842
- 842_01【Pineal gland; Pineal body松果体;松果腺 Glandula pinealis; Epiphysis cerebri; Corpus pineale】 It develops from the roof of the diencephalon and overlies the tectal plate.
→(松果体は円錐形の小体で、後交連の領域で、第三脳室の天井に付着している。これは痕跡的な腺であるらしく、血管の豊富な結合組織の小柱の網工からなり、その網眼の中には神経膠細胞および松果体細胞pinealocytesあるいはepiphysial cellがみられる。サルの松果体細胞はセロトニン(5-HT)とコレシストキニン(CCK)を含んでいる。哺乳類の松果体細胞は、系統発生学的には、感覚神経性光受容体の要素と関係しており、これは、分泌細胞になる物が多いが、間接的に光受容性をもっている。これらの突起の棍棒状をした終末は、血管血管を取り囲む血管周囲腔に接して終わる。松果体の分泌のうちで最もよく知られた物は、セロトニン、ノルアドレナリンおよびメラトニンという生体産生アミンであるが、その他に、サイロトロピン遊離ホルモン(TRH)、黄体形成ホルモン遊離ホルモン(LHRH)およびソマトスタチン(SRIF)のような、視床下部で形成されると同定されたペプチドを、かなりの濃度で含んでいる。セロトニンは、松果体細胞の中で合成されて細胞外の隙間に放出される。ノルアドレナリンは、松果体の実質細胞に終止ししている交感神経ニューロンの中で合成される。松果体は、昼間光の変動に敏感なN-アセチルトランスフェラーゼおよびヒドロキシインドール-o-メチルトランスフェラーゼという2つの酵素の働きによって、セロトニンからメラトニンを合成する。メラトニン合成の毎日の変動は周期性であり、光入力の毎日の周期に直接関係している。光は、日周期を環境の光周期に一致させる。そして、さらに、まだ確認されていない経路を経て、神経性信号が松果体に運ばれることを速やかに遮断するように働く。N-アセチルトランスフェラーゼの活性は、昼夜に高められるが、光にさらすと、酵素の活性が失われる。視床下部の視交叉上核を両側性に傷害すると、この核は網膜視床下部経路を受けているので、松果体のN-アセチルトランスフェラーゼにおける周期がなくなり、その結果、ヒドロキシインドール-o-メチルトランスフェラーゼの活性のレベルが下がる。そのような傷害によって、自発運動の活性の日周期および栄養補給と水飲み行動の両方の日周期がなくなる。雄のネズミでは、視交叉上核の傷害によって、正常な発情周期がなくなる。網膜視床下部路は、視交叉上核の構造との直接の相互作用によって、松果体のはたらきを変える。環境の光は、日周期をその周期に一致させる働きと伝達する働きをもっているとみなされ得る。内在性振動発生装置を光周期にのせるための光後下はゆっくりであるが、信号伝達に及ぼす光の後下は速やかである。そして、それによって、光によってN-アセチルトランスフェラーゼが速やかに“消失”することと、持続光によって日周期が妨げられることを、おそらくは説明できるであろう。視交叉上核からの単一神経路が、松果体によるメラトニン形成に関係する両酵素を調節しているが、これらの結合についての詳細は、なお、あきらかになっていない。間接的に証明された根拠は視交叉上核から松果体への神経路には、視床下部の灰白隆起の領域、内側前脳束および中間質外側路への中継路が含まれることを示唆している。このように、松果体は、交感神経ニューロンを経て受けた信号をメラトニンという内分泌物に変換させる、神経内分泌変換体ともいうべきものであるらしい。松果体の分泌は視床下部の働きを変化さえるが、それは、内分泌が心身の血液循環あるいは、脳脊髄液に入ってからののちに作用する。松果体のセロトニンとメラトニンの日内変動は、光入力の周期に応じて起こる。松果体活動のこれらの周期性変化は、この腺が生物学的時計としてはたらいて、生理学的過程と行動学的過程とを調節する信号を出していることを示唆している。これらの変動は日周期circadian rhythmsと呼ばれ、環境からの刺激が存在すれば、ほぼ24時間周期を示すだけである。松果体実質の腫瘍は、性的機能を低下させて思春期を送らせるが、他方、松果体を破壊するとしばしば早発思春期を伴う。これらの観察は、松果体が、性腺および生殖器系に抑制的影響を及ぼすことを示す実験的研究の結果と一致する。)
- 842_02【Posterior commissure後交連 Commissura posterior; Commissura epithalamica】 Commissure situated between the pineal recess and the opening of cerebral aqueduct. Crossing site of fibers from the surrounding area.
→(後交連は、中脳と間脳の背側における境界をなす。この小さな交連は中脳水道と第三脳室の移行部で上丘の上方の中心灰白質の背側にある。交連線維は外側で扇状にひろがり、その周囲を後交連核と総称される細胞が取り囲む。これまで明らかにされた後交連の構成線維は、①視蓋前核、②後交連核、③間質核からの線維がある。瞳孔の対光反射に関与する線維は後交連で交叉する。後交連の下方の中脳水道上衣は線毛をもつ高い柱状細胞よりなる。このような変形上衣細胞は交連下器官を形成し、分泌機能をもち、脳室周囲器官の一つとされている。交連下器官は中脳において脳血液関門をもたない唯一の部分である。)
- 842_03【Superior colliculus; Optic tectum上丘;視蓋 Colliculus superior; *Tectum opticum】 It is connected to the visual pathway.
→(上丘は中脳蓋つまり四丘体の前半分を形成するあまり高くない隆起であり、大脳皮質と同様に層構造を示す。上丘の層は灰白質と白質とが表面から内部に向かって次のごとく交互に配列する。①帯層(主として線維よりなる)、②灰白層(浅灰白質)、③視神経層(浅白質層)、および④毛帯層で、これは中間部と深部の灰白質および白質を形成する。上丘浅層は主に網膜および皮質視覚野からの線維を受け、視野における物体の動きの探知に関係する。上丘深層は多様な入力(つまり、体性感覚系および聴覚系、運動活動に関わるニューロン、網様体の各領域)を受け、脳幹網様体と同様の解剖学的、生理学的特質を持つ。上丘の浅層と深層は、形態学的にも線維連絡の上からも、さらに生化学的にも線維連絡の上からも異なるが、空間的な整合性に関しては互いに密接に関連する。浅層からの投射線維は主に視覚関連核に至る。一方、中間層及び深層からの線維は頭部、眼球運動に関わる広い領域に投射される。上丘を反射中枢とする定位反射(指向反射)とは、視野に入った興味を引く対象物が視野の中心に来るように、頭と眼球を動かす反射である。)
- 842_04【Brachium of superior colliculus上丘腕 Brachium colliculi superioris】 Connecting arm between the superior colliculus and lateral geniculate body.
→(上丘腕は上丘と外側膝状体とを連絡する視索線維束。)
- 842_05【Brachium of inferior colliculus下丘腕 Brachium colliculi inferioris】
→(下丘腕は下丘の外側にのびる隆起で、下丘と内側膝状体をつなぐ。上行性聴覚路の大部分を形成する。)
- 842_06【Medial geniculate body内側膝状体 Corpus geniculatum mediale】 Part of the auditory pathway that is connected with the inferior colliculus.
→(内側膝状体は、視床の尾方腹側面で、外側膝状体の内側方、大脳脚の背方に位置する。この核は、視床における聴覚の中継核であって、聴放線を出す。下位脳幹にある聴覚の中継核群とは違って、両側の内側膝状体の間には交連線維による連絡がない。内側膝状体は、明瞭な細胞構築と連絡から更に幾つかの部分にに分けられる。内側膝状体は内側部、背側部および腹側部と呼ばれる三つの主要な部分から構成される。内側膝状体のこれらの細区分域は、普通の組織学的標本では区別するのが容易ではないが、Golgi標本では明らかである。内側膝状体腹側核は、内側膝状体の吻尾方向の全長にわたって広がり、内方が、下丘腕によって境されている。内側膝状体の他の大きな部分とは違って、腹側核には、明確な層板構造がある。腹側部の細胞の大きさと形は、かなり一定しており、房状の樹状突起をもつ。房状細胞の樹状突起と下丘腕の神経線維によってできた層状構造は、らせん形、または、弯曲した垂直の板状を示す。下丘からの求心性線維は特定の層板にはいり、そのまま同じ層と連絡しつづける。内側膝状体の側腹部にある層板構造は、外側膝状体のそれに類似しているが、細胞の層が有髄神経線維帯によって区切られることがない。内側膝状体の腹側部に生理学的な性質によって地図をつくると、この細胞層は音の高低に一致した局在と関係しており、高い周波数の音は内側に、低い周波数の音は外側に復元される。内側膝状体の腹側部のニューロンから聴放線が起こり、一次聴覚野に終わるが、ここでは、音の周波数が空間的に配置されている。一次聴覚野からは内側膝状体の腹側部に終わる両方向性皮質視床線維が起こる。膝状体皮質線維と皮質膝状体線維は、両者とも同側性である。ヒトでは、内側膝状体の主な皮質投射は、膝状体側頭葉放線、あるいは聴放線を経て、側頭葉上面の隆起部(横側頭回)に達する。皮質のこの投射野(41野)は、音の高低に一致した局在をもっている、すなわち、高音は内側方に、また低音は前外側方に復元される。内側膝状体の背側部には、幾つかの核が含まれ、それらの中には、膝状体上核と背側核がある。背側核は、内側膝状体の尾方の高さでは顕著であり、外側被蓋野からの投射を受ける。この外側被蓋野は上丘の深い層から、外側毛帯に隣接する領域へと広がった領域である。内側膝状体の内側部の大細胞性部は、下丘、外側被蓋および脊髄からの入力を受ける。内側膝状体の中の層構造を示さない部分はすべて一次聴覚野を取り囲む皮質の帯状部に同側性の線維を送っている。)
- 842_07【Lateral geniculate body外側膝状体 Corpus geniculatum laterale】 Part of the visual pathway that is connected with the superior colliculus and visual cortex.
→(外側膝状体は、視床の後下面よりわずかに突出している1対の小さな卵形の塊の外側部分。視覚系における視床の中継核であり、内側膝状体の吻側外側方、大脳脚の外側方で、視床枕の副側方にある。この核には、細胞が層状に配列した構造があり、横断切片では、門を腹内側方に向けた馬蹄形をしている。視索の視交叉および非交叉性線維は、この門を通ってはいり、一定の正確な様式に従って分布する。ヒトと霊長類では、外側膝状体を構成するものは、6つの細胞層であり、これらは2つに大別される。同心円状に並んだ6つの細胞層は、介在する線維帯によって区切られ、慣例では、腹内側方の門の領域から始めて、1から6まで番号が付けられている。外側膝状体の背側核を区分すると、大細胞性部(1と2層)および小細胞性部(3~6層)となる。外側膝状核の背側部の2つの領域は網膜の神経節細胞から求心線維を受ける。外側膝状体の小細胞性の層を構成するのは、腹背の方向に順に3,4,5および6層であり、容易に区別される。これらの諸層を外側方にたどると、4層が6層と、また、3層が5層というように対をなす2層が1組になって癒合する。網膜から外側膝状体への投射は正確で、視索の交叉性線維と非交叉性線維とはそれぞれ、別々の層に終わる。すなわち、交叉性線維は1,4および6層に終わり、一方、非交叉性線維は2,3および5層に終わる。交叉性網膜膝状体線維関係のある2つの特殊な性状が構造に反映されている。単眼性の視野は半月形であるが、これは反対側の網膜の内側半の最も内部にある受容要素によって受け取られる。網膜のこの部分にある神経節細胞は、反対側の外側膝状体の二重層の部分に交叉性に線維を送る。この二重層は、4層と6層の部分が外側方で癒合して出来ている。網膜の内側半の中にあって、視神経線維が通っている視神経円板(乳頭)には光受容器がなく、[周辺]視野測定[法]で見つけることができる盲点の原因となる。視神経円板(乳頭)は反対側の外側膝状体の中で、4層と6層の中の細胞層が不連続である部位に対応する。ヒトの外側膝状体を通る切断切片のニッスル標本によって、細胞の直線的配列が明らかにされており、細胞の長軸の方向は、各細胞層の軸に垂直である。小細胞性の諸層にある各周囲部は、“投射の方向線”に平行であり、これらの視野中の各点が同じように復元されていることを示している。外側膝状体の中における網膜表面との局所的対応関係は、高度に組織化され、しかも正確である。両眼視による視野の反対側半は、交叉性線維と非交叉性線維とが異なる層に終わってはいるが、外側膝状体のすべての層に投影される。6つの層における投射の場所は、完全にきまっているので、両眼視における反対側の眼の視野の中のどんなに小さな領域でも、6つの層全体を通して、“投射の方向線”に平行して放射状に延びる背腹方向の細胞柱に一致することを示すことができる。外側膝状体を構成するものは、馬蹄形に曲がった6つの薄い細胞層である。しかし、そこに投射してくる場所は正確にきまっている。それゆえ、“投射の方向線”の中の細胞柱は、両眼視の視野のうち反対側の視野に関係する各眼の網膜の中の対応する点からの入力を受ける。両眼視の像の融合は、外側膝状体の中では起こらない。それは、網膜膝状体線維が外側膝状体の異なった層に終わっているからである。(術後長期間生存させた例の)視神経の切片を追って調べると、順応性の変性、またはニューロン越えの変性は、各側の外側膝状体の3つの層に起こる。神経線維、または細胞の変性が起こる層は、網膜からの交叉性線維(1,4および6層)と非交叉性線維(2,3および5層)の配列に従って異なる。網膜の小さい傷によって、同側、対側の3つの違った層の中に“投射の方向線”に従って、一列に並んで配列した細胞集団に、ニューロン越えの変性が起こる。反対側の単眼視野(単眼性の半月形の視野)は、網膜の内側半のもっとも内側の部分における受容器要素と関係しており、これからは、2層性の部分に終止する交叉性の神経線維のみが出ている。外側膝状体における“投射の方向線”は、有線野に加えた傷害によって外側膝状体の中に現れる逆行性細胞変性の研究からも、明らかにすることができる。視野の半分は、局在性をもってそれぞれの側の半球の有線野に部位局在的に投射しているので、外側膝状体の中に逆行性細胞変性が現れる帯状の部分は、それぞれの側で、投射の方向線によって境される。外側膝状体では視野の中心を通る水平線が背腹方向に入る斜めの面に対応し、この面により内側部と外側部が分けられる。両眼の網膜の上半部からの神経線維は、外側膝状体の内側半部に投射し、下半分は、本核の外側半部に線維を送る。網膜の黄斑からの投射は、外側膝状体尾側部のうち視野の中心を水平子午線に相当する面の両側にある。幅の広いクサビ形の部分として示される。黄斑に相当する部分は、外側膝状体の全容積のおよそ12%を占める。視野の中心を通る垂直の子午線に一致し、本核の尾側縁に沿って、内側の境界からの外側境界に及んでいる。外側膝状体は、視索の主要な終止場所である。ここから膝状体鳥距路、あるいは視放線を経て、鳥距周囲皮質(17野)に投射があり、また外側膝状体は、この皮質野から皮質膝状体線維を受ける。本核は、視床枕と核間結合をしている。)
- 842_08【Cerebral peduncle大脳脚[広義の] Pedunculus cerebri】
→(広義の大脳脚は中脳の腹側部で、背側の中脳蓋(四丘体)および中心灰白質背側部を除いた中脳水道水平中央断面より腹側の部分を総称する。さらにこれは背側の中脳被蓋と狭義の大脳脚に分かれる。中脳被蓋には著明な構造物として、動眼神経核群、中脳網様体、赤核、黒質、内側毛帯などが存在する。もともとは全脳と後脳を連結するやや細くなった首状部分である中脳の両半分の部分をさす名称であったが、その後、様々な意味で用いられるようになった。Crus cerebriとよばれる皮質投射線維の大きな束のみをさしたり、これに被蓋を加えたものをさしたりするが、後者の方が好ましい、脚底にある黒質は被蓋とcrus cerebriとを境する構造とみなされている。)
- 842_09【Inferior colliculus下丘 Colliculus inferior】 Its cytoarchitectural composition varies.
→(下丘は中脳蓋を形成する卵形の二対の隆起(四丘体)のうち下方の一対をいう。外側毛帯からの神経を受け、下丘腕を経て視床の内側膝状体に至る神経を出す。聴覚系の中脳における中継核で、細胞構築および機能的に中心核、外側核および周囲核の三つの核からなる。下丘核は外側毛帯を介して蝸牛神経核および台形体核から線維を受け、下丘腕を通って両側性に視床の内側膝状体へ線維を送る。)
- 842_10【Frenulum veli帆小帯;上髄帆小帯 Frenulum veli】 Band passing between the superior medullary velum and tectal plate.
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- 842_11【Trigone of lateral lemniscus外側毛帯三角;毛帯三角;絨帯三角 Trigonum lemnisci lateralis; Trigonum lemnisci】 Triangular field located laterally between the tectal plate, superior cerebellar peduncle, and cerebral crus.
→(外側毛帯三角は被蓋の側面近くに存在し、外部構造の主部を形成している。蓋板、上小脳脚および大脳脚との間の三角部。その線維のあいだの細胞群は、聴覚路でのいくつかの介在核の1つである外側毛帯核を形成する。)
- 842_12【Trochlear nerve [IV]滑車神経[脳神経IV] Nervus trochlearis [IV]】 Nerve exiting on the dorsal side, caudal to the tectal plate. It supplies the superior oblique muscle.
→(滑車神経は脳神経中最少のもので、滑車神経核からでて上斜筋を支配する鈍体性運動性神経である。この神経は脳の背側から脳をでる唯一の脳神経で、下丘のすぐ後方で、上小脳脚と上髄帆小帯との間から出て、大脳脚をめぐり、(側頭骨)錐体尖の近くで硬膜を貫いて海綿静脈洞の上壁に達し、動眼神経の外側から上側に向かって前進し、上眼窩裂を通って眼窩内に入り、上直筋、上眼瞼挙筋起始部の上を前内側にすすんで、上斜筋に分布する。)
- 842_13【Superior cerebellar peduncle (Brachium conjunctivum)上小脳脚;結合腕;小脳大脳脚 Pedunculus cerebellaris superior; Brachium conjunctivum; Crus cerebellocerebrale】
→(上小脳脚(結合腕Brachium conjunctivum)は主として小脳を出る線維からなる。その主体をなす線維は小脳視床路と小脳赤核路である。これらは主として歯状核から出て、腹内側方に進んで深部に入り、中脳下半で大部分交叉し、上小脳脚交叉(結合腕交叉)を作り、反対側の中脳被蓋を上行し、一部は赤核に終わるが(小脳赤核路)、一部はさらに視床の前外側腹側核に至る(小脳視床路)。なお上小脳脚の表面を前脊髄小脳路が逆行して小脳に入り、主としてその前葉に分布する。また鈎状束は室頂核から出て大部分交叉し、上小脳脚の背外側をへて鈎状に曲がり、下小脳脚内側部の上部に来て前庭神経各核にならびに橋、延髄の網様体内側部に分布する。)
- 842_14【Pontine taenia橋外側糸;橋ヒモ Fila lateralia pontis; Taenia pontis】
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- 842_15【Anterior thalamic tubercle前結節(視床の);視床前結節 Tuberculum anterius thalami】 Small protuberance on the anterior end of the thalamus. Attachment site of the stria medullaris of the thalamus.
→(視床の前結節は視床前端の小結節。背側視床の前面は狭く、その背側部は前方にやや突出し、視床前結節と呼ばれる。)
- 842_16【Taenia thalami視床ヒモ;視床脈絡ヒモ Taenia thalami; Taenia chorioidea thalami】 Upper margin of the stria medullaris of thalamus. Attachment site of the choroid plexus of third ventricle.
→(第三脳室の薄い上皮性の天井は視床の比較的鋭い上縁に付着している(視床ヒモ)。この視床ヒモに沿って視床髄条(中隔部その他と手綱核を連絡する神経線維束)が走る。視床ヒモは背側方では手綱三角に達しており、そこで手綱交連に沿って正中線を越え、第三脳室の上皮性の天井を閉じている。視床ヒモは背側方ではMonro孔を通過して脈絡ヒモに連続している。)
- 842_17【Lamina affixa付着板 Lamina affixa】 Floor of the lateral ventricle between the stria terminalis and choroid line.
→(付着板は発生後期には視床上面に付着して側脳室の中心部の床を形成する。側脳室の内面をおおう上衣層の一部にすぎないが、二次的に間脳に属する視床の背側面の外側部を多い、これと癒着したものである。)
- 842_18【Stria terminalis分界条 Stria terminalis】 Longitudinal band of efferent fibers from the amygdaloid body. It is accompanied by the superior thalamostriate vein in the angle between the thalamus and caudate nucleus.
→(分界条は背側視床と尾状核の間にある狭い白質で、主として扁桃体から起こり、脳弓と平行して走る。この線維の中には視索前野と視床下部と腹内側核でシナプス結合するものがある。)
- 842_19【Corpus striatum線条体[広義の] Corpus striatum】 Structure that is currently viewed as consisting of the putamen. caudate nucleus, pallidum, and fasciculi.
→(線条体は尾状核とレンズ核を意味する。レンズ核はさらに被殻と淡蒼球に区別される。このうち尾状核と被殻は終脳胞の腹外側に出現する神経節丘より同一の細胞群として発生し、その後、のちに発達してくる内包によって二つの部分に隔てられたものである。尾状核と被殻とは内包に横切って走る栓状の灰白質によって互いに連なり、特に前下方では両者は構造的にも同じ細胞構築をもっている。線条体という名称は内包を横切って尾状核と被殻を結んでいる灰白質によってできる縞目と、さらに、尾状核や被殻の中を走る有髄線維の小束によってできる縞目とに基づくものである。したがって、尾状核と被殻とをまとめて線条体Striatumとよび、淡蒼球をPallidumとよんで対比することが多い。解剖学用では、慣用されてきたStriatumという語とは異なる意味内容をもつ語として、Corpus striatumが採用されているが、日本名ではどちらも「線条体」である点は注意を要する。一方、淡蒼球の発生や細胞弧対句はStriatumとは異なる。淡蒼球は有髄神経線維に富むため黄灰白色を呈し、赤みを帯びた暗灰色のStriatumとは肉眼的にも明らかに識別できる。系統発生的視点に立って、尾状核と被殻を新線条体(Neostriatum)、淡蒼球を古線条体(Paleostriatum)、扁桃体を原線条体(Archistriatum)とよぶことがある。)
- 842_20【Pulvinar of thalamus視床枕 Pulvinar thalami】 Posterior, freely projecting portion of the thalamus.
→(視床枕は視床の後部と背外側を形成する大きな灰白質塊で、これの尾方は、内側膝状体、外側膝状体および中脳の背外側面の上に張り出している。視床枕は視床枕核群ともよばれており細胞学的にはかなり均一であるので、局所的な位置関係を基にして細分される。視床枕を形成するのは、明るく染まった、中等度の大きさの、多極性の細胞で、それらの細胞の分布密度と配列は、視床枕の部位によって異なっている。視床枕の前部の細胞は小さく、明るく染まり、散在性に配列している。下部は、視床枕の主部から、上丘腕の神経線維によって隔てられており、散在性の濃染する細胞で構成される。外側部を、外側髄板から広がる斜めの線維束が横切っている。視床枕の諸核は、長い、上行性の感覚神経路からは入力を受けてはいないが、その下部は、上丘の浅層のいくつかの層からの投射を受けている。局所的には、この投射は、反対側の視野の半分に相当する。視床枕の下部とそれい隣接する外側部とは、線条野を含む後頭葉の皮質と相互に結合する。視床枕の下部とそれに隣接する外側部はそれぞれ、反対側の視覚野の半分が復元され、網膜の部位局在的に、次の各部に投射している。すなわち、①皮質の18野と19野と、②有線野(17野)で、そこでは、線維が、顆粒層の上にある諸層に終止する。これらの結果によって、3つの視覚局在性をもった系統の入力が、視床(外側膝状体、視床枕の下部、およびそれに隣接する視床枕の外側部)から、一次視覚野に達し、しかも、そのいろいろな層に終止することが明らかになった。視床枕の下部から17野、18野および19野への投射は、膝状体外視覚神経路の中の最後の連絡を形成する。(視床枕の下核に隣接している部分以外の)視床枕の外側核は、側頭葉に投射し、同じ領域と相互に連絡している。視床枕の内側部は、上側頭回に投射しているらしい。)
- 842_21【Tectum of midbrain中脳蓋;四丘体 Tectum mesencephali; Corpora quadrigemina】 Part of the mesencephaIon lying on the tegmentum of midbrain.
→(中脳蓋は中脳水道が通り、屋根状になった脳背側部。上丘と下丘が含まれる。)
- 842_22【Lateral groove of midbrain中脳外側溝 Sulcus lateralis mesencephali】 Furrow between a cerebral crus and the tegmentum
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- 842_23【Trigeminal nerve [V]三叉神経[脳神経V] Nervus trigeminus [V]】 Nerve innervating the first pharyngeal arch. The fifth cranial nerve, comprised of two groups of fibers exiting laterally from the pons, innervates the muscles of mastication and supplies sensory information for facial sensation.
→(三叉神経は知覚部と運動部とからなる混合神経で脳神経中もっとも大きい。その知覚部は頭部および顔面の大部分に分布し、運動部は深頭筋、咀嚼筋、顎舌骨筋および顎二腹筋の前腹を支配する。その核は菱脳中に位置し、体性運動性の三叉神経運動核、知覚性の三叉神経主知覚核および三叉神経脊髄路核ならびに咬筋の筋知覚を司るといわれる三叉神経中脳路核などに分けられるが、これから出る線維のなかで、知覚神経線維は集まって知覚根[大部]を作り、運動神経線維は集まって運動根[小部]を作り、橋と中小脳脚との移行部において脳を去る。知覚根は側頭骨錐体部の三叉神経圧痕の上で大きい三叉神経節[半月神経節]を作り、これを出てから眼神経、上顎神経、下顎神経の3枝に分かれる。運動根は三叉神経節の下面の内側に沿って前進し下顎神経に合する。三叉神経は3枝に分かれた後にも各々の神経節を有し、眼神経には毛様体神経節、上顎神経には翼口蓋神経節、下顎神経には耳神経節および顎下神経節がある。これらのうち三叉神経節は脊髄神経節と同じ構造で体性神経系に属するが、他の神経節はその構造上から自律神経系に属するものである。)
- 842_24【Lingula of cerebellum [I]小脳小舌;第I小葉 Lingula cerebelli [I]】 Unpaired part of the vermis belonging to the archicerebellum that is fused with the superior medullary velum.
→(小脳小舌は小脳虫部の前端(または上端)を形成し、2つの盛り上がる上小脳脚の間の上髄帆の表面上を前方へのびる。Larsellの区分に従えば小葉(Ⅰ)に相当する。Larsellは比較解剖学的立場より、小脳虫部の小葉にⅠからⅩまでの番号を付した。一方、人の小脳虫部は9の虫部小葉と、Larsellの小葉の対応関係は単純ではない。)
- 842_25【Vincula of cerebellar lingula小脳小舌ヒモ Vincula lingulae cerebelli】
→(小脳小舌ひもは小脳脚の背側面にある小脳虫部の小舌の外側への小突起。)
- 842_26【Middle cerebellar peduncle中小脳脚;橋腕;橋小脳脚 Pedunculus cerebellaris medius; Brachium pontis】 Part conveying the transverse fibers of the pons, mainly neencephalic tracts, to the cerebellum.
→(中小脳脚(橋腕)は3対ある小脳脚のうち最大のもので、主として橋核から起始する線維からなり、橋底の正中線を越えて対側の背側に移り太い束となって橋被蓋の外側を乗り越えて小脳にはいる。少数の対側へ移らない線維もある。少数の側副線維が小脳核に達している以外ほとんどが橋小脳路線維からできている。)
- 842_27【Cerebellum小脳 Cerebellum】 Part of the brain situated above the rhomboid fossa.
→(Cerebellumは、「大脳、脳」を意味するcerebrumの指小形で、「小さい脳」という意味である。Cerebrumは、「頭」を意味するギリシャ語のkararan由来する。 小脳は筋、関節などの深部組織、前庭、視覚、聴覚系などからの入力を直接あるいは間接的に受け、眼球運動を含む身体の運動調節を司る。小脳は正中部の虫部と外側部の小脳半球とに分けられる。いずれも多数の小脳溝により小脳回に細分される。この中、特定の小脳溝は深く、これにより小脳回の集合ができる。これを小脳小葉とよぶ。ヒトでは小脳は深い水平裂により上面と下面とに分けられ、虫部とそれに対応する半球に九つの小葉が区別される。系統発生的には小脳は前葉、後葉、片葉小節葉の3部分に分けられる。前葉は系統発生的に古く古小脳(Paleocerebellum)ともよばれ、脊髄小脳路、副楔状束核小脳路、オリーブ小脳路の一部、網様体小脳路などをうける。後葉は系統発生的に新しく、新小脳(Neocerebellum)とよばれる。とくに半球部は虫部より新しく、橋核、主オリーブ核などを介して大脳皮質と結合している。前葉と後葉とは第1裂により境される。片葉小節葉は原小脳(Archicerebellum)とよばれ最も古く前庭系との結合が著明である。後葉とは後外側裂で境される。後葉には虫部錐体と虫部垂との間に第2裂がある。ヒトの小脳小葉の形は他の動物のものと大きく異なりる。小脳全体は灰白質と白質とからなる。灰白質には小脳皮質と小脳核とがある。小脳皮質は小脳小葉の表面をなし遠心性軸索を出すPurkinje細胞と皮質内での結合を行う細胞とからなる。小脳核は深部にあり、室頂核、球状核、栓状核、歯状核の4核からなる。小脳皮質にはその結合から三つの縦帯が認められる。すなわち、正中部の虫部皮質、外側部の半球皮質および両者の境界部の虫部傍皮質である。虫部皮質のPurkinje細胞は室頂核に、虫部傍皮質は球状核と栓状核に、半球皮質は歯状核に投射する。小脳の中心部の白質塊は髄体とよばれ、遠心性および求心性繊維から出来ている。ここからは白質が分枝して(白質板)、小葉に分かれる。全体として樹の枝のようにみえるので、小脳活樹と名づけられている。小脳は三つの小脳脚により、延髄、橋、中脳と結合している。これは小脳の遠心路および求心路の通路となっている。 小脳の発生 development of the cerebellum:小脳は後脳の菱脳唇から発生する。後脳の菱脳唇は翼板の背外側につづく背内方に突出する高まりで、胎生2ヶ月の後半において急速に増大し、小脳板とよばれるようになる。左右の小脳板の間には菱脳蓋の頭側半分が介在するので、頭側部では左右の小脳板は相接しているが、尾側部では広く離れている。菱脳の中央部を頂点とする橋弯曲が高度になると、この部の菱脳蓋の左右方向の拡大によって、左右の小脳板の尾側部はいよいよ高度に引き離され、左右の小脳板は菱脳の長軸に直角な一直線をなすようになる。これと同時に左右の小脳板の頭側部(今では内側部)が合一するので、結局、正中部が小さくて左右両部が大きい単一の小脳原基が成立する。正中部からは小脳虫部が、左右両部からは小脳半球が形成される。 増大していく小脳原基の背側部には、やがて中部から半球に向かって走る溝が次々に出現して小脳を区画する。胎生5ヶ月のおわりには小脳虫部における10個の主な区分(小脳葉)がほぼ完成する。これらの小脳葉はそれぞれ固有の発育を行うが、その間に第2次、第3次の溝が生じて、各小脳葉を多数の小脳回に分ける。このような形態発生の結果広大な表面積を獲得した小脳の表面には小脳皮質とよばれる特別な灰白質が形成され、これに出入りする神経線維はその深部に集まって小脳白質を形成する。 小脳原基においても菱脳室に接する内側から表面に向かって胚芽層・外套層・縁帯の3層が分化する。胚芽層は神経が細胞をつくりだすが、胚芽層から発生するのは小脳核の神経細胞と小脳皮質のPurkinje細胞およびGolgi細胞である。小脳原基が3層に分化するとまもなく、外套層の表層部にやや大型の神経芽細胞が出現し、小脳板の背側面(表面)に平行に1列にならぶ。これがPurkinje細胞の幼若型である。ついで小脳板の尾側端部の胚芽層でさかんな細胞分裂がおこり、ここで生じた未分化細胞は縁帯の表層部を頭方に遊走して、小脳原位の全表面をおおう未分化細胞層を形成する。これを胎生顆粒層という。 胎生顆粒層の細胞は胚芽層における細胞分裂が終わるころから活発な分裂を開始し、神経細胞をつくりだす。この神経細胞は縁帯およびPurkinje細胞の層を貫いて、Purkinje細胞の層の下に達し、ここに新しい細胞層(内顆粒層)をつくる。胎生顆粒層からは、このほかに縁帯の中に散在する籠細胞や小皮質細胞が生ずる。必要な数の神経細胞を送り出すと胎生顆粒層における分裂はやみ、本層は速やかに消失する。一方、Purkinje細胞は縁帯の中に多数の樹状突起を伸長させる。縁帯はPurkinje細胞の樹状突起で満たされて厚くなり、核をあまり多く含まな灰白層となる。このようにして小脳の全表面は、表面から灰白層・Purkinje細胞層・内顆粒層の3層から成る小脳皮質でおおわれることになる。)