811


- 811_00【Breast乳房;チブサ Mamma】 Female breast consisting of glandular tissue, connective tissue fibers, and fat.
→(乳房は女性の乳分泌器官。乳腺とその周囲および腺小葉内に侵入する疎線維性結合組織と脂肪組織からなる。乳房は女性ではとくに発達し半球状を呈し、胸部前面で第2~6肋骨の高さにわたり、その3分の2部は大胸筋の上に、3分の1は前鋸筋の上にある。表面中央に乳頭がある。男性では痕跡的である。)
- 811_01【Nipple乳頭;チクビ Papilla mammaria】 Structure containing the openings of the lactiferous duct and abundant smoothmuscle tissue.
→(乳頭は乳房の先端にあるいぼ状突起で、表面に乳管の開口がある。一般にほぼ第4肋間で、鎖骨中央線上にあるが、その位置は個体でかなり相違する。男性では、乳房は一般に発達悪く、小さな乳頭と乳輪をみるにすぎない。女性では、思春期以後、乳房は発達するが、その大きさ・形状にはかなり個人差がみられる。このような際は乳腺の発達のほうかに、主として脂肪組織の量による。)
- 811_02【Lactiferous sinus乳管洞 Sinus lactiferi】 Spindle-shaped dilatations of the lactiferous ducts with a diameter of 1-2 mm (up to 8 mm during lactation) just before they open at the tip of the nipple.
→(乳管が乳頭にはいる直前の、乳管の紡錘状の膨大部。径5~7mmあり、乳頭へ開口する直前部にある。母乳保育ではこの部分が拡張して乳汁を貯え、新生児の吸啜で圧出される。催乳反射が持続する間、連続した吸啜を可能にする。)
- 811_03【Skin皮膚 Cutis】 Collective term for the epidermis and dermis.
→(皮膚は身体を保護しておおうもので、非常に異なる2成分、すなわち表層をなす表皮と深層をなす真皮よりなる。重層上皮である表皮を作る個々の上皮細胞は表皮の表面に近づくにつれて形が扁平となる。手掌や足底の皮膚では表皮の厚さが極端に大となっており、機械的刺激への抵抗力を増している。手掌と足底以外の部位では、例えば上腕や前腕の屈側面皮膚に見られるように表皮は薄い。真皮を作るのは密性結合組織であり、そこに血管、リンパ管、神経などが含まれている。真皮の厚さも体部位により異なるが、概して人体前面の真皮は人体後面の真皮よりも薄い。また、女性における真皮は男性における真皮よりも薄い。皮膚の真皮はその下の浅筋膜(皮下組織ともよばれる)を介して深筋膜、あるいは骨に連結する。真皮内では膠原線維がたがいに平行な配列を示すことが多い。外科的に皮膚を切開する場合に、膠原線維の走行に沿うように創を作れば膠原線維損傷が最も少なくすむことから、瘢痕の最も少ない創傷治癒が得られる。もしも膠原線維の走行を横断するような皮膚切開を行えば、多数の膠原線維の損傷を来たし、それに代わる再生線維群の存在のために大きな瘢痕が生じることになる。真皮内の膠原線維の走行の向きは、皮膚の裂隙線(ランゲルの線Langer's lines)の方向と一致するが、これは四肢では縦方向に、また体幹では横方向に走る傾向を示す。皮膚が可動関節を被うところではその一定部位に皮膚のヒダ(またはシワ)形成が見られる。皮膚のヒダあるいは皺の部位では皮膚は薄くなり、かつ真皮と皮下構造物との間での膠原線維性結合の強度が強まっている。皮膚に付属する機関として爪、毛包、皮脂腺、汗腺などをあげることができる。 [臨床]皮膚の裂隙線の方向についての知識は外科医が皮膚切開する場合のガイドとなり、手術後の瘢痕を最小にするために役立つ。特に女性の患者で手術創を通常は衣服で被われないような部分に作る場合に、このことは重要な意味をもつ。セールスマンでさえも場合によって彼の顔に大きな瘢痕が残ることで、彼の仕事を失うかも知れないのである。爪部、毛包、皮脂腺は黄色ブドウ球菌のような病原体が侵入しやすい場所である。爪部の炎症は爪周囲炎paronychiaとよばれ、毛包および皮脂腺の炎症はいわゆる「おできboil」の原因となる。ようcarbuncleというのは、ブドウ球菌感染による浅筋膜の炎症であるが項部にしばしば発生して、通常1個の毛包または毛包の1群の感染の状態から始まるものである。皮脂嚢胞sebaceous cystは皮脂腺導管の開口部が閉鎖されるために起こるが、この状態は頭毛をくしけずるときに生じた頭皮の損傷、あるいは皮脂腺の感染による。したがって皮脂嚢胞は頭皮にしばしばみられる。ショック状態にある患者の皮膚は蒼白で鳥肌状を呈するが、これは交感神経系の過剰な活動により皮膚の細動脈の狭窄ならびに立毛筋の収縮を来しているためである。皮膚の熱傷の際にはその深さが治療法とその予後を決める要素となる。熱傷が皮膚深層にまで達していないときは、傷面はやがて毛包、皮脂腺、汗腺をなす上皮細胞や傷周囲の表皮細胞の増殖により被われて治癒する。しかし汗腺の腺体よりも深い部位までの熱傷のときには傷周囲の表皮細胞からの、おしか上皮の被覆は得られず、治癒は著しく遅くなることともに、線維組織による傷面の収縮がかなりの強さで起こる。深い熱傷を治癒を早め、かつ収縮の起こるのを防ぐためには皮膚移植が必要となる。皮膚移植法は浅層皮膚移植と全層皮膚移植との2種に大別される。前者は表皮の大部分(真皮乳頭尖部をも含めて)を切り取って移植するもので、切り取られた残りの皮膚部位には真皮乳頭周囲の表皮細胞群が毛包細胞、汗腺細胞とともに残留するために、これらが切り取られた皮膚部分の修復にあずかることになる。全層皮膚移植の場合は表皮と真皮全層を移植するために、移植後に新しい血管循環路が早く成立することが移植成功のために必要となる。また、皮膚全層が切り取られた部位には通常さらに他の部位からの浅層皮膚片が移植される。状況によっては全層皮膚移植は有茎切除皮膚片を用いて行われる。すなわち、その際には弁状の全層皮膚がその基部を経由する血流を受けたままの状態で必要部位に植え込まれる。そして、移植された有茎皮膚片への新しい血流が確立したのちに、はじめて茎部切断を行う。)
- 811_04【Fatty layer of subcutaneous tissue; Superficial fatty layer of subcutaneous tissue; Subcutaneous adipose tissue脂肪層(皮下組織の);皮下脂肪組織 Panniculus adiposus (Telae subcutaneae)】
→(皮下によく発達した脂肪層。 (Feneis))
- 811_05【Lobes of mammary gland乳腺葉 Lobi glandula mammariae】 Fifteen to twenty conical lobes of the mammary gland.
→()
- 811_06【Lobules of mammary gland乳腺小葉 Lobuli glandulae mammariae】 Lobules of each lobe that are divided by connective tissue.
→()
- 811_07【Thoraco-epigastric veins胸腹壁静脈 Venae thoracoepigastricae】 Subcutaneous veins draining the lateral wall of the trunk. They are collateral veins between the superior and inferior venae cavae.
→(胸腹壁静脈は腹壁から胸壁にかけて外側部の皮下を上行する皮静脈。下方は大腿静脈の枝の浅腹壁静脈、または浅腸骨回旋静脈につづいており、上方では外側胸静脈に合した後、腋窩静脈にそそぐ。下大静脈または門脈の閉塞時に、下半身より静脈血が心臓にそそぐための側副路として重要である。)
- 811_08【Lactiferous ducts乳管 Ductus lactiferi】 Fifteen to twenty ducts draining the lobes of the mammary gland. They have a diameter of 1.7-2.3 mm and open at the nipple.
→(乳管は乳腺葉の乳分泌を行う15本または20本の導管。直径1.7~2.3mm。乳頭へ開口する。)
Cooper's ligaments (breast)
- 811_09Cooper's ligaments (breast)【Suspensory ligaments of breast; Suspensory retinaculum of breast乳房提靱帯 Ligamenta suspensoria mammaria; Retinacula cutis mammae】 Connective-tissue bands passing from the skin of the breast to the pectoralis fascia to which they are connected via a thin layer of loose, sliding tissue.
→(乳房の皮膚と大胸筋・前鋸筋との間に張る結合組織性中隔。クーパー靱帯ともいう。その弾力性によって乳房の形状保持に働くが、経産婦では弾性を失うため、乳房は下垂する。また、乳癌の浸潤などで瘢痕化や短絡をおこすと皮膚に陥凹を生じることがある(えくぼ症状dimpling sign)。(イラスト解剖学))
- 811_10【Pectoral fascia; Pectoralis major fascia胸筋筋膜;胸筋膜;大胸筋筋膜;浅胸筋膜 Fascia pectoralis; Fascia pectoralis major; Fascia pectoralis superficialis】 Fascial sheet that encloses the pectoralis major, extending to the deltoid muscle and axillary fascia.
→(胸筋筋膜は大胸筋をおおう筋膜で、体壁筋の表面をおおう筋膜の一部分である。したがって、上方は鎖骨について頚筋膜浅葉に、内側は胸骨について対側の同名筋膜に、下方は浅腹筋膜に連続する。外側では、上方は三角筋膜に、下方は前鋸筋をおおう筋膜に、中間では腋窩筋膜に連続する。なお、大胸筋の裏面では筋膜は発達が不良である。)
- 811_11【Pectoralis major muscle大胸筋 Musculus pectoralis major】 o:Clavicle. Sternum. Second to seventh costal cartilages and rectus sheath, i: Crest of greater tubercle. Adduction and medial rotation of the arm. I: Medial and lateral pectoral nerve.
→(大胸筋は上肢の屈筋群から派生したもので、前胸壁にある大きな翼状の筋で鎖骨部、胸肋部、腹部からなる。鎖骨部は上肢帯(鎖骨)から腹側胸壁に広がって上腕骨大結節稜(遠位)に停止する。これは鎖骨の胸骨半、胸骨、および第(1)2~7肋軟骨から起こり、腹直筋鞘の前葉からも起こる。胸肋部と腹部の線維は鎖骨部の線維の下を横切り、大結節稜の近位に着き、鎖骨部は遠位に停止する。広背筋の場合のように、頭側に開き、上腕の外転と前方挙上の際に明らかとなる筋肉のスポットが生じる。上腕を垂れ下げているときは、大胸筋は四角形をしているが、上腕骨が外転されると、三角形となる。外側縁は前腋窩ヒダを形成している。後腋窩ヒダは広背筋の外側縁によってつくられている。大胸筋の鎖骨部と三角筋の間の奥には結合組織腔があり、そこを橈側皮静脈が通る。その隙間は力強い、筋肉の発達した人では非常に狭い。しかし、大胸筋の鎖骨部の発達が弱い場合は、鎖骨に向かって広がり、逆さにした三角形に似ている。その場合、鎖骨胸筋三角という名前が適当である。ここでは皮膚が窪んで鎖骨下窩を形成している。種々の形と大きさの胸骨筋が胸筋筋膜の上に発達することがある。これは肋骨縁に沿って一側または両側に広がっている(ヨーロッパ人の約5%)。もしこの筋が胸筋神経の枝で支配されていれば、これは哺乳類の皮筋の遺残と考えることができる。この筋はしばしば胸鎖乳突筋とつながっており、肋間神経の枝で支配されているかもしれない。広背筋の前縁と大胸筋の外側縁との間には、結合組織の線維(線維性腋窩弓fibrous axillary arch)が弓状に走って両筋を結んでいるが、数%の頻度でここに筋線維束(筋性腋窩弓muscular axillary arch)がみられる。筋性腋窩弓の存在は、生体でも皮膚の上から認めることが出来る。この以上筋束を最初に記載したのはRamsay(1795)であるが、Langer(1846)の広汎な研究以来、ランゲル筋Langer's muscleと呼ばれるようになった。)
- 811_12【Body of breast乳房体;乳腺体 Corpus mammae】 Glandular tissue and surrounding fatty tissue.
→()