054
- 054_00【Maxilla; Maxillary bone上顎骨 Maxilla】
→(上顎骨は不規則な形をした含気骨。顔面頭蓋の中央を占める有対性の骨で、左右のものが正中で結合して、眼窩・鼻腔・骨口蓋などの骨格に関与する。上顎骨はその主部をなす体と、これから突出する4種類の突起で構成される。上顎の歯をつけるほぼ四角形の有対骨で、内に鼻洞(上顎洞)のある中央部(上顎体)と四つの突起に区別される。四つの突起とは上方にのびて鼻根の外側部つくり前頭骨に接する前頭突起、外方にのびて頬骨につづく頬骨突起、水平の内方にのび、他側のそれと合して硬口蓋の大部分をつくる口蓋突起と、そこから堤防状に下方に高まり、歯をつける歯槽突起である。上顎骨の前面をみると、体の上縁は眼窩下縁で、その下0.5~1.0cmに大きい孔(眼窩下孔)がある。眼窩下神経、血管がとおり、三叉神経第2枝の圧痛点である。ときに眼窩下縁から眼窩下孔まで縫合がみられる(眼窩下縁から眼窩下孔まで縫合がみられる(眼窩下縫合)。眼窩下孔の下方の浅いへこみ(犬歯窩)は口角挙筋の起始部である。体の内側縁はするどい稜で、弓状に折れこみ(鼻切痕)、対側のものとで骨性鼻腔の前口(梨状口)をかこむ。上顎骨外面をみると眼窩下縁の延長が前頭突起に鋭い稜を(前涙嚢稜)をつくる。犬歯窩の後ろで大きい頬骨突起が外方に出て、この突起の上面(眼窩面)が眼窩底をつくる。そこには前後に走る溝(眼窩下溝)があり、前にいくにつれ骨の下に入る(眼窩下管)。眼窩面の後縁は大翼とともに下眼窩裂を境する。頬骨突起より後ろの面は側頭下面で、後縁口蓋骨垂直板と結合する。上顎洞後壁のうしろへの膨隆を上顎結節といい、ここにある二、三の孔(歯槽孔)が歯槽管につづき、そこから歯槽に開口する管が出る。後上歯槽神経が通る。内側面では上2/3と下1/3の境から口蓋突起が水平に突出し、それより上の部は鼻腔面である。前頭突起の基底部に上下2条の稜があり、上のもの(篩骨稜)は中鼻甲介につき、したのもの(鼻甲介稜)は下鼻甲介上縁前端がつく。前頭突起の控除迂遠は半月状に切れ込み(涙嚢切痕)、そこから後下方に深い溝(涙嚢溝)があり、涙骨の下の部分ととともに鼻涙管をつくる。前頭突起には涙骨につづく縁(涙骨稜)がある。体の内側面、涙嚢溝のうしろに指をとおす大きさの上顎洞の入口(上顎洞裂孔)がある。内側面後縁上半分は滑らかで翼口蓋窩の前壁をつくり、下半部は口蓋骨につき、粗面で、大口蓋溝があり、口蓋骨の同名溝と合して垂直な管(大口蓋管)をつくる。口蓋突起の上面は滑らかで、鼻腔の床に当たり、内縁は高まって他側のものと合して鋤骨をつける鼻稜をつくり、前方では梨状口下縁で棘上に高まる(前鼻棘)。その少しうしろに開口があり、下方は正中面で溝となり、他側のものと合して1本の管(切歯管)として、口蓋面前方正中部の切歯窩に切歯孔としてひらく。下面は粗で口腔の天井をつくり、大口蓋孔から出て前方に向かう神経血管のために生じた前後に走る口蓋溝、それと平行な稜(口蓋稜)がみられる。歯槽突起については下顎骨をみよ。歯槽突起外面にある歯槽に起因する膨隆群を歯槽隆起という。Maxillaという言葉はローマ時代から「アゴ」の意味でも上顎にも下顎にも使われてきた。Vesaliusも、上顎骨をmaxilla superior,下顎骨をmaxilla inferiorと呼んでいる。Maxillaが上顎骨だけに限定され、下顎骨がmandibulaと呼ばれるようになったのは近代に入ってからである。顎下腺(下顎骨の下にある唾液腺)も1935年まではglandula submaxillarisと呼ばれていた。)
- 054_01【Frontal process of maxilla前頭突起(上顎骨の) Processus frontalis (Maxilla)】
→(前頭突起は上顎体の上前内側隅から起こって上方に向かい、鼻骨と涙骨の間を前頭骨の鼻縁まで達する。細長く扁平で内外面、前後縁があるが、外側面は前後2部に分かれる。前縁は鼻骨に接する縁で薄く鋭い。後縁は涙骨前縁に接し、涙骨縁として上顎体鼻腔面まで延びて涙嚢溝の前縁をつくる。内側面の上部は篩骨迷路の前端部が着くやや粗な面で、しばしば篩骨蜂巣の一部に対応する陥凹がある。この部の下界で、眼窩面の高さをほぼ水平に不明瞭な篩骨稜が走るが、これは中鼻甲介の前端部が着くところである。外側面は眼窩下縁につづく前涙嚢稜により前後2部に分かれる。前の部は鼻背の一部(眼輪筋眼窩部、上唇鼻翼挙筋が起こる)をつくる。後部は縦にくぼんだ涙嚢溝となり、その上部は涙骨の同名の溝と合して涙嚢窩をつくり、下部は上顎体の内面の涙嚢溝につづく。前涙嚢稜の下端が上顎体の眼窩面に移る所にある半月上の涙嚢切痕の外側部は涙骨鈎のつく所である。)
- 054_02【Body of maxilla上顎体 Corpus maxillae】 Central part of the maxilla enclosing the maxillary sinus.
→(上顎体は角がまるい三角柱状で、前面、後面(側頭下面)、上面(眼窩面)および内側面(鼻腔面)がある。その内部は殆ど上顎洞という空洞で占められいる。)
- 054_03【Alveolar process of maxilla歯槽突起(上顎骨の) Processus alveolaris (Maxilla)】 Ridged process bearing the teeth.
→(歯槽突起は上顎体の下面につづいて下方に突出し、弯曲した厚い提状の骨塊をつくる。両側の上顎骨を合わせると、後に開いた馬蹄形の隆起となる。ここに一側につき8個(乳歯では5)の歯根を容れる歯槽がならび、全体として歯槽弓をつくる。)
- 054_04【Palatine process of maxilla口蓋突起(上顎骨の) Processus palatinus (Maxilla)】 Horizontal bony plate. The two processes form the anterior two-thirds of the hard palate.
→(口蓋突起は上顎体と歯槽突起の移行部にあたる高さで、上顎骨の内面に棚状に出た突起で、口蓋骨の水平板のとともに前方約3分の2の骨口蓋を形成する。水平に突出する骨板で、後縁は左右の第2大臼歯の歯槽を結ぶ線上にある。)
- 054_05【Nasal bone鼻骨 Os nasale】 Bone located between the right and left frontal processes of the maxilla. Its superior end articulates with the frontal bone.
→(鼻骨は三角形に近い長方形の薄い骨で、左右のものが正中で接合して鼻背の骨格を作る。骨化様式は結合組織性骨化である。鼻腔を前上方からおおう台形の骨である。上方は狭く、下方は広い。上縁は前頭骨鼻部の鼻棘に接し、下縁は遊離縁で骨鼻孔の梨状口の上縁をなす。外側縁は上顎骨の前頭突起と結合し、内側縁は他側の鼻骨と結合し、両者間に鼻骨間結合をなす。鼻骨の前面は軽度膨隆し、後面は軽度陥凹している。前面のほぼ中央に鼻骨孔があり、この孔は後面で篩骨孔につづき、ここを前篩骨神経の外鼻枝が通る。)
- 054_06【Ethmoidal crest of maxilla篩骨稜(上顎骨の) Crista ethmoidalis maxillae】 Oblique ridge on the medial surface providing attachment for the anterior end of the middle nasal conchae.
→(前頭突起の下界で、眼窩面の高さをほぼ水平に明瞭な篩骨稜が走るが、これは中鼻甲介の前端部が着くところである。)
- 054_07【Conchal crest of maxilla鼻甲介稜(上顎骨の) Crista conchalis corporis maxillae】 Nearly horizontal ridge providing attachment for the inferior nasal concha.
→(涙骨縁の下端の付近から前方に向かって鼻甲介稜が粗な隆起線としてほぼ水平に走る。ここに下鼻甲介の前上縁がつく。)
- 054_08【Nasal surface of maxilla鼻腔面;鼻面(上顎骨の) Facies nasalis (Corporis maxillae)】 Medial surface of the maxilla that forms the lateral wall of the nasal cavity.
→(鼻腔面は内側に向かう比較的平滑な面で矢状位をとる。)
- 054_09【Nasal notch鼻切痕 Incisura nasalis】 Curved margin of the bony pinform aperture.
→(上顎体の前面の内側には大きい鼻切痕が陥入する。)
- 054_10【Anterior nasal spine of maxilla前鼻棘(上顎骨の) Spina nasalis anterior (Corporis maxillae)】 Spinous projection situated in the middle of the inferior border of the piriform aperture for attachment of the cartilaginous nasal septum.
→(口蓋突起の上面は鼻腔に向かう滑らかな面で、中がくぼんだ溝状のである。その内側縁は上に向かう鋭い鼻稜となり、その前半は顔面に向かって突出して前鼻棘をつくる。)
- 054_11【Nasal part of frontal bone鼻部(前頭骨の) Pars nasalis (Os frontale)】 Bony segment located between the two orbital parts of the frontal bone.
→(前頭骨の鼻部は篩骨切痕の前方、眉間の下方にある狭い部を指す。)
- 054_12【Lacrimal margin of maxilla涙骨縁(上顎骨の) Margo lacrimalis (Maxilla)】 Border of the maxilla that articulates with the lacrimal bone.
→(涙嚢溝の前縁は前頭突起の後縁が下降してきた涙骨縁でつくられる。)
- 054_13【Lacrimal groove in maxilla涙嚢溝(上顎骨の) Sulcus lacrimalis (Maxilla)】 Depression for the nasolacrimal canal.
→(上顎洞裂孔の前には前頭突起からつづく涙嚢溝が縦に走る。裂孔前縁の上半部からは小さな骨片(涙半月)が出て、涙嚢溝の後壁を後壁を高くする。)
- 054_14【Perpendicular plate of palatine bone垂直板;鉛直板;上顎板(口蓋骨の) Lamina perpendicularis; Lamina maxillaris (Os palatinum)】 Vertical bony plate contributing to the walls of the nasal and maxillary sinuses.
→(垂直板の内側面は鼻腔外側壁の後部をつくり、前後に走る上下二つの稜があり、上のもの(篩骨稜)には中鼻甲介後端がつき、下のもの(鼻甲介稜)は発達よく、下鼻甲介をつける垂直板の上縁は深く切れ込むが(蝶口蓋切痕)、上方に蝶形骨体があるので孔(翼口蓋孔)となり、鼻腔と翼口蓋窩を連絡する。蝶口蓋切痕の前の突起(眼窩突起)はうしろの突起(蝶形骨突起)より大きく、上前方に向かって5面あり、内側の3面は他骨との接触面で、前は上顎骨、中のは篩骨(この部分は篩骨洞をおおうためへこむ)、うしろのは蝶形骨体につく。外側面に2面あり、ともに自由面で、上の面は眼窩底の一番後ろをつくり、下の面は翼口蓋窩に面する。蝶形骨突起は上内方に向かい、下面は内面で鼻腔外側壁をつくり、上(外)面は翼状突起につき、内方にのびて鋤骨翼に達し、これと静脈のとおる管(咽頭管)をかこむ。垂直板の外側面(上顎面)は上顎骨体内面をおおう部のうしろに、縦の前後の二つの粗面があり、前のは上顎骨内面に、うしろのは蝶形骨翼状突起につく。2面の間には蝶口蓋切痕から下る第3の面があって、上は翼口蓋窩の底をつくり、下方は垂直な溝(大口蓋溝)となり、上顎骨の同名溝と合して大口蓋管をつくり、大口蓋孔で口蓋にひらく。大口蓋神経、下行口蓋動脈が通る。この管から通常2本の小管(小口蓋管)が分かれて、錐体突起の基部をつらぬき、その下面下、内側に小孔(小口蓋孔)でひらく。)
- 054_15【Orbital process of palatine bone眼窩突起(口蓋骨の) Processus orbitalis ossis palatini】 Anterosuperiorly projecting process located between the maxilla, ethmoid, and sphenoid.
→(垂直板の上縁では前部から眼窩突起が上方に起こる。)
- 054_16【Maxillary hiatus上顎洞裂孔;上顎裂孔 Hiatus maxillaris】 Large opening in the maxillary sinus. It is narrowed by the uncinate process, the inferior nasal concha, and the palatine bone.
→(上顎骨鼻腔面の中央に大きな開口。倒立三角形上の上顎洞裂孔がある。これは上顎洞の入口であるが、完全な頭蓋ではその大部分が他の骨(口蓋骨、篩骨、下鼻甲介)によって内側(鼻腔側)からふさがれる。この裂孔の上皮は篩骨蜂巣の一部の外側壁をつくるために生ずる多くのくぼみを見る。)
- 054_17【Orbital plate of ethmoid; Orbital plate of ethmoid bone眼窩板;紙様板(篩骨の) Lamina orbitalis; Lamina papyracea】 Especially thin plate of bone that forms part of the medial wall of the orbit.
→(篩骨迷路の外側壁の長方形の平滑な面は眼窩内側壁の主要部をつくる眼窩板である。この上縁の前・後篩骨孔がある。眼窩板より下方は口蓋骨と上顎体に結合する面で、ここにも篩骨蜂巣の一部が開放している。)
- 054_17a【Pyramidal process of palatine bone錐体突起(口蓋骨の) Processus pyramidalis ossis palatini】 The inferoposterior end of the perpendicular plate of the palatine bone, which is inserted in the pterygoid notch.
→(垂直板の下部は水平板より矢状径が広くなり、水平板より後に大きく突出する錐体突起となって蝶形骨翼状突起の翼突切痕にはまる。)
- 054_18【Nasal crest of maxilla鼻稜(上顎骨の) Crista nasalis maxillae】 Bony ridge formed by the union of the two processes in the midline. Site of attachment for the nasal septum.
→(左右の上顎骨口蓋突起の上面は鼻腔に向かう滑らか面で、中がくぼんだ溝状である。その内側縁は上に向かう鋭い鼻稜となり、その前端は顔面に向かって突出して前鼻棘をつくる。)
- 054_19【Greater palatine groove大口蓋溝;翼口蓋溝 Sulcus palatinus major; Sulcus pterygopalatinus】 Groove along the posterior border of the maxilla, which forms part of the greater palatine canal for transmission of the greater palatine nerve and the descending palatine artery.
→(鼻腔面の上頭洞裂孔より後方にある部は口蓋骨の垂直板と結合する。その面の後上部には口蓋骨眼窩突起が接する。この口蓋垂直板と結合する面の後下部には後上方から前下方に斜めに走る大口蓋溝があって、口蓋骨の同名の溝と合して大口蓋管をつくる。)
- 054_20【Incisive canals切歯管 Canalis incisivi】 Canals that extend from the floor of the nasal cavity on both sides of the nasal septum to the palate, where they unite as the incisive fossa.
→(切歯管は口蓋突起の上面の前部で鼻稜に近いところから、前下やや内方に向かって下面内側縁に貫く。両側の上顎骨を合すると、切歯管の下端は正中口蓋縫合の前端の大きな切歯窩の底に開く。大口蓋動脈と鼻口蓋神経がこの管を通り、大口蓋動脈は蝶口蓋動脈の中隔後鼻枝と吻合する。)