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- 055_00【Maxilla; Maxillary bone上顎骨 Maxilla】
→(上顎骨は不規則な形をした含気骨。顔面頭蓋の中央を占める有対性の骨で、左右のものが正中で結合して、眼窩・鼻腔・骨口蓋などの骨格に関与する。上顎骨はその主部をなす体と、これから突出する4種類の突起で構成される。上顎の歯をつけるほぼ四角形の有対骨で、内に鼻洞(上顎洞)のある中央部(上顎体)と四つの突起に区別される。四つの突起とは上方にのびて鼻根の外側部つくり前頭骨に接する前頭突起、外方にのびて頬骨につづく頬骨突起、水平の内方にのび、他側のそれと合して硬口蓋の大部分をつくる口蓋突起と、そこから堤防状に下方に高まり、歯をつける歯槽突起である。上顎骨の前面をみると、体の上縁は眼窩下縁で、その下0.5~1.0cmに大きい孔(眼窩下孔)がある。眼窩下神経、血管がとおり、三叉神経第2枝の圧痛点である。ときに眼窩下縁から眼窩下孔まで縫合がみられる(眼窩下縁から眼窩下孔まで縫合がみられる(眼窩下縫合)。眼窩下孔の下方の浅いへこみ(犬歯窩)は口角挙筋の起始部である。体の内側縁はするどい稜で、弓状に折れこみ(鼻切痕)、対側のものとで骨性鼻腔の前口(梨状口)をかこむ。上顎骨外面をみると眼窩下縁の延長が前頭突起に鋭い稜を(前涙嚢稜)をつくる。犬歯窩の後ろで大きい頬骨突起が外方に出て、この突起の上面(眼窩面)が眼窩底をつくる。そこには前後に走る溝(眼窩下溝)があり、前にいくにつれ骨の下に入る(眼窩下管)。眼窩面の後縁は大翼とともに下眼窩裂を境する。頬骨突起より後ろの面は側頭下面で、後縁口蓋骨垂直板と結合する。上顎洞後壁のうしろへの膨隆を上顎結節といい、ここにある二、三の孔(歯槽孔)が歯槽管につづき、そこから歯槽に開口する管が出る。後上歯槽神経が通る。内側面では上2/3と下1/3の境から口蓋突起が水平に突出し、それより上の部は鼻腔面である。前頭突起の基底部に上下2条の稜があり、上のもの(篩骨稜)は中鼻甲介につき、したのもの(鼻甲介稜)は下鼻甲介上縁前端がつく。前頭突起の控除迂遠は半月状に切れ込み(涙嚢切痕)、そこから後下方に深い溝(涙嚢溝)があり、涙骨の下の部分ととともに鼻涙管をつくる。前頭突起には涙骨につづく縁(涙骨稜)がある。体の内側面、涙嚢溝のうしろに指をとおす大きさの上顎洞の入口(上顎洞裂孔)がある。内側面後縁上半分は滑らかで翼口蓋窩の前壁をつくり、下半部は口蓋骨につき、粗面で、大口蓋溝があり、口蓋骨の同名溝と合して垂直な管(大口蓋管)をつくる。口蓋突起の上面は滑らかで、鼻腔の床に当たり、内縁は高まって他側のものと合して鋤骨をつける鼻稜をつくり、前方では梨状口下縁で棘上に高まる(前鼻棘)。その少しうしろに開口があり、下方は正中面で溝となり、他側のものと合して1本の管(切歯管)として、口蓋面前方正中部の切歯窩に切歯孔としてひらく。下面は粗で口腔の天井をつくり、大口蓋孔から出て前方に向かう神経血管のために生じた前後に走る口蓋溝、それと平行な稜(口蓋稜)がみられる。歯槽突起については下顎骨をみよ。歯槽突起外面にある歯槽に起因する膨隆群を歯槽隆起という。Maxillaという言葉はローマ時代から「アゴ」の意味でも上顎にも下顎にも使われてきた。Vesaliusも、上顎骨をmaxilla superior,下顎骨をmaxilla inferiorと呼んでいる。Maxillaが上顎骨だけに限定され、下顎骨がmandibulaと呼ばれるようになったのは近代に入ってからである。顎下腺(下顎骨の下にある唾液腺)も1935年まではglandula submaxillarisと呼ばれていた。)
- 055_01【Palatine process of maxilla口蓋突起(上顎骨の) Processus palatinus (Maxilla)】 Horizontal bony plate. The two processes form the anterior two-thirds of the hard palate.
→(口蓋突起は上顎体と歯槽突起の移行部にあたる高さで、上顎骨の内面に棚状に出た突起で、口蓋骨の水平板のとともに前方約3分の2の骨口蓋を形成する。水平に突出する骨板で、後縁は左右の第2大臼歯の歯槽を結ぶ線上にある。)
- 055_02【Alveolar process of maxilla歯槽突起(上顎骨の) Processus alveolaris (Maxilla)】 Ridged process bearing the teeth.
→(歯槽突起は上顎体の下面につづいて下方に突出し、弯曲した厚い提状の骨塊をつくる。両側の上顎骨を合わせると、後に開いた馬蹄形の隆起となる。ここに一側につき8個(乳歯では5)の歯根を容れる歯槽がならび、全体として歯槽弓をつくる。)
- 055_03【Intermaxillary suture上顎間縫合 Sutura intermaxillaris】 Anterior suture that unites the right and left maxillae in the midline.
→(上顎間縫合は頭面正中線において左右の上顎骨の間。)
- 055_04【Interalveolar septa of maxilla槽間中隔;槽内中隔(上顎骨の) Septa interalveolaria (Maxilla)】 Bony ridges between adjacent dental alveoli.
→(おのおのの歯槽は槽間中隔という薄い骨板で互いに隔てられている。)
- 055_05【Palatine spines口蓋棘 Spinae palatinae】 Bony ridges along the palatine grooves.
→(口蓋突起の下面は口腔の上壁となる粗な面でややくぼみ、その後外側部の歯槽突起に近い所には、すぐ後の口蓋骨の水平板にもつづく口蓋溝(大口蓋神経および同名動静脈が通る)がある。枝分かれをしている口蓋溝の間には口蓋棘が棘状または稜状に隆起する。)
Stenson's foramen
- 055_06Stenson's foramen【Incisive foramina切歯孔 Foramen incisiva】 Between two and four openings of the incisive canals.
→(切歯窩の中に両側の切歯管が切歯孔をもって開く。その上端は鼻稜の前方部の両側で鼻腔に開く。鼻稜のこれより前、すなわち切歯骨の領域にある部は切歯稜ともよばれる。)
- 055_07【Incisive bone; Premaxilla切歯骨;顎前骨 Os incisivum; Premaxilla】 Embryonic bone that develops into part of the maxilla.
→(骨口蓋の前端の正中部は、胎生期には切歯骨という独立した1対の小骨で形成されており、これは生後に上顎骨と癒合してしまう。切歯骨は多くの脊椎動物では顎前骨として終生独立している。 上顎の切歯をいれる骨で、多くの動物では上顎骨の前に独立した骨として存在する。前上顎骨(premaxilla, Praemaxillare)、間顎骨(Zwischenkiefer, Intermaxilla)ともいう。ヒトには独立した切歯骨がないことが特徴であるが、胎生期には切歯孔から犬歯と側切歯の間に向かう切歯縫合が見られることがある。(解剖学辞典:大江規玄))
Stenson's canals
- 055_08Stenson's canals【Incisive suture切歯縫合 Sutura incisiva】 Suture only visible during development between the palatine process of the maxilla and the incisive bone. It normally extends from the incisive foramen to the space between the canine tooth and the second incisor tooth.
→(歯槽突起の切歯を有する部、すなわち切歯部は口蓋突起の前端の小部分とともに、もとは切歯骨という独立の骨で、生後に上顎骨と結合したものである。この切歯骨と上顎骨との境界が切歯縫合でしめされる。この縫合は成人の骨では多くは消失してしまっている。切歯縫合の位置は、切歯窩と側切歯・犬歯の境を結んだ線上である。)
- 055_09【Median palatine suture正中口蓋縫合 Sutura palatina mediana】 Suture visible from the oral cavity joining the two halves of the palatine bone.
→(正中口蓋縫合は骨口蓋の左右半部の間の縫合で、鼻腔面に鼻稜をつくる。)
- 055_10【Dental alveoli of maxilla歯槽(上顎骨の) Alveoli dentales (Maxilla)】 Sockets in the alveolar process for reception of the roots of the teeth.
→(歯槽弓の隆起の上にあるくぼみ(歯槽)に各々の歯の歯根部がはまり込んでいる。)
- 055_11【Alveolar arch of maxilla歯槽弓;歯槽縁(上顎骨の) Arcus alveolaris (Maxilla)】 Curved, free border of the alveolar process.
→(上顎骨の弓状ないし馬蹄状の隆起を歯槽弓と呼ぶ。)
- 055_12【Palatine grooves口蓋溝 Sulci palatini】 Grooves running from posterior to anterior on the inferior surface of the palate transmitting nerves and vessels from the greater palatine foramen.
→(口蓋突起の下面は口腔の上壁となる粗な面でややくぼみ、その後外側部の歯槽突起に近い所には、すぐ後の口蓋骨の水平板にもつづく口蓋溝がある。大口蓋神経および同名動静脈が通る。)