Spalteholz
HANDATLAS DER ANATOMIE DES MENSCHEN VON WERNER SPALTEHOLZ
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754
754_01
【Alveolar sacs
肺胞嚢
Sacculi alveolares】
→(肺胞嚢は肺胞管の先端にある袋状の行き止まりになった部分で数個の小室に分かれる。この小室が肺胞である。肺胞と他の肺胞との間は肺胞中隔alveolar septumと呼ばれる壁になっている。各肺胞の開口部は円形をしており、この部分の中隔の自由縁の間質には弾性線維、膠原線維、少しの平滑筋線維が輪状にとりまき、肺胞輪alveolar ringを形成する。)
754_02
【Pulmonary alveoli
肺胞
Alveoli pulmonis】
→(肺胞は呼吸器系の機能の中心であり、肺の実質として最も重要な部分である。肺胞は、呼吸細気管支、肺胞管、肺胞嚢にある薄壁の袋状拡張部で、そこを通して肺胞内の空気と肺毛細血管の間でガス交換が営まれる。基底膜basal laminaとその上をおおう上皮と、上皮の表面をさらにおおう被覆層と、気道部分の肺胞腔alveolar lumenとから成る。肺胞の外側には毛細血管網がとりまき、肺胞との間でガス交換の場を作っている。肺胞同士は非常に接近しており隣り合う2つの肺胞は、肺胞中隔内の1つの毛細血管網を、その接する面で両方から共有する。①肺胞上皮alveolar epithelium:肺胞の表面をおおう上皮をいい、3種類の上皮細胞で構成される。体重70kgの成人男子では2.6~3億個の肺胞がある。1個の肺胞の表面積は平均270,000μm2であるので、1人当たり全体で70~80m2の表面積を有することになり、広い面績で空気と接触するのである。肺胞上皮細胞はⅠ型細胞、Ⅱ型細胞、Ⅲ型細胞の3種類で、その構成はそれぞれ、39%、60%、1%以下、である。しかしⅠ型細胞の表面積は1個当たり2,290μm2で、Ⅱ型細胞のそれは63μm2である。したがって1個の肺胞の表面積の95.8%はⅠ型細胞が占めている(259,000m2)。Ⅰ型細胞Type I cellは、Ⅰ型肺胞上皮細胞Type I alveolar epithelial cell、扁平肺肺細胞squamous pneumocyte、A型細胞Type A cell、小肺胞細胞small alveolar cellなどの名がある。細胞質は非常に薄い扁平な細胞である。細胞質の幅は100μmにもなる。細胞は互いに閉鎖帯で接着し、間質内の毛細血管の内皮細胞endothelial cellと基底膜を介して接し、血液-空気関門blood-air barrierを形成する。この部分で、肺胞腔の呼吸から酸素分子が血液中の赤血球erythrocyteに渡されヘモグロビンhemoglobinと結合し動脈血になる。一方、静脈血中の血漿炭酸イオン(HCO3-)として溶け込んでいた二酸化炭素は、血液-空気関門から呼気中へ放出される。これがガス交換であり、血液が肺胞空へ漏れることはない。パラフィン切片上では、Ⅰ型細胞の核の部分しかみることができず、小さな細胞の印象を与えるが、実際には細胞質膜が毛細血管の上をおおっているのが電顕的に確認される。ヘマトキシリンで濃青色に染まった扁平な核が肺胞腔へ突出しているのがⅠ型細胞の核であり、肺胞中隔内へ向いているのが内皮臍傍のそれである。Ⅰ型細胞の機能は上記のガス交換以外に、血管と肺胞腔との間の蛋白質や多糖などの物質の輸送や肺胞腔内の高分子物質の取り込みendocytosisなどがある。血漿アルブミンや酵素の輸送には胞飲小胞pinocytotic vesicleが関与する。Ⅱ型細胞Type Ⅱ cellは、Ⅱ型肺胞上皮細胞Type Ⅱ alveolar epithelial cell、顆粒肺細胞granular pneumocyte、大肺胞細胞great alveolar cell、B型細胞Type B cellなどの名がある。立方細胞で細胞頂に短い微絨毛がある。細胞質内に電子密の高い層板小体lamellar bodyと呼ばれる分泌顆粒をもつ。この顆粒はリン脂質dipalmitoylphosphatidylcholineに富み、開口分泌により肺胞腔に分泌されて肺胞表面活性物質alveolar surfactantとなり肺胞被覆層の主成分になる。パラフィン切片では肺胞腔側に突出した円形の細胞であり、多くの場合泡末状の細胞質を有する細胞として認められる。Ⅱ型細胞を特徴付ける細胞小器官としてペロキシゾームが電顕的に確認される。Ⅱ型細胞は分裂能を有しており、他の細胞(Ⅰ型細胞)に分化し得るので、肺胞のリザーブ細胞reserve cellと言われている。Ⅲ型浅部Type Ⅲ cellは比較的最近(1960年代)に確認された細胞で、立方形のずんぐりした細胞の細胞頂に200nm幅の太い微絨毛(通常の微絨毛は100nm幅)を有する細胞である。光顕的に識別することは不可能である。ほとんどの場合、Ⅱ型細胞の傍らに位置する。電顕的に、細胞室内に10nmの張原細線維の束を見ることができる。胞体の基底側には求心神経終末が接しており、肺胞の化学受容器chemoreceptorと考えられている。肺胞被覆層alveolar lining layerは方法ではすべての細胞は空気に直接さらされているのではなく、肺胞被覆層によって保護されている。肺胞被覆層は通常の浸漬固定標本では溶出して観察できないが、肺動脈からの還流固定によって保存され、主に電顕的に観察できる。肺胞被覆層がよく保存された状態の時は、肺胞内腔はほぼ完全な球形を呈する。肺胞被覆層の厚さは変化に富み、血液-空気関門部のⅠ型細胞の薄膜状の細胞質上では50~100nmの薄さであるが、Ⅰ型細胞とⅡ型細胞との接着部分のくびれでは数μmの厚さに達する。電顕で観察すると、肺胞腔に面したオスミウム好性な表面薄膜osmiophilic surface filmとその下部で上皮上皮をおおう基層base layerとから成る。表面薄膜は不飽和脂肪酸を含むリン脂質の単層膜monolayerでミセルを形成し、表面活性効果を発揮して肺胞に含まれる水分の表面張力をうち消すことで、肺胞がつぶれるのを防いでいる。このような性質を有するリン脂質を肺胞表面活性物質と呼ぶ。基層の部分にはリポ蛋白質、アルブミン、リン脂質、酸性ムコ多糖、硫酸化糖蛋白質が検出される。肺胞被覆層の生成には主にⅡ型細胞が関与しているが、アルブミンや一部の硫酸化糖蛋白質、酸性ムコ多糖体の供給はⅠ型細胞が分担する。)
754_03
【Alveolar ducts
肺胞管
Ductuli alveolares】
→(呼吸細気管支1本から数本の肺胞管が分岐する。肺胞管壁には1本の肺胞管当たり20~60個の肺胞が出現し、肺胞管壁の縦断面における上皮の連絡性は消失する。隣り合う肺胞管の境界部分には肺胞管粘膜が島状またはコブ状に残る(立体面ではラセン状)。この部分の上皮は未分化な立方細胞(分化の移行型を示すと思われる)であるが、末梢の肺胞嚢に近づくと肺胞でみられるような立方細胞(パラフィン切片のHE染色では泡末状細胞質を有す)と扁平細胞が出現する。上皮下にはラセン筋(平滑筋)と膠原線維、弾性線維が支持層を形成する。肺胞管には肺動脈の伴行はなくなり、毛細血管blood capillaryのみが付随する。肺胞管の末端で、1本の肺胞管から2~5個の肺胞嚢が房状に形成される。この肺胞管から肺胞嚢への連絡の部分を房または前房という。各肺胞嚢の入口には、平滑筋と膠原線維、弾性線維が輪状にとりまく。)
754_04
【Respiratory bronchiole
呼吸細気管支;呼吸性細気管支
Bronchiolus respiratorius】
→(終末細気管支の末端になると、上皮の連続性が失われ、ところどころに肺胞の形成がみえられる。肺胞においてガス交換、すなわち機械的呼吸が行われる故、呼吸細気管支の名がある。①粘膜上皮:呼吸細気管支の上皮は単層線毛立方上皮であるが、線毛細胞は少なく、末梢になると単層無線毛立方上皮になる。線毛細胞の方がクララ細胞より丈が低い。粘膜ヒダは軽度になる。②結合組織:粘膜固有層は薄い結合組織だけになりラセン筋が接し、膠原線維、弾性線維が分布する。粘膜下組織は肺胞域の間質と接し、外膜はない。間質には貪食顆粒をもつ大食細胞macrophageが多数みられることが多い。)
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