1010
- 1010_00【Orbit; Orbital cavity眼窩 Orbita; Cavitas orbitalis】 Orbital cavity that contains the eyeball and its appendages.
→(眼窩は眼球とその付属器とを容れる不規則な四角錐体状の大きなくぼみで、最深部はその後内方にある。錐体底にあたる部はほぼ四辺形の眼窩口で、軽度外下方に傾いており、顔面に開いている。その上縁を眼窩上縁、下縁を眼窩下縁という。眼窩上縁は前頭鱗からなり、その内側半分に2個の切痕または孔があり、その内側のものを前頭切痕(まれに前頭孔)、外側のものを眼窩上孔(まれに眼窩上切痕)とう。眼窩下縁は上顎骨体および頬骨からなり、その下方に眼窩下孔が開口している。眼窩は上・下・内側・外側の4壁を有し、7種類の骨による10部より形成されている。上壁は大部分が前頭骨眼窩面および蝶形骨小翼腹側面よりなり、外側には涙腺窩、小翼内には視神経管があり、ここに視神経および眼動脈を通す。下壁は大部分が上顎骨眼窩面によりなるが、外側の一部が頬骨眼窩面、後方の小部分が口蓋骨眼窩突起により形成されている。また後方から前方へ眼窩下溝その延長部である眼窩下管が走り、これが既述の眼窩下孔に開口する。内側壁は大部分が篩骨眼窩板により形成され、残りの部分のうちの前部は上顎骨前突起および涙骨、後部は蝶形骨体側面最前部によって形成されている。なお篩骨眼窩板上縁と前頭骨眼窩部との間には、前篩骨孔および後篩骨孔があり、前者は鼻腔に行く前篩骨神経および前篩骨動脈を通し、後者は篩骨蜂巣に行く後篩骨神経および後篩骨動脈を通す。また内側壁の前部にある涙嚢窩は、上顎骨の前涙嚢稜と涙骨の孔涙嚢稜との間にあり、稜骨の涙嚢溝が合して形成されたものである。外側壁は前半部は頬骨眼窩面、後半部は蝶形骨大翼眼窩面と上壁の蝶形骨小翼との間には頭蓋腔に通ずる上眼窩裂があり、動眼神経、滑車神経、眼神経、外転神経、上眼静脈などを通す。また外側壁後半部の蝶形骨大翼眼窩面と下壁の上顎骨眼窩面との間には翼口蓋窩および側頭下窩に通ずる下眼窩裂があり、眼窩下神経、頬骨神経、下眼静脈などを通す。)
- 1010_01【Subarachnoid space of optic nerve; Leptomeningeal space of optic nerve鞘間隙;クモ膜下腔鞘間隙;軟膜腔(視神経の) Spatium intervaginale subarachnoidale nervus optici; Spatium leptomeningeum nervus optici】 Subarachnoid space around the optic nerve and the capillary layer between arachnoid and dura mater.
→(視神経の鞘間隙は視神経内鞘と視神経外鞘の間の間隙。脳硬膜とクモ膜の間に相当する。眼球鞘と強膜の間にある強膜外鞘(Tenon隙)と混同されることがある。)
- 1010_02【Superior conjunctival fornix上結膜円蓋 Fornix conjunctivae superior】 Reflection of bulbar conjunctiva onto the palpebral conjunctiva located high up behind the superior eyelid.
→(眼球結膜が上眼瞼の上後方で、眼瞼結膜へと折り変えるところ。(Feneis))
- 1010_03【Superior tarsus上瞼板 Tarsus superior; Tarsus palpebrae superior】 Semilunar fibrous plate that is curved like a bowl and forms the upper eyelid. It measures about 10 mm vertically and consists of tough, connective tissue of interwoven collagen fibers. It contains the tarsal glands.
→(上瞼板は高さ約10mmあり、皿状に曲がっている。かたい縺れた膠原線維性の結合組織よりなる。瞼板腺を含む。上眼瞼を広く反転できるのは、ここに上眼板があるからである。とくに日本人では、眼輪筋と瞼板との間に疎性結合組織と脂肪組織があって内輪筋と瞼板とはゆるく結合するので、眼瞼を反転しやすい。上瞼板と皮膚との結合が粗であると一重瞼であるが、結合が密でつよいと二重瞼となる。)
- 1010_04【Inferior tarsus下瞼板 Tarsus inferior; Tarsus palpebrae inferior】 Semilunar fibrous plate forming the lower eyelid that measures about 5 mm vertically. It consists of tough, connective tissue of interwoven collagen fibers and contains the tarsal glands.
→(下瞼板は高さ約5mmあり、皿状に曲がっている。かたい縺れた膠原線維性の結合組織よりなる。瞼板腺を含む。(Feneis))
- 1010_05【Bulbar conjunctiva眼球結膜 Tunica conjunctiva bulbi】 Portion of the conjunctiva covering the eyeball. It consists of stratified, nonkeratinized squamous epithelium with only a small number of goblet cells and a lamina propria of loosely organized structures, containing few cells and permeated by elastic fibers.
→(眼球結膜は結膜のうち眼球を被う部分。杯細胞に乏しい角化していない重層扁平上皮である。固有層は疎で細胞に乏しく弾性線維を含む。)
- 1010_05a【Conjunctiva結膜 Tunica conjunctiva】 Membrane covering the inner surface of the eyelids where it is composed of stratified (dual-layered or multilayered) columnar epithelium with goblet cells and a loosely organized, well-vascularized lamina propria containing numerous cells. It reflects at the conjunctival fornix onto the eyeball, covering it with stratified squamous epithelium as far as the corneal margin.
→(結膜は上・下眼瞼の内面(眼瞼結膜)と眼球前面(眼球結膜)をおおう粘膜である。眼球結膜は厚く不透明で血管に富み、表面に多数の乳頭をもつ。後眼瞼縁で結膜は眼瞼線分泌間の上皮にめがしらの半月ヒダの結膜は涙湖の底をつくり、涙点、涙管を経て鼻涙管粘膜上皮につづく。上眼瞼外側核の円蓋には6~12本の涙腺管が開く。上・下の結膜円蓋を経て、眼瞼結膜が眼球結膜に移行する。眼球結膜はゆるやかに強膜表面をおおい、薄く透明で乳頭を欠き血管分布に乏しく結膜輪で角膜上皮に移行する。円蓋の結膜には小形の杆状胞状腺(結膜腺、クラウゼ線)がある。)
- 1010_06【Inferior conjunctival fornix下結膜円蓋 Fornix conjunctivae inferior】 Reflection of bulbar conjunctiva onto the palpebral conjunctiva behind the inferior eyelid.
→(眼球結膜が下眼瞼後方で、眼瞼結膜へと折り変えるところ。(Feneis))
- 1010_07【Inferior oblique muscle下斜筋;下眼球斜筋 Musculus obliquus inferior; Musculus obliquus bulbi inferior】 o:Lateral alongside the nasolacrimal canal, i: Behind the equator. Action: Gaze elevation, abduction, and extorsion. I: Oculomotor nerve.
→(下斜筋は眼窩口内側縁の後方の上顎骨に存在する前涙嚢稜から起こり眼窩下縁と並行に走る。下斜筋は停止部近くで扇のように後方へ放射状に広がり眼球の下後側頭部眼球赤道の強膜に停止する。目の動き:視線を内側かつ上方に向ける。)
Tenon's capsule
- 1010_08Tenon's capsule【Fascial sheath of eyeball眼球鞘;テノン嚢 Vagina bulbi; Capsula bulbi】 Connective-tissue sheath between the eyeball and orbital fat. It is attached posteriorly at the optic nerve to the sclera. It ends anteriorly below the conjunctiva. It is separated from the sclera mostly by the episcleral space.
→(テノン鞘ともいう。眼球後面にある線維膜で後方部は視神経外鞘の周囲をおおって視神経管に達し、前方は赤道を越えて各眼筋停止部から眼筋筋膜に移行する。眼球鞘眼球との間には両者の間の強膜外隙(Tenon隙)を関節腔とする球状関節が形成され、滑らかな眼球運動を助けている。眼筋筋膜のうち、上斜筋膜の延長部は下瞼板に付着する。内および外側直筋膜の延長部は、それぞれ涙骨と頬骨に付着し、内・外側抑制靱帯または内・外側支帯とよばれる。眼球下面では、眼球鞘が肥厚し、とくに眼球懸架靱帯とよばれることがある。フランスの病理学者で眼科医のJaques Rene Tenon (1724-1816)の名を冠する。1806年に記載されている。)
- 1010_09【Eyeball眼球 Bulbus oculi】
→(眼球は名前のように球状(直径約25mm・体積約8cm3)で、視覚器の主要部をなす。眼窩脂肪体、眼筋筋膜、眼球鞘などに包まれて眼窩中にあり、前方からは眼瞼により保護されている。また眼筋の働きにより球関節に似た自由度の高い体軸性運動を行う。眼球の内部には前方に眼房水、後方に硝子体が満ちて、12~22mmHgの内圧が保たれる。眼球の形状を規定するため、前極、後極、赤道、経線、外眼球軸(前・後極を結ぶ)、内眼球軸、視軸などを用いる。眼球軸は角膜と水晶体前・後面の曲率中心を通る軸で、網膜面では中心窩と円板の中間を通る。したがって水晶体後面の屈曲率中心と中心窩を結ぶ視軸とは一致しない。眼球壁は組織発生的に、①眼球線維膜(強膜、角膜)、②眼球血管膜(脈絡膜、毛様体筋、虹彩支質、角膜内皮、胎児期の瞳孔膜)、③眼球内膜(網膜視部、毛様体・虹彩色素上皮層)の3層よりなる。①と②は中胚葉、③は神経外胚葉に由来する。内部の水晶体は体表外胚葉、硝子体は中胚葉由来であり、眼瞼・眼球膜、角膜上皮は皮膚の表皮の続きである。)
- 1010_10【Sclera強膜 Sclera】 Membrane of the eyeball composed of interwoven collagen fibers. It has a bluishwhite appearance and is visible through the conjunctiva.
→(眼球の形状を保つ強靱な膠原線維組織層。角膜となっている前部6分の1を除いた部分。前方では隔膜固有質に、後方では篩板から視神経外鞘を経て脳硬膜に、それぞれつづいている。強膜と角膜を合わせて眼球線維膜という。強膜の厚さは眼球後極で~1.0mm、前部で~0.6mm、赤道で~0.4mmである。視神経線維束を通す篩板は後極の内側3.5mm、視神経乳頭の直後方にあたる。視神経は~数十本の掌側としてこれを通る。渦静脈、長・短毛様体動脈および神経が強膜を貫く。強膜はは外から内へ、①強膜上皮、②強膜固有質、③強膜褐色板の3沿うよりなる。虹彩角膜角に沿って強膜固有質が内方へ皮厚し(強膜距)毛様体筋腱により貫かれる。この部の直前に輪状に走る強膜静脈洞(Schlemmn管)があり、眼房水は虹彩角膜間隙(Fontana腔)からこれを通って渦静脈に排出される。角膜縁をとり膜浅い強膜溝の深層にこれらの構造がある。眼球前部の強膜上板毛細血管網に富み、その炎症性変化を臨床的に「網膜充血」という。強膜前部は眼球結膜、後部は眼球鞘(Tenon鞘)によりおおわれる。内面は脈絡外隙を間に脈絡外板に接する。)
- 1010_11【Muscular fasciae of eyeball眼筋筋膜;筋膜(眼球の) Fasciae musculares bulbi】 Sheaths of the Tenon's capsule that are reflected on the tendons and bellies of the six extra-ocular muscles.
→(眼筋筋膜は6本の眼筋の腱および腹膜を被う眼球鞘の嚢。眼瞼筋膜のうち、上斜筋膜の延長部は上眼瞼挙筋に、下斜筋膜の延長部は下瞼板に付着する。内および外側直筋膜の延長部は、それぞれ涙骨と頬骨に付着し、内・外側抑制靱帯または内・ガイソクしたいと呼ばれる。)
- 1010_12【Levator palpebrae superioris muscle上眼瞼挙筋 Musculus levator palpebrae superioris】 o: Upper portion of optic canal and dural sheath of optic nerve. Its insertion tendon widens anteriorly and divides into a superior and an inferior layer. I: Oculomotor nerve.
→(上眼瞼挙筋は視神経管の縁の総腱輪の外側で視神経鞘から起こり、眼窩上壁のすぐ下で前頭神経の下を通り上眼瞼にいく。上眼瞼挙筋の腱は分離して上眼瞼挙筋浅板と上眼瞼挙筋深板に分かれる。前者は上眼瞼中を縁に向かって進み、後者は上瞼板筋の平滑筋細胞を伴って上眼瞼の瞼板に付く。下瞼板筋は下眼瞼板と下結膜円蓋の間の下眼瞼に存在する平滑筋層である。)
- 1010_13【Superior rectus muscle上直筋;上眼球直筋 Musculus rectus superior; Musculus retus bulbi superior】 o: Common tendinous ring, i: Along an oblique line passing anterior to the equator, 7-8 mm behind the corneal margin. Action: Elevation and intorsion of superior pole. I: Oculomotor nerve.
→(上直筋は、眼球の上部を斜め外側に進んで眼球の周囲に達し、そこで角膜縁の後方約7-8mmの胸膜に停止腱が放射上に胸膜組織と絡まるように停止する。目の動き:視線を外側かつ上方に向ける。)
- 1010_14【Retrobulbar fat; Orbital fat body眼窩脂肪体 Corpus adiposum orbitae】 Fat body filling the spaces around the extra-ocular muscles, eyeball, and optic nerve. It is bounded anteriorly by the orbital septum.
→(眼球は眼窩のなかで眼筋・血管・神経などとともに脂肪組織内に埋まっている。この脂肪組織を眼窩脂肪体という。)
- 1010_15【Optic nerve [II]視神経;視束[脳神経II] Nervus opticus; Fasciculus opicus [II]】 Nerve emerging medial to the posterior pole of the eyeball and extending to the optic chiasma.
→(視神経は脳神経の1つとして扱われてはいるが、実は前脳胞の延長部である。眼球網膜の第8層である神経細胞層中にある多極神経細胞から出る神経線維が集まって出来る神経である。すなわち杆状体細胞および錐体状細胞よりの興奮は網膜の内顆粒層の双極細胞に伝わり、それがさらに神経細胞層の細胞に連絡し、この神経細胞の出す神経突起である線維はまず眼球の後極よりやや内下方の一ヶ所に集まって、視神経円板を作り、強大な神経幹となり、網膜の続きである視神経鞘に囲まれて後内側に向かう。眼球から約15~20mm隔ったたところで、眼動脈の枝である網膜中心動脈およびこれに伴う静脈が外側から入り込み、その中軸を通って網膜に分布する。左右両側の視神経は眼窩後端の視神経管を通って頭蓋腔に入り、次第に相近づいて蝶形骨体上の視神経溝でほぼ半交叉をして視交叉を作り、そのつづきは視索と名が変わって間脳の外側膝状体および中脳の上丘などの第一次視覚中枢に達して、ここで終わる。網膜が眼胚から発達するので経路に相応する。ヒトの視神経は眼球網膜の神経細胞層中にある多極神経細胞から出る100万本以上の神経線維からなる。すなわち、杆状体細胞および錐体状細胞よりの興奮は網膜の内顆粒層の双極細胞に伝わり、それがさらに神経細胞層の細胞に連絡し、この神経細胞の出す神経突起である線維はまず眼球の後極よりやや内下方の一ヶ所に集まって、視神経円板を作り、強大な神経幹となり、網膜の続きである視神経鞘に囲まれて後内側に向かう。眼球から約15~20mm隔ったたところで、眼動脈の枝である網膜中心動脈およびこれに伴う静脈が外側から入り込み、その中軸を通って網膜に分布する。左右両側の視神経は眼窩後端の視神経管を通って頭蓋腔に入り、次第に相近づいて蝶形骨体上の視神経溝でほぼ半交叉をして視交叉を作り、そのつづきは視索と名が変わって間脳の外側膝状体および中脳の上丘などの第一次視覚中枢に達して、ここで終わる。)
- 1010_16【Inferior rectus muscle下直筋;下眼球直筋 Musculus rectus inferior; Musculus rectus bulbi inferior】 o: Common tendinous ring, i: Along an oblique line about 6 mm from the corneal margin. Action: Depression of the eye and extorsion of the superior pole. I: Oculomotor nerve.
→(下直筋は眼球下部で上直筋と同じ方向性をもち、眼球下部の周囲に角膜縁の後方約6mmの胸膜に放射状に停止する。目の動き:視線を外側かつ下方に向ける。)