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- 308_00【Sternum胸骨 Sternum】
→(胸骨は第一から第七肋骨の肋軟骨と鎖骨の軟骨に結合し、胸前壁の中心部を形成する長く平らい骨。胸郭前壁正中部にある縦長の扁平骨で、胸骨柄、胸骨体、剣状突起からなる。胸骨柄は最も側頭にあり、不整六角形を呈す。上縁正中部の浅い陥凹部が頚切痕で、この外側下方で斜め上方に向かう浅い陥凹部が、鎖骨関節面に対する鎖骨切痕である。鎖骨切痕は下方では左右の幅が尾側ほど狭くなり、下縁で胸骨体と軟骨結合によって連結している。胸骨体は縦長の長方形を呈し、下方でやや幅が広い。内面は比較的平滑であるが、外面は分節的に発生した名残として、横走する隆起線が肋骨切痕に対応して数本認められる。胸骨柄と胸骨体の外側縁の浅い陥凹部が、第1~第7肋軟骨に対する肋骨切痕である。第1肋骨切痕は鎖骨切痕の下方にあり、第2肋骨切痕は胸骨柄と胸骨体との連結部で両方にまたがっている。第3肋骨切痕以下は胸骨体にあるが、第5肋骨切痕以下では下方ほど間隔が狭くなる。第7肋骨切痕は剣状突起上端部に接している。剣状突起は胸骨体下縁に接する細長い小部で、一部が軟骨で、形は不定である。胸骨柄と胸骨体(胸骨柄結合)および胸骨体と剣状突起(胸骨瞼結合)の軟骨結合部は、年齢とともに骨化する。胸骨柄結合部は前方にやや突出し、胸骨角をなす。頚切痕外側部で時に見られる小骨が胸上骨である。ギリシャ語のsternon(男性の胸)に由来する。)
- 308_01【Clavicle; Collar bone鎖骨 Clavicula】
→(鎖骨は胸骨上縁のところにある棒状の骨。鎖骨の内側端を鎖骨端といい、その内側面には四角形の頬骨関節面があって、頬骨の鎖骨切痕と連結する。また、外側端を肩峰端といい、その外側面には楕円形の肩峰関節面があって肩甲骨と連結する。鎖骨下面の胸骨端の近くには胸鎖靱帯圧痕、肩峰端のすぐ近くには円錐靱帯結節という粗面があり、それぞれ同名の靱帯が付着する。鎖骨は結合組織生骨であり、全身の骨の中では最も早く骨化がはじまる(胎生第5週)が、骨化の完了する時期は25最以後で長骨の中では一番遅い。鎖骨は一般の長骨と異なり髄腔がなく、内部は海綿質でみたされている。哺乳類のうち上肢を歩行以外にも使用する(たとえば、物をつかんだり、からだの前で上肢を交差させる動作など)動物では鎖骨は発達しているが、上肢を前後方向に動かして歩行だけに使用する動物では鎖骨はないか、あっても痕跡的である。したがって霊長目や齧歯目では鎖骨が発達し、食肉目や有蹄目には鎖骨がない。語源はClavis(腱、カンヌキ)の縮小形で小さな鍵という意味。)
- 308_02【First rib [I]第一肋骨 Costa prima [I]】 The only rib that is only bent around the edge.
→(第1肋骨は強い弓状の弯曲を示すが、ねじれがほとんどないので、上下に扁平である。肋骨頚は細いが、肋骨体は幅広い。第1肋骨での上面と下面の区別は他の肋骨ほど容易ではない。しかし上面では肋骨体の中央で内側知覚に小さな突出物(前斜角筋が付くところ)があり、この小突出物のすぐうしろには、肋骨体を斜めに横切る幅1cm弱の浅い溝(肋骨下動脈が接するための溝)が見える。小突出物の前方にも更に幅の広い溝(鎖骨顆上脈が接するためのくぼみ)があるが、その輪郭ははっきりしないことが多い。第1肋骨の肋骨頭関節面もクサビ形でなく、丸い凸面を示す。また第1肋骨ではその弯曲が急に変わる点(すなわち他の肋骨での肋骨角に相当する部分)が肋骨結節に一致している。)
- 308_03【Costoclavicular ligament肋鎖靱帯 Ligamentum costoclaviculare】 Ligament that passes laterally to the sternoclavicular joint and connects the first rib to the clavicle.
→(肋鎖靱帯は鎖骨下面の肋鎖靱帯圧痕と第1肋軟骨内側端の上面との間に張る強い靱帯で、その内側部は関節包に接する。関節包の外側下部を補強し、鎖骨の挙上を抑制する。)
- 308_04【Sternoclavicular joint胸鎖関節 Articulatio sternoclavicularis】 Joint between the sternum and the clavicle which is subdivided into two cavities.
→(胸鎖関節は鎖骨の胸骨端と胸骨の鎖骨切痕との間の関節で、鎖骨の胸骨端が大きいために、関節面は第1肋軟骨の内側端上縁にまでおよんでいる。また、鎖骨胸骨端の上部は胸骨上縁より上方やや後方に突出する。胸骨と鎖骨の関節面の形は個人差が大きいが、一般的にいずれも浅い鞍状である。胸骨の鎖骨切痕と鎖骨の胸骨端はあまりよく適合しないが、線維軟骨性の関節円板(後上方の部が最も厚い)が介在して両者を適合せしめ、かつ関節腔を完全に2分する。)
- 308_05【Interclavicular ligament鎖骨間靱帯 Ligamentum interclaviculare】 Ligament that extends across the jugular notch and connects the two clavicles.
→(鎖骨間靱帯は胸骨の鎖骨切痕より上に突出した両側の鎖骨胸骨端を結ぶ強い靱帯で(ただし、その強度は個人差がかなり大きい)、関節包の上面を補強し、一部は頚切痕の縁に付着しながらその上を通って対側の同種の線維とつながる。鎖骨の肩峰端が押し下げられたとき胸骨端が挙上されるのを制限する。)
- 308_06【Articular disc of sternoclavicular joint関節円板(胸鎖関節の) Discus articularis sternoclavicularis; Discus articulationis sternoclavicularis】 Interarticular disc which is attached inferiorly to the first rib and superiorly to the clavicle.
→(関節円板は、下方は胸骨と第1肋軟骨につき、上方では鎖骨に付着する。関節円板を備えた状態では、形態学的に球関節に近いが、その運動は主としてこの関節を中心にして鎖骨の肩峰端が円をえがく運動で、そのとき鎖骨の外側端の動きは、直径約10cmの円をえがく。これによって上肢の運動範囲が拡大される。関節包は前面と後面で強くなって、それぞれ前胸鎖靱帯、後胸鎖靱帯という。関節包の下外方には強い肋鎖靱帯があって、第1肋軟骨の上面と鎖骨内側端の下面を結ぶ。胸骨の関節面より上方にとび出した左右の鎖骨内側端を結ぶ靱帯は、鎖骨間靱帯で、胸骨の頚切痕の上方を横走して左右の関節包を連結する。)
- 308_07【Manubrium of sternum胸骨柄 Manubrium sterni】 The part of the sternum above the sternal angle.
→(胸骨柄は胸骨の上1/4を占める部分で、その上縁の左右両端には小刀で角を落としたような切れ込み(鎖骨切痕)があり、ここに鎖骨と連結するための関節面が見える。左右の鎖骨切痕に挟まれた部分の上縁も浅い切れ込みになっている(頚切痕)。また胸骨柄の側面で鎖骨切痕のすぐ下には第1肋骨が接するための切れ込みがある。胸骨柄と胸骨体とが結合する(胸骨剣結合)部位は前方に突出して、後方に開く鈍角すなわち胸骨角を作る。)