053
- 053_00【Maxilla; Maxillary bone上顎骨 Maxilla】
→(上顎骨は不規則な形をした含気骨。顔面頭蓋の中央を占める有対性の骨で、左右のものが正中で結合して、眼窩・鼻腔・骨口蓋などの骨格に関与する。上顎骨はその主部をなす体と、これから突出する4種類の突起で構成される。上顎の歯をつけるほぼ四角形の有対骨で、内に鼻洞(上顎洞)のある中央部(上顎体)と四つの突起に区別される。四つの突起とは上方にのびて鼻根の外側部つくり前頭骨に接する前頭突起、外方にのびて頬骨につづく頬骨突起、水平の内方にのび、他側のそれと合して硬口蓋の大部分をつくる口蓋突起と、そこから堤防状に下方に高まり、歯をつける歯槽突起である。上顎骨の前面をみると、体の上縁は眼窩下縁で、その下0.5~1.0cmに大きい孔(眼窩下孔)がある。眼窩下神経、血管がとおり、三叉神経第2枝の圧痛点である。ときに眼窩下縁から眼窩下孔まで縫合がみられる(眼窩下縁から眼窩下孔まで縫合がみられる(眼窩下縫合)。眼窩下孔の下方の浅いへこみ(犬歯窩)は口角挙筋の起始部である。体の内側縁はするどい稜で、弓状に折れこみ(鼻切痕)、対側のものとで骨性鼻腔の前口(梨状口)をかこむ。上顎骨外面をみると眼窩下縁の延長が前頭突起に鋭い稜を(前涙嚢稜)をつくる。犬歯窩の後ろで大きい頬骨突起が外方に出て、この突起の上面(眼窩面)が眼窩底をつくる。そこには前後に走る溝(眼窩下溝)があり、前にいくにつれ骨の下に入る(眼窩下管)。眼窩面の後縁は大翼とともに下眼窩裂を境する。頬骨突起より後ろの面は側頭下面で、後縁口蓋骨垂直板と結合する。上顎洞後壁のうしろへの膨隆を上顎結節といい、ここにある二、三の孔(歯槽孔)が歯槽管につづき、そこから歯槽に開口する管が出る。後上歯槽神経が通る。内側面では上2/3と下1/3の境から口蓋突起が水平に突出し、それより上の部は鼻腔面である。前頭突起の基底部に上下2条の稜があり、上のもの(篩骨稜)は中鼻甲介につき、したのもの(鼻甲介稜)は下鼻甲介上縁前端がつく。前頭突起の控除迂遠は半月状に切れ込み(涙嚢切痕)、そこから後下方に深い溝(涙嚢溝)があり、涙骨の下の部分ととともに鼻涙管をつくる。前頭突起には涙骨につづく縁(涙骨稜)がある。体の内側面、涙嚢溝のうしろに指をとおす大きさの上顎洞の入口(上顎洞裂孔)がある。内側面後縁上半分は滑らかで翼口蓋窩の前壁をつくり、下半部は口蓋骨につき、粗面で、大口蓋溝があり、口蓋骨の同名溝と合して垂直な管(大口蓋管)をつくる。口蓋突起の上面は滑らかで、鼻腔の床に当たり、内縁は高まって他側のものと合して鋤骨をつける鼻稜をつくり、前方では梨状口下縁で棘上に高まる(前鼻棘)。その少しうしろに開口があり、下方は正中面で溝となり、他側のものと合して1本の管(切歯管)として、口蓋面前方正中部の切歯窩に切歯孔としてひらく。下面は粗で口腔の天井をつくり、大口蓋孔から出て前方に向かう神経血管のために生じた前後に走る口蓋溝、それと平行な稜(口蓋稜)がみられる。歯槽突起については下顎骨をみよ。歯槽突起外面にある歯槽に起因する膨隆群を歯槽隆起という。Maxillaという言葉はローマ時代から「アゴ」の意味でも上顎にも下顎にも使われてきた。Vesaliusも、上顎骨をmaxilla superior,下顎骨をmaxilla inferiorと呼んでいる。Maxillaが上顎骨だけに限定され、下顎骨がmandibulaと呼ばれるようになったのは近代に入ってからである。顎下腺(下顎骨の下にある唾液腺)も1935年まではglandula submaxillarisと呼ばれていた。)
- 053_01【Body of maxilla上顎体 Corpus maxillae】 Central part of the maxilla enclosing the maxillary sinus.
→(上顎体は角がまるい三角柱状で、前面、後面(側頭下面)、上面(眼窩面)および内側面(鼻腔面)がある。その内部は殆ど上顎洞という空洞で占められいる。)
- 053_02【Zygomatic process of maxilla bone頬骨突起(上顎骨の) Processus zygomaticus (Maxilla)】 Lateral process of the maxilla for articulation with the zygomatic bone.
→(頬骨突起は上顎体の外上端から前外方に向かう三角柱状の突起で、粗な断端の面が頬骨と結合する。その下縁はは頬骨下稜(JNA)といい、下方に走って上顎体の前面と側と下面との境界となりそのつづきは第1または第2大臼歯の歯槽下面にまで及ぶ。)
- 053_03【Frontal process of maxilla前頭突起(上顎骨の) Processus frontalis (Maxilla)】
→(前頭突起は上顎体の上前内側隅から起こって上方に向かい、鼻骨と涙骨の間を前頭骨の鼻縁まで達する。細長く扁平で内外面、前後縁があるが、外側面は前後2部に分かれる。前縁は鼻骨に接する縁で薄く鋭い。後縁は涙骨前縁に接し、涙骨縁として上顎体鼻腔面まで延びて涙嚢溝の前縁をつくる。内側面の上部は篩骨迷路の前端部が着くやや粗な面で、しばしば篩骨蜂巣の一部に対応する陥凹がある。この部の下界で、眼窩面の高さをほぼ水平に不明瞭な篩骨稜が走るが、これは中鼻甲介の前端部が着くところである。外側面は眼窩下縁につづく前涙嚢稜により前後2部に分かれる。前の部は鼻背の一部(眼輪筋眼窩部、上唇鼻翼挙筋が起こる)をつくる。後部は縦にくぼんだ涙嚢溝となり、その上部は涙骨の同名の溝と合して涙嚢窩をつくり、下部は上顎体の内面の涙嚢溝につづく。前涙嚢稜の下端が上顎体の眼窩面に移る所にある半月上の涙嚢切痕の外側部は涙骨鈎のつく所である。)
- 053_04【Alveolar process of maxilla歯槽突起(上顎骨の) Processus alveolaris (Maxilla)】 Ridged process bearing the teeth.
→(歯槽突起は上顎体の下面につづいて下方に突出し、弯曲した厚い提状の骨塊をつくる。両側の上顎骨を合わせると、後に開いた馬蹄形の隆起となる。ここに一側につき8個(乳歯では5)の歯根を容れる歯槽がならび、全体として歯槽弓をつくる。)
- 053_05【Orbital surface of maxilla眼窩面(上顎骨の) Facies orbitalis corporis maxillae】 The part of the body that forms the largest surface of the floor of the orbit.
→(上顎骨の眼窩面は眼窩の底となる滑らかな三角形の面で、やや外下りに傾く。)
- 053_06【Infra-orbital groove; Suborbital sulcus眼窩下溝 Sulcus infraorbitalis】 Groove at the beginning of the infra-orbital canal, beginning at the inferior orbital fissure.
→(眼窩下溝は眼窩面の後縁は側頭下面との間の縁で、下眼窩裂の下縁となり、そのほぼ中央から眼窩面に向かって眼窩下溝が起こる。)
- 053_07【Infratemporal surface of maxilla側頭下面(上顎骨の) Facies infratemporalis corporis maxillae】 Surface of the maxilla posterior to the zygomatic process.
→(側頭下面は頬骨突起より後方の面で後外方を向く。頭蓋の側面にある側頭下窩の前壁となることからこの名がある。その上縁は眼窩面との間にできる縁で、下眼窩裂を下方から境する。)
- 053_08【Alveolar foramina of maxilla歯槽孔(上顎骨の) Foramina alveolaria corporis maxillae】 Small openings on the infratemporal surface for the passage of nerves and vessels to the molars teeth.
→(側頭下面の中央部はやや高い粗な上顎結節をつくり、ここに2~3の小さい歯槽孔があり、後上歯槽動脈および神経を側頭下面へ導く小孔群である。)
- 053_09【Maxillary tuberosity; *Tuberosity of maxilla上顎結節;上顎隆起 Tuber maxillare; Eminentia maxillae】 Thin-walled protuberance on the posterior wall of the maxillary sinus.
→(側頭下面の中央部はやや高い粗な上顎結節をつくる。)
- 053_10【Infrazygomatic crest頬骨下稜;頬骨歯槽稜 Crista infrazygomatica; Crista zygomatico alveolaris】
→(頬骨突起の下端から、第一大臼歯に向かって下走する隆線。)
- 053_11【Lacrimal margin of maxilla涙骨縁(上顎骨の) Margo lacrimalis corporis maxillae】 Border of the maxilla that articulates with the lacrimal bone.
→(涙嚢溝の前縁は前頭突起の後縁が下降してきた涙骨縁でつくられる。)
- 053_12【Lacrimal bone涙骨 Os lacrimale】 Bone located in the orbit in front of the orbital plate of the ethmoid.
→(涙骨は左右1対の不正長方形の薄い骨で、上顎骨の前頭突起後方の眼窩の内壁の一部をなす。これに続く鼻涙管の骨壁の一部もつくる。この骨も結合組織性骨化によって生ずる。涙骨の全体の形は手指の爪に似ているが、厚さは爪よりも薄い。下鼻甲介、篩骨、前頭骨、上顎骨と連結する。外面は眼窩に向かい、中央を縦走する稜縁の前方にある溝状のくぼみが涙嚢窩の構成に加わる部分である。外側面は眼窩の内側壁の前部を形成し、内側面は鼻腔(中鼻道)の外側壁の一部を作る。上縁は前頭骨眼窩部と、下縁は上顎骨眼窩面と、前縁は上顎骨前頭突起と、後縁は篩骨眼窩板とそれぞれ接している。外側面の前半部には縦に走る涙骨溝があり、これは上顎骨の前頭突起の同名溝と合して涙嚢窩を形成する。涙嚢孔の後方の境界を後涙嚢稜といい、下方へ延びて涙嚢鈎となり、上顎骨前頭突起の涙嚢溝および下鼻甲介の涙骨突起とともに鼻涙管壁の一部を形成する。Lacrimaleはlacrima(涙)の形容詞である。)
- 053_13【Anterior lacrimal crest of maxilla前涙嚢稜(上顎骨の) Crista lacrimalis anterior】 Bony ridge of the frontal process at the entrance to the nasolacrimal canal.
→(前頭突起の外側面は眼窩下縁につづく前涙嚢稜により前後2部に分かたれる。)
- 053_14【Lacrimal notch涙嚢切痕;涙骨切痕 Incisura lacrimalis】 Notch for the lacrimal hamulus at the entrance to the nasolacrimal canal.
→(前涙嚢稜の下端が上顎体の眼窩面に移る所にある半月状の涙嚢切痕の外側部は涙骨鈎のつくところである。)
- 053_15【Infra-orbital margin of maxilla眼窩下縁(上顎骨の) Margo infraorbitalis corporis maxillae】 Lower margin of the orbit that is partly formed by the maxilla.
→(眼窩面の前縁は前面との間の眼窩下縁である。)
- 053_16【Anterior surface of maxilla前面(上顎骨の) Facies anterior corporis maxillae】
→(上顎体の前面は顔面中央の半分をつくる。外方は頬骨突起に連なり、内側には大きい鼻切痕が陥入(両側の鼻切痕と鼻骨の下縁とが合わさって顔面の中央に梨状口をつくる)。上縁は眼窩面との境となるやや鋭い眼窩下縁(上唇挙筋が起こる)で、その内方は前頭突起の前涙嚢稜につづく。)
- 053_17【Infra-orbital foramen眼窩下孔 Foramen infraorbitale】 Opening of the infra-orbital canal from which the infra-orbital nerve and accompanying vessel emerge. Pressure point for the second division of the trigeminal nerve.
→(上顎体下縁は明瞭な境なしに歯槽突起に移る。眼窩下縁の下約0.5-1.0cmに眼窩下孔がある。これは眼窩面の眼窩下溝につづく眼窩下管の顔面に開く口である。)
- 053_18【Canine fossa犬歯窩 Fossa canina】 Depression below the infra-orbital foramen that gives origin to the levator anguli oris muscle.
→(眼窩下孔の下に浅い犬歯窩がある。口角挙筋の起始部。)
- 053_19【Nasal notch鼻切痕 Incisura nasalis】 Curved margin of the bony pinform aperture.
→(上顎体の前面の内側には大きい鼻切痕が陥入する。)
- 053_20【Palatine process of maxilla口蓋突起(上顎骨の) Processus palatinus (Maxilla)】 Horizontal bony plate. The two processes form the anterior two-thirds of the hard palate.
→(口蓋突起は上顎体と歯槽突起の移行部にあたる高さで、上顎骨の内面に棚状に出た突起で、口蓋骨の水平板のとともに前方約3分の2の骨口蓋を形成する。水平に突出する骨板で、後縁は左右の第2大臼歯の歯槽を結ぶ線上にある。)
- 053_21【Anterior nasal spine of maxilla前鼻棘(上顎骨の) Spina nasalis anterior (Corporis maxillae)】 Spinous projection situated in the middle of the inferior border of the piriform aperture for attachment of the cartilaginous nasal septum.
→(口蓋突起の上面は鼻腔に向かう滑らかな面で、中がくぼんだ溝状のである。その内側縁は上に向かう鋭い鼻稜となり、その前半は顔面に向かって突出して前鼻棘をつくる。)
- 053_22【Alveolar yokes of maxilla歯槽隆起(上顎骨の) Juga alveolaria maxillae】 Eminences on the external surface of maxilla produced by the dental alveoli.
→(歯槽は歯槽突起の外面に歯槽隆起(第2、第3大臼歯の歯槽隆起から頬筋の一部が起こる)をつくり、犬歯で最も著しく、切歯がこれにつづく。)