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- 803_01【Arcuate pubic ligament恥骨弓靱帯 Ligamentum arcuatum pubis】
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- 803_02【Levator ani muscle肛門挙筋 Musculus levator ani】 Principle muscle of the pelvic diaphragm. It is derived from the abdominal wall musculature and permeated by smooth-muscle cells. I: Sacral plexus, S2-S5. It consists of the following parts.
→(肛門挙筋の丈夫な前部(恥骨尾骨筋)は分界線直下の恥骨の内面から起こり、薄い後部(腸骨尾骨筋)は腸骨から起こる。その起始腱は内閉鎖筋筋膜に接して移行し、閉鎖筋膜から発する腱束を受ける。これらの線維の起始部では腱性の係留物(肛門挙筋腱弓)により強化されている。左右両側で恥骨尾骨筋の内側線維束は挙筋脚を形成している。それらの線維束は背方と尾方、また直腸の前では外側を通り、それぞれ会陰の中心腱へ放散する薄い前直腸線維束や前立腺挙筋として前立腺筋膜(あるいは恥骨腟筋として腟壁)へと分かれる。それより鼻側にある肛門挙筋の線維束は恥骨直腸筋として直腸の背側を取り囲み、反対側の線維と共にループを形成する。恥骨尾骨筋の外側束は尾骨と仙骨の背側に広がる。腸骨尾骨筋の筋線維は尾骨と仙骨に付き、また肛門と尾骨の間では強靱な線維束である肛門尾骨靱帯に付いている。)
- 803_03【Ischiococcygeus muscle; Coccygeus muscle; Coccygeal muscle坐骨尾骨筋;尾骨筋 Musculus ischiococcygeus; Musculus coccygeus】 Muscle fibers that fan out from the ischial spine to the lateral surfaces of the sacrum and coccyx. They are joined with the sacrospinal ligament.
→(仙骨下端と尾骨を結ぶ筋で、ヒトでは退化的に(坐骨)棘尾骨筋に相当し、その浅(外)部が仙棘靱帯になり、深(内)部が尾骨筋に変化し、肛門挙筋とともに尾骨隔膜を形成する。前後の仙尾筋は、それぞれ腹側と背側の尾筋に相当する。後仙尾筋は固有背筋の最下部である。)
- 803_04【Obturator canal閉鎖管 Canalis obturatorius】 Canal formed by the obturator groove of the pubis and the obturator membrane for the passage of the obturator vessels and the obturator nerve.
→(閉鎖孔の上縁で、恥骨上肢の下面にある閉鎖溝と閉鎖膜の上縁によってつくられる管で、外上後方から内下前方に向かって走り、閉鎖動静脈・神経が通る。)
- 803_05【Obturator fascia閉鎖筋膜 Fascia obturatoria】 Stronger portion of parietal pelvic fascia covering the obturator internus.
→(壁側骨盤筋膜の上部は内閉鎖筋の内面を被っている骨盤筋膜のとくに強い部分。)
- 803_06【Urogenital triangle; Urogenital region尿生殖部;尿生殖三角;尿生殖器部 Regio urogenitalis; Trigonum urogenitale】 Region around the perineum that is located anterior to an imaginary line connecting the two ischial tuberosities.
→(尿生殖三角は左右の坐骨結節をむすぶ線の前方部で泌尿器官を囲む周辺部部域。この領域の浅筋膜のうち脂肪層(キャンパー筋膜)は坐骨直腸窩内の脂肪層に接続するものであり、同時に大腿皮下の浅筋膜にも移行する。陰嚢では脂肪層が平滑筋層(肉様膜)で置き換えられている。肉様膜は寒冷刺激に応じて収縮し、陰嚢皮膚の表面積を減少させる。尿生殖三角線筋膜のうち線維層(コールス筋膜)は後方では尿生殖隔膜後縁に付着し、外側方では恥骨弓の辺縁に付着するほか、前方では前腹壁浅筋膜の線維層(スキャルパ筋膜)へと移行する。このような尿生殖三角浅筋膜の線維層は陰茎あるいは陰核の部位では管状の鞘構造をとり、また陰嚢あるいは大陰唇の部位では著明な1層をなす。浅会陰隙とは、下方を会陰線筋膜の線維層で境され、上方を尿生殖隔膜で境されるような隙間のことである。この隙間は後方では隙間の上壁と下壁がたがいに癒着する形で閉じられ、外側方でも隙間の上壁と下壁が恥骨弓辺縁部に付着する形で閉じられている。しかし浅会陰隙はその前方部で前腹壁浅筋膜と前腹壁筋の間の隙間と自由に交通する。)
- 803_07【Superior fascia of urogenital diaphragm上尿生殖隔膜筋膜;内尿生殖隔膜筋膜 Fascia diaphragmatis urogenitalis superior; Fascia diaphragmatis urogenitalis interna】 Obsolete term. Current scientific opinion holds that there is no complete boundary to the deep perineal space.
→(深会陰横筋の坐骨直腸窩側にある筋膜。 (Feneis))
- 803_08【Male urethra男性尿道 Urethra masculina】
→(男の尿道は長さ約15~20cmである。膀胱頚の内尿道口に始まり、前立腺内を走り、尿道生殖隔膜を貫通し、陰茎の体を通って亀頭の前端で外尿道口に開く。尿道は走行によって、前立腺部・隔膜部・海綿体部の3部に分けられる。まず前立腺を貫通し、これを尿道の前立腺部という。後(背)壁中央には尿道稜があり、膀胱垂の連続する縦の隆起である。尿同僚の中央部は紡錘状にふくらみ、これを精丘という。精丘には前立腺小室が盲嚢として開く。これは胎生期のMueller管の名ごりで、男性子宮または男性腟ともいう。前立腺小室の両側に射精管が開口し、これより先の尿道は尿路と精液の通路を兼ねる。精丘両側のへこみが前立腺洞で、多くの前立腺管が開口する。つづいて尿道は尿生殖隔膜を貫く。これが隔膜部で、約1cm長。さらに外尿道口までが海綿体部で、12~14cm長。亀頭内の部分が膨大し、ここを尿道腺窩という。その後端上壁に舟状窩弁とよばれるヒダがある。海綿体部の粘膜には陥凹が多数みられ、尿道腺(リットレ腺)が開口する。)
- 803_09【Rectum直腸 Rectum; Intestinum rectum】 Tenia-free 15 cm long segment extending between the sigmoid colon and anus.
→(直腸は消化管の末端部でS状結腸につづく大腸の一部である。結腸から直腸への移行はゆるやかで、仙骨中央部あたりがほぼ両者の境界となる。直腸は腸間膜を欠き、直腸ヒモを示さない部分である。直腸の下端は、骨盤隔膜を貫く寸前までで、それ以下は肛門管である。肛門管の直上部にあたる直腸窩部はふくらみ、ここを直腸膨大部という。膨大部上方には横走するヒダが2~3本認められ、直腸横ヒダといい、最も恒常的なものは右壁にあって、コールラウシュのヒダという。直腸ははじめ仙骨の曲がりに沿って前方に凹の間借りを示し、これを仙骨曲といい、下端近くでは前方に凸の曲がりを示し、これを会陰曲という。直腸壁の平滑筋の筋層のうち、重筋層と一部の輪筋層は周辺の臓器へとのび、直腸尾骨筋、直腸膀胱筋、直腸尿道筋などとよばれる筋束をなす。直腸が内容をいれて拡張すると、壁の伸展刺激は求心性神経線維によって仙髄に伝えられ、反射的に内容の排出、すなわち排便が起こる。このような排便中枢の中枢は仙髄(S2~4)にあり、肛門脊髄中枢anospinal centerといわれる。排便defecationのさいには、交感神経が抑制されるとともに、副交感神経の興奮が高まって、大腸の蠕動・収縮がおこり、内肛門括約筋は弛緩し、さらに陰部神経を介して外肛門括約筋も随意的に緩められる。そのほかに、腹壁の筋・横隔膜・骨盤隔膜を作る肛門挙筋の収縮によって腹圧が高められ排便を助ける。)
- 803_10【Rectococcygeus; Rectococcygeus muscle直腸尾骨筋 Musculus rectococcygeus】 Thin sheet of smooth-muscle cells that passes from the second-third coccygeal vertebrae to the rectum.
→(第二~三尾骨から直腸へ張る薄い板状の平滑筋。(Feneis))
- 803_11【Pubic symphysis; Pubis symphysis; Symphysis pubis恥骨結合 Symphysis pubica; Symphysis ossium pubis】 Cartilaginous joint between the rami of the pubis.
→(恥骨結合は骨盤前面で左右の恥骨が正中線上で向かい合ってできる連結。両側の恥骨結合面がうすい硝子軟骨に被われ、その間に線維軟骨でできる恥骨間円板が連結する。その構造は椎間円板の線維輪に似る。女性では妊娠時にこの結合は弱められ、またこのことは分娩時における新生児の頭の産道通過を助ける。モルモットなどでは、女性ホルモンの投与によって、実験的にこの結合を弱めることができる。付属する靱帯に次のものがある。(1)上恥骨靱帯:恥骨結合の上縁で左右の恥骨を結ぶ。(2)恥骨弓靱帯:恥骨結合の下縁で、左右の恥骨下枝を結び、恥骨弓をつくる。下面で尿生殖膜との間隙を陰茎静脈が通る。 Symphysisははsyn(一緒に)physis(生える)、すなわち「自然に癒合したもの」という意味である。解剖学用語としてのsymphysisは線維軟骨結合という一般名詞であるが、慣用的にはpubicaという形容詞なしでも恥骨結合を指すことが多い。正しい読み方はスィンフィスィスである。)
- 803_12【Deep dorsal vein of penis; Dorsal vein of penis♂深陰茎背静脈;陰茎背静脈;筋膜下陰茎背静脈(♂) Vena dorsalis profunda penis; Vena dorsalis penis♂】 Subfascial vein of the dorsum of penis lying below the pubic symphysis between the inferior pubic ligament and transverse perineal ligament that passes to the prostatic venous plexus. It lies between the deep fascia of penis and tunica albuginea and is usually unpaired.
→(深陰茎背静脈は陰茎背面の正中線で左右の陰茎背動脈の間にある無対性の太い静脈。陰茎亀頭および陰茎海綿体より血液を集め、深陰茎筋膜の深層を背側に走り、次いで恥骨結合の下縁に沿って恥骨弓靱帯と尿生殖三角の間から骨盤腔に入り、前立腺静脈叢にそそぐ。一部の静脈は陰茎背動脈に沿って坐骨直腸窩に出て内陰部静脈へそそぐ。)
Denonvilliers' ligament
- 803_13Denonvilliers' ligament【Puboprostatic ligament; Lateral puboprostatic ligament♂恥骨前立腺靱帯;恥骨前立腺外側靱帯 Ligamentum puboprostaticum; Ligamentum laterale puboprostaticum♂】 Fascial thickening lateral to the symphysis between the prostate, urinary bladder, and pelvic wall. Part of the tendinous arch of the pelvic fascia.
→(上骨盤隔膜筋膜は、肥厚して、恥骨前立腺靱帯となる。外側恥骨前立腺靱帯は、恥骨結合に近い恥骨の後面から起こって、前立腺の外側縁に達する。)
- 803_14【Tendinous arch of pelvic fascia骨盤筋膜腱弓 Arcus tendineus fasciae pelvis】 Tendinous thickening of pelvic fascia that passes in an arch from the pubic symphysis to the levator ani and continues posteriorly to the ischial spine. It corresponds to a band giving exit to the visceral vessels and nerves from the lateral pelvic wall and providing an especially firm attachment for the pelvic fascia to the pelvic wall. Formation of the puboprostatic and pubovesical ligaments.
→(上骨盤隔膜筋膜のうち恥骨結合から坐骨棘へ走る弓状筋性の肥厚を骨盤筋膜腱弓(古くは白板と呼んだ)という。この線に沿って、内臓の血管・神経が骨盤側壁へと走り、骨盤結合組織が骨盤壁ととくに強固に結合している。)
- 803_15【Pelvic fascia骨盤部の筋膜;骨盤筋膜 Fascia pelvis; Fascia pelvica】 Continuation of the transversalis fascia into the pelvis. It splits into a visceral layer covering the pelvic viscera and a parietal layer covering the wall of the pelvis.
→(骨盤筋膜は骨盤腔中の諸構造を被う結合組織の膜で、壁側骨盤筋膜と臓側骨盤筋膜とを分かち、前者は上方は骨盤入口の分界線から下方は仙結節靱帯、坐骨結節、坐骨枝、恥骨の下枝に至り、その前方部は男で恥骨前立腺靱帯、女で恥骨膀胱靱帯などをつくり、その両側のものの間に陰茎背動脈または陰核背動脈を通ずる。壁側骨盤筋膜の上部は内閉鎖筋の内面を被って閉鎖筋膜という。)
- 803_16【Tendinous arch of levator ani muscle肛門挙筋腱弓;閉鎖筋膜腱弓 Arcus tendineus musculi levatoris ani; Arcus tendineus fasciae obturatoriae】 Tendinous arch of variable thickness formed by the obturator fascia at the origin of the levator ani.
→(上骨盤隔膜筋膜は閉鎖筋膜と合する線において肛門挙筋腱弓をなして肛門挙筋の起点をつくり、また下骨盤隔膜筋膜と内外相応じて肛門挙筋と尾骨筋とを包み骨盤出口の大部分を閉ざすロート上の骨盤隔膜を形成する。)
- 803_17【Ischial spine坐骨棘 Spina ischiadica】 Bony process between the greater and lesser sciatic notches.
→(坐骨体の後縁の上部に、後内方に突出する三角形の坐骨棘がある。)
- 803_18【Sacrum [Sacral vertebrae I-V]仙骨;仙椎[1-5] Os sacrum [Vertebrae sacrales I-V]】
→(はじめ分離していた第一から第五までの仙椎は、成人すると癒合して一個の仙骨となり、骨盤の後壁を作る。仙骨では、元来仙椎に存在していた棘突起は正中仙骨稜となり、関節突起は中間仙骨稜となり、横突起は外側仙骨稜となる。さらに最外側部に外側部という部分があり、そこに肋骨遺残物が含まれている。なお本来各椎骨間に左右おのおの一個ずつであるべき椎間孔が、それぞれ前仙骨孔と後仙骨孔とに二分されるので、片側で8個の仙骨孔となり、それぞれ脊髄神経の前枝と後枝とを通過させるのも大きい特徴である。外側の耳状面は腸骨の耳状面と関節する。仙骨底(上方にあっても底という)の前方に強く突出した辺縁部を岬角という名称は側頭骨の中耳(鼓室)の内側壁にもあるから注意のこと。4本の横線は5個の仙椎の癒着部を示している。)