023
- 023_00【Sphenoidal bone; Sphenoid bone蝶形骨 Os sphenoidale】 Bone located between the frontal, occipital, and temporal bones.
→(蝶形骨は頭蓋底のほぼ中央部にあり、上面観は羽を広げた蝶のように、また前方から見るとコウモリのように見える最も不規則な形をした無対性骨である。蝶形骨は発生学的には四つの部分、すなわち体、大翼、小翼および翼状突起に4部に分けられる。これはらは生後1年以内に癒合して単一の骨となる。蝶形骨は9種の周囲の骨と相接しており、それらは後頭骨、側頭骨、頭頂骨、前頭骨、篩骨、鋤骨、上顎骨、口蓋骨、頬骨である。Sphenoidaleはクサビ(sphen)に似た(eidos)という意味で、蝶とは無関係。これは多くの骨の間にクサビのようにはまりこんだ骨だからである。日本名も以前は楔状骨であり、更に古くは胡蝶骨と呼ばれたこともある。楔状骨の名は現在では足根骨の一つに占有されている。)
- 023_01【Body of sphenoid bone体(蝶形骨の);蝶形骨体 Corpus (Ossis sphenoidalis)】 The part of the sphenoid between the wings of the sphenoid and their processes.
→(蝶形骨体は蝶形骨の中央部にあり立方体をなしている。上面中央部には鞍状を呈したトルコ鞍があり、その中央に横位楕円形の下垂体窩がある。トルコ鞍の後方には鞍背という上方に突出した骨板があり、その両側外側端の突起を後床突起という。鞍背の後部は台形をなして後頭骨の底部とともに斜台を形成する。下垂体窩の前には体の前部との境界線である鞍結節とよべる横走する稜があり、その両側端にある中床突起は発育が弱く明瞭なものは少ない。鞍結節の前には細い横走する[視神経]交叉溝があり、その両外側は視神経管につづく。交叉溝の前部は蝶形骨隆起とよばれているが、これは隆起ではなく滑らかな平面である。体の前部は小翼と後部は大翼と結合している。下錐体窩の外側と大翼の根部との間には、内側頚動脈溝という前後に走る溝があり、外側に蝶形骨小舌という突起状の骨板がある。体の下面は鼻腔、咽頭腔の上壁をなし、中央に蝶形骨吻が前下方に突出し鋤骨翼にはさまれる。体の前面中央部には蝶形骨稜という上下に走る稜線があり、篩骨の垂直板と相接する。蝶形骨稜の両側でがいおうに蝶形骨甲介が認められる。これはバルタン小骨ともよばれ、発生学的には篩骨の一部であったものが8~12歳に蝶形骨体と癒合したものでとくに若年頭蓋で著明である。体の内面は空洞状をなし蝶形骨洞とよばれ、その正中部には蝶形骨洞中隔があり、洞を左右に分けている。その前面には蝶形骨洞口という開口部が両側にあり蝶篩陥凹に通じている。)
Ingrassia's process
- 023_02Ingrassia's process【Lesser wing of sphenoid bone小翼(蝶形骨の) Ala minor; Ala parva (Ossis sphenoidalis)】
→(蝶形骨体の前端の両側から左右に向かって翼状に延びるほぼ三角形の部分で、その先は細くとがっている。小翼の前縁は前頭骨の眼窩部と縫合するため鋸歯状で、その正中の小部分は篩骨の篩板に接する。前根と後根の2根を有し、この両根の間に視神経管がある。前縁は鋸歯状をなすことが多く、前頭骨の眼窩部と結合する。後縁は遊離縁をなし、その内側端に視神経管の後外側から後内側に向かう前床突起がある。上面は平坦で頭蓋底のうちで指圧痕、脳隆起などきわめて少ない部分である。また前頭蓋窩の後部を形成し、内側では蝶形骨隆起に移行する。下面は大翼眼窩面との間に上眼窩裂を形成している。)
- 023_03【Greater wing of sphenoid bone大翼(蝶形骨の) Ala major; Ala magna (Ossis sphenoidalis)】
→(蝶形骨の大翼は蝶形骨体後部の外側から前外側方へ翼状にひろがる部分である。3面および3縁を有する。上面は大脳面といわれ、凹面をなして中頭蓋窩の一部をなし、指圧痕、脳隆起、動脈溝、静脈溝が認め等えっる。この面で大翼と体の結合部近くに前内側から後外側に向かって三つの孔、すなわち正円孔、卵円孔、棘孔が並ぶ。正円孔は上顎神経、卵円孔は下顎神経、棘孔が並ぶ。正円孔は上顎神経、卵円孔は下顎神経、棘孔は中硬膜動脈および下顎神経硬膜枝の通路である。外側面は上・下の2部から成る。上部は側頭面といわれ大きく側頭窩の底をなすが、側頭加療より下内方部は側頭下面といわれ小さく側頭下窩の上壁の大部分をなす。内側面の大部分は眼窩面といわれ、ほぼ菱形をなし眼窩外側壁の形成にあずかる。その下方には上顎面があり、翼状突起に前面とともに翼口蓋窩に面し、ここに正円孔が開口する。なお眼窩面と上顎面の境は下眼窩裂の後縁をなす。上縁は前方で前頭骨と結合する短い前頭縁と、後方で頭頂骨と結合する短い前頭縁といわれ、また下部は遊離縁で下眼窩裂の上縁の一部をなしている。後縁の外側部は側頭骨鱗部と結合し鱗縁といわれ、その内側部は側頭骨錐体との間に蝶錐体裂をつくる。この裂の外側部に斜走する耳管溝がある。後縁の最後端は角をなし、そこから蝶形骨棘という小突起を出す。なお後縁と側頭骨岩様部との間に蝶錐体裂があるが、その外側部に斜走する耳管溝があり、ここに耳管軟骨をいれている。耳管孔は翼状突起根部の舟状窩につづいている。)
- 023_04【Frontal margin of sphenoid前頭縁(蝶形骨大翼の) Margo frontalis (Ossis sphenoidalis)】 Border of the greater wing of the sphenoid that is united with the frontal bone.
→(蝶形骨大翼の頭頂縁より前方大部分は前頭骨と結合する前頭縁である。頭頂縁と前頭縁の間には大翼上縁では明瞭な境界をつけられない。前頭縁より内側は内下方に下降する薄く鋭い縁(眼窩面の後壁)となる。このことは蝶形骨小翼との間にできる上眼窩裂の下縁である。)
- 023_05【Parietal margin of sphenoid; Parietal angle of sphenoid頭頂縁;頭頂角(蝶形骨大翼の) Margo parietalis; Angulus parietalis (Ossis sphenoidalis)】 Border of the greater wing of the sphenoid that is united with the parietal bone.
→(蝶形骨大翼の側頭面の後方小部分にあたる部は頭頂骨と結合する頭頂縁である。)
- 023_06【Squamosal margin of sphenoid鱗縁(蝶形骨大翼の) Margo squamosus (Ossis sphenoidalis)】 Squamous part of the greater wing of the sphenoid that articulates with the temporal bone.
→(蝶形骨大翼の外側縁は前上から後下に向かう曲線で、側頭骨鱗部の前下部と結合する鱗縁である。)
- 023_07【Dorsum sellae鞍背 Dorsum sellae】 Posterior wall of the sella turcica.
→(トルコ鞍の後の境界は著しく隆起した鞍背がつくる。)
- 023_08【Chiasmatic sulcus; *Prechiasmatic groove視神経交叉溝;交叉溝;視束溝;視神経交叉前溝 Sulcus chiasmatis】
→(鞍結節の前方には浅い[視神経]交叉溝が横に走り、その外側は視神経管に続く。)
- 023_09【Tuberculum sellae鞍結節 Tuberculum sellae】 Small protuberance in front of the sella turcica.
→(下垂体窩の前には蝶形骨体の前部との境界線である鞍結節と呼ばれる横走する稜がある。)
- 023_10【Sella turcicaトルコ鞍 Sella turcica】 It is located above the sphenoidal sinus and houses the pituitary gland.
→(トルコ鞍は蝶形骨体上面には、トルコ風の馬の鞍に似ている骨隆起で中頭蓋窩の中央部にある。この骨のくぼみには、重要な内分泌腺の一つである下垂体が入る。)
- 023_11【Optic canal; *Optic foramen視神経管;視神経孔 Canalis opticus; Foramen opticum; Canalis fasciculi optici】 Canal for transmission of the optic nerves and the ophthalmic artery.
→(視神経孔Optic foramenともよばれる。眼窩の上壁の最も深部で蝶形骨の小翼の蝶形骨体よりの根部は視神経管が貫通し、この管の外側には前床突起が延びだしている。視神経および眼動脈が通る。)
- 023_12【Middle clinoid process中床突起;中鞍突起 Processus clinoideus medius】 Small protuberance that is occasionally present on both sides of the tuberculum sellae.
→(鞍結節の外側端が明瞭な突出となるとき、これを中床突起と呼ぶ。)
- 023_13【Superior orbital fissure上眼窩裂 Fissura orbitalis superior】 Opening in the upper part of the orbit between the greater and lesser wings of the sphenoid that connects the cranial and orbital cavities. It transmits the ophthalmic, oculomotor, trochlear, and abducens nerves and the superior ophthalmic vein.
→(眼窩の外側壁の後端には、上壁との間に上眼窩裂(蝶形骨の大翼および小翼の間にある上部裂隙)がある。上眼窩裂は頭蓋腔(中頭蓋窩)に通じ、眼筋の支配神経(動眼神経・滑車神経・外転神経)・眼神経・上眼静脈が通る。)
- 023_14【Anterior clinoid process前床突起;小翼突起 Processus clinoideus anterior; Processus alae parvae】 Projection from the lesser wing of the sphenoid bone that is directed posteriorly toward the middle and posterior clinoid processes.
→(蝶形骨小翼の後縁は遊離縁をなし、その内側端に視神経管の後外側から後内側に向かう前床突起がある。)
- 023_15【Foramen rotundum正円孔;正円管(蝶形骨大翼の) Foramen rotundum】 Foramen that opens anteriorly into the pterygopalatine fossa. It transmits the maxillary nerve.
→(蝶形骨大翼が蝶形骨体から出る根部を貫く3孔が前内方から後外方にならぶ。最前のものは正円孔で、前方に向かって翼口蓋窩に開く。中の最も大きい卵円孔と最後の棘孔はともに頭蓋底下面に開く。正円孔は上顎神経が通る。)
- 023_16【Cerebral surface of sphenoid大脳面(蝶形骨大翼の) Facies cerebralis (Ossis sphenoidalis)】 Surface of the greater wing of the sphenoid facing the brain.
→(蝶形骨大翼の上面の深くくぼんだ大脳面は中頭蓋窩の一部となり、脳隆起、指圧痕、動脈溝、静脈溝などをみる。)
- 023_17【Posterior clinoid process後床突起 Processus clinoideus posterior】 Protuberance on both sides of the dorsum sellae.
→(鞍背の外側端がつくる小さい突起を後床突起という。)
- 023_18【Foramen ovale of sphenoid bone卵円孔(蝶形骨大翼の) Foramen ovale】 Opening for the passage of the mandibular nerve anteromedial to the foramen spinosum.
→(卵円孔は大翼の後内側端に位置し、三叉神経の下顎神経の通路の開口で、棘孔の内前方にある。海綿静脈洞と翼突静脈叢を連絡することがある。)
- 023_19【Foramen spinosum棘孔(蝶形骨大翼の) Foramen spinosum】 Opening posterolateral to the foramen ovale for the passage of the middle meningeal artery.
→(中硬膜動脈の通路の開口で、卵円孔の外後方にある。(Feneis))
- 023_20【Sphenoidal lingula蝶形骨小舌;蝶形小舌;蝶形骨小唇 Lingula sphenoidalis】 Pointed process that is located lateral to the entrance of the internal carotid artery into the cranial cavity.
→(頚動脈溝の外側境界となる稜状の隆起は、後縁から後方に突出して、小さな蝶形骨小舌をつくる。)
- 023_21【Carotid sulcus頚動脈溝 Sulcus caroticus】 Rather S-shaped groove on the lateral surface of the sphenoid for the passage of the internal carotid artery.
→(蝶形骨大翼の根の起こる部より上方は上面に移行する斜面で、ここを前後に広い頚動脈溝が走る。)