884
- 884_01【Corpus callosum脳梁 Corpus callosum】 Transverse nerve fibers connecting the two cerebral hemispheres at the base of the longitudinal cerebral fissure.
→(脳梁は左右の大脳皮質、ことに新皮質を結合する線維の集合したもので、系統発生的には最も新しく、ヒトでは非常に発育がよい。その前後経はほぼ7.7cmである。脳梁は正中断では全体としては釣針状で、4つの部分が区別される。後端部は膨大し、脳梁膨大といい、その前方に続いて水平に走る部分を脳梁幹とよぶ脳梁はその前端では強く屈曲し、脳梁膝をつくる。これはさらに後下方にくちばしのように尖って脳梁吻となり、しだいに薄くなって終板に続く。)
- 884_02【Septum pellucidum透明中隔 Septum pellucidum】 Thin dual layer of fibers stretched between the corpus callosum and fornix with an irregular slitlike space between them. It divides the anterior horns of the lateral ventricle from each other.
→(透明中隔は左右の側脳室前角を分離する一対の薄板である透明中隔板と、その間の狭い間隙である透明中隔腔からなる。透明中隔腔は成人ではしばしば閉鎖し、左右の透明中隔板が密着する。透明中隔腔は脳室ではなく、その内面には上皮細胞層が証明されない。透明中隔板は脳梁と脳弓の間に張られているが、発生学的には終脳胞の内側面の一部が脳梁の発達のため前頭葉から分離されたもので、痕跡的な大脳皮質の構造を示す。透明中隔は元来の中隔野の後部の一部で、中隔野には透明中隔のほか、前交連と終板の前にある終板傍回、梁下野、中隔核などが含まれる。)
- 884_03【Lamina of septum pellucidum透明中隔板 Lamina septi pellucidi】 Paired layer forming the septum pellucidum. It forms the lateral wall of the cave of septum pellucidum.
→(透明中隔板は透明中隔の一対の板。透明中隔腔の側壁をなす。)
- 884_04【Frontal horn of lateral ventricle; Anterior horn of lateral ventricle前角;前頭角(側脳室の) Cornu frontale ventriculi lateralis; Cornu anterius ventriculi lateralis】 Portion extending anteriorly from the interventricular foramen. It is bounded medially by the septum pellucidum, laterally by the head of caudate nucleus, superiorly by the body of corpus callosum, and anteriorly and inferiorly by the genu and rostrum of corpus callosum, respectively.
→(側脳室の前角は室間孔より前方の部分、内側壁は透明中隔、外側壁は尾状核頭、前壁及び上下壁は脳梁によってつくられる。)
- 884_05【Cave of septum pellucidum透明中隔腔 Cavum septi pellucidi】 Enclosed cavity of variable size between the two laminae.
→(透明中隔腔は左右の透明中隔板の間に挟まれた大きさ不定の腔。ヒトでは10%以下の率で存在し、第3脳室に連なる。)
- 884_06【Column of fornix脳弓柱 Columna fornicis】
→(脳弓柱は没部と出部からでる。没部は左右の乳頭体から始まり、視床下部内を前上方に走り、前交連の後ろで出部に移行する。出部は大脳半球の正中断面で見える部分で、上行するとともにしだいに左右が互いに近づき、ついで後背側方に走り、前方は透明中隔板と癒着している。出部は脳梁幹の下で脳弓体に移行する。)
- 884_07【Head of caudate nucleus尾状核頭 Caput nuclei caudati】 Anterior portion of the nucleus. It forms that lateral wall of the anterior horn of lateral ventricle.
→(尾状核頭は側脳室の前角の中に膨隆し、その外側壁をなし、視床の前方に位置する。尾状核頭は後方にしだいに小さくなり、視床の出現とともにその背外側に位置するようになり、尾状核尾に移行する。)
- 884_08【Internal capsule内包 Capsula interna; Capsula interna nuclei lentiformis】 Band of nerve fibers lying medial to the lentiform nucleus and medial to the thalamus and caudate nucleus.
→(内包は外側のレンズ核と内側の尾状核および視床との間にある、大きい線維束の集団で、その大部分は下方に集まって大脳脚に移行する。内包は大脳半球の水平断でみると、内包前脚と内方後脚からなり、これらは鈍角をなして交わり、内包膝の名で知られる接合部を形成する。内包前脚はレンズ核と尾状核の間にあり、また内包後脚(レンズ核視床部)はレンズ核と視床の間にある。内包のレンズ後部は尾方に、レンズ核の少し後ろにまで伸びる。この尾方の領域にはレンズ核の下を通って側頭葉に達する一群の線維があり、これらはまとまって内包のレンズ下部を形成する。①視覚、聴覚、体性感覚放線などを構成して視床から大脳皮質へ上行している線維と、②大脳皮質から視床、視床腹側部、中脳、後脳、脊髄へ下降している線維から構成される。)
- 884_09【Putamen被殻 Putamen】 Lateral telencephalic part of the lentiform nucleus.
→(被殻はレンズ核の外側部を形成し、外側髄板によって淡蒼球の外節とへだてられている。島皮質とは最外包、前障、外包によってわけられる。被殻の構造は尾状核とまったく同様で、太い有髄線維をほとんど含まず、主として小さい神経細胞からなるが、散在性の大細胞を含む。被殻と尾状核は発生学的にみると、同一の細胞群が内包の発達によって隔てられたもので、両者の間には互いに結合する灰白質の線条が多数見られる。そのため、両者をあわせて線条体または新線条体と呼ぶ。線維連絡も尾状核と原則的に等しい。霊長類において動物が高等になると、相対的な意味で尾状核の体積が減少し、被殻の体積が増大するといわれている。)
- 884_10【External capsule外包 Capsula externa】 White substance between the claustrum and lentiform nucleus.
→(外包は前障と被殻の外表面とのあいだには幅の狭い白質の層があり、大脳皮質から被殻に達する神経線維はこの線維層を通る。)
- 884_11【Claustrum前障 Claustrum】 Layer of gray substance between the lentiform nucleus and insular cortex.
→(前障はレンズ核と島との間にある、内側が凹面をなす板状の核で、腹側方に厚くなる。この核とレンズ核との間には外包があり、また島の皮質との間には最外包がある。これらは狭い白質で、大部分は連合線維から、一部は交連および投射線維からなる。前障は種々の視床核、扁桃体などから線維を受け、大脳皮質に広く投射する。前障は以前は線条体とともにいわゆる基底核に数えられたり、あるいは皮質層の付け足しとして島皮質に属するものとされた。しかしながら、発生学的ならびに比較解剖学的研究によって、前障は発生の途中で位置がずれた古皮質の細胞群であることが証明されている。前障はその広い底の所で古皮質の領域へ移行する(すなわち梨状前野や扁桃体の外側核へ)。頭頂葉、側頭葉および後頭葉の皮質からの、無髄線維が局在的配列をなして前障に終わると言われている。前障の機能についてはわかっていない。)
Reil, Island of
- 884_12Reil, Island of【Insula; Insular lobe島;島葉 Insula lobus; Lobus insularis】 Portion of the cerebral cortex situated in the lateral cerebral fossa that is originally uncovered but is overlapped during ontogenesis.
→(ライルの島とも呼ばれる。外側溝の深部にある大脳皮質で、その表面は前頭葉、頭頂葉および側頭葉によりおおわれている。島をおおっているこれらの大脳葉の部分を前頭弁蓋、前頭頭頂弁蓋、および側頭弁蓋という。すなわち、弁蓋は島をおおう外套部である。島の周囲は輪状溝により囲まれ、これにより弁蓋と境される。この溝は島の下端部では欠き、この部分を島限とよぶ。ほぼ胎生17週からこの部はその周囲が厚くなるため、陥没してその輪郭が明瞭になり、第19週ごろから前頭葉、側頭葉および頭頂葉の発達につれてしだいにこれらによっておおわれ、生後は全くかくれてしまう。このように島の表面には前頭葉、頭頂葉、および側頭葉の部分が延びて来て、外側溝後枝の上下唇をなし、島を被っている。島は後上方から前下方に走る島中心溝によって後方の1~2個の長回と前方の4~5個の短回に分かたれる。Reil, Johann Christian (1759-1813)オランダ人解剖学者。精神病理学者。大脳のライル島を記述(「Exercitationum anatomicarum fasciculus primus.etc」, 1796)、生体の生理学機能の、化学的表現としての生命力を提唱(「Von der Lebenskraft」, Arch. Physiol, (Halle), 1796, 1,8-162)。最初の生理学雑誌「Arch. Physiol.」と最初の精神病学雑誌「Magazin fur Nerven heilkundle」を刊行。)
Sylvian fissure, sulcus
- 884_13Sylvian fissure, sulcus【Lateral sulcus; Lateral cerebral sulcus外側溝;外側大脳裂;シルヴィウス溝 Sulcus lateralis cerebri; Fissura cerebri lateralis (sylvii)】 Groove running between the frontal and parietal lobes (above) and the temporal lobes (below).
→(シルビウス裂溝ともよばれる。外側溝は大脳半球の底面における陥凹である大脳外側窩に始まり、外包にすすんで半球外側面に現れ、その主部は後枝として後上方にすすみ、一方は前頭葉および頭頂葉と他方は側頭葉との境をなす深い溝である。半球外側面に現れたところで2小枝、すなわち前に向かう前枝と、上行する上行枝を出す。外側溝の奥には島がある。オランダの医学者Francis Sylvius (1614-1672)による。ちなみに中脳水道のシルビウスは別人である。)
- 884_14【Pallidum; Globus pallidus; Paleostriatum淡蒼球;古線条体;旧線条体 Pallidum; Globus pallidus】 Structure arising in the diencephalon and forced by the internal capsule away from its original site, with the greater portion of the site giving rise to the subthalamus.
→(淡蒼球はレンズ核の最内側部を占め、被殻よりは小さい灰白質。垂直に走る板状の有髄神経線維(外側髄板)によって外側部の被殻と隔てられており、また、内側髄板によって内節と外節に分かれる。系統発生学的に線条体よりは古く、下等動物でよく発達している。発生に関しては、「間脳」性とするものののほか、その一部を「終脳」由来とするものがある。鉄反応が強陽性にでることが知られている。淡蒼球には大型の紡錘形ニューロンが多く、樹状突起は無棘で、長く髄板に平行して円板状に分枝する。淡蒼球の大型ニューロンの定量分析によれば、これらの細胞は単一のニューロン群に属する。淡蒼球の内節と外節の大型ニューロンには、なんら形態学的又は化学的な差異は見られない。ヒトでは外節は淡蒼球全体の約70%を占め、細胞密度が最も高い。淡蒼球の内節、外節の大型ニューロンはすべてGABA作働性である。淡蒼球ニューロンの軸索は少数の側枝を出している。淡蒼球の内側・外側髄板に存在する大型のコリン作働性ニューロンは、淡蒼球の腹側に存在する無名質のつづきである。多数の有髄線維束が淡蒼球を横走しているので、新鮮な脳では被殻や尾状核に比べ色が淡く見える。淡蒼球への求心性神経線維のもっとも主な起始は尾状核と被殻である。また、視床下核や黒質からの神経線維が内包を横切って主として内節に入る。淡蒼球が大脳皮質からの求心線維を受けるかどうかについては不確かである。視床からの求心線維については否定的な見解が多い。淡蒼球からおこる遠心性神経線維の主なものは視床と視床下核におわる。これらのうち、内節の腹側から出る神経線維は淡蒼球の腹側表面に集合してレンズ核ワナを形成し、内方後脚の腹内側部を背方にまわり、背尾側方へ走ってフォレル野に達する。一方、内節の背側からでる神経線維は淡蒼球の背内側部からおこる。これらは多数の小線維束として内包の腹側部を横切り、不確帯の腹側部に集合してレンズ核束(H2)を形成する。ついで、レンズ核束はフォレル野に入り、ここでレンズ核ワナの神経線維と一つになり、不確帯の内側端を取り囲むように腹側から背側にまわり、視床束(H1)を形成する。視床束は不確帯の背側を吻外方へ走り、視床に入って主として前腹側核(VA)、外腹側核(VL)、正中中心核(CM)などに分布する。なお、視床束には小脳視床線維も含まれている。淡蒼球から視床下核にいたる神経線維は主として外節からおこり、内包の尾側レベルにおいてその腹内側部を横切って視床下核に達する。淡蒼球からおこり中脳被蓋(脚橋被蓋核)や黒質へ向かう遠心性神経線維もある。)
- 884_15【Anterior commissure前交連 Commissura anterior】 Transverse nerve fibers between the anterior parts of the right and left cerebral hemispheres. It lies posterior to the lamina terminalis.
→(間脳の前交連は第三脳室の前壁をつくる終板の後ろにある横走線維束である。小さくて左右の嗅球を連結する前部と、左右の側頭葉を連結する大きな後部からなる。)
- 884_16【Anterior perforated substance前有孔質;嗅野;嗅覚野 Substantia perforata anterior; Substantia perforata rostralis; Area olfactoria】 Perforated area between the olfactory striae produced by the passage of cerebral vessels. It transitions into the gray substance of the tuber cinereum and paraterminal gyrus.
→(前有孔質は嗅脳後部の大部分を占め、内側、外側嗅条と視索が嗅回をなしている。視床、大脳核、内包などにいたる小血管が出入りするため多数の孔が明いている。後縁はブローカの対角帯により形成される。)
- 884_17【Amygdaloid body; Amygdaloid complex扁桃体;扁桃体複合;扁桃核 Corpus amygdaloideum; Nucleus amygdalae】 Group of nuclei connected with the cerebral cortex and lying in the dorsomedial pole of the temporal lobe anterior to the inferior horn of lateral ventricle. It belongs partly to the olfactory tract, partly has autonomic nervous system functions, and partly influences emotional states.
→(扁桃体または扁桃核はアーモンドに似た形をした系統発生学的に古い核で、原始線条体とも呼ばれ、辺縁系における重要な神経核をなしている。扁桃体は側脳室下角の前端部の前にあり、一部その前内側壁と前背側壁を作り、前頭断では大きい不規則な卵円形の細胞集団をなし、レンズ核の腹側にある。この核は多数の亜核からなり、系統発生学的に古い内側核群とやや新しい外側核群に分かたれる。扁桃核は周辺の皮質や嗅球、その他の嗅脳部、中隔野などから線維を受けるが、海馬からの直接の線維はないらしい。扁桃核の遠心路には背側の分界条と腹側の遠心系がある。分界条は扁桃核から起こって尾状核尾の内側縁に沿って上方、ついで前方に向かい、視索前部、視床下部の前核および腹内側核に分布する。腹側遠心系はレンズ核の腹側を内側方、前方に走り、視索前部、中隔野、尾状核頭腹側部、嗅脳後部、前交連などになどに入り、一部の線維は内側前脳束に入って主として視床下部外側核に分布し、また一部は下視床脚を通って視床内側核に入る。扁桃体は視床・視床下部や前頭葉・側頭葉の新皮質との間に複雑な線維連絡をもつ。扁桃体は本能・情動による行動の中枢で、その線維連絡によりいろいろな体性および内臓機能と関連すると考えられている。)
- 884_18【Optic chiasm; Optic chiasma視神経交叉;視交叉;視束交叉 Chiasma opticum; Chiasma fasciculorum opiticorum】 Decussation of medial optic nerve fibers between the optic tract and optic nerve.
→(視神経交叉は視床下部の漏斗の吻側にある扁平な線維板で、視神経線維が交叉しているところ。視交叉の背側から両側に開いて出る線維束は視索である。第三脳室の終板と灰白隆起の間で視交叉は第三脳室の底の一部を成す(視交叉陥凹)。視交叉はその上面で(終板の前方)前交連動脈と接し、下面はトルコ鞍の鞍隔膜の上に乗っている。眼球網膜の鼻側半からの線維は交叉して対側へ行き、側頭半からの線維は同側を交叉せずに後方へすすむ。下垂体前葉から発生する腫瘍が視交叉を圧迫することがある。)
- 884_19【Third ventricle第三脳室 Ventriculus tertius】 Diencephalic part of the cerebral ventricular system. It extends from the lamina terminalis to the cerebral aqueduct.
→(第三脳室は左右の間脳の間にある背腹方向にスリット状を示す腔である。前壁は終板と前交連によってつくられる。前上部には室間孔が開口し、左右の側脳室と交通し、後方は中脳水道と連絡する。後壁は松果体に入り込む松果体陥凹がみられ、下壁は視床下部によってつくられ、視交叉陥凹、漏斗陥凹がみられる。外側壁を形成している視床と視床下部の境には視床下溝が走る。なお、脳室の前上方部に第三脳室終脳部とよばれる部分がある。)
- 884_20【Supra-optic recess; Optic recess視索上陥凹;視交叉上陥凹;視束陥凹;視交叉陥凹 Recessus supraopticus; Recessus opticus】 Recess of the third ventricle above the optic chiasm.
→(視交叉上陥凹は視交叉の上での第三脳室から伸びた陥凹。)