806


- 806_00【Perineal muscles会陰筋 Musculi perinei】 These can be divided into the following two groups.
→(骨盤下口を閉ざし肛門および尿生殖洞をを開閉する筋群であり、肛門筋群(1~3)と尿生殖筋群(4~8)とに分けられる。(1)肛門挙筋:小骨盤の内壁からおこり主として肛門につく。閉鎖筋膜からおこる部分は肛門挙筋腱弓をなす。起始と停止の鎖により、腸骨尾骨筋、恥骨尾骨筋、恥骨直腸筋に区分され、また前tなんぶは尿生殖洞にも付着して前立腺挙筋または恥骨腟筋とよばれる。(2)尾骨筋:肛門挙筋の後方で仙棘靱帯の内面にある小筋。(3)外肛門括約筋:肛門挙筋より下方で肛門管を取り囲む輪状の横紋筋である。皮下部、浅部および深部の3部に分けられているが、その境界は不明確である。筋後端と尾骨尖端を結ぶ靱帯を肛門尾骨靱帯という。(4)深会陰横筋:尿生殖三角をふさぐ三角形の筋で、尿道球腺または大膳提瞻をいれている。(5)尿道括約筋:男では尿道隔膜部、女では尿道と腟とをかこむ輪状の筋。(6)浅会陰横筋:深会陰横筋の浅部でその後縁を横走する小筋。(7)坐骨海綿体筋:坐骨枝からおこり、陰茎(陰核)海綿体を包む。(8)球海綿体筋:尿道球または腟前庭を包む筋で、外肛門括約筋とは会陰腱中心を介して連なる。(1)と(2)は陰部神経叢の枝により、また(3)~(8)は陰部神経によりそれぞれ支配される。)
Retzius' band
- 806_01Retzius' band【Fundiform ligament of clitoris♀陰核ワナ靱帯;陰核係蹄靱帯(♀) Ligamentum fundiforme clitoridis♀】
→(浅腹筋膜の正中線下端の部は陰茎または陰核海綿体の根元に2条の靱帯を送る。その一つは陰茎または陰核ワナ靱帯で、恥骨結合の上方で白線の前面から起こって、弾性線維を多く含み、下端は2脚に分かれ陰茎または陰核海綿体をすすんだあと、陰嚢または大陰唇の皮下に放散する。ほかの一つは陰茎または陰核提靱帯で、前者の下方で恥骨結合の前面から起こり、陰茎または陰核海綿体の基部の背面につく。いずれも女性では著しく弱い。)
Hunter's ligament
- 806_02Hunter's ligament【Round ligament of uterus子宮円索;子宮鼡径索 Ligamentum teres uteri; Chorda uteroinguinalis (teres)】 Ligament derived from the caudal gonadal fold during development. It passes from the tubal angle through the parametrium and inguinal canal into the labia majora.
→(卵管開口部の前下方、左右両側で子宮に付着している筋線維を含む線維帯。鼡径管から大陰唇に至る。男性の精索に相当し、これも鼡径管を通り同じような腓腹をもつが相同ではなく精巣導帯と相同である。スコットランドの解剖学者William Hunter (1718-1783)によって記載された。WilliamはJohn Hunterの兄で、彼の業績はグラスゴーのハンター博物館に残されている。)
- 806_03【Body of clitoris陰核体 Corpus clitoridis】 Union of the two crura of clitoris below the pubic symphysis.
→(陰核体は左右1対の陰核海綿体が結合性の陰核筋膜で包まれてできる。陰核は陰茎と異なって尿道で貫かれていないので、陰核対には尿道海綿体もない。陰核対には恥骨結合から起こる陰核提靱帯がつく。)
- 806_04【Prepuce of clitoris陰核包皮 Preputium clitoridis】 Union of the two labia minora above the glans of clitoris.
→(小陰唇は陰核の部分で前後2葉に分かれ、前葉は陰核包皮として陰核亀頭を包む。)
- 806_05【Frenulum of clitoris陰核小帯 Frenulum clitoridis】 Small fold that gives attachment to the two labia minora below the glans of clitoris.
→(小陰唇から陰核の下面へと走る二重のヒダ。(Feneis))
- 806_06【Labium minus; Lesser lip小陰唇 Labium minus pudendi】 Cutaneous fold that is devoid of fat and hair and contains sebaceous glands. It forms the boundary of the vestibule of vagina.
→(小陰唇は大陰唇の内側にある2つの皮膚とヒダである。皮膚は毛や脂肪を欠き平滑で、粘膜に似ている。陰毛はないが豊富な皮脂腺をもつ扁平なヒダ。成人では小陰唇は大陰唇で被われている。小児では、大陰唇の発達が悪いので、小陰唇の大部分は陰核とともに露出する。後方で左右が連絡する部分に陰唇小体というヒダをつくる。)
- 806_07【Vestibule of vagina腟前庭 Vestibulum vaginae】 It is enclosed mainly by the labia minora. Site of opening of the female urethra, vagina, and greater and lesser vestibular glands.
→(腟前庭は、胎生期の尿生殖洞の名残である。左右の小陰唇の間にある裂隙で、ここに尿道・腟および大前庭腺の導管が開いている。尿生殖洞は尿直腸中隔の発達により直腸から分離した後の排泄腔の腹側部。男女両性の膀胱下部、男性の尿道前立腺部、女性胃の尿道と腟前庭を生じる。)
- 806_08【Labium majus; Greater lip大陰唇 Labium majus pudendi】 Longitudinal prominence overlying a pad of fat. It is covered with hair on its external surfaces. It extends from the mons pubis to the perineum and borders with the pudendal cleft.
→(大陰唇は男性の陰嚢に相当する。その皮膚の正常も陰嚢に似て色が浅黒く、陰毛も生えているけれども、陰嚢と違って左右のものが正中で癒合せずに、分かれている。内面は粘膜様の皮膚の隆起。この左右の大陰唇の間の裂け目を陰裂という。左右の大陰唇と、その間の陰裂を総称して陰門という。)
- 806_09【Ischial tuberosity坐骨結節 Tuber ischiadicum】 Bony prominence at the inferior border of the lesser sciatic notch.
→(小坐骨切痕より下方の坐骨体は、その後面に大きな楕円形の坐骨結節を作っている。坐骨結節の表面は大腿後面の筋群に起始を与えるために非常に粗になっている。また坐骨結節は腰掛けるときに椅子の面に接して、体重を支える場所である。)
- 806_10【Gluteus maximus muscle大殿筋;大臀筋 Musculus gluteus maximus】 o: Ilium, behind the posterior gluteal line, sacrum, coccyx, thoracolumbar fascia, sacrotuberous ligament, i: Fascia lata, iliotibial tract, gluteal tuberosity, lateral femoral intermuscular septum, linea aspera. Extension, lateral rotation, abduction, and adduction at the hip joint. I: Inferior gluteal nerve.
→(大臀筋は大腿を伸展する主力筋で、とくに歩行の際重要である。中臀筋や小臀筋(小さな臀部の筋群)と同様、大きな臀部の筋である大臀筋も発生的には伸筋群である。仙骨と尾骨の辺縁、後臀筋線より後方の腸骨稜、胸腰筋膜、そして仙結節靭帯などから起始する。その厚い筋線維束は斜め下方へ走り、広い停止腱となる。その停止域は近位では大腿筋膜、腸脛靱帯に放散する。また、臀筋粗面よりも遠位で外側筋間中隔より上の粗線外側唇にも停止する。坐骨包坐骨結節と大臀筋下面の筋膜との間にある。慢性的刺激の結果として(機織工結節、抗夫結節)、臀部に敷物なしに座り仕事をする人々では同包に炎症が起こり、後大腿皮神経を圧迫する。大腿筋の停止腱は転子包によって大転子と離される。臀筋粗面では、大腿筋はふつう他の臀筋との間にあるいくつかの筋間包の上を滑走する。立位では大臀筋下部が坐骨結節をおおう。大腿を屈すると大臀筋下部は頭側に移動する。このため座位では坐骨結節は皮下脂肪上に位置し、皮膚を通して容易に触れる。臀溝はほぼ水平に走り、大臀筋収縮時には深くなるが、大臀筋の下縁をあらわしているわけではなく、同筋走行に対して鋭角的に交わる。)
- 806_11【External anal sphincter muscle外肛門括約筋 Musculus sphincter ani externus】 Transversely striated outer sphincter muscle of the anus. It consists of the following three parts. I: Pudendal nerve.
→(外肛門括約筋は肛門挙筋の表層にあり、肛門を囲む横紋筋。内肛門括約筋の衿のように張り付いている。外口門括約筋のほぼ矢状面に位置する筋束が腸間終端を両側から閉鎖する。この筋束は後方では尾骨から張る靱帯(肛門尾骨靱帯)に付着し、前方では会陰中心に付いている。)
- 806_12【Rectus sheath腹直筋鞘 Vagina musculi recti abdominis】 Investing layer of the rectus abdominis that is formed by the aponeuroses of the flat abdominal muscles.
→(腹直筋鞘は腹直筋の腱膜が癒合して腹直筋を包んだものである。外腹斜筋の腱膜は腹直筋鞘の前葉に入り、内腹斜筋の腱膜の下半は前後2葉に分かれて腹直筋鞘の前後両葉に入るが、下部では前葉だけに入る。腹直筋の腱膜は同じくこれより上では腹直筋鞘の後葉にに入り、これより下ではすべて腹直筋鞘の前葉に至る。したがって下部では腹直筋鞘の後葉は欠け、腹直筋の後面は直接に横筋筋膜(これもここでは弱いで被われる。この両部の境界線を弓状線という。その位置は臍輪から4~6cm下方であるが個人差が大きい。)
- 806_13【Superficial inguinal ring浅鼡径輪;皮下鼡径輪 Anulus inguinalis superficialis; Anulus inguinalis subcutaneus】 Outer opening of the inguinal canal.
→(鼡径管の長さは約4~5cmで、その外口すなわち浅鼡径輪(外または皮下鼡径輪)は鼡径靱帯内側端の上に、内攻すなわち深鼡径輪(内または腹膜下鼡径輪)は鼡径陣地あ中央部の後上にある。)
- 806_14【Fascia lata大腿筋膜 Fascia lata】 Fascia enclosing the thigh muscles. It is attached anteriorly to the iliac crest and inguinal ligament, splitting into two layers medial to the sartorius muscle and deep to the inguinal ligament. It forms the C-shaped lateral margin of the saphenous opening and covers the femoral vessels with a perforated sievelike sheet. Its deep portion lies posterior to the femoral vessels. Both layers unite with the pectineal fascia. Laterally it thickens to form a tendinous band. It is continuous with the gluteal fascia to posterosuperior and with the deep fascia of the leg to distal.
→(大腿筋膜は大腿筋全体の表面を包み、上方は鼡径靱帯、腸骨稜、仙骨外側縁および恥骨弓についてから浅腹筋膜および浅背筋膜に連なり、下方は下腿筋膜につづく。よく発達して厚いが、とくに外側部は腱膜様に著しく厚くなって腸脛靱帯となっている。)
- 806_15【Ischiocavernosus muscle坐骨海綿体筋 Musculus ischiocavernosus】 Male: Muscle extending from the ramus of ischium over the cms of the penis to the tunica albuginea. Smaller bundles of muscle fibers run over the penis below the pubic symphysis to the contralateral side.
→(坐骨海綿体筋は男性より女性のほうが発達が弱い。この筋は坐骨枝より起こり陰核脚を被い、その腱性線維は外下表面に付く。その筋は陰核海綿体を圧し、血液を押し付け流出を妨げ、それにより陰核の勃起成立を助ける。)
- 806_16【Bulbospongiosus muscle球海綿体筋 Musculus bulbospongiosus; Musculus bulbocavernosus】 Male: Muscle arising from the perineal body and the inferior aspect of the corpus spongiosum of penis, passing to the perineal membrane and dorsum of penis. It is unpaired. It acts to compress the bulb of penis and transport urethral contents further. ABC Female: Muscle that originates on the ramus of ischium, attaching to and covering the cms of clitoris. It assists in filling the cavernous bodies with blood. I: Pudendal nerve.
→(男性では球海綿体は尿道球の周辺を不体の筋として回るが、会陰の中心腱と尿道海綿体下側の正中縫線から起こる。球海綿体は前方へ放散し、海綿体のまわり下尿生殖隔膜筋膜や尿道海綿体へ向かい、また前筋線維をもって陰茎背部へ付く。この筋は随意的または反射的に尿道球を圧迫し、それにより尿道の内容を駆出する。女性では球海綿体筋は男性のように全長で1つの筋にはなっていない。2つの筋が会陰の中心腱より起こるが、各筋はそれぞれ引き続き前庭球と大前庭腺を被っている。その筋束は前庭球や陰核海綿体に停止し、陰核体後部で反対側からの筋線維と絡み合っている。この筋は大前庭腺を反射的に空にし、血液を前庭球の後方拡大部から送り出し、またオルガスムの際外腟口を収縮させる。)
- 806_17【Urogenital triangle; Urogenital region尿生殖部;尿生殖三角;尿生殖器部 Regio urogenitalis; Trigonum urogenitale】 Region around the perineum that is located anterior to an imaginary line connecting the two ischial tuberosities.
→(尿生殖三角は左右の坐骨結節をむすぶ線の前方部で泌尿器官を囲む周辺部部域。この領域の浅筋膜のうち脂肪層(キャンパー筋膜)は坐骨直腸窩内の脂肪層に接続するものであり、同時に大腿皮下の浅筋膜にも移行する。陰嚢では脂肪層が平滑筋層(肉様膜)で置き換えられている。肉様膜は寒冷刺激に応じて収縮し、陰嚢皮膚の表面積を減少させる。尿生殖三角線筋膜のうち線維層(コールス筋膜)は後方では尿生殖隔膜後縁に付着し、外側方では恥骨弓の辺縁に付着するほか、前方では前腹壁浅筋膜の線維層(スキャルパ筋膜)へと移行する。このような尿生殖三角浅筋膜の線維層は陰茎あるいは陰核の部位では管状の鞘構造をとり、また陰嚢あるいは大陰唇の部位では著明な1層をなす。浅会陰隙とは、下方を会陰線筋膜の線維層で境され、上方を尿生殖隔膜で境されるような隙間のことである。この隙間は後方では隙間の上壁と下壁がたがいに癒着する形で閉じられ、外側方でも隙間の上壁と下壁が恥骨弓辺縁部に付着する形で閉じられている。しかし浅会陰隙はその前方部で前腹壁浅筋膜と前腹壁筋の間の隙間と自由に交通する。)
- 806_18【Inferior fascia of urogenital diaphragm; Perineal membrane会陰膜;下尿生殖隔膜筋膜;外尿生殖隔膜筋膜 Membrana perinei; Fascia diaphragmatis urogenitalis inferior; Fascia diaphragmatis urogenitalis externa】
→(深会陰横筋の前下方にある筋膜。)
Thiele's muscle
- 806_19Thiele's muscle【Superficial transverse perineal muscle浅会陰横筋 Musculus transversus perinei superficialis】 Inconstant expansion of the deep transverse perineal muscle that extends from the ischial tuberosity to the perineal body. I: Pudendal nerve.
→(浅会陰横筋は横走する浅在性の薄い筋である。この筋は坐骨結節や坐骨枝の境界域の起始部ではしばしば坐骨海綿体筋と交通し、そこから分枝する。その線維は会陰体へ連なり、外肛門括約筋と球海綿体筋に放散する。女性ではその筋は多少退化し、わずかに筋膜の被膜のみ同定できる程度である。)
- 806_20【Ischioanal fossa; Ischiorectal fossa坐骨肛門窩;坐骨直腸窩 Fossa ischioanalis; Fossa ischiorectalis】 Wedged-shaped space that is open posteriorly between the inferior fascia of pelvic diaphragm and the obturator fascia.
→(坐骨直腸窩は肛門挙筋と内閉鎖筋の間の隙間つまり肛門管の両側に位置している大きなクサビ形の空隙であり、そのくさびの底部は表層にあり、前下方は尿生殖隔膜で限界される。会陰の皮膚で被われる。坐骨直腸窩の内側壁と外側壁が接合する部位がくさびの尖縁である。陰部神経および内陰部動脈、内陰部静脈が坐骨直腸窩の外側壁に作られた筋膜性の管(陰部神経管pudendal canal)の中を走行する。坐骨直腸窩には脂肪が密につめられているが、この脂肪層は肛門管の支持に役立つとともに、排便時に肛門管が拡張するのを可能にしている。)
- 806_21【Levator ani muscle肛門挙筋 Musculus levator ani】 Principle muscle of the pelvic diaphragm. It is derived from the abdominal wall musculature and permeated by smooth-muscle cells. I: Sacral plexus, S2-S5. It consists of the following parts.
→(肛門挙筋の丈夫な前部(恥骨尾骨筋)は分界線直下の恥骨の内面から起こり、薄い後部(腸骨尾骨筋)は腸骨から起こる。その起始腱は内閉鎖筋筋膜に接して移行し、閉鎖筋膜から発する腱束を受ける。これらの線維の起始部では腱性の係留物(肛門挙筋腱弓)により強化されている。左右両側で恥骨尾骨筋の内側線維束は挙筋脚を形成している。それらの線維束は背方と尾方、また直腸の前では外側を通り、それぞれ会陰の中心腱へ放散する薄い前直腸線維束や前立腺挙筋として前立腺筋膜(あるいは恥骨腟筋として腟壁)へと分かれる。それより鼻側にある肛門挙筋の線維束は恥骨直腸筋として直腸の背側を取り囲み、反対側の線維と共にループを形成する。恥骨尾骨筋の外側束は尾骨と仙骨の背側に広がる。腸骨尾骨筋の筋線維は尾骨と仙骨に付き、また肛門と尾骨の間では強靱な線維束である肛門尾骨靱帯に付いている。)
- 806_22【Anus肛門 Anus】 Inferior opening of the anal canal, encircled by the subcutaneous and superficial parts of external anal sphincter muscle.
→(肛門は消化下管の末端が外部へ開く部分である。外肛門括約筋の表在部と皮膚部に囲まれた肛門管の開口。 実質的な機能を持つ肛門は、むしろ肛門管と考えてよい。)
- 806_23【Coccygeal foveola尾骨窩 Foveola coccygea】 Depression overlying the coccyx that is produced by the retinaculum caudale.
→(尾骨尖部近くにある皮膚の陥凹。皮膚への胚神経管の付着部であることを示している。)