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- 1017_00【Superior eyelid; Upper eyelid上眼瞼;ウワマブタ Palpebra superior】 Larger, upper eyelid.
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- 1017_01【Subcutaneous tissue; Hypodermis皮下組織 Tela subcutanea】
→(皮下組織は皮膚と深部の構造物の間の空間を埋める疎性結合組織で、一般に脂肪細胞に富む。脂肪細胞は膠原線維によって大小の集団にまとめられ、真皮と深部の構造物の間を埋めており、皮下脂肪組織とよばれる。皮下脂肪組織は栄養分および水分の貯蔵所であるだけでなく、機械的な外力に対する緩衝装置であり、外界の温度変化が体内に波及することを防ぐ断熱装置でもあり、さらに体に丸みを与え体系を調えるなどの意義をもつ。皮下脂肪組織はいたるところおで皮膚支帯に貫かれている。皮下脂肪はまた大小の血管および神経によって貫かれている。皮膚に分布する動脈は皮下組織と網状層の移行部に置いて、皮膚の表面に平行に広がる動脈網を作り、これから真皮と皮下組織の両方向に枝を出す。真皮に入った動脈は乳頭層の基底部で再び動脈網をつくり、ここから乳頭に毛細血管を送る。乳頭内の毛細血管のループにはじまる静脈はまず乳頭の基底部の静脈に注ぎ、網状層内でさらに静脈網を形成した後、網状層と皮下組織の移行部に広がる静脈叢に注ぐ。網状債には動静脈吻合であるホイヤー・ボロッサー器官organ of Hyer-Grosserがみられる。皮下組織の表層部には圧覚の感覚装置と考えられ照り右ファーター・パチニ小体が散在する。)
- 1017_02【Skin皮膚 Cutis】 Collective term for the epidermis and dermis.
→(皮膚は身体を保護しておおうもので、非常に異なる2成分、すなわち表層をなす表皮と深層をなす真皮よりなる。重層上皮である表皮を作る個々の上皮細胞は表皮の表面に近づくにつれて形が扁平となる。手掌や足底の皮膚では表皮の厚さが極端に大となっており、機械的刺激への抵抗力を増している。手掌と足底以外の部位では、例えば上腕や前腕の屈側面皮膚に見られるように表皮は薄い。真皮を作るのは密性結合組織であり、そこに血管、リンパ管、神経などが含まれている。真皮の厚さも体部位により異なるが、概して人体前面の真皮は人体後面の真皮よりも薄い。また、女性における真皮は男性における真皮よりも薄い。皮膚の真皮はその下の浅筋膜(皮下組織ともよばれる)を介して深筋膜、あるいは骨に連結する。真皮内では膠原線維がたがいに平行な配列を示すことが多い。外科的に皮膚を切開する場合に、膠原線維の走行に沿うように創を作れば膠原線維損傷が最も少なくすむことから、瘢痕の最も少ない創傷治癒が得られる。もしも膠原線維の走行を横断するような皮膚切開を行えば、多数の膠原線維の損傷を来たし、それに代わる再生線維群の存在のために大きな瘢痕が生じることになる。真皮内の膠原線維の走行の向きは、皮膚の裂隙線(ランゲルの線Langer's lines)の方向と一致するが、これは四肢では縦方向に、また体幹では横方向に走る傾向を示す。皮膚が可動関節を被うところではその一定部位に皮膚のヒダ(またはシワ)形成が見られる。皮膚のヒダあるいは皺の部位では皮膚は薄くなり、かつ真皮と皮下構造物との間での膠原線維性結合の強度が強まっている。皮膚に付属する機関として爪、毛包、皮脂腺、汗腺などをあげることができる。 [臨床]皮膚の裂隙線の方向についての知識は外科医が皮膚切開する場合のガイドとなり、手術後の瘢痕を最小にするために役立つ。特に女性の患者で手術創を通常は衣服で被われないような部分に作る場合に、このことは重要な意味をもつ。セールスマンでさえも場合によって彼の顔に大きな瘢痕が残ることで、彼の仕事を失うかも知れないのである。爪部、毛包、皮脂腺は黄色ブドウ球菌のような病原体が侵入しやすい場所である。爪部の炎症は爪周囲炎paronychiaとよばれ、毛包および皮脂腺の炎症はいわゆる「おできboil」の原因となる。ようcarbuncleというのは、ブドウ球菌感染による浅筋膜の炎症であるが項部にしばしば発生して、通常1個の毛包または毛包の1群の感染の状態から始まるものである。皮脂嚢胞sebaceous cystは皮脂腺導管の開口部が閉鎖されるために起こるが、この状態は頭毛をくしけずるときに生じた頭皮の損傷、あるいは皮脂腺の感染による。したがって皮脂嚢胞は頭皮にしばしばみられる。ショック状態にある患者の皮膚は蒼白で鳥肌状を呈するが、これは交感神経系の過剰な活動により皮膚の細動脈の狭窄ならびに立毛筋の収縮を来しているためである。皮膚の熱傷の際にはその深さが治療法とその予後を決める要素となる。熱傷が皮膚深層にまで達していないときは、傷面はやがて毛包、皮脂腺、汗腺をなす上皮細胞や傷周囲の表皮細胞の増殖により被われて治癒する。しかし汗腺の腺体よりも深い部位までの熱傷のときには傷周囲の表皮細胞からの、おしか上皮の被覆は得られず、治癒は著しく遅くなることともに、線維組織による傷面の収縮がかなりの強さで起こる。深い熱傷を治癒を早め、かつ収縮の起こるのを防ぐためには皮膚移植が必要となる。皮膚移植法は浅層皮膚移植と全層皮膚移植との2種に大別される。前者は表皮の大部分(真皮乳頭尖部をも含めて)を切り取って移植するもので、切り取られた残りの皮膚部位には真皮乳頭周囲の表皮細胞群が毛包細胞、汗腺細胞とともに残留するために、これらが切り取られた皮膚部分の修復にあずかることになる。全層皮膚移植の場合は表皮と真皮全層を移植するために、移植後に新しい血管循環路が早く成立することが移植成功のために必要となる。また、皮膚全層が切り取られた部位には通常さらに他の部位からの浅層皮膚片が移植される。状況によっては全層皮膚移植は有茎切除皮膚片を用いて行われる。すなわち、その際には弁状の全層皮膚がその基部を経由する血流を受けたままの状態で必要部位に植え込まれる。そして、移植された有茎皮膚片への新しい血流が確立したのちに、はじめて茎部切断を行う。)
- 1017_03【Orbicularis oculi muscle; Orbicular muscle of eye眼輪筋 Musculus orbicularis oculi】 Ringlike sphincter muscle around the eye consisting of various parts. It acts to close the eyelids and support the flow of tears into the lacrimal sac and nose. I: Facial nerve.
→(眼輪筋の外側部にある(外側)眼瞼縫線は筋の後面と内側部のほかは不明瞭である。外眼角と頬骨を結ぶ外側眼瞼靱帯とは別物で、両者は内側部でゆるく結合するだけであるが、この縫線と靱帯はしばしば混同されている。外側部では眼輪筋と骨との結合がないので、眼を強く閉じると筋とともに皮膚が外眼角に引かれて目じりにヒダができるのである。なお、眼裂を開くのは主に上眼挙筋(眼筋)が行ない、大きく開くときは同時に前頭筋によって眉が上がることが多い。下眼瞼は弾力によって元に戻ると思われるが、その動きは小さい。まばたきのとき涙が吸い込まれることは、涙がこぼれそうになると無意識にまばたきを行うことからも判る。その機構として眼を閉じるとき眼輪筋の涙嚢部が涙嚢の壁を引いて広げるという節が有名である。しかし、一般に涙嚢部といわれる筋(Horner筋)が涙嚢と関係のないことは以前から記載があり(Eisler)涙の排出機構にも諸説があった。長嶋1954, 1955は涙道の圧をしらべ、瞼を開くときに涙小管腔が陰圧になって涙が吸い込まれ、瞼を閉じるとき涙小管は陽圧に涙嚢は陰圧になって涙は涙嚢に送られ、さらに瞼を開くとき涙嚢は陽圧となって鼻涙管に排出されるとした。その後の研究も合わせると、Horner筋は瞼閉じるとき涙小管を屈曲・圧迫するもので、これとは別に涙嚢を包む筋膜(涙嚢間膜)から起こるごく小さい筋束(Jones 1957)があって涙嚢を広げるという機構が有力である。このポンプ作用の主力はHoener筋と涙小管にあり、そのほか毛細管現象による吸引、重力による鼻腔への流下なども助けるという。なお、いわゆるHorner筋は涙小管を囲んで眼瞼縁に向かうが、Jonesの筋束は外輪筋眼瞼部の周辺部に合するもので、後者は従来見落とされていたが、または、涙嚢部と区別だれていなかったと思われる。)
- 1017_04【Sweat gland汗腺 Glandula sudorifera】 Usually small eccrine glands, although in specific regions (anus, genitals, axilla) they are present as large apocrine glands.
→(汗腺はらせん状の形の長い管状腺であり、口唇、爪床、陰茎亀頭および陰核を除くすべての皮膚に分布している。汗腺は真皮全体を貫いており、その下端が浅筋膜内に存在することもありうるので、表皮の変形物である皮膚付属器のうちで最も深層にまで入り込んだ構造であるといえる。汗腺の開口を汗孔sweat poreという。)
- 1017_05【Suprapalpebral sulcus; Superior orbitopalpebral sulcus上眼瞼溝;上眼溝;前頭眼瞼溝;上眼窩眼瞼溝 Sulcus suprapalpebralis; Sulcus frontopalpebralis; Sulcus orbitopalpebralis superior】 Groove located above the upper eyelid.
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- 1017_06【Downy hair; Primary hair生毛;ウブゲ Lanugo】 Fine, downy hairs that can be distributed over the entire body, especially in neonates. They generally do not contain medullary cells.
→(生毛は細く柔らかい、色素の少ない胎児の毛で、小さな毛幹と大きな毛乳頭を有する。とくに新生児で明らかで、通常は無髄である。)
Zeis, Glands of
- 1017_07Zeis, Glands of【Sebaceous glands of eyelids脂腺(眼瞼の) Glandulae sebeceae】 Small sebaceous glands with openings into the hair follicles of the eyelashes.
→(ツァイス腺とも呼ばれる。睫毛の毛包へ開口する小さい皮脂腺。アポクリン線管の一種である睫毛線(モル腺Moll's glands)とは異なる。この腺の急性化膿性炎症がいわゆるモノモライ(外麦粒腫)である。ドイツの眼科医Eduard Zeis (1807-1868)によって報告された。)
- 1017_08【Anterior palpebral margin前眼瞼縁 Limbus anterior palpebrae】 Margin of the eyelids facing the outer skin of the eyelid.
→(前眼瞼縁は眼瞼皮膚に対する眼瞼縁。)
- 1017_09【Eyelash睫毛;マツゲ Cilia】 Eyelashes arranged in 3-4 rows near the anterior palpebral margin.
→(前眼瞼縁に近く。3~4列生える。(Feneis))
- 1017_10【Fatty layer of subcutaneous tissue; Superficial fatty layer of subcutaneous tissue; Subcutaneous adipose tissue脂肪層(皮下組織の);皮下脂肪組織 Panniculus adiposus (Telae subcutaneae)】
→(皮下によく発達した脂肪層。 (Feneis))
- 1017_11【Orbital septum眼窩隔膜;眼窩中隔 Septum orbitale】 Sheet of connective tissue that is partly reinforced by tendons. It extends from the orbital margin beneath the orbicularis oculi to the outer margins of the tarsi and closes off the orbital cavity anteriorly.
→(眼窩隔膜は眼窩の中の脂肪が前へ飛び出してくるのを防ぐ結合組織性の仕切りである。顔面骨膜と眼窩骨膜から線維を受け、眼窩口をせばめるとともに眼窩縁と上・下瞼板を結合している弁状の線維組織。とくに内眼角と外眼角でこれが発達し、内側、外側眼瞼靱帯という。前者は涙嚢を固定している。眼窩を経て顔面や頭皮へ向かう脈管神経は眼窩隔膜を貫く。)
Mueller's muscles
- 1017_12Mueller's muscles【Superior tarsal muscle上瞼板筋 Musculus tarsalis superior】 Smooth muscle between the musculotendinous junction of the levator palpebrae and superior tarsus.
→(ミュラー筋ともよばれる。上瞼板筋は眼球の毛様体内部にある輪状に走る平滑筋線維。上眼瞼挙筋腱膜の浅板。眼輪筋の眼瞼部(睫毛筋)の後面と上眼瞼皮下に終わる。ドイツの解剖学者Heinrich Franz Mueller (1820-1864)によって報告された。経線方向に走る平滑筋線維はブリュッケ筋Brucke's muscleという。)
- 1017_13【Levator palpebrae superioris muscle上眼瞼挙筋 Musculus levator palpebrae superioris】 o: Upper portion of optic canal and dural sheath of optic nerve. Its insertion tendon widens anteriorly and divides into a superior and an inferior layer. I: Oculomotor nerve.
→(上眼瞼挙筋は視神経管の縁の総腱輪の外側で視神経鞘から起こり、眼窩上壁のすぐ下で前頭神経の下を通り上眼瞼にいく。上眼瞼挙筋の腱は分離して上眼瞼挙筋浅板と上眼瞼挙筋深板に分かれる。前者は上眼瞼中を縁に向かって進み、後者は上瞼板筋の平滑筋細胞を伴って上眼瞼の瞼板に付く。下瞼板筋は下眼瞼板と下結膜円蓋の間の下眼瞼に存在する平滑筋層である。)
Krause, Glands of; Wolfring, Glands of
- 1017_14Krause, Glands of; Wolfring, Glands of【Accessory lacrimal glands副涙腺 Glandulae lacrimales accessoriae】 Additional smaller, scattered lacrimal glands that are mostly situated near the superior conjunctival fornix.
→(副涙腺は付加的に散在する涙腺。とくに上結膜円蓋近くに多い。)
Meibomian glands
- 1017_15Meibomian glands【Tarsal glands瞼板腺;マイボーム腺 Glandulae tarsales】 Elongated string of holocrine glands in the superior and inferior tarsi with openings near the posterior palpebral margin. They produce a sebaceous discharge that lubricates the margins of the eyelids.
→(マイボーム腺ともよばれる。上・下瞼板に埋没している皮脂腺で、結膜の間に、上眼瞼に30~40、下眼瞼に20~30個の多房状腺があり、後眼瞼縁に導管口が開く。特殊化した皮脂腺で眼瞼縁を保護し、結膜面をうるおす涙の露出を防ぐ。眼瞼を反転すると平行に並んだ真珠首飾り状の腺体を結膜を透かしてみることができる。瞼板腺の急性化膿性炎症を内麦粒腫、慢性化膿性炎症を霰粒種という。ドイツの解剖学者Heinrich Meibom (1638-1700)によって、1666年に記載された。が、第一発見者は、Casserius (1609)であるという。)
- 1017_16【Palpebral conjunctiva眼瞼結膜 Tunica conjunctiva palpebrarum】 Conjunctiva lining the posterior surface of the eyelids. It consists of stratified (dual-layered or multilayered) columnar epithelium with goblet cells and a well-vascularized lamina propria with loosely organized structures.
→(眼瞼結膜は眼瞼後面を被う結膜である。杯細胞をもつ2層または重層の円柱上皮で被われ、血管に富む疎性の固有層を伴う。)
- 1017_17【Superior tarsus上瞼板 Tarsus superior; Tarsus palpebrae superior】 Semilunar fibrous plate that is curved like a bowl and forms the upper eyelid. It measures about 10 mm vertically and consists of tough, connective tissue of interwoven collagen fibers. It contains the tarsal glands.
→(上瞼板は高さ約10mmあり、皿状に曲がっている。かたい縺れた膠原線維性の結合組織よりなる。瞼板腺を含む。上眼瞼を広く反転できるのは、ここに上眼板があるからである。とくに日本人では、眼輪筋と瞼板との間に疎性結合組織と脂肪組織があって内輪筋と瞼板とはゆるく結合するので、眼瞼を反転しやすい。上瞼板と皮膚との結合が粗であると一重瞼であるが、結合が密でつよいと二重瞼となる。)
- 1017_18【Superior palpebral arch上眼瞼動脈弓;上瞼板動脈弓 Arcus palpebralis superior; Arcus tarseus superior】 Anastomoses between the medial and lateral palpebral arteries on the superior tarsus.
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Moll's glands
- 1017_19Moll's glands【Ciliary glands; Moll gland睫毛腺;モル腺 Glandulae ciliares】 Apocrine glands situated at the margin of the eyelid. They open either into the hair follicles of the eyelashes or on the margin of the eyelid.
→(モル腺ともよばれる。眼瞼縁にあるアポクリン腺。睫毛の毛包または眼瞼縁へ開口する。オランダの眼科医Jacob Antonius Moll (1832-1914)によって記載された。)
- 1017_20【Ciliary muscle毛様体筋 Musculus ciliaris】 Smooth muscle of the ciliary body. It draws the choroid anteriorly, thereby relaxing the zonular fibers, allowing the lens to take its own, more strongly convex form for near vision.
→(眼の遠近調節accommodation(ピント合わせ)はの仕組みは、近いものを見るときには、毛様体筋が収縮して毛様小体がゆるみ(毛様小体の付着部が前の方に引かれるため)、水晶体が自身の弾性によって膨らみ(球形に近付き)、屈折率を増す。長時間にわたって細かい字を読んだ時の眼の疲労は、主に毛様体筋の疲労である。)
- 1017_21【Posterior palpebral margin後眼瞼縁 Limbus posterior palpebrae】 Inner margin of the eyelids facing the conjunctiva.
→(結膜に対する眼瞼縁。(Feneis))