Rauber Kopsch Band2. 51

I.嗅糸Fila olfactoria(図516)

嗅球からでる色の淡い嗅糸は,その数がおよそ20本あって,共通の1幹に合することなく分れたまま内側外側の各1列をなして,おのおのが脳膜の鞘状突起に包まれ,個々に篩板の孔を通って嗅粘膜に達する.

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a)内側のもの鼻中隔の粘膜の上部に広がり,その小さい節骨の正中板にある溝のなかを走っている.

b)外側のものは上鼻甲介と中鼻甲介の粘膜に達する(図516).(感覚上皮におけるその起始については感覚器の項を参照せよ.)

[図511]頭蓋腔内の諸構造の位置Situs cavi cranii. (4/5)

II.終神経N. terminalis

 終神経ははなはだ細い1本の神経で,嗅球の後方から発し,篩板の孔の1つを通って,鼻腔のなかで広がっている.おそらくこれは受容性の神経と思われる.それは

この神経が双極神経細胞をふくむ1つの神経節をもっているからである(372頁をも参照のこと).

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[図512]眼窩の神経 上から剖出してある.(1/1)

[図513]右の眼窩の神経 外側からみる.(3/4) (HirschfeldおよびLeveilléによる)

 眼窩の外側壁は取り去ってある.外側直筋は切断し,その後方の断端を下方に折りまげてある.

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視神経Fasciculus opticus, Augenstiel

 これは太さ4mmの円柱状をなし,その下面には眼動脈を伴い視神経管を通って眼窩に入り,視神経管の孔に入るときには柔膜とクモ膜の鞘に包まれるほかに,さらになお硬膜の鞘が加わり,眼球の後面においてその後極より4mm内側で付着している(図513).眼球から15~20mm離れたところで網膜中心動脈A. centralis retinaeが視神経内に入り,これは同名の静脈とともに視神経の軸を進んで網膜に達する.

III.動眼神経N. oculomotorius(図512, 513)

 動眼神経は中脳の動眼神経核から起り,10~15本の根をなして動眼神経溝において中脳を去り,ついで上小脳動脈と後大脳動脈とのあいだを外側かつ前方に走って鞍背突起の外側縁に達し,硬膜の動眼神経孔Porus oculomotoriiに入り,海綿静脈洞の上壁のなかを進んで上眼窩裂に達し,眼窩に入る.

 この神経はおよそ13763本(Bors 1925)の多くは太い有髄神経線維よりなり,この神経線維はかなり多数の2次線維束にまとまっている.動眼神経の幹の内部には散在した神経細胞が神経線維のあいだにみられ,この細胞は球形のものと枝分れしたものとがある.動眼神経はすでに頭蓋腔の中で細い枝を柔膜の動脈にあたえる.そして海綿静脈洞の上壁を通るときに内頚動脈の周りの内頚動脈神経叢Plexus caroticus internusから細い枝を受ける.さらに上眼窩裂のなかでは近くにある眼神経から知覚性の細い枝を受ける.動眼神経は上眼窩裂のなかではその内側の隅にあり,滑車神経をその外側に伴ない,外側直筋の両起始頭のあいだを通る.眼窩に入ると間もなくこれは上下各1本の2枝に分れる.

 上枝Ramus superiorは上直筋と上眼瞼挙筋とに分布する.下枝Ramus inferiorは内側直筋,下直筋および下斜筋にゆく3枝に分れる.下枝からはまた1本の短くて細い神経がでて毛様体神経節にゆく.これが毛様体神経節短根Radix brevis ganglii ciliarisである.

毛様体神経節Ganglion ciliare(図513)

 (副交感神経性の)毛様体神経節は長さ約2mmの四辺形の扁平なものであって,これは眼窩の後部で視神経の外側面にあり,視神経と外側直筋とのあいだにある.

 この神経節の後下縁に次にのぺる諸根が入る.短根(運動性)Radix brevis(motoria)は動眼神経からでる.これはその他の根よりもいっそう太く,ときには2本に分れている.長根(知覚性)Radix longa(sensitiva)は三叉神経の鼻毛様体神経からでて,しばしば2本以上の細い束よりなっている.交感根Radices sympathicaeはいくつかの細い束よりなり,これらは交感神経の内頚動脈神経叢からでて,その一部は他の根に合し,一部はこの神経節のところを通り過ぎて毛様体神経とつづいている.

 毛様体神経節は多くの樹状突起と1本の神経突起とをもつ多極神経細胞よりなる(Retzius).この神経節の前縁から,特に前方に向かった角の所からは3~6本の短毛様体神経Nervi ciliares brevesが発して,これは分れておよそ20本にまで数を増し,視神経のそばを通って眼球に達する.通常この神経は上,下の2群に分けられる.下の群には三叉神経の第1枝(眼神経)からでて同じような走り方をしている2本の長毛様体神経Nervi ciliares longiが加わる.

 毛様体神経はみな視神経の周囲で眼球外膜を斜めに貫いて入り,この膜と眼球中膜とのあいだを経線方向に前方に進み,またその途中で小枝を脈絡膜Chorioidesにあたえる.毛様体の後部で繰り返し枝分れして毛様体筋の内部に神経細胞をもつ1つの叢をなす.この叢から眼球の毛様体筋Musculus ciliaris,虹彩Irisおよび角膜Corneaへの神経が出ている.

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その交感根sympathische Wurzelに眼球に血管神経を導いており,これは特に脈絡膜と虹彩の中に広がるのである.なおこの根には刺激によって瞳孔散大を起す線維が含まれる.短根は毛様体神経節に副交感神経線維をもたらし,この線維が瞳孔括約筋と毛様体筋とを支配している.長根は知覚性の線維を含む.なおそのほかに交感性の運動線維は最終の起始を脳脊髄神経系のなか,それも最下部の頚髄と第1胸髄の中にもっている.この高さの交通枝Rami communicantesが問題の線維を頚部の交感神経にみちびき,後者から頚動脈神経叢とそれから出る枝をへてここに来る.

IV.滑車神経N. trochlearis(図511, 512)

 滑車神経は硬膜の滑車神経孔に達したのちに,三叉神経の第1枝に沿って硬膜のつくる小さい管の中を通って上眼窩裂に達する.眼窩では上眼瞼挙筋の起始の上を越えて上斜筋に向い,この筋に分布する.

 滑車神経は脳神経のなかで最も細いものである.これは(Swensson 1949によれば)成人では,脳から出るところでは2480本の神経線維をもち,筋に入るところでは2630本の神経線維をもっている.以前に学者が記載した交感神経および三叉神経とこの神経との吻合は存在しない.滑車神経に含まれる知覚性の線維は三叉神経中脳核からおこるという.

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最終更新日 13/02/03

 

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