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- 838_00【Cerebellum小脳 Cerebellum】 Part of the brain situated above the rhomboid fossa.
→(Cerebellumは、「大脳、脳」を意味するcerebrumの指小形で、「小さい脳」という意味である。Cerebrumは、「頭」を意味するギリシャ語のkararan由来する。 小脳は筋、関節などの深部組織、前庭、視覚、聴覚系などからの入力を直接あるいは間接的に受け、眼球運動を含む身体の運動調節を司る。小脳は正中部の虫部と外側部の小脳半球とに分けられる。いずれも多数の小脳溝により小脳回に細分される。この中、特定の小脳溝は深く、これにより小脳回の集合ができる。これを小脳小葉とよぶ。ヒトでは小脳は深い水平裂により上面と下面とに分けられ、虫部とそれに対応する半球に九つの小葉が区別される。系統発生的には小脳は前葉、後葉、片葉小節葉の3部分に分けられる。前葉は系統発生的に古く古小脳(Paleocerebellum)ともよばれ、脊髄小脳路、副楔状束核小脳路、オリーブ小脳路の一部、網様体小脳路などをうける。後葉は系統発生的に新しく、新小脳(Neocerebellum)とよばれる。とくに半球部は虫部より新しく、橋核、主オリーブ核などを介して大脳皮質と結合している。前葉と後葉とは第1裂により境される。片葉小節葉は原小脳(Archicerebellum)とよばれ最も古く前庭系との結合が著明である。後葉とは後外側裂で境される。後葉には虫部錐体と虫部垂との間に第2裂がある。ヒトの小脳小葉の形は他の動物のものと大きく異なりる。小脳全体は灰白質と白質とからなる。灰白質には小脳皮質と小脳核とがある。小脳皮質は小脳小葉の表面をなし遠心性軸索を出すPurkinje細胞と皮質内での結合を行う細胞とからなる。小脳核は深部にあり、室頂核、球状核、栓状核、歯状核の4核からなる。小脳皮質にはその結合から三つの縦帯が認められる。すなわち、正中部の虫部皮質、外側部の半球皮質および両者の境界部の虫部傍皮質である。虫部皮質のPurkinje細胞は室頂核に、虫部傍皮質は球状核と栓状核に、半球皮質は歯状核に投射する。小脳の中心部の白質塊は髄体とよばれ、遠心性および求心性繊維から出来ている。ここからは白質が分枝して(白質板)、小葉に分かれる。全体として樹の枝のようにみえるので、小脳活樹と名づけられている。小脳は三つの小脳脚により、延髄、橋、中脳と結合している。これは小脳の遠心路および求心路の通路となっている。 小脳の発生 development of the cerebellum:小脳は後脳の菱脳唇から発生する。後脳の菱脳唇は翼板の背外側につづく背内方に突出する高まりで、胎生2ヶ月の後半において急速に増大し、小脳板とよばれるようになる。左右の小脳板の間には菱脳蓋の頭側半分が介在するので、頭側部では左右の小脳板は相接しているが、尾側部では広く離れている。菱脳の中央部を頂点とする橋弯曲が高度になると、この部の菱脳蓋の左右方向の拡大によって、左右の小脳板の尾側部はいよいよ高度に引き離され、左右の小脳板は菱脳の長軸に直角な一直線をなすようになる。これと同時に左右の小脳板の頭側部(今では内側部)が合一するので、結局、正中部が小さくて左右両部が大きい単一の小脳原基が成立する。正中部からは小脳虫部が、左右両部からは小脳半球が形成される。 増大していく小脳原基の背側部には、やがて中部から半球に向かって走る溝が次々に出現して小脳を区画する。胎生5ヶ月のおわりには小脳虫部における10個の主な区分(小脳葉)がほぼ完成する。これらの小脳葉はそれぞれ固有の発育を行うが、その間に第2次、第3次の溝が生じて、各小脳葉を多数の小脳回に分ける。このような形態発生の結果広大な表面積を獲得した小脳の表面には小脳皮質とよばれる特別な灰白質が形成され、これに出入りする神経線維はその深部に集まって小脳白質を形成する。 小脳原基においても菱脳室に接する内側から表面に向かって胚芽層・外套層・縁帯の3層が分化する。胚芽層は神経が細胞をつくりだすが、胚芽層から発生するのは小脳核の神経細胞と小脳皮質のPurkinje細胞およびGolgi細胞である。小脳原基が3層に分化するとまもなく、外套層の表層部にやや大型の神経芽細胞が出現し、小脳板の背側面(表面)に平行に1列にならぶ。これがPurkinje細胞の幼若型である。ついで小脳板の尾側端部の胚芽層でさかんな細胞分裂がおこり、ここで生じた未分化細胞は縁帯の表層部を頭方に遊走して、小脳原位の全表面をおおう未分化細胞層を形成する。これを胎生顆粒層という。 胎生顆粒層の細胞は胚芽層における細胞分裂が終わるころから活発な分裂を開始し、神経細胞をつくりだす。この神経細胞は縁帯およびPurkinje細胞の層を貫いて、Purkinje細胞の層の下に達し、ここに新しい細胞層(内顆粒層)をつくる。胎生顆粒層からは、このほかに縁帯の中に散在する籠細胞や小皮質細胞が生ずる。必要な数の神経細胞を送り出すと胎生顆粒層における分裂はやみ、本層は速やかに消失する。一方、Purkinje細胞は縁帯の中に多数の樹状突起を伸長させる。縁帯はPurkinje細胞の樹状突起で満たされて厚くなり、核をあまり多く含まな灰白層となる。このようにして小脳の全表面は、表面から灰白層・Purkinje細胞層・内顆粒層の3層から成る小脳皮質でおおわれることになる。)
- 838_01【Central lobule of cerebellum [II and III]小脳中心小葉;中心小葉[第II・III小葉] Lobulus centralis cerebelli [II et III]】 Lobule that is continuous with the wing of the central lobule. It consists of an anterior and a posterior part.
→(小脳の中心小葉は小脳小舌と山頂の間にある小脳上虫部の部分で、Larsellの区分に従えば小葉(Ⅱ)と小葉(Ⅲ)に分けられる。)
- 838_02【Monticulus小山 Monticulus】
→(虫部上面の大部分を占める隆起部で、前方は中心小葉後溝を介して中心小葉に接し、後方は後上裂を介して虫部葉に接し、外側は半球部の四角小葉に連なる。小山はさらに前方の高所とその後方低い部分に分けられ、それぞれ山頂、山腹と呼ばれる。)
- 838_03【Culmen [IV and V]山頂[第IV・V小葉] Culmen [IV et V]】 Summit of the vermis of cerebellum,
→(山頂は小脳虫部前部の突起部分で、第1裂の上方の虫部葉。Larsellの区分に従えば小葉(Ⅳ)と小葉(Ⅴ)に分けられる。)
- 838_04【Declive [VI]山腹[第VI小葉](小脳の) Declive [VI]】 Part of the vermis sloping downward and posteriorly from the culmen.
→(小脳の山腹は小脳虫部で山頂より背側へ下る部分で、第一裂の下方の虫部葉、Larsellの区分に従えば小脳虫部の小葉(Ⅵ)に相当する。)
- 838_05【Folium of vermis [VII A]虫部葉[第VII A小葉] Folium vermis [VII A]】 Narrow, leaflike structure connecting the left and right superior semiiunar lobules.
→(虫部葉は左右の上半月小葉間をむすぶ狭い帯部。Larsellの区分に従えば小葉(Ⅶa)に相当する。)
- 838_06【Folia of cerebellum小脳回 Folia cerebelli; Gyri cerebelli】 Folds in the cerebellum that are separated by fissures.
→(小脳溝の間にある細長い高まりを小脳回という。小脳回によって、小脳の表面積は著しく増大する。小脳の重量は約130gで、脳重量の約1/10にすぎないが、表面積は大脳皮質の約3/4にあたるといわれる。)
- 838_07【Anterior cerebellar notch前小脳切痕 Incisura cerebelli anteiror】
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- 838_08【Wing of central lobule of cerebellum中心小葉翼[第II・III半球小葉](小脳の) Ala lobuli centralis】 Lateral projection of the central lobule connecting it to the cerebellar hemispheres.
→(小脳の中心小葉翼は小脳中心小葉の側方へのびだした部分。小脳半球と結合する。Larsellの区分に従えば腹側部にある小脳半球小葉(H-Ⅱ)および背側部にある小脳半球小葉(H-Ⅲ)に相当する。)
- 838_09【Quadrangular lobule (H IV-V)四角小葉(HIV-V) Lobulus quadrangularis】
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- 838_10【Anterior quadrangular lobule of cerebellum [H IV and H V]前四角小葉[第IV・V半球小葉](小脳の) Lobulus quadrangularis anterior cerebelli [H IV et H V]】 Part that is continuous laterally with the declive.
→(小脳の前四角小葉は小脳半球の上部の主たる部分で、虫部山頂に並ぶ半球部で前部と後部からなり山頂前裂と第一裂にある。Larsellの区分に従えば小脳半球小葉(H-Ⅳ)と小脳半球小葉(H-Ⅴ)に分けられる。以前は前四角小葉は単に四角小葉と呼ばれていた。)
- 838_11【Posterior quadrangular lobule of cerebrallum [H VI]; Simplex lobule後四角小葉[第VI半球小葉] Lobulus quadrangularis posterior cerebelli [H VI]】 Lobular part of the simple lobule.
→(小脳の後四角小葉はこれまで単小葉と呼ばれていた。Larsellの区分に従えば小脳半球の小葉Ⅵに相当する。)
- 838_12【Cerebellar fissure小脳裂;小脳溝 Fissurae cerebelli; Sulci cerebelli】 Deep furrows between the folds of the cerebellum that branch off into smaller Fissures deep within the furrows.
→(小脳の表面には、きわめて多数の横走する溝、すなわち小脳溝がみられる。小脳溝には、とくに深いものがあり、このような深い溝で小脳は多くの小葉に分けられる。)
- 838_13【Superior semilunar lobule of cerebellum; First crus of aniform lobule of cerebellum [H VII A]上半月小葉;係蹄状小葉第1脚[第VII A半球小葉](小脳の) Lobulus semilunaris superior cerebelli; Crus primum lobuli ansiformis cerebelli [H VII A]】 Lobule situated anterior to the horizontal fissure.
→(小脳の上半月小葉は小脳半球上面のうち、水平裂と正中傍裂との間の部分と虫部葉と虫部隆起の一部を合わせた部。係蹄小葉の第Ⅰ脚とも呼ばれる。)
- 838_14【Posterior cerebellar notch後小脳切痕 Incisura cerebelli posterior】
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