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- 482_01【Flexor carpi radialis muscle橈側手根屈筋 Musculus flexor carpi radialis】 o: Medial epicondyle of humerus, antebrachial fascia, i: Base of second metacarpal. Flexes and pronates elbow joint. Flexion and radial abduction of wrist joint. I: Median nerve.
→(橈側手根屈筋は上腕骨の内側上顆で浅層の屈筋群の共通起始部と、また同様に前腕屈筋および隣接する筋とを分けている結合組織中隔から起こる。筋は第2(しばしば第3)中手骨底に付く。羽状筋である橈側手根屈筋の長い腱は斜め下方に走り、橈骨の遠位1/3で橈骨動静脈の屈側に進み、屈筋支帯のしたのそれぞれ独自の管を通る。)
- 482_02【Abductor pollicis longus muscle長母指外転筋 Musculus abductor pollicis longus】 o: Posterior surface of radius, ulna, and interosseous membrane. i: Base of first metacarpal. Radial abduction and dorsiflexion of the metacarpophalangeal joint of the thumb. I: Radial nerve.
→(長母指外転筋と短母指伸筋は1つの発生的、機能的単位を形成している:筋腹はしばしば形態学的に1つとなる。これらの筋は橈骨の背側面(2/4と3/4の間)と前腕骨間膜から起こる。羽状筋である長母指外転筋は回外筋の起始部下方からも起こり、また尺骨にも起始部をもつ。長母指外転筋は第1中手骨底に、短母指伸筋は母指基節骨底に付く。短母指伸筋の腱線維は長母指伸筋の腱終末に融合し、弱い指背腱膜を形成する。2つの筋は長および短橈側手根伸筋の腱と急角度で交叉し、これらの腱は橈骨の遠位端の背側の橈骨溝に進み、第1腱区画(手首の屈曲軸の掌側)を通過する。)
- 482_03【Transverse carpal ligament (flexor retinaculum)横手根靱帯(屈筋支帯) Ligamentum carpi transversum】
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- 482_04【Abductor pollicis brevis muscle短母指外転筋 Musculus abductor pollicis brevis】 o: Scaphoid, flexor retinaculum. i: Thumb, proximal phalanx, radial sesamoid bone, dorsal aponeurosis. Abducts and flexes the thumb. I: Median nerve.
→(短母指外転筋は表層にあり、母指対立筋をほぼ完全におおっている。筋は屈筋支帯と舟状骨結節から起こり、母指基節関節包に埋め込まれている橈側種子骨、基節骨底の外側縁ならびに指背腱膜に付く。正中神経(C8とTh1)から支配を受ける。)
- 482_05【Flexor pollicis brevis muscle短母指屈筋(手の) Musculus flexor pollicis brevis】 Same attachment site as abductor pollicis brevis. Flexion, abduction, adduction, and opposition at the metacarpophalangeal joint of the thumb.
→(短母指屈筋は短母指外転筋の内側に位置する。その起始部は長母指屈筋の腱で浅頭と深頭に分けられ、浅頭は屈筋支帯に、深頭は橈側遠位手根骨から起こる(2頭は発生的に異なる起源である)。短母指屈筋の終末腱は短母指外転筋の腱と融合し、短母指外転筋と並んで橈側種子骨、母指の基節骨ならびに指背腱膜に付く。浅頭は正中神経に、深頭は尺骨神経から支配を受ける(C8とTh1)。)
- 482_06【Adductor pollicis muscle母指内転筋(手の) Musculus adductor pollicis】 It attaches to the thumb, ulnar sesamoid bone, proximal phalanx, and dorsal aponeurosis. Adduction and opposition. I: Ulnar nerve.
→(母指内転筋は手掌腱膜、長指屈筋ならびに第1と第2虫様筋で被われ、2頭の起始を持つ。斜頭は手根骨、手根骨から放散する靱帯線維束および第2中手骨底から起こる。横頭は第3中手骨の掌側面から起始し、手掌の深部を横切る。両頭の総終末腱は近位中手骨指節関節の尺側種子骨と母指基節骨底に付く。この筋は内転筋で、母指を対立位にしたり屈曲したりするときに協力的に働く。尺骨神経の深枝(C8とTh1)から支配を受ける。)
- 482_07【Lumbrical muscles of hand虫様筋[手の] Musculi lumbricales manus】 o: Tendons of flexor digitorum profundus. i: Doral aponeuroses of second through fifth fingers. Flexion of metacarpophalangeal joint, extension of interphalangeal joints. I: Ulnar nerve.
→(第4つの虫様筋は、各々深指屈筋の腱の橈側から起こり、そのため深指屈筋の収縮中緊張する。虫様筋は深横中手靱帯の掌側を遠位に向かい、したがって指の対応する基節関節の屈曲軸の掌側を走る。それらの腱は橈側から指背腱膜に入る。腱停止部の近位線維は基節骨の背側面をほぼ横断するのに対し、遠位線維は中節骨と末節骨の背側面を斜走する。)
- 482_08【Flexor pollicis longus muscle長母指屈筋(手の) Musculus flexor pollicis longus】 o: Anterior surface of the radius, distal to the radial tuberosity. i: Base of distal phalanx of thumb. Flexes hand and phalanges of thumb. Radial abduction. I: Median nerve.
→(長母指屈筋は系統発生学的には独立した深指屈筋の一部である。その起始部は橈骨粗面から方形回内筋の上縁までの橈骨の前面、および骨間膜にまで広がっている。その腱は手根間を通り、短母指屈筋の2頭の間に入り込み、母指の末節骨底に付く。)
- 482_09【Flexor carpi ulnaris muscle尺側手根屈筋 Musculus flexor carpi ulnaris】 Muscle that attaches on the pisiform, via the pisohamate ligament on the hamate, and via the pisometacarpal ligament on the fifth metacarpal. Flexes and abducts the hand toward the ulna.
→(尺側手根屈筋は屈筋群の尺側外縁を形成している。上腕頭は上腕骨の内側上顆と内側上腕筋間中隔から起こる。尺骨頭は肘頭、尺骨後縁の近位2/3と前腕筋膜から起こる。2頭は腱性の帯で結合しており、この下を尺骨神経が前腕の屈側に向かう。筋の腱は(尺骨神経、尺骨動・静脈の)尺側前腕路の内側の境をなす。この腱は手根管を通らず、豆状骨に停止した後、豆鈎靱帯と豆中手靱帯で有鈎骨と第5中手骨に至る。筋の腱中に種子骨として豆状骨の停止部があるため、回転軸からの距離が増し、尺側手根屈筋は手掌を曲げるのに有利なトルク(回転力)を得られる。)
- 482_10【Palmar carpal ligament掌側手根靱帯 Ligamentum carpalis palmaris; Ligamentum carpalis volare】
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- 482_11【Pisiform bone豆状骨 Os pisiforme】 Bone located on the palmar side of the triquetrum. It is actually a sesamoid bone embedded in the tendon of the flexor carpi ulnaris muscle.
→(豆状骨は尺側手根屈筋腱のなかの半球状の種子骨である。三角骨に向く側に関節面がある。)
- 482_12【Abductor digiti minimi muscle of hand小指外転筋(手の) Musculus abductor digiti minimi manus; Musculus abductor digiti quinti】 o:Calcaneus and plantar aponeurosis. i: Lateral surface of proximal phalanx of fifth toe. Plantar flexion and abduction of fifth toe. Forms the lateral margin of foot. I: Lateral plantar nerve.
→(小指外転筋は豆状骨、豆鈎靱帯および屈筋支帯から起きる。筋は小指の基節骨底の尺側縁に付き、指背腱膜へも放散する。この筋の一部は小指の伸筋腱膜へも入り込む。機能的にはこの筋は純粋な外転筋である尺骨神経の深枝(C8とTh1)から支配を受ける。)
- 482_13【Flexor digiti minimi brevis muscle of hand短小指屈筋(手の) Musculus flexor digiti minimi brevis manus】 o: Hook of hamate, flexor retinaculum. i: Palmar surface of the base of the proximal phalanx. Flexion at the metacarpophalangeal joint. I: Ulnar nerve.
→(短小指屈筋は通常明確な境界がなく、橈側に付いており、屈筋支帯と有鈎骨鈎から起こる。停止部で小指外転筋と融合する。この筋は小指の中手指節関節の屈筋である。尺骨神経の深枝(C8とTh1)から支配を受ける。)
- 482_14【Opponens digiti minimi muscle of hand小指対立筋(手の) Musculus opponens digiti minimi manus】 o:Hook of hamate, flexor retinaculum. i: Fifth metacarpal. Opposition of the little finger. I: Ulnar nerve.
→(小指対立筋は小指外転筋と短小指屈筋の下に位置する。筋は有鈎骨鈎と屈筋支帯から第5中手骨の尺側縁に至る。この筋は小指を対立位にもたらす。尺骨神経の深枝(C8とTh1)から支配を受ける。)
- 482_15【Flexor digitorum superficialis muscle浅指屈筋 Musculus flexor digitorum superficialis】 Muscle that attaches on the middle phalanx of the second through fifth fingers. Flexes the wrist and proximal interphalangeal joints. 1: Median nerve.
→(浅指屈筋は2頭筋で、前述した屈筋よりやや深部に位置するので、これらの筋は浅指屈筋を部分的におおっている。上腕尺骨頭は上腕骨の内側上顆の浅屈筋群の起始部と鈎状突起から起きる。橈骨頭は円回内筋の停止部下方の橈骨の前面の細長い部分から起こる。その終末腱は第2~第4中節骨に付く。浅指屈筋は屈筋支帯近くで広がり、2個の浅筋膜(中指と薬指へ)と2個の伸筋腹(示指と小指へ)に不完全に分かれる。それらの腱は手根管を通り、基節骨の上で2分し、その間を深指屈筋の腱が末節腱に通り抜ける(そこで、浅指屈筋を“被貫通屈筋”、深指屈筋を“貫通屈筋”と呼ぶ。腱は第2~第5中節骨の両側縁に付く。浅指屈筋の深層腱線維は最初に(近位部で)分かれる。骨に直背側部分を形成する。この管(鞘)の壁側は長軸方向に走る浅指屈筋の分岐した腱で作られている。不完全で短い手掌部分は腱の近位浅層の不分岐部でつくられる。)
- 482_16【Skin皮膚 Cutis】 Collective term for the epidermis and dermis.
→(皮膚は身体を保護しておおうもので、非常に異なる2成分、すなわち表層をなす表皮と深層をなす真皮よりなる。重層上皮である表皮を作る個々の上皮細胞は表皮の表面に近づくにつれて形が扁平となる。手掌や足底の皮膚では表皮の厚さが極端に大となっており、機械的刺激への抵抗力を増している。手掌と足底以外の部位では、例えば上腕や前腕の屈側面皮膚に見られるように表皮は薄い。真皮を作るのは密性結合組織であり、そこに血管、リンパ管、神経などが含まれている。真皮の厚さも体部位により異なるが、概して人体前面の真皮は人体後面の真皮よりも薄い。また、女性における真皮は男性における真皮よりも薄い。皮膚の真皮はその下の浅筋膜(皮下組織ともよばれる)を介して深筋膜、あるいは骨に連結する。真皮内では膠原線維がたがいに平行な配列を示すことが多い。外科的に皮膚を切開する場合に、膠原線維の走行に沿うように創を作れば膠原線維損傷が最も少なくすむことから、瘢痕の最も少ない創傷治癒が得られる。もしも膠原線維の走行を横断するような皮膚切開を行えば、多数の膠原線維の損傷を来たし、それに代わる再生線維群の存在のために大きな瘢痕が生じることになる。真皮内の膠原線維の走行の向きは、皮膚の裂隙線(ランゲルの線Langer's lines)の方向と一致するが、これは四肢では縦方向に、また体幹では横方向に走る傾向を示す。皮膚が可動関節を被うところではその一定部位に皮膚のヒダ(またはシワ)形成が見られる。皮膚のヒダあるいは皺の部位では皮膚は薄くなり、かつ真皮と皮下構造物との間での膠原線維性結合の強度が強まっている。皮膚に付属する機関として爪、毛包、皮脂腺、汗腺などをあげることができる。 [臨床]皮膚の裂隙線の方向についての知識は外科医が皮膚切開する場合のガイドとなり、手術後の瘢痕を最小にするために役立つ。特に女性の患者で手術創を通常は衣服で被われないような部分に作る場合に、このことは重要な意味をもつ。セールスマンでさえも場合によって彼の顔に大きな瘢痕が残ることで、彼の仕事を失うかも知れないのである。爪部、毛包、皮脂腺は黄色ブドウ球菌のような病原体が侵入しやすい場所である。爪部の炎症は爪周囲炎paronychiaとよばれ、毛包および皮脂腺の炎症はいわゆる「おできboil」の原因となる。ようcarbuncleというのは、ブドウ球菌感染による浅筋膜の炎症であるが項部にしばしば発生して、通常1個の毛包または毛包の1群の感染の状態から始まるものである。皮脂嚢胞sebaceous cystは皮脂腺導管の開口部が閉鎖されるために起こるが、この状態は頭毛をくしけずるときに生じた頭皮の損傷、あるいは皮脂腺の感染による。したがって皮脂嚢胞は頭皮にしばしばみられる。ショック状態にある患者の皮膚は蒼白で鳥肌状を呈するが、これは交感神経系の過剰な活動により皮膚の細動脈の狭窄ならびに立毛筋の収縮を来しているためである。皮膚の熱傷の際にはその深さが治療法とその予後を決める要素となる。熱傷が皮膚深層にまで達していないときは、傷面はやがて毛包、皮脂腺、汗腺をなす上皮細胞や傷周囲の表皮細胞の増殖により被われて治癒する。しかし汗腺の腺体よりも深い部位までの熱傷のときには傷周囲の表皮細胞からの、おしか上皮の被覆は得られず、治癒は著しく遅くなることともに、線維組織による傷面の収縮がかなりの強さで起こる。深い熱傷を治癒を早め、かつ収縮の起こるのを防ぐためには皮膚移植が必要となる。皮膚移植法は浅層皮膚移植と全層皮膚移植との2種に大別される。前者は表皮の大部分(真皮乳頭尖部をも含めて)を切り取って移植するもので、切り取られた残りの皮膚部位には真皮乳頭周囲の表皮細胞群が毛包細胞、汗腺細胞とともに残留するために、これらが切り取られた皮膚部分の修復にあずかることになる。全層皮膚移植の場合は表皮と真皮全層を移植するために、移植後に新しい血管循環路が早く成立することが移植成功のために必要となる。また、皮膚全層が切り取られた部位には通常さらに他の部位からの浅層皮膚片が移植される。状況によっては全層皮膚移植は有茎切除皮膚片を用いて行われる。すなわち、その際には弁状の全層皮膚がその基部を経由する血流を受けたままの状態で必要部位に植え込まれる。そして、移植された有茎皮膚片への新しい血流が確立したのちに、はじめて茎部切断を行う。)
- 482_17【Fibrous sheaths of digits of hand指の線維鞘;手指の線維鞘 Vaginae fibrosae digitorum manus】 Fibrous synovial tunnel for the digital flexor tendons of the fingers.
→(手指の線維鞘は半管状の靱帯で、指骨の両側に付き骨とともにトンネル構造を作り、そのなかに屈筋腱をいれる。指骨関節部では横走して鱗状部となり、関節と関節の中間の骨部では線維が交叉して十字部となる。)
- 482_18【Anular part of fibrous sheaths of digits of hand; Anular ligament of hand; Annular part of fibrous sheath輪状部[手指の線維鞘の] Pars anularis vaginae fibrosae digitorium manus; Fibrae anulares】 Very dense circular fibers of the fibrous sheaths between the joints.
→(指節間関節部には横走する線維、その近位部には斜走ないし交叉する線維がやや目立ち、これをそれぞれ輪状部および十字部という。)
- 482_19【Cruciform part of fibrous sheath; Cruciform ligament of hand十字部[手指の線維鞘の];十字靱帯(手指の) Pars cruciformis vaginae fibrosae digitorum manus; Ligamenta cruciformia digitorum manus】 Fibers crossing over and reinforcing the joints.
→(指節間関節部には横走する線維、その近位部には斜走ないし交叉する線維がやや目立ち、これをそれぞれ輪状部および十字部という。)