903
- 903_01【Oculomotor nerve [III]動眼神経[脳神経III] Nervus oculomotorius [III]】 Nerve containing motor and parasympathetic fibers that exits the oculomotor sulcus and passes through the superior orbital fissure into the orbit.
→(動眼神経の主成分は動眼神経主核から出る体性運動性のもので外側直筋および上斜筋以外の眼筋を支配する。このほかに副交感性の動眼神経副核[Edinger-Westphal核]から出る線維が加わる。以上の2核から出る線維は多数の根をつくって大脳脚内側溝から出て1神経幹となり、滑車神経、外転神経および眼神経とともに、蝶形骨体の両側にある海綿静脈洞の上壁に沿ってすすみ、上眼窩裂を通って眼窩内に入り、上下の2枝に分かれる。上枝は上瞼挙筋および上直筋に、下枝は内側直筋、下直筋および下斜筋に分布する。また下枝からはきわめて短い動眼神経からの根が出て、毛様体神経節に入るが、これは動眼神経副核から出て、下枝を通って毛様体神経節に入る副交感線維にほかならない。)
- 903_02【Trochlear nerve [IV]滑車神経[脳神経IV] Nervus trochlearis [IV]】 Nerve exiting on the dorsal side, caudal to the tectal plate. It supplies the superior oblique muscle.
→(滑車神経は脳神経中最少のもので、滑車神経核からでて上斜筋を支配する鈍体性運動性神経である。この神経は脳の背側から脳をでる唯一の脳神経で、下丘のすぐ後方で、上小脳脚と上髄帆小帯との間から出て、大脳脚をめぐり、(側頭骨)錐体尖の近くで硬膜を貫いて海綿静脈洞の上壁に達し、動眼神経の外側から上側に向かって前進し、上眼窩裂を通って眼窩内に入り、上直筋、上眼瞼挙筋起始部の上を前内側にすすんで、上斜筋に分布する。)
- 903_03【Trigeminal nerve [V]三叉神経[脳神経V] Nervus trigeminus [V]】 Nerve innervating the first pharyngeal arch. The fifth cranial nerve, comprised of two groups of fibers exiting laterally from the pons, innervates the muscles of mastication and supplies sensory information for facial sensation.
→(三叉神経は知覚部と運動部とからなる混合神経で脳神経中もっとも大きい。その知覚部は頭部および顔面の大部分に分布し、運動部は深頭筋、咀嚼筋、顎舌骨筋および顎二腹筋の前腹を支配する。その核は菱脳中に位置し、体性運動性の三叉神経運動核、知覚性の三叉神経主知覚核および三叉神経脊髄路核ならびに咬筋の筋知覚を司るといわれる三叉神経中脳路核などに分けられるが、これから出る線維のなかで、知覚神経線維は集まって知覚根[大部]を作り、運動神経線維は集まって運動根[小部]を作り、橋と中小脳脚との移行部において脳を去る。知覚根は側頭骨錐体部の三叉神経圧痕の上で大きい三叉神経節[半月神経節]を作り、これを出てから眼神経、上顎神経、下顎神経の3枝に分かれる。運動根は三叉神経節の下面の内側に沿って前進し下顎神経に合する。三叉神経は3枝に分かれた後にも各々の神経節を有し、眼神経には毛様体神経節、上顎神経には翼口蓋神経節、下顎神経には耳神経節および顎下神経節がある。これらのうち三叉神経節は脊髄神経節と同じ構造で体性神経系に属するが、他の神経節はその構造上から自律神経系に属するものである。)
- 903_04【Abducent nerve[VI]; Abducens nerve [VI]外転神経[脳神経VI] Nervus abducens [VI]】 Cranial nerve emerging from the brain at the angle between the pons and medulla oblongata. It penetrates the dura mater at a point half as high as the clivus, continues laterally in the cavernous sinus, and then passes through the superior orbital fissure into the orbit where it supplies the lateral rectus.
→(外転神経は第六脳神経である。外側直筋に至る鈍体性運動性神経で、その起始核たる外転神経核は橋の中にあり、これから出る神経は橋の後縁で正中線に近く表面に現れ、内頚動脈の外側を通って上眼窩裂から眼窩に入り、外側直筋の内側からそのなかに入る。)
- 903_05【Facial nerve [VII]顔面神経[脳神経VII] Nervus facialis [VII]】 Nerve arising from the second pharyngeal arch. It emerges from the brain at the pontocerebellar angle between the pons and inferior olive and passes with the vestibulocochlear nerve to the petrous part of the temporal bone, which it exits via the stylomastoid foramen. It supplies the muscles of facial expression.
→(顔面神経は第七脳神経である。狭義の顔面神経と中間神経とを合わせたもので、混合神経である。その主部をなす狭義の顔面神経は運動神経で、起始核たる顔面神経核は延髄上部から橋背部にかけてあり、これから出る神経は橋の後縁で脳を去り、内耳神経とともに内耳道に入り、その底で内耳神経と分かれ、内耳神経と分かれ、顔面神経管孔を経て顔面神経管に入り、間もなく殆ど直角をなして後外側に曲がる。この曲がるところは鼓室前庭窓の後上で顔面神経膝といい、ここに膝神経節がある。ついで弓状に後下方へ走り、茎乳突孔を通って頭蓋底外面に出て耳下腺中に入り、耳下腺神経叢を作った後、つぎつぎに多くの枝を出して広頸筋およびこれから分化したすべての浅頭筋(表情筋)、茎突舌骨筋、顎二腹筋後腹、アブミ骨筋などに分布する。以上の運動神経線維とは別に、膝神経節中の神経細胞から出る味覚神経線維が集まって、舌下腺および顎下腺に至る副交感性の分泌線維とともに中間神経を作り、広義の顔面神経の一部をなす。膝神経節細胞は偽単極性で、神経細胞より出る一条の突起はただちに分かれて、末梢および中枢の2枝となる。中枢枝は顔面神経に密接しつつ内耳道を経て脳に入って孤束核に終わり、末梢枝は、いわゆる上唾液核から出て舌下腺、顎下腺に至る副交感性の分泌腺にとともにいわゆる鼓索神経を作り、途中で再び分泌線維と分かれて舌神経に入り、舌体に分布して味覚を司る。)
- 903_06【Cochlear nerve蝸牛神経;聴神経;蝸牛神経根 Nervus cochlearis; Nervus acusticus; Nervus octavi; Pars cochlearis; Radix nervi cochlearis; Radix nervi cochlearis】 Collection of fibers passing from the cochlea to the cochlear ganglion.
→(蝸牛神経は内耳神経の一部をなす神経で、内耳道を通り蝸牛に達すると神経細胞体の集団(ラセン神経節、時に蝸牛神経節ともよばれる)を含むようになる。蝸牛神経の末梢枝は蝸牛内のラセン器に達する。ラセン神経節の神経細胞体から出る授受突起が蝸牛神経末梢枝の中を走行し、神経突起が蝸牛神経本幹および蝸牛根を経て中枢の蝸牛神経核に向かう。すなわち蝸牛神経は聴覚を伝える神経であるということができる。なお球形嚢に分布する神経として球形嚢神経があるが、これも聴覚の一部を伝えるする説が有力である。)
- 903_07【Falx cerebri; Cerebral falx大脳鎌 Falx cerebri】 Crescent-shaped portion of the dura mater projecting into the longitudinal cerebral fissure.
→(大脳鎌は大脳縦裂の中に入り、下方に刃の部を向けた鎌状をなし、前方は鶏冠にはじまり、上縁は前頭稜および上矢状洞溝に沿って後走し、内後頭隆起に付く。上縁はその中に上矢状静脈洞を含む。下縁は自由縁で、大脳縦裂の中で脳梁のやや上方を走り、その中に狭い下矢状静脈洞を含む。大脳鎌の後下縁は小脳テントの上面と癒着し、その癒着縁は直静脈洞を含む。)
- 903_08【Tentorium cerebelli; Cerebellar tentorium小脳テント;小脳天幕 Tentorium cerebelli】 Dural septum stretched over the cerebellum between the superior border of petrous part of temporal bone and the transverse sinus. It supports the occipital lobe.
→(小脳テントは後頭骨の内後頭隆起とその左右にのびる横洞溝からおこる脳硬膜は小脳上面に広がって中脳を扼し、前方は蝶形骨の前床突起に付着し、側方には側頭骨の錐体上縁に付着する。小脳の上面をおおうところから小脳テントの名がある。つまり、頭蓋腔は小脳テントにより大脳を入れる上ならびに中頭蓋窩と、小脳、橋、延髄を入れる下頭蓋窩に二分される。そして同時に小脳テントは大脳と橋、延髄を結合する中脳が通れるだけの間隙をつくっているわけで、中脳を扼している小脳テントの部分をテント切痕とよぶ。)
- 903_09【Tentorial notch; Incisura of tentoriumテント切痕;天幕切痕 Incisura tentorii】 Opening in the tentorium cerebelli for passage of the brainstem.
→(テント切痕は天幕切痕とも呼ばれる。小脳テントの内側は遊離縁となり、テント切痕を形成する。この硬膜は反転して、左右の大脳半球のために頭蓋腔を左右2つの部屋に分け、後部は小脳と下位の脳幹が入る一つの部屋をつくる。テント切痕はこれらの部屋の唯一の開口部であり、脳幹がこのテント切痕を通る。)
- 903_10【Middle cranial fossa中頭蓋窩 Fossa cranii media】 Fossa that is bounded by the lesser wing of the sphenoid and by the superior border of the petrous part of the temporal bone.
→(中頭蓋窩は蝶ネクタイのような形をした窩みで、主として蝶形骨からなるが、後外側部を構成するのは側頭骨である。中頭蓋窩の中央部は蝶形骨体の上面からなり、中頭蓋窩の中で特に隆起している。その前方は鞍結節、後方は鞍背として高まり、中央がくぼんでトルコ鞍となる。その中央に下錐体をのせる下垂体窩がある。鞍結節の前の視神経交叉溝の両側は視神経管に達する。両側部は蝶形骨大翼と側頭骨鱗部の大脳面、および岩様部(錐体)前面からなり、大脳側頭葉を容れる深いくぼみとなる。脳隆起と指圧痕が著しく、また、棘孔からひろがる動脈溝、静脈溝(中硬膜動静脈を容れる)が明瞭である。外側部が特に前方に陥入する前端、すなわち小翼と大翼の間に上眼窩裂がある。トルコ鞍の側面には内頚動脈溝が前後に走り、その後端は蝶形骨と岩様部(錐体)尖の間にある破裂孔に至る。内頚動脈溝の外側に、前方より後外方に向かって、正円孔、卵円孔、棘孔が並ぶ。破裂孔から後外方に、大翼と錐体の間にある蝶錐体裂がつづく。その内後方にある大錐体神経溝の前端は破裂孔に達し、小錐体神経溝は蝶錐体裂の後端から卵円孔に向かう。錐体前面には、そのほか、三叉神経圧痕、弓状隆起、鼓室蓋がみられる。中頭蓋窩は多くの管、孔によって蓋部と交通する。①視神経管により眼窩へ(視神経および眼動脈)、②上眼窩裂により眼窩へ(動眼神経、滑車神経、外転神経、眼神経、上眼静脈)、③正円孔により翼口蓋窩へ(上顎神経)、④卵円孔により側頭下窩へ(下顎神経)、⑤棘孔により側頭下窩へ(中硬膜動静脈および下顎神経硬膜枝)、⑥破裂孔の後壁に開く頚動脈管により頭蓋底外面へ(内頚動脈は破裂孔を通らず、頚動脈に至る)、⑦破裂孔より頭蓋底外面へ(ただし、生体では破裂孔の底面は線維軟骨で閉鎖され、その上に頚動脈が乗る。大錐体神経も軟骨を貫かず、翼突管に入る)。)
- 903_11【Posterior clinoid process後床突起 Processus clinoideus posterior】 Protuberance on both sides of the dorsum sellae.
→(鞍背の外側端がつくる小さい突起を後床突起という。)
- 903_12【Infundibulum of pituitary gland漏斗(下垂体の) Infundibulum】 Pituitary stalk.
→(下垂体の漏斗は視床下部の腹側方の突出部とその中にある第三脳室の陥凹によって形成される。漏斗の最も遠位に突出した部分が下垂体後葉(神経下垂体)であり、漏斗の突出部と正中隆起を結合する組織は漏斗柄とよばれる。)
- 903_13【Diaphragma sellae; Sellar diaphragm鞍隔膜 Diaphragma sellae】 Small dural fold stretched horizontally between the clinoid processes over the pituitary gland.
→(トルコ鞍では下垂体は海綿静脈洞に囲まれている。ここでは脳硬膜の外葉は骨膜として頭蓋骨面側面をおおうが、内葉はトルコ鞍外側縁で立ち上がって海綿静脈洞を覆って漏斗板に達し、反転して下垂体を包む。下垂体柄を扼している脳硬膜内葉の部分を鞍隔膜とよぶ。この隔膜があるために脳出しで下垂体が脳をともに取り出せない。(解剖学辞典:金光晟))
- 903_14【鞍隔膜孔;隔膜孔 Foramen diaphragmatis [sellae]】
→(")
- 903_15【Optic nerve [II]視神経;視束[脳神経II] Nervus opticus; Fasciculus opicus [II]】 Nerve emerging medial to the posterior pole of the eyeball and extending to the optic chiasma.
→(視神経は脳神経の1つとして扱われてはいるが、実は前脳胞の延長部である。眼球網膜の第8層である神経細胞層中にある多極神経細胞から出る神経線維が集まって出来る神経である。すなわち杆状体細胞および錐体状細胞よりの興奮は網膜の内顆粒層の双極細胞に伝わり、それがさらに神経細胞層の細胞に連絡し、この神経細胞の出す神経突起である線維はまず眼球の後極よりやや内下方の一ヶ所に集まって、視神経円板を作り、強大な神経幹となり、網膜の続きである視神経鞘に囲まれて後内側に向かう。眼球から約15~20mm隔ったたところで、眼動脈の枝である網膜中心動脈およびこれに伴う静脈が外側から入り込み、その中軸を通って網膜に分布する。左右両側の視神経は眼窩後端の視神経管を通って頭蓋腔に入り、次第に相近づいて蝶形骨体上の視神経溝でほぼ半交叉をして視交叉を作り、そのつづきは視索と名が変わって間脳の外側膝状体および中脳の上丘などの第一次視覚中枢に達して、ここで終わる。網膜が眼胚から発達するので経路に相応する。ヒトの視神経は眼球網膜の神経細胞層中にある多極神経細胞から出る100万本以上の神経線維からなる。すなわち、杆状体細胞および錐体状細胞よりの興奮は網膜の内顆粒層の双極細胞に伝わり、それがさらに神経細胞層の細胞に連絡し、この神経細胞の出す神経突起である線維はまず眼球の後極よりやや内下方の一ヶ所に集まって、視神経円板を作り、強大な神経幹となり、網膜の続きである視神経鞘に囲まれて後内側に向かう。眼球から約15~20mm隔ったたところで、眼動脈の枝である網膜中心動脈およびこれに伴う静脈が外側から入り込み、その中軸を通って網膜に分布する。左右両側の視神経は眼窩後端の視神経管を通って頭蓋腔に入り、次第に相近づいて蝶形骨体上の視神経溝でほぼ半交叉をして視交叉を作り、そのつづきは視索と名が変わって間脳の外側膝状体および中脳の上丘などの第一次視覚中枢に達して、ここで終わる。)
- 903_16【Crista galli鶏冠 Crista galli】 Small bony projection in the cranial cavity to which the falx cerebri is firmly attached.
→(篩板上面の正中線で、横からみると三角形の鋭い鶏冠が頭蓋腔に向かって突出する。)
- 903_17【Anterior cranial fossa前頭蓋窩 Fossa cranii anterior】 Fossa that extends from the wall of the frontal bone to the lesser wing of the sphenoid.
→(前頭蓋窩は大脳の前頭葉をのせるところで、また後縁とその付近は蝶形骨小翼と両側の小翼間に介在する蝶形骨隆起からなり、平坦である。大部分は前頭骨からなるが、その中央の正中部は篩骨の篩板からなり、鼻腔の上壁にあたり、多数の篩孔があって鼻腔と交通している。この部は前頭蓋窩の中で特に深く陥凹し、ここに嗅球がのる。その前半正中線上に鶏冠が突出し、その直前の盲孔とともに大脳鎌の付着部となる。両側部は前頭骨眼窩部の上面で、高く盛り上がる。この部は脳隆起、指圧痕が著しい。また、篩板に備わっている多数の小孔は嗅神経を通すためのものである。)