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- 878_00【Brain stem脳幹 Truncus encephali】 Collective anatomical term for the rhombencephalon and mesencephalon. The clinical definition includes the basal ganglia, diencephalon, and portions of the 【rhinencephalon】.
→(TAで脳幹は髄脳(延髄)、橋、中脳を脳幹と定義している。かつては、脳を運ぶ際に脳幹をもって運んでいた、脳幹は、脳の柄のような部分という意味で付けられた。日本の神経解剖の教科書では間脳を含める場合や間脳と大脳核を含めて脳幹と称している場合が多いので注意をようする。)
- 878_01【Vermis of cerebellum [I-X]; *Cerebellar vermis小脳虫部[第I-X小葉] Vermis cerebelli [I-X]】 Middle portion of the embryonic cerebellar plate.
→(小脳虫部は小脳のなかで系統発生学的に古い無対の部分。小脳虫部は小脳正中部の構造であるが、左右それぞれ半分が両側の前庭神経核群や橋および延髄の網様体に投射する。この投射経路には、小脳皮質前庭神経核線維(前庭神経外側核へ入るプルキンエ細胞の軸索)によるものと、室頂核(または小脳内側核)からのものとがある。小脳虫部皮質のプルキンエ浅部の軸索が室頂核(内側核)へ入るのに対して、小脳半球皮質のプルキンエ細胞の軸索は小脳中位核と歯状核(または小脳外側核)に終止する。これらの小脳核から起こる小脳の出力線維は上小脳脚を通って小脳から出ていく。小脳虫部は、吻側部で形態的に舌状の小脳小舌となって上髄帆と癒着し、虫部の下縁(虫部小節)は、左右の下髄帆の間に挿入されるように存在する。)
- 878_02【Medial longitudinal fasciculus; MLF内側縦束 Fasciculus longitudinalis medialis】 Bundle of various fiber systems that enter and leave at different levels. Its fibers interconnect the motor nuclei of cranial nerves and also connect the vestibular apparatus with ocular muscles, neck muscles, and the extrapyramidal system. This serves to coordinate muscle groups, e.g., masticatory, tongue, and pharyngeal muscles when swallowing or speaking; or ocular muscles for movements of the globe.
→(前索の後部には脳幹のいろいろなレベルにある種々な神経核からでる複雑な下行線維束がある。この複雑な神経線維束は内側縦束として知られている。この神経束の脊髄部は同じ名称で呼ばれる脳幹にある伝導路の一部にすぎない。内側縦束の上行線維は主として前庭神経内側核および上核から起こり、同側性および対側性に主として外眼筋支配の神経核(外転、滑車、動眼神経核)に投射する。内側核からの上行線維は主に交叉をし、両側の外転神経核と左右の動眼神経核に非対称性に終わるが、滑車神経核へは対側性に投射する。上核の中心部にある大形細胞は非交叉性上行線維を内側縦束に出し、これは滑車神経核および動眼神経核に終わる。同核の周辺部にある周辺部にある小型細胞は交叉性の腹側被蓋束(内側縦束の外側にある)を経て動眼神経核に投射するが、これは主として対側の上直筋を支配する細胞に作用する。生理学的には、前庭神経核から外眼筋支配核から外眼筋支配核への上行性投射のうち、交叉性線維は促進的に働くが、非交叉性線維は抑制的に働く。内側縦束にはこのほかに、左右の外転神経核の間にある神経細胞から起こり、交叉して上行し、動眼神経核の内側直筋支配部に終わる明瞭な線維が含まれる。この経路は一方の外転神経核の活動を対側の動眼神経核内側直筋支配部へ連絡する物で、外側視の場合に、外側直筋が収縮すると同時に対側の内側直筋が共同して収縮するための神経機構を形成している。内側縦束の上行線維の一部は、動眼神経核を回ってCajal間質核に終わる。これは内側縦束内にうまっている小さい神経細胞群である。前庭神経内側核は対側性に間質核へ投射するが、上核は同側性に終わる。前庭神経二次線維は両側性に視床の中継核へ投射し、その数は中等度で、後外側腹側核に終止する。前庭からの入力を受ける視床の細胞は体性感覚情報にも対応するが、これは視床には特定の前庭感覚中継核がないことを示唆している。)
- 878_03【Motor nucleus of trigeminal nerve三叉神経運動核 Nucleus motorius nervi trigemini; Nucleus motorius princeps nervi trigemini】 Motor nucleus for innervation of the muscles of facial expression. It is located laterally, beneath the facial nucleus.
→(三叉神経運動核は典型的な大型の神経細胞よりなり、全体は卵円形をなして運動根と主知覚核の内側に位置する。核からの線維は知覚根の進入点より内側で脳幹を出て三叉神経節の下を通り、下顎神経に加わる。運動核は中脳路核からの側副枝を受けて2ニューロン反射弓を形成するが、そのほかにも三叉神経二次線維が交叉性および非交叉性に連絡しており、皮膚、舌および口腔粘膜と咀嚼筋との間に反射弓を形成する。皮質延髄路線維の一部は直接両側性に運動核細胞に終止するが、他の線維は網様体細胞を介して間接的に終止する。)
- 878_04【Motor root of trigeminal nerve運動根;運動性根;小部(三叉神経の) Radix motoria; Portio minor】 Root emerging from the trigeminal nerve toward the skull vertex and then passing under the trigeminal ganglion, innervating the muscles of mastication.
→(三叉神経の運動根は三叉神経の小根で、三叉神経運動核から出ている線維からなる。大きい知覚根の内側に位置して、橋から出て下顎神経に接続し咀嚼筋へ運動と固有受容の線維を送る。すなわち第一鰓弓に由来する筋で4種の咀嚼筋、おとがい舌骨筋、顎二腹筋の前腹、鼓膜張筋および口蓋帆張筋である。)
Gower's tract
- 878_05Gower's tract【Anterior spinocerebellar tract; Ventral spinocerebellar tract前脊髄小脳路;腹側脊髄小脳路;ガワース路 Tractus spinocerebellaris anterior】 Some of its fibers cross from the posterior horns to the contralateral side, ascend to the superior border of the pons, and bend around to the superior cerebellar peduncle. It transmits information from afferent nerves in the lower half of the body about muscle tone and limb position for coordination of lower limb movement.
→(ガワーズ路ともよばれる。前脊髄小脳路は発育が悪い。この伝導路は後脊髄小脳路の前方で脊髄の外側辺縁部に沿って上行する。これは最初下部胸髄にあらわれるが、その起始細胞は胸髄核ほどには、はっきりと分離していない。線維は第Ⅴ、Ⅵ、Ⅶ層の一部の細胞から起こる。この伝導路の起始となる細胞は、尾髄と仙髄から上方へ第一腰髄まで広がっている。前脊髄小脳路の線維は後脊髄小脳路より数が少なく、均一に太く、また、結局すべて交叉する。後脊髄小脳路のように、主として下肢からのインパルスの伝達に関与する。前脊髄小脳路を出す細胞はGolgi腱器官由来のⅠb群求心性線維からの単シナプス性興奮を受けるが、そのGolgi腱器官の受容範囲はしばしば下肢の各関節における一つの協力筋群を包含している。小脳へのこの経路は2個のニューロンで構成されている。すなわち①脊髄神経節のニューロンⅠおよび②腰髄、仙髄および尾髄の前角と後角の基部の散在性の細胞群のニューロンⅡである。ニューロンⅡの線維は脊髄内で交叉し外脊髄視床路の線維の辺縁部を上行する。その線維は橋上位の高さで上小脳脚の背側面を通って小脳に入る。この伝導路の大部分の線維はは対側の小脳虫部の前部のⅠからⅣ小葉に終わる。おの伝導路線維は下肢全体の協調運動や姿勢に関係するインパルスを伝達する。臨床的には、他の脊髄伝導路が混在するために、脊髄小脳路の損傷に対する影響を決めることは結局不可能である。小脳へ投射されるインパルスは意識の領野には入らないから、このような損傷によって触覚や運動覚が失われることはない。Gowers, Sir William Richard(1845-1915)イギリスの神経科医、病理学者。ロンドン大学の教授。ヘモグロビン測定器の発明(1878年)、検眼鏡の活用に尽力し、ブライト病での眼底所見を示す(1876年)。脊髄疾患について記し、このときガワーズ路を記述(「The diagnosis of disease of the spinal cord」, 1880)。彼はまた速記術に興味を持ち、医学表音速記者協会を創設した。)
Flechsig's tract
- 878_06Flechsig's tract【Posterior spinocerebellar tract; Dorsal spinocerebellar tract後脊髄小脳路;背側脊髄小脳路;フレヒシッヒ路 Tractus spinocerebellaris posterior】 Uncrossed fibers traveling to the inferior cerebellar peduncle. Its function is similar to that of the anterior spinocerebellar tract.
→(後脊髄小脳路は胸髄核から出て交叉せずにすぐ側索周辺部の背側部を上行し、下小脳脚を通って同側の小脳の前葉、一部は虫部錐体、虫部垂などの皮膚に達する。脊髄の側索後外側辺縁部を上行するこの非交叉性の伝導路は胸髄核の大細胞から起始する。後根の求心性線維は直接に、または後索を上下行した後に胸髄核に終わる。胸髄核の大細胞は太い線維を出し、これは側索の後外側部(すなわち皮質脊髄路の外側)に入り、上行する。延髄にあってはこの伝導路の線維は下小脳脚に組み込まれ、小脳に入って同側性に虫部の吻側と尾側に終わる。虫部全部では線維は第Ⅰ小葉から第Ⅳ小葉に終わり、後部では主として虫部錐体と正中傍小葉に終わる。胸髄核は第三胸髄から尾方には存在しないから、尾方の髄節からの後根線維はまず後索内を上位の胸髄まで伝達され、それから胸髄核の細胞へ伝えられる。後脊髄小脳路を経由して小脳へ中継されるインパルスは伸展受容器である筋紡錘やGolgi腱器官および触圧覚受容器から起こる。胸髄核のニューロンは主としてⅠa群、Ⅰb群およびⅡ群の求心線維を経由する単シナプス性興奮を受ける。Ⅰ群の求心性線維と胸髄核の間のシナプス結合では高頻度のインパルスの伝達が行われる。一部の外受容器由来のインパルスもまた後脊髄小脳路を経由して伝達される。これらは皮膚の触覚と圧覚の受容器およびゆっくり反応する圧受容器に関係する。後脊髄小脳路は脊髄レベルおよび小脳の終始部において体部位局在性に配列されている。伝導路によって伝達されるインパルスは意識のレベルに達することはない。これらの伝導路によって伝達されるインパルスは姿勢とここの四肢筋の運動の細かい協調作用に役立っている。)
- 878_07【Trigeminal nerve [V]三叉神経[脳神経V] Nervus trigeminus [V]】 Nerve innervating the first pharyngeal arch. The fifth cranial nerve, comprised of two groups of fibers exiting laterally from the pons, innervates the muscles of mastication and supplies sensory information for facial sensation.
→(三叉神経は知覚部と運動部とからなる混合神経で脳神経中もっとも大きい。その知覚部は頭部および顔面の大部分に分布し、運動部は深頭筋、咀嚼筋、顎舌骨筋および顎二腹筋の前腹を支配する。その核は菱脳中に位置し、体性運動性の三叉神経運動核、知覚性の三叉神経主知覚核および三叉神経脊髄路核ならびに咬筋の筋知覚を司るといわれる三叉神経中脳路核などに分けられるが、これから出る線維のなかで、知覚神経線維は集まって知覚根[大部]を作り、運動神経線維は集まって運動根[小部]を作り、橋と中小脳脚との移行部において脳を去る。知覚根は側頭骨錐体部の三叉神経圧痕の上で大きい三叉神経節[半月神経節]を作り、これを出てから眼神経、上顎神経、下顎神経の3枝に分かれる。運動根は三叉神経節の下面の内側に沿って前進し下顎神経に合する。三叉神経は3枝に分かれた後にも各々の神経節を有し、眼神経には毛様体神経節、上顎神経には翼口蓋神経節、下顎神経には耳神経節および顎下神経節がある。これらのうち三叉神経節は脊髄神経節と同じ構造で体性神経系に属するが、他の神経節はその構造上から自律神経系に属するものである。)
- 878_08【Medial lemniscus内側毛帯 Lemniscus medialis】 Ascending fibers passing from the decussation of medial lemniscus through the brainstem to the thalamus. They convey impulses of general cutaneous sensation.
→(延髄の後索(薄束および楔状束)を通過する伝導路は圧覚と触覚や固有知覚の興奮を後索核(薄束核および楔状束核)や視床を経て大脳皮質に伝達する神経路である。薄束核および楔状束核から起こる二次ニューロンは延髄視床路(内側毛帯)となり正中縫線近く延髄の中心を通り上行する。橋にはいると外側に広がり、橋核の背側縁を越えて上行する扁平な帯になる。中脳内では、黒質の背側縁を越えて赤核で外側に移る。内側膝状体まで内側を通り視床の後腹側核に入り、そこで終わる。視床を出た第3ニューロンの線維は、上行して大脳皮質におもむく。内側毛帯系は脊髄から上行する識別性感覚路の最初の一環を形成するのは後根を通って入ってくる太い有髄神経の枝であり、後索を上行する。後索を上行するこれらの神経線維は身体部位対応配列を示す。すなわち、仙骨神経根や腰神経塊を通って入ってくる上行枝は後索の内側部を占めて薄束を形成する。一方、頚神経根を通って入ってくる上行枝は後索の外側部を占めて楔状束を形成する。また、胸神経根を通って入ってくる少数の上行枝は、薄束と楔状束との間に位置する。薄束と楔状束は、延髄の尾側端でそれぞれ対応する神経核、すなわち、薄束核と[内側]楔状束核に終止する。ある後根が支配する皮膚領域は、同時にその後根の上下の後根からも支配されている。このように一定の皮膚領域を支配する隣接後根の神経線維群は、後根から後索、さらに後索核へと向かう経過のうちに、一つの神経束にまとまる。このような集束の結果として、隣接する皮節(dermatome)間の重なり合いは解消されるのであるが(一つの皮節からの情報を伝道する神経線維が集合して一つにまとまる)、後索で最初にみられたような層構造は次第に不明瞭になる。薄束核の背側部と[内側]楔状束核の背側部にはニューロンが幾つかの小群をつくって分布する。超す悪を上行する神経線維の中で、四肢の遠位部を支配するものがこれらのニューロン小群に終止して身体部位対応配列を示す。後索核の腹側部と吻側部では身体部位対応配列はあまり精細でない。後索には後核固有核から起こる内在性神経線維も含まれている。これらの内在性神経線維は後索核の腹側部と吻側部に終止する。その他、後側索(側索後部)を上行する神経線維は両側の後索核の腹側部と吻側部、およびZ群(group Z)に終止する。Z群は薄束核の吻側端に位置するニューロン群であり、下肢の筋からの入力を視床に中継する。上枝からの固有感覚性入力を中継するのは外側楔状束核である。この核から起こる投射神経線維は主として下小脳脚を通って小脳へ入る。後索核の腹側部と吻側部から起こる投射神経線維は、後索核背側部(ニューロンの小群の集合から成る)から起こる投射神経線維に比べて、分布範囲が広い。すなわち、前者も後者も反対側の視床へ向かうのであるが、前者はさらに小脳や下オリーブ核に投射し、脊髄の後角へ向かうものもある。薄束核と[内側]楔状束核からは内弓状線維が起こり、正中部で交叉してのち、内側毛帯を形成して上行枝、視床の後外側腹側核、後核群、内側膝状体大細胞部、および不確帯に終止する。後索核から後外側腹側核への投射は”核と殻(core-and-shell)”の様式を示す。すなわち、後索核背側部から起こる皮膚感覚の投射線維は後外側腹側核の中心部(すなわちcoreの部分)に終止し、後索核腹側部と吻側部から起こる固有感覚の投射線維は後外側腹側核の辺縁部(すわなち、shellの部分)に終止する。内側毛帯線維は後外側腹側核において一連の平行な層板をなして終止する。これらの層板は核のcoreの部分とshellの部分を通じて前後方向に伸びており、それぞれの層板が身体の特定の部位に対応している。また、各層板の前後軸に沿って、種々の感覚要素に対応する投射線維の終末が次々と配列分布する。)
Varolius, Pons of
- 878_09Varolius, Pons of【Pons橋 Pons】 Part of the brain situated between the interpeduncular fossa and the pyramids. It surrounds the anterior part of the fourth ventricle and consists mainly of descending tracts from the cerebrum that travel to nuclei, synapse, cross, and continue to the cerebellum.
→(Ponsとは、橋(ハシ)という意味である。腹側から見ると左右の小脳半球の間に架かった太鼓橋の様に見えるところから橋という名前が付けられた。比較解剖学的には、橋が延髄から区別されるのは哺乳類に限られ、橋は人類で最もよく発達している。後脳の腹側部にあたる。すなわち、小脳の腹側に位置しており、延髄と中脳の間に介在する。橋の腹側面は横走する幅広い神経線維束(横橋線維)によっておおわれる。この神経線維束はさらに橋の外側面において、橋と小脳を連結する中小脳脚を形成しており、左右の小脳半球の間にかかる「橋」のようにみえる。橋は既にユースタキウスEustachius (1524-1574)の図に載っているというが、この図は1714年まで出版されなかったので、Ponsという名称は、このような外見に基づいて、イタリアの解剖学者であり外科医でもあったC.Varolio (1543-1573)が用いたものである(ヴォロイオ橋)。橋は横断面では橋腹側部または橋底部と橋背部または橋被蓋とに区分される。両者の境界は橋被蓋の腹側部を上行する内側毛帯の腹側縁にあたる。橋底部の神経線維群には、上記の横橋線維のほかに、橋底部の中心部を縦走する橋縦束があり、神経細胞としては橋縦束を取り囲んで橋核が存在する。橋縦束の線維はその大部分が大脳皮質からの下行神経線維であり、橋核に連絡する皮質橋核路を含む。橋核は大脳皮質からおこる求心性神経線維のほか、小脳核や上丘からおこる求心性神経線維を受けることが知られている。橋核からおこる遠心性神経線維は横橋線維、ついで中小脳脚を形成して、主として反対側の小脳半球の皮質に連絡する。また、その際、小脳核、とくに歯状核に側枝を送る可能性が大きい。このように、橋縦束・橋核・橋横線維は大脳皮質や小脳半球など、系統発生的に新しい部位との関係が深く、哺乳動物ではじめて出現する構造であって、高等な哺乳類において良好な発育を示す。 一方、橋被蓋は系統発生的に古い構造であり、脳幹網様体の基本構造を示す部位がもっとも広い領域を占める。脳神経核としては、三叉神経核(主感覚核・脊髄路核・中脳路核・運動核)・顔面神経核・内耳神経核(蝸牛神経核と前庭神経核)が存在する。また、橋被蓋の外側部を上行する外側毛帯、および橋被蓋の腹側部を横走する台形体の線維は聴覚路を形成する神経線維群であり、聴覚神経路の中継核として、外側毛帯核および台形体核が存在する。その他の線維群としては、第四脳室底の腹側において正中線背側部の両側を内側縦束が縦走し、上小脳脚が第四脳室蓋の外側部を形成している。また、神経細胞群としては、橋被蓋の背外側部に青斑核が、上小脳脚の周辺部には結合腕傍核が存在する。)
- 878_10【Superior cerebellar peduncle (Brachium conjunctivum)上小脳脚;結合腕;小脳大脳脚 Pedunculus cerebellaris superior; Brachium conjunctivum; Crus cerebellocerebrale】
→(上小脳脚(結合腕Brachium conjunctivum)は主として小脳を出る線維からなる。その主体をなす線維は小脳視床路と小脳赤核路である。これらは主として歯状核から出て、腹内側方に進んで深部に入り、中脳下半で大部分交叉し、上小脳脚交叉(結合腕交叉)を作り、反対側の中脳被蓋を上行し、一部は赤核に終わるが(小脳赤核路)、一部はさらに視床の前外側腹側核に至る(小脳視床路)。なお上小脳脚の表面を前脊髄小脳路が逆行して小脳に入り、主としてその前葉に分布する。また鈎状束は室頂核から出て大部分交叉し、上小脳脚の背外側をへて鈎状に曲がり、下小脳脚内側部の上部に来て前庭神経各核にならびに橋、延髄の網様体内側部に分布する。)
- 878_11【Mesencephalic tract of trigeminal nerve三叉神経中脳路;三叉神経下行根 Tractus mesencephalicus nervi trigemini; Radix descendens [Nervus trigeminus]】 Fibers for the mesencephalic nucleus of trigeminal nerve that run lateral to the cerebral aqueduct in the floor of fourth ventricle. They convey proprioceptive impulses from the teeth, masticatory muscles, and temporomandibular joints.
→(三叉神経中脳路核の細胞体からの主な突起は鎌状をした三叉神経中脳路を作り、これは三叉神経運動核の高さまで下行し、側副枝を運動核に送るが、大部分は運動根の一部として脳外に出る。)
- 878_12【Locus caeruleus; Locus coeruleus青斑 Locus caeruleus; Locus coeruleus】 Elongated collection of bluish-black cells lying below the lateral wall of the fourth ventricle.
→(青斑は中脳水道に近い菱形窩の最前部の外側にある細胞群で、三叉神経中脳路核の腹内側に位置する。肉眼的には第四脳室底において、上小脳脚の内側に吻尾側方向に伸びた青黒色の帯状のものとして認められる。これは細胞体に含まれるメラニン色素によるもので、そのため青斑には鉄色質の別名がある。青斑の細胞群は青斑核とよばれる。ノルアドレナリンを含む大型細胞の集団である。青斑核の腹側には同じような細胞が散在しており、青斑下核と呼ばれる。青斑核細胞の遠心性ノルアドレナリン線維は3群を形成する。①上行線維群:内側前脳束に入り扁桃核にいたるもの、帯状回線維となって帯状回、海馬台にいたるもの、その他梨状葉皮質、前頭葉新皮質に分布する線維からなる。②外側線維群:上小脳脚を通り小脳前葉の皮質の分子層、Purkinje細胞同区に分布する線維である。③下行線維群:これは広く脳幹に分布した後、脊髄前索、前側索を下行し、脊髄全長にわたって後角基部から前角にかけて分布する。求心性線維は次の領域からくる。視床下部(視索前野、後側、背側、外側視床下野)、中脳の中心灰白質、黒質、背側被蓋核、橋縫線核、その他脳幹に分布するカテコールアミンニューロンからの線維を受ける。機能は十分解明されていないが、REM睡眠と深い関係にある。)
- 878_13【Principal sensory nucleus of trigeminal nerve; Superior sensory nucleus of trigeminal nerve三叉神経主感覚核;三叉神経主知覚核;三叉神経上知覚核 Nucleus principalis nervi trigemini; Nucleus sensorius superior nervi trigemini; Nucleus pontinus nervus trigemini】 Nucleus situated lateral to the motor nucleus that chiefly serves for tactile sensation. It can be divided into two parts.
→(三叉神経主知覚核は上知覚核ともよばれ、外転神経核の上外側にあり、下方は脊髄路核に接し、円い中等大細胞の不規則なぶどう状の集団からなる。主知覚核およびおそらくは脊髄路核の上部は、四肢および体幹に対する後索核と同様に、顔面の識別性触圧覚を中継する物と考えられる。)
- 878_14【Sensory root of trigeminal nerve感覚根;知覚性根;知覚根;大部(三叉神経の);三叉神経根 Radix sensoria; Portio major; Radix nervi trigemini】 Sensory part of the nerve that emerges caudally from the pons and extends to the trigeminal ganglion.
→(三叉神経の知覚根は体性感覚線維で三叉神経の大部に相当し、橋に入り、三叉神経主感覚核と三叉神経脊髄路核に分布する。)
- 878_15【Superior olivary nucleus; Superior olivary complex上オリーブ核;上オリーブ複合体 Nucleus olivaris superioris】 Nuclear complex located lateral to the trapezoid body. It receives fibers from the cochlear nuclei and sends fibers forming the olivocochlear tract to the hair cells. It serves as a reflex center and as a relay nucleus of the auditory pathway.
→(上オリーブ核は内側毛帯と三叉神経脊髄路核とのあいだに存在する核群であり、両側の蝸牛神経核から入力線維を受け、出力線維は外側毛帯に加わる。音源定位に大きくかかわる。)
- 878_16【Reticular formation網様体(橋被蓋の);橋網様体 Formatio reticularis tegmentum pontis】
→(橋網様体は、主として下(橋)網様核と上(核)網様核の2つの大きな細胞集団よりなる。下網様核は延髄の巨大細胞網様核の上方部に相当し、上方は三叉神経運動核の高さにまで及ぶ。上網様核は、上方が中脳下部にまで伸びるが、正確な境界は明らかではない。橋網様体の細胞からは非交叉性の網様体脊髄路が起こり、脳幹では内側縦束の一部として下行する。その他の細胞からの線維には中心被蓋路の一部として上行するものもあり、また多くの細胞の線維は二分して上方および下方に分枝を送る。このうち上行枝は中心被蓋路を経て視床の髄板内核に投射する。これらの視床核に至るインパルスは大脳皮質の広い部位の電気活動に強い影響を及ぼす。橋にあるその他の網様核として被蓋網様核と上中心核がある。前者は縫線の近くで内側毛帯の背側にあり、胸郭が被蓋の中にあり、菱脳峡の高さで大きくなり、縫線正中核となる。)
- 878_17【Trapezoid body台形体 Corpus trapezoideum】 Interwoven, crossing fibers from the two anterior cochlear nuclei. It is part of the auditory pathway.
→(台形体は橋下位の高さで蝸牛神経腹側核および一部台形体背側核(上オリーブ核)から出て橋被蓋の背側部を横走し対側に向かう線維の総称(もしくはこれらの線維で構成された部位)。これらの線維は交叉の後、前背側方に進み、外側毛帯に加わる。)
- 878_18【Longitudinal pontine fasciculi; Longitudinal pontine bundles橋縦束;縦束 Fasciculi longitudinales pontis】
→(橋縦束は皮質遠心性の太い神経束で、橋腹側部を縦走する。皮質網様体、中脳蓋橋、皮質橋、皮質延髄、および皮質脊髄線維からなる。)