瞼縁の内側交連の近くにある涙管の細く丸い涙排出系の始まりの開口部。)
- 1018_07【Orbicularis oculi muscle; Orbicular muscle of eye眼輪筋 Musculus orbicularis oculi】 Ringlike sphincter muscle around the eye consisting of various parts. It acts to close the eyelids and support the flow of tears into the lacrimal sac and nose. I: Facial nerve.
→(眼輪筋の外側部にある(外側)眼瞼縫線は筋の後面と内側部のほかは不明瞭である。外眼角と頬骨を結ぶ外側眼瞼靱帯とは別物で、両者は内側部でゆるく結合するだけであるが、この縫線と靱帯はしばしば混同されている。外側部では眼輪筋と骨との結合がないので、眼を強く閉じると筋とともに皮膚が外眼角に引かれて目じりにヒダができるのである。なお、眼裂を開くのは主に上眼挙筋(眼筋)が行ない、大きく開くときは同時に前頭筋によって眉が上がることが多い。下眼瞼は弾力によって元に戻ると思われるが、その動きは小さい。まばたきのとき涙が吸い込まれることは、涙がこぼれそうになると無意識にまばたきを行うことからも判る。その機構として眼を閉じるとき眼輪筋の涙嚢部が涙嚢の壁を引いて広げるという節が有名である。しかし、一般に涙嚢部といわれる筋(Horner筋)が涙嚢と関係のないことは以前から記載があり(Eisler)涙の排出機構にも諸説があった。長嶋1954, 1955は涙道の圧をしらべ、瞼を開くときに涙小管腔が陰圧になって涙が吸い込まれ、瞼を閉じるとき涙小管は陽圧に涙嚢は陰圧になって涙は涙嚢に送られ、さらに瞼を開くとき涙嚢は陽圧となって鼻涙管に排出されるとした。その後の研究も合わせると、Horner筋は瞼閉じるとき涙小管を屈曲・圧迫するもので、これとは別に涙嚢を包む筋膜(涙嚢間膜)から起こるごく小さい筋束(Jones 1957)があって涙嚢を広げるという機構が有力である。このポンプ作用の主力はHoener筋と涙小管にあり、そのほか毛細管現象による吸引、重力による鼻腔への流下なども助けるという。なお、いわゆるHorner筋は涙小管を囲んで眼瞼縁に向かうが、Jonesの筋束は外輪筋眼瞼部の周辺部に合するもので、後者は従来見落とされていたが、または、涙嚢部と区別だれていなかったと思われる。)
- 1018_08【Superior eyelid; Upper eyelid上眼瞼;ウワマブタ Palpebra superior】 Larger, upper eyelid.
→()
- 1018_09【Excretory ducts of lacrimal gland排出管(涙腺の) Ductuli excretorii (Glandulae lacrimalis)】 Between 6 and 14 excretory ducts of the lacrimal gland that open into the superior conjunctival fornix.
→(涙腺の排出管は6~14本ある排出管。上結膜円蓋へ開く。)
- 1018_10【Orbital part of lacrimal gland眼窩部(涙腺の);上涙腺 Pars orbitalis (Glandulae lacrimalis); Glandula lacrimalis superior】 Larger portion of the lacrimal gland situated above the tendon of the levator palpebrae.
→(涙腺は二つの部分からなり、比較的小さい下の部分(涙腺の眼瞼部)が、上眼瞼挙筋の腱膜よりも表層にあり、大きい上の部分(涙腺の眼窩部)はこの上眼瞼挙筋の腱膜の裏側(下層)に存在する。)
- 1018_11【Palpebral part of lacrimal gland眼瞼部(涙腺の);下涙腺 Pars palpebralis (Glandulae lacrimalis); Glandula lacrimalis inferior】 Smaller portion of the lacrimal gland situated below the tendon of the levator palpebrae.
→(上眼瞼挙筋の腱の下にある小さい部分。(Feneis))
- 1018_12【Lateral angle of eye外眼角;メジリ Angulus oculi lateralis; Angulus oculi temporalis】 Sharp lateral angle of the eye that simultaneously forms the lateral end of the palpebral fissure.
→(眼裂の外側端でもある。(Feneis))
- 1018_13【Inferior eyelid; Lower eyelid下眼瞼;シタマブタ Palpebra inferior】 Smaller, lower eyelid.
→()
- 1018_14【Anterior palpebral margin前眼瞼縁 Limbus anterior palpebrae】 Margin of the eyelids facing the outer skin of the eyelid.
→(前眼瞼縁は眼瞼皮膚に対する眼瞼縁。)
- 1018_15【Posterior palpebral margin後眼瞼縁 Limbus posterior palpebrae】 Inner margin of the eyelids facing the conjunctiva.
→(結膜に対する眼瞼縁。(Feneis))