169_00【Humerus上腕骨 Humerus】 The bone of the upper arm. →(上腕骨は典型的な長管状骨であるが、上端は半球状にふくらんで上内側を向き、下端は前後に扁平である。上端の半球状の部分は大きな関節面で上腕骨頭といい、その基部の周囲にある浅いくびれを解剖頚という。上腕骨頭の前外側には2個の隆起があり、口蓋側のものを大結節、前内側のものを小結節という。両結節の下部はともに下方へ細長く延び出して、それぞれ大結節稜および小結節稜を作っている。大小の結節および結節稜の間には上下に走る溝があり、結節間溝という。大小稜結節のすぐ下で、上腕骨体に移行する部位は骨折を起こしやすく外科頚とよばれる。上腕骨体は上腕骨の大部分を占める骨幹の部分で、上半は円柱状、下半は三角柱状であり、下端は前後に扁平である。上腕骨体の外側面には、第毛節稜のすぐ下からはじまり、上腕骨体の中央に達する三角筋粗面がある。この粗面の後下方には橈骨神経溝という浅い溝があり、上腕骨体の後面を状内側から下外側に向かってラセン状に走っている。上腕骨の下端部は著しく扁平に広がり、内側方に内側上顆、外側方に外側上顆が突き出しており、内側上顆の後面には尺骨神経溝がある。この二つの上顆の間には前腕の骨と連結する上腕骨窩があり、内側の上腕骨滑車と外側の上腕骨小頭に区別される。前者は中央が浅くくぼんだ円柱状で尺骨の滑車切痕と関節をつくり、後者は小半球状で橈骨頭窩に面している。上腕骨下端部前面には二つのくぼみがあり、滑車の上方にあるものを鈎突窩、小頭の上方にあるものを橈骨窩という。これは肘を強くまげたときに尺骨の鈎状突起および橈骨頭がはまりこむところである。また、後面には滑車のすぐ上方に楕円形の深いくぼみがあり肘頭窩という。これは肘をまっすぐに伸ばしたときに尺骨の肘頭がはまりこむ場所である。鈎突窩と肘頭窩はうすい骨質をはさんで前後面から互いに相接しているが、このうすい骨質に孔があいていることがあり、これを滑車上孔という。内側上顆の上方にはまれに小さい突起がみられることがあり、これを顆上突起という。顆上突起と内側上顆の間には靱帯が張り、その間を正中神経が通過する。また、この靱帯からは円回内筋の一部がおこる。)
169_01【Head of humerus上腕骨頭 Caput humeri】 →(上腕骨の上端では、まず半球状の大きな関節面があり、これが上腕骨頭で、その頂点は内側方を向くが、多少後上方にずれている。)
169_02【Lesser tubercle小結節(上腕骨の) Tuberculum minus】 Small protuberance on the anterior surface of the humerus for muscle attachment. →(上腕骨頭の外側には2個の隆起が見られる。そのうち前面に突出する小さい方が小結節(肩甲下筋が着く場所)である。)
169_03【Anatomical neck of humerus解剖頚(上腕骨の) Collum anatomicum humeri】 Area bounded by the head of the humerus at one end and the greater and lesser tubercles at the other. →(上腕骨頭の周囲は浅い溝で区切られているので、ここに軽度のくびれが生じている。このくびれが理論的な意味での解剖頚である。)
169_04【Greater tubercle of humerus大結節(上腕骨の) Tuberculum majus humeri】 Large protuberance on the lateral surface of the humerus for muscle attachment. →(上腕骨頭の外側には2個の隆起が見られる。そのうち外側方を向く大きいほうが大結節(棘上筋・棘下筋・小円筋が付く)である。)
169_05【Intertubercular sulcus; Bicipital groove結節間溝(上腕骨の) Sulcus intertubercularis】 Groove between the two tubercles for passage of the tendon of the long head of the biceps brachii muscle. →(上腕骨の結節間溝は上腕骨の大結節、小結節(および大・小の結節稜)の間には幅1cm弱の結節間溝(上腕二頭筋の長頭の腱が通る)が上下に走っている。結節間溝には上腕二頭筋長頭の腱が通り、その床に広背筋が付着している。)
169_06【Surgical neck of humerus外科頚(上腕骨の) Collum chirurgicum humeri】 Area distal to the greater and lesser tubercles. →(大・小結節と上腕骨頭のすぐ下方でこの骨の上端が円柱状の部分に移行するところは骨折を起こしやすい場所なので外科頚とよばれる。上腕骨の内側面(やや後方寄り)にはこの外科頚と解剖頚がほぼ一致する場所がある。)
169_07【Crest of lesser tubercle; Medial lip; Lesser tubercular crest小結節稜;内側唇(結節間溝の) Crista tuberculi minoris; Labium mediale】 Bony ridge extending distalward from the lesser tubercle that gives attachment to the teres major and latissimus dorsi muscles. →(小結節は数cm以上にも及ぶ長い稜線を下方に送っており、その稜線は小結節稜(大円筋と広背筋が付く)とよばれる。)
169_08【Crest of greater tubercle; Lateral lip of bicipital groove; Greater tubercular crest大結節稜;外側唇(結節間溝の) Crista tuberculi majoris; Labium laterale】 Bony ridge extending distalward from the greater tubercle that gives attachment to the pectoralis major muscle. →(大結節は数cm以上にも及ぶ長い稜線を下方に送っており、その稜線は大結節稜(大胸筋が付く)とよばれる。)
169_09【Deltoid tuberosity三角筋粗面(上腕骨の) Tuberositas deltoidea】 Roughened area on the anterolateral surface of the humerus near the middle of the shaft for attachment of the deltoid muscle. →(上腕骨の三角筋粗面は上腕骨のぼほ中央外側にある粗面で三角筋がつく。)
169_10【Nutrient foramen栄養孔 Foramen nutricium】 Opening of the nutrient canal at the surface of the bone. →(どの骨をとってみても、骨の表面には虫が食ったような孔がポツポツとあいている。これらのうち、こまかい孔やくぼみは主としてシャーピーの線維(骨膜から骨質に入り込む結合組織線維)が侵入する孔であるが、輪郭のハッキリした直径1~2mmの丸い穴は細い血管が骨に出入りするためのもので、栄養孔とよばれる。厳密にいえば、これらの孔の開口部が栄養孔で、骨に入り込んだトンネル状の部分は栄養管と名づけられる。この栄養孔ないし栄養管は骨質を貫いて髄腔(骨髄を収容する腔所)に達している。したがって、栄養孔からはいる動脈は主として骨髄を養うが、その枝は髄腔に近い深部の骨質も養う。また栄養孔から出てくる静脈は骨髄と骨からの炭酸ガスや老廃物を運ぶだけでなく、骨髄で形成された新しい赤血球や白血球を末梢血流に導き出す役割を持っているのである。なお骨の表層の緻密質は、骨膜の動脈叢から出る無数の細い枝で養われが、その進入路は非常に細くて肉眼的にはほとんど見分けられない。それぞれの骨における栄養孔の数や位置は、大体の原則はあるものの個体差ははなはだしい。たとえば椎骨では、栄養孔はとくに椎体の表面に多くみられるが、その数・位置・大きさなどは千差万別でる。なお、椎孔をのぞきこんでみると、椎体の後面にはとくに大きい栄養孔(ここを通る主な血管は椎体静脈)を見いだすことができる。)
169_11【Anterolateral surface of humerus前外側面;外側前面(上腕骨の) Facies anterolateralis humeri】 Area lateral to the prolongation of the crest of the greater tubercle. →(上腕骨の前外側面は上腕骨前面のうち結節間溝より外側の部分)
169_12【Lateral margin of humerus; Lateral border of humerus外側縁;橈側縁(上腕骨の) Margo lateralis humeri; Margo radialis humeri】 Its distal end is continuous with the lateral supracondylar ridge. →(上腕骨の外側縁は上腕骨の大結節から外側上顆に至る隆線。)
169_13【Medial border of humerus; Medial margin of humerus内側縁;尺側縁(上腕骨の) Margo medialis humeri; Margo ulnaris humeri】 Its distal end is continuous with the medial supracondylar ridge. →(上腕骨の内側縁は上腕骨内側にある鋭い骨縁。)
169_14【Anteromedial surface of humerus前内側面;内側前面(上腕骨の) Facies anteromedialis humeri】 Area medial to the prolongation of the crest of the greater tubercle. →(上腕骨の前内側面は上腕骨の前縁と内側縁の間の面。)
169_15【Coronoid fossa鈎突窩;烏口窩 Fossa coronoidea】 Depression on the anterior aspect of the humerus proximal to the trochlea that receives the coronoid process of the ulna during elbow flexion. →(上腕骨の下端部の前面には肘頭窩に相当して、これよりもはるかに上腕骨滑車の上に小さい鈎突窩とうくぼみがある(肘を曲げたときに尺骨の鈎状突起がはまる)。)
169_16【Radial fossa of humerus橈骨窩 Fossa radialis】 Anterior depression above the head of the humerus for reception of the head of the radius when the elbow joint is strongly flexed. →(上腕骨下端部の前面に上腕骨小頭の上に橈骨窩がある(強く肘を曲げたときに橈骨頭の前の縁が入る)。)
169_17【Lateral epicondyle of humerus; Lateral humeral epicondyle外側上顆;橈側上顆(上腕骨の) Epicondylus lateralis humeri; Epicondylus radialis humeri】 Protuberance located lateral to the head of the humerus that gives origin to the extensor muscles of the forearm. →(上腕骨小頭の外側にある隆起で、前腕伸筋が起こるところ。)
169_18【Capitulum of humerus上腕骨小頭 Capitulum humeri】 Rounded eminence on the condyle for articulation with the radius. →(上腕骨顆とは滑車の形をした上腕骨滑車と小半球状の上腕骨小頭からなる。上腕骨小頭は上腕骨の後面にはほとんど顔をだしていない。)
169_19【Trochlea of humerus上腕骨滑車 Trochlea humeri】 Cylindrical projection on the condyle for articulation with the ulna. →(上腕骨滑車は後面からもよく観察されるが、内側上顆の後面で上腕骨滑車のすぐそばを尺骨神経が上下に走るための浅い不明瞭な溝(尺骨神経溝)がある。)
169_20【Medial epicondyle of humerus; Medial humeral epicondyle内側上顆;尺側上顆(上腕骨の) Epicondylus medialis humeri; Epicondylus ulnaris humeri】 Protuberance that gives origin to the flexor muscles of the forearm. →(上腕骨の下端部では、まず内側方に内側上顆が、外側方に外側上顆が突出している。内側上顆は指先でつまめるほどのおおきな突出であるが、外側上顆の突出は軽度である。)