705


- 705_00【Rectum直腸 Rectum; Intestinum rectum】 Tenia-free 15 cm long segment extending between the sigmoid colon and anus.
→(直腸は消化管の末端部でS状結腸につづく大腸の一部である。結腸から直腸への移行はゆるやかで、仙骨中央部あたりがほぼ両者の境界となる。直腸は腸間膜を欠き、直腸ヒモを示さない部分である。直腸の下端は、骨盤隔膜を貫く寸前までで、それ以下は肛門管である。肛門管の直上部にあたる直腸窩部はふくらみ、ここを直腸膨大部という。膨大部上方には横走するヒダが2~3本認められ、直腸横ヒダといい、最も恒常的なものは右壁にあって、コールラウシュのヒダという。直腸ははじめ仙骨の曲がりに沿って前方に凹の間借りを示し、これを仙骨曲といい、下端近くでは前方に凸の曲がりを示し、これを会陰曲という。直腸壁の平滑筋の筋層のうち、重筋層と一部の輪筋層は周辺の臓器へとのび、直腸尾骨筋、直腸膀胱筋、直腸尿道筋などとよばれる筋束をなす。直腸が内容をいれて拡張すると、壁の伸展刺激は求心性神経線維によって仙髄に伝えられ、反射的に内容の排出、すなわち排便が起こる。このような排便中枢の中枢は仙髄(S2~4)にあり、肛門脊髄中枢anospinal centerといわれる。排便defecationのさいには、交感神経が抑制されるとともに、副交感神経の興奮が高まって、大腸の蠕動・収縮がおこり、内肛門括約筋は弛緩し、さらに陰部神経を介して外肛門括約筋も随意的に緩められる。そのほかに、腹壁の筋・横隔膜・骨盤隔膜を作る肛門挙筋の収縮によって腹圧が高められ排便を助ける。)
- 705_01【Mucous membrane of rectum粘膜(直腸の) Tunica mucosa (Rectum)】
→()
Houston's valve (middle of three); Kohlrausch's fold (middle of three)
- 705_02Houston's valve (middle of three); Kohlrausch's fold (middle of three)【Transverse folds of rectum直腸横ヒダ Plicae transversae recti】 Lateral transverse folds that are usually about 1-2 cm thick consisting of mucosa, submucosa, and the circular layer of the muscular coat. The middle fold (Kohlrausch's fold) is the largest and most constant, palpable on the right side of the rectum 6-8 cm above the anus. A thickened circular layer of muscle forms its base. The other two folds project into the rectum from the left.
→(ヒューストン弁ともよばれる。直腸内に複数みられ、ヒューストン襞ともいう。直腸横ヒダは通常3本の、側壁に横走するヒダ。その中間の最大のものは肛門の上方約6cmのところに右壁からでており(コールラウシュ(Kohlraush)ヒダ)、他のものは左壁からでている。アイルランドの内科医John Houston (1802-1845)により、1830年に報告された。『コールラウシュ襞』:ヒューストン弁群の中央にあり、とくに著明なヒダをさす。ドイツの医師Otto Ludwing Bernard Kohlraush (1811-1854)の名を冠する。)
- 705_03【Muscular layer of rectum筋層(直腸の) Tunica muscularis recti】 Muscular wall of the rectum.
→(直腸の筋層は内輪筋層は、移行部付近で最も肥厚し、内肛門括約筋を形成して終わっている。外縦筋層は、徐々に、肛門挙筋(縦走する骨格筋)に置き換えられていき、やがて結合組織中に終わる。また、内肛門括約筋の外側には、輪走する横紋筋があり、これを外肛門括約筋とよぶ。)
- 705_04【Circular muscle layer of rectum輪筋層;輪層(直腸の) Stratum circulare tunicae muscularis recti】 Inner layer of circular muscle cells which in the rectum do not form semilunar folds.
→(直腸の輪筋層は内側にある輪走筋層。ここは半月ヒダは形成されない。)
- 705_05【Internal rectal venous plexus内直腸静脈叢;内痔静脈叢 Plexus venosus rectalis interna; Plexus haemorrhoidalis internus】
→()
- 705_06【Longitudinal muscle layer of rectum縦筋層;縦層(直腸の) Stratum longitudinale tunicae muscularis recti】 Layer of longitudinal muscle cells that are evenly distributed over the entire circumference of the rectum.
→(直腸の縦筋層は全周に一様に分布する縦走筋層。)
- 705_07【Internal anal sphincter muscle; Internal sphincter of anus内肛門括約筋 Musculus sphincter ani internus】 Thickened ring of muscle about 1-2 cm high in the circular muscular layer around the anus.
→(高さ1~2 cmの、輪走する強い肛門輪筋。(Feneis))
- 705_08【External anal sphincter muscle外肛門括約筋 Musculus sphincter ani externus】 Muscle with transversely striated fibers.
→(外肛門括約筋は内肛門括約筋の衿のように張り付いている。外口門括約筋のほぼ矢状面に位置する筋束が腸間終端を両側から閉鎖する。この筋束は後方では尾骨から張る靱帯(肛門尾骨靱帯)に付着し、前方では会陰中心に付いている。)
- 705_09【Pararectal nodes; Pararectal lymph nodes; Anorectal nodes直腸傍リンパ節;肛門直腸リンパ節 Nodi lymphoidei pararectales; Nodi lymphoidei anorectales】 Lymph nodes located lateral to the rectum, lying directly on its muscles. They drain it and part of the vagina.
→(直腸の筋層上にある。腟の一部と直腸を支配。 (Feneis))
- 705_10【Anal canal肛門管;直腸肛門部 Canalis analis; Pars analis recti】 Terminal segment of the intestinal canal, beginning at the anorectal junction.
→(肛門管は直腸の下端部で、直腸が骨盤角膜を貫いて肛門に開くまでをいう。長さ約3cm。直腸膨大部と肛門管との境界は骨盤底で、ここでは骨盤隔膜(肛門挙筋の恥骨直腸筋)で囲まれている。恥骨直腸筋は直腸をループ状に囲むので、この筋によって直腸は前方にひっぱられ、前方に凸の屈曲(会陰曲)は強められる。肛門管は上・中・下の3部に分けられる。①上部は粘膜で被われる粘膜帯mucosal zoneともいう。粘膜には6~10条の長さ約1cmの縦走ヒダ、すなわち肛門柱がみられる。このため上部を肛門柱帯columnar zoneともいう。中部は肛門弁の下方で、上部(粘膜部)と下部(皮膚部)との間の移行部である。長さ1~1.5cmである。表面は部分的に円柱上皮と重層扁平上皮とで被われる。粘膜下に静脈叢が発達するので、中部は生体で青白色にみえる。下部は皮膚の性状をもち、皮膚帯cutaneous zoneといわれる。すなわち、メラニン色素に富む重層扁平上皮で被われ、感染もみられる。汗腺には大汗腺(アポクリン汗腺)の一種である肛門周囲線circumanal glandsもある。中部と下部との境界にヒルトンの白線がみられる。白線は直腸の筋層の外縦走から連なる結合組織線維が付着し、比較的血管に乏しいので、白っぽくみえる。明瞭でないことも多い。肛門管の発生は肛門域は浅く陥凹して外胚葉で被覆された肛門窩をつくる。その底に肛門膜があり、これが破れると内胚性上皮におおわれた後腸末端部と肛門窩がつながる。こうして形成された後腸末端部から肛門にかけての範囲を肛門管という。この部を取り囲む間葉から肛門括約筋が発生する。排便のさいに肛門管は拡張し、肛門洞にある粘液によって内面は滑らかになるので、内容を排出しやすくなる。)
Morgagni, Columns of
- 705_11Morgagni, Columns of【Anal columns; Rectal columns肛門柱;直腸柱 Columnae anales; Columnae rectales】 Six to ten longitudinal folds containing arteries, venous plexuses, and smooth longitudinal muscle cells. Predominantly columnar epithelium.
→(肛門柱は直腸の筋層の内縦走筋と粘膜下組織に発達する静脈巣とによって生じる隆起である。隣り合う肛門柱の間は凹み、肛門洞といわれる。)
- 705_12【Anal sinuses肛門洞;肛門陰窩;直腸洞 Sinus anales; Sinus rectales】 Niches between the anal columns.
→(肛門陰窩anal cryptともよばれる。肛門柱間の凹みを肛門洞という。肛門洞には管状の肛門腺glandula analis, anal glandsがある。)
- 705_13【Anal transition zone; Hemorrhoidal zone肛門移行帯;痔帯;肛門輪;痔輪 Zona transitionalis analis; Zona hemorrhoidalis; Anulus haemorrhoidalis】 Histological term that describes transition zone epithelium between the anal columns and anocutaneous line. It is sometimes also used to refer only to the epithelium of the anal pecten.
→(肛門管中部は肛門括約筋で囲まれるので、輪状にやや高まる。このような性状から肛門管中部は移行帯あるいは痔帯(痔輪)ともいわれる。)
- 705_14【Skin皮膚 Cutis】 Collective term for the epidermis and dermis.
→(皮膚は身体を保護しておおうもので、非常に異なる2成分、すなわち表層をなす表皮と深層をなす真皮よりなる。重層上皮である表皮を作る個々の上皮細胞は表皮の表面に近づくにつれて形が扁平となる。手掌や足底の皮膚では表皮の厚さが極端に大となっており、機械的刺激への抵抗力を増している。手掌と足底以外の部位では、例えば上腕や前腕の屈側面皮膚に見られるように表皮は薄い。真皮を作るのは密性結合組織であり、そこに血管、リンパ管、神経などが含まれている。真皮の厚さも体部位により異なるが、概して人体前面の真皮は人体後面の真皮よりも薄い。また、女性における真皮は男性における真皮よりも薄い。皮膚の真皮はその下の浅筋膜(皮下組織ともよばれる)を介して深筋膜、あるいは骨に連結する。真皮内では膠原線維がたがいに平行な配列を示すことが多い。外科的に皮膚を切開する場合に、膠原線維の走行に沿うように創を作れば膠原線維損傷が最も少なくすむことから、瘢痕の最も少ない創傷治癒が得られる。もしも膠原線維の走行を横断するような皮膚切開を行えば、多数の膠原線維の損傷を来たし、それに代わる再生線維群の存在のために大きな瘢痕が生じることになる。真皮内の膠原線維の走行の向きは、皮膚の裂隙線(ランゲルの線Langer's lines)の方向と一致するが、これは四肢では縦方向に、また体幹では横方向に走る傾向を示す。皮膚が可動関節を被うところではその一定部位に皮膚のヒダ(またはシワ)形成が見られる。皮膚のヒダあるいは皺の部位では皮膚は薄くなり、かつ真皮と皮下構造物との間での膠原線維性結合の強度が強まっている。皮膚に付属する機関として爪、毛包、皮脂腺、汗腺などをあげることができる。 [臨床]皮膚の裂隙線の方向についての知識は外科医が皮膚切開する場合のガイドとなり、手術後の瘢痕を最小にするために役立つ。特に女性の患者で手術創を通常は衣服で被われないような部分に作る場合に、このことは重要な意味をもつ。セールスマンでさえも場合によって彼の顔に大きな瘢痕が残ることで、彼の仕事を失うかも知れないのである。爪部、毛包、皮脂腺は黄色ブドウ球菌のような病原体が侵入しやすい場所である。爪部の炎症は爪周囲炎paronychiaとよばれ、毛包および皮脂腺の炎症はいわゆる「おできboil」の原因となる。ようcarbuncleというのは、ブドウ球菌感染による浅筋膜の炎症であるが項部にしばしば発生して、通常1個の毛包または毛包の1群の感染の状態から始まるものである。皮脂嚢胞sebaceous cystは皮脂腺導管の開口部が閉鎖されるために起こるが、この状態は頭毛をくしけずるときに生じた頭皮の損傷、あるいは皮脂腺の感染による。したがって皮脂嚢胞は頭皮にしばしばみられる。ショック状態にある患者の皮膚は蒼白で鳥肌状を呈するが、これは交感神経系の過剰な活動により皮膚の細動脈の狭窄ならびに立毛筋の収縮を来しているためである。皮膚の熱傷の際にはその深さが治療法とその予後を決める要素となる。熱傷が皮膚深層にまで達していないときは、傷面はやがて毛包、皮脂腺、汗腺をなす上皮細胞や傷周囲の表皮細胞の増殖により被われて治癒する。しかし汗腺の腺体よりも深い部位までの熱傷のときには傷周囲の表皮細胞からの、おしか上皮の被覆は得られず、治癒は著しく遅くなることともに、線維組織による傷面の収縮がかなりの強さで起こる。深い熱傷を治癒を早め、かつ収縮の起こるのを防ぐためには皮膚移植が必要となる。皮膚移植法は浅層皮膚移植と全層皮膚移植との2種に大別される。前者は表皮の大部分(真皮乳頭尖部をも含めて)を切り取って移植するもので、切り取られた残りの皮膚部位には真皮乳頭周囲の表皮細胞群が毛包細胞、汗腺細胞とともに残留するために、これらが切り取られた皮膚部分の修復にあずかることになる。全層皮膚移植の場合は表皮と真皮全層を移植するために、移植後に新しい血管循環路が早く成立することが移植成功のために必要となる。また、皮膚全層が切り取られた部位には通常さらに他の部位からの浅層皮膚片が移植される。状況によっては全層皮膚移植は有茎切除皮膚片を用いて行われる。すなわち、その際には弁状の全層皮膚がその基部を経由する血流を受けたままの状態で必要部位に植え込まれる。そして、移植された有茎皮膚片への新しい血流が確立したのちに、はじめて茎部切断を行う。)