882
- 882_01【Claustrum前障 Claustrum】 Layer of gray substance between the lentiform nucleus and insular cortex.
→(前障はレンズ核と島との間にある、内側が凹面をなす板状の核で、腹側方に厚くなる。この核とレンズ核との間には外包があり、また島の皮質との間には最外包がある。これらは狭い白質で、大部分は連合線維から、一部は交連および投射線維からなる。前障は種々の視床核、扁桃体などから線維を受け、大脳皮質に広く投射する。前障は以前は線条体とともにいわゆる基底核に数えられたり、あるいは皮質層の付け足しとして島皮質に属するものとされた。しかしながら、発生学的ならびに比較解剖学的研究によって、前障は発生の途中で位置がずれた古皮質の細胞群であることが証明されている。前障はその広い底の所で古皮質の領域へ移行する(すなわち梨状前野や扁桃体の外側核へ)。頭頂葉、側頭葉および後頭葉の皮質からの、無髄線維が局在的配列をなして前障に終わると言われている。前障の機能についてはわかっていない。)
- 882_02【Anterior commissure前交連 Commissura anterior】 Commissure located anterior to the fornical column. It is readily visible in the anterior wall of the third ventricle.
→(間脳の前交連は第三脳室の前壁をつくる終板の後ろにある横走線維束である。前部は小線維束で、左右の両側の嗅脳系を結び、後部は大きな線維束で、左右両側の側頭葉に連絡する。前交連は小さな密な線維束で、脳弓柱の吻側で正中線を横切る。これは全体として自転車のハンドルに似た形態をしていて、肉眼標本では明瞭ではないが、2つの部分から構成される。前交連の小さい前部は肉眼標本ではあきらかでないが両側の嗅球を連絡している。大きい後部は主として両側の中側頭回および下側頭回の間を連絡する。)
- 882_03【Hidden part of column of fornix脳弓柱蓋部;脳弓柱没部 Pars tecta columnae fornicis】
→()
- 882_04【Gray part of subthalamic nucleus視床下灰白部 Pars grisea hypothalami】
→()
- 882_05【Third ventricle第三脳室 Ventriculus tertius】 Diencephalic part of the cerebral ventricular system. It extends from the lamina terminalis to the cerebral aqueduct.
→(第三脳室は左右の間脳の間にある背腹方向にスリット状を示す腔である。前壁は終板と前交連によってつくられる。前上部には室間孔が開口し、左右の側脳室と交通し、後方は中脳水道と連絡する。後壁は松果体に入り込む松果体陥凹がみられ、下壁は視床下部によってつくられ、視交叉陥凹、漏斗陥凹がみられる。外側壁を形成している視床と視床下部の境には視床下溝が走る。なお、脳室の前上方部に第三脳室終脳部とよばれる部分がある。)
Vicq d'Azyr's bundle
- 882_06Vicq d'Azyr's bundle【Mammillothalamic fasciculus乳頭体視床束;乳頭体視床路;乳頭視床束;乳頭視床路;ヴィック・ダジール束 Fasciculus mammillothalamicus; Tractus mamillothalamicus (Vicq d'Azyr)】
→(乳頭視床束は乳頭体と視床前核を結ぶ神経線維束。主乳頭束として、乳頭被蓋束とともに乳頭体の背側よりでる。乳頭体内側核からおこる神経線維は同側の視床前核のうちでも前腹束核と前内側核に分布し、乳頭体外側核からおこる神経線維は両側の視床前背側核に分布するといわれる。また、乳頭視床束には視床前核から乳頭立ちに向かう神経線維も少数含まれるらしい。)
- 882_07【Cerebral peduncle大脳脚[広義の] Pedunculus cerebri】
→(広義の大脳脚は中脳の腹側部で、背側の中脳蓋(四丘体)および中心灰白質背側部を除いた中脳水道水平中央断面より腹側の部分を総称する。さらにこれは背側の中脳被蓋と狭義の大脳脚に分かれる。中脳被蓋には著明な構造物として、動眼神経核群、中脳網様体、赤核、黒質、内側毛帯などが存在する。もともとは全脳と後脳を連結するやや細くなった首状部分である中脳の両半分の部分をさす名称であったが、その後、様々な意味で用いられるようになった。Crus cerebriとよばれる皮質投射線維の大きな束のみをさしたり、これに被蓋を加えたものをさしたりするが、後者の方が好ましい、脚底にある黒質は被蓋とcrus cerebriとを境する構造とみなされている。)
Wernekink's decussation
- 882_08Wernekink's decussation【Decussation of superior cerebellar peduncles上小脳脚交叉;結合腕交叉;小脳大脳脚交叉;大被蓋交叉 Decussatio pedunculorum cerebellarium superiorum; Decussatio crurum cerebellocerebralium】 Crossing of the peduncles below the inferior colliculus and ventral to the medial longitudinal fasciculus.
→(上小脳脚は小脳核から出て初めは表面を走るが、下丘の高さで奥に入り交叉して一部は対側の赤核に終わり、一部は視床に至る。この交叉を上小脳脚交叉という。)
- 882_09【Nuclear layer of medulla oblongata有核層(延髄の) Stratum nucleare (Medulla oblongata)】
→()
- 882_10【Superior cerebellar peduncle (Brachium conjunctivum)上小脳脚;結合腕;小脳大脳脚 Pedunculus cerebellaris superior; Brachium conjunctivum; Crus cerebellocerebrale】
→(上小脳脚(結合腕Brachium conjunctivum)は主として小脳を出る線維からなる。その主体をなす線維は小脳視床路と小脳赤核路である。これらは主として歯状核から出て、腹内側方に進んで深部に入り、中脳下半で大部分交叉し、上小脳脚交叉(結合腕交叉)を作り、反対側の中脳被蓋を上行し、一部は赤核に終わるが(小脳赤核路)、一部はさらに視床の前外側腹側核に至る(小脳視床路)。なお上小脳脚の表面を前脊髄小脳路が逆行して小脳に入り、主としてその前葉に分布する。また鈎状束は室頂核から出て大部分交叉し、上小脳脚の背外側をへて鈎状に曲がり、下小脳脚内側部の上部に来て前庭神経各核にならびに橋、延髄の網様体内側部に分布する。)
- 882_11【Globose nucleus; Posterior interpositus nucleus球状核;後中位核 Nucleus interpositus posterior; Nucleus globosus】 Collection of cells lying medial to the dentate nucleus.
→(球状核は2~3個の円い細胞集団で、栓状核の内側、室頂核の外側に位置する。ここには大型および小型の多極細胞がある。下等哺乳動物では栓状核と球状核は連続しているように見え、これらを一括して中位核とよぶ。その組成細胞および線維連絡の違いにより、これはヒトの、①栓状核に相当する前中位核と、②球状核に相当する後中位核に区別される。)
- 882_12【Emboliform nucleus; Anterior interpositus nucleus栓状核;前中位核 Nucleus interpositus anterior; Nucleus emboliformis】 Cerebellar nucleus situated directly in front of the hilum of the dentate nucleus.
→(栓状核は楔形の細胞集団で、歯状核門の知覚に位置する。歯状核とよく似た細胞からなり、しばしば両者を区別することが困難である。小脳皮質中間域のPurkinje細胞の軸索を受ける。この核の細胞の軸索は上小脳脚から小脳を出て行く。 TAではAnterior interpositus nucleus; Emboliform nucleusとなっている。)
- 882_13【Vermis of cerebellum [I-X]; *Cerebellar vermis小脳虫部[第I-X小葉] Vermis cerebelli [I-X]】 Middle portion of the embryonic cerebellar plate.
→(小脳虫部は小脳のなかで系統発生学的に古い無対の部分。小脳虫部は小脳正中部の構造であるが、左右それぞれ半分が両側の前庭神経核群や橋および延髄の網様体に投射する。この投射経路には、小脳皮質前庭神経核線維(前庭神経外側核へ入るプルキンエ細胞の軸索)によるものと、室頂核(または小脳内側核)からのものとがある。小脳虫部皮質のプルキンエ浅部の軸索が室頂核(内側核)へ入るのに対して、小脳半球皮質のプルキンエ細胞の軸索は小脳中位核と歯状核(または小脳外側核)に終止する。これらの小脳核から起こる小脳の出力線維は上小脳脚を通って小脳から出ていく。小脳虫部は、吻側部で形態的に舌状の小脳小舌となって上髄帆と癒着し、虫部の下縁(虫部小節)は、左右の下髄帆の間に挿入されるように存在する。)
- 882_14【Putamen被殻 Putamen】 Lateral telencephalic part of the lentiform nucleus.
→(被殻はレンズ核の外側部を形成し、外側髄板によって淡蒼球の外節とへだてられている。島皮質とは最外包、前障、外包によってわけられる。被殻の構造は尾状核とまったく同様で、太い有髄線維をほとんど含まず、主として小さい神経細胞からなるが、散在性の大細胞を含む。被殻と尾状核は発生学的にみると、同一の細胞群が内包の発達によって隔てられたもので、両者の間には互いに結合する灰白質の線条が多数見られる。そのため、両者をあわせて線条体または新線条体と呼ぶ。線維連絡も尾状核と原則的に等しい。霊長類において動物が高等になると、相対的な意味で尾状核の体積が減少し、被殻の体積が増大するといわれている。)
- 882_15【Pallidum; Globus pallidus; Paleostriatum淡蒼球;淡蒼部 Pallidum; Globus pallidus】
→(淡蒼球はレンズ核の最内側部を占め、被殻よりは小さい灰白質。垂直に走る板状の有髄神経線維(外側髄板)によって外側部の被殻と隔てられており、また、内側髄板によって内節と外節に分かれる。系統発生学的に線条体よりは古く、下等動物でよく発達している。発生に関しては、「間脳」性とするものののほか、その一部を「終脳」由来とするものがある。鉄反応が強陽性にでることが知られている。淡蒼球には大型の紡錘形ニューロンが多く、樹状突起は無棘で、長く髄板に平行して円板状に分枝する。淡蒼球の大型ニューロンの定量分析によれば、これらの細胞は単一のニューロン群に属する。淡蒼球の内節と外節の大型ニューロンには、なんら形態学的又は化学的な差異は見られない。ヒトでは外節は淡蒼球全体の約70%を占め、細胞密度が最も高い。淡蒼球の内節、外節の大型ニューロンはすべてGABA作働性である。淡蒼球ニューロンの軸索は少数の側枝を出している。淡蒼球の内側・外側髄板に存在する大型のコリン作働性ニューロンは、淡蒼球の腹側に存在する無名質のつづきである。多数の有髄線維束が淡蒼球を横走しているので、新鮮な脳では被殻や尾状核に比べ色が淡く見える。淡蒼球への求心性神経線維のもっとも主な起始は尾状核と被殻である。また、視床下核や黒質からの神経線維が内包を横切って主として内節に入る。淡蒼球が大脳皮質からの求心線維を受けるかどうかについては不確かである。視床からの求心線維については否定的な見解が多い。淡蒼球からおこる遠心性神経線維の主なものは視床と視床下核におわる。これらのうち、内節の腹側から出る神経線維は淡蒼球の腹側表面に集合してレンズ核ワナを形成し、内方後脚の腹内側部を背方にまわり、背尾側方へ走ってフォレル野に達する。一方、内節の背側からでる神経線維は淡蒼球の背内側部からおこる。これらは多数の小線維束として内包の腹側部を横切り、不確帯の腹側部に集合してレンズ核束(H2)を形成する。ついで、レンズ核束はフォレル野に入り、ここでレンズ核ワナの神経線維と一つになり、不確帯の内側端を取り囲むように腹側から背側にまわり、視床束(H1)を形成する。視床束は不確帯の背側を吻外方へ走り、視床に入って主として前腹側核(VA)、外腹側核(VL)、正中中心核(CM)などに分布する。なお、視床束には小脳視床線維も含まれている。淡蒼球から視床下核にいたる神経線維は主として外節からおこり、内包の尾側レベルにおいてその腹内側部を横切って視床下核に達する。淡蒼球からおこり中脳被蓋(脚橋被蓋核)や黒質へ向かう遠心性神経線維もある。)
- 882_16【Optic tract視索 Tractus opticus】 Portion of the visual pathway between the optic chiasm and lateral geniculate body that is visible on the surface of the basal part of the brain.
→(視索は視交叉と外側膝状体の間の視覚路で左右の視索は視床下部と大脳脚基底部を回って後外方へ走る。これらの線維の多くは外側膝状体の中に終止するが、小部分は下丘腕となって上丘および視蓋前域にまで続く。外側膝状体からは膝状体鳥距路が起こり、これが視覚路の最後の中継路をなす。視索前域は対光反射と関係し、上丘は眼と頭の反射運動より視覚刺激を追跡することと関係している。網膜視床下部線維は、両側性に視床下部の視神経交叉上核に終止する。この網膜からの直接の投射は、機能的には神経内分泌調節と関連している。)
Luys, Nucleus of (Corpus Luysii)
- 882_17Luys, Nucleus of (Corpus Luysii)【Subthalamic nucleus視床下核;ルイ体;ルイス体 Nucleus subthalamicus】 Nucleus lying between the inferior end of the internal capsule and the zona incerta. It has reciprocal connections with the globus pallidus.
→(視床下核はルイ核ともよばれている。脳の断面の肉眼観察の際にも「目立つ」神経核であって、大型ニューロンから成り、間脳の最尾部において内包後脚の背内方に位置している。この神経核の内側部は黒質吻側部の背方に位置する。背側の不確帯とはレンズ核束(H2)によりへだてられている。核の境界は明瞭で、前頭断面では両凸レンズ形を呈し、矢状断面ではほぼ円形を呈する。核の尾側端のレベルでは、核の内側部が黒質の最吻側端の背縁に接している。主な求心出力神経線維を淡蒼球や脚橋被蓋核受け、また、遠心性神経線維を主として淡蒼球内節に送る。大脳皮質とくに前頭葉からの求心性線維や、黒質や淡蒼球への遠心性線維の存在が報告されているが、その他の線維連絡関係については不確実な点が多い。ヒトでこの核が損傷されると、反対側の半身に激しい不随意運動、すなわちヘミバリスムがおこる。視床下核の細胞はグルタミン酸塩を含有しており、淡蒼球と黒質のニューロンに興奮性に作用すると言われている。グルタミン酸塩は細胞の基礎代謝にも存在するもので、視床下核の細胞がグルタミン酸塩免疫反応陽性であっても、かならずしもグルタミン酸塩がこの核の細胞により使用される神経伝達物質とはいえない。視床下核は視床下部外側核の最後の細胞集団から発生してくる。吻側の細胞集団は淡蒼球の内節、外節の原基となる。Luys, Jules Bernard (1828-1898)フランスの神経学者。)
- 882_18【Occipital horn of lateral ventricle; Posterior horn of lateral ventricle後角;後頭角(側脳室の) Cornu occipitale ventriculi lateralis; Cornu posterius ventriculi lateralis】 It extends into the occipital lobe.
→(側脳室の後角(後頭角)は側頭葉中に向かって突出し、その上壁および外側壁はやはり壁板からなる。その他の壁は後頭葉の髄室によって作られ、内側壁には上下各1個のかたまりがある。上のものは不定で、後角球と呼ばれ、脳梁膨大から後方に延びる線維群、すなわち大鉗子によって作られる。下のものは恒存し、鳥距溝のため生じたもので、鳥距という。)
- 882_19【Red nucleus赤核 Nucleus ruber】 Principal nucleus of the central tegmental tract. The iron-containing nucleus is situated between the periaqueductal gray substance and substantia nigra, extending from the superior colliculus into the diencephalon. It is composed of two or possibly more components.
→(赤核は中脳被蓋では最も明瞭な部分で、網様体のほぼ中央にあり、桃黄色を呈し、周囲を上小脳脚線維で囲まれている。赤核全体として卵円形で、横断面は円形を呈し、上丘の下端から間脳の下部まで広がる。細胞学的には後方の大細胞部と前方の小細胞部によりなる。赤核の細胞の間には主として上小脳脚からの有髄線維の細い束が存在する。動眼神経根の一部が脚間窩に至る途中で赤核を貫く。赤核の求心性線維は主として小脳核および大脳皮質からくる。これらの線維は体部的局在性をもって赤核に終止する。上小脳脚の線維は中脳下部で完全に交叉し、対側の赤核およびその周囲に至る。小脳歯状核からの側枝は対側赤核の上1/3部に終止し、一方、栓状核(前中位核)および球状核(後中位核)からの線維は赤核の下2/3部に体部位的局在性をもって終わる。この連絡は小脳の傍虫部皮質と赤核大細胞部をつなぎ、さらに赤核から脊髄へ体部位的局在性に投射する。これには上小脳脚交叉および赤核脊髄路の交叉の2つの交叉が含まれる。赤核の大細胞部からの体部位的局在投射は主に頚髄と腰髄に終わる。皮質赤核線維は中心前回や前運動野から起こり、ともに両側の赤核小細胞部に体部位的局在性をもって終止する。大脳皮質6野の内側部(補足運動野)からの投射線維は対側の赤核大細胞部に終わる。中心前回の運動野から赤核大細胞部に終止する線維は同側性で、赤核運動路の体部位的局在性をもつ起始に対応する。これらの皮質赤核線維は体部位的局在性をもち、赤核脊髄路(交叉性)と共に運動野皮質から脊髄へインパルスを伝える経路の一部をなす。赤核からの下行性遠心路は腹側被蓋交叉で交叉し、①小脳の中位核、②三叉神経主知覚核および脊髄路核、③顔面神経核の一部、④いくつかの延髄の中継核および⑤脊髄に投射する。また赤核の小細胞部からの非交叉性の線維束が中心被蓋路に入り、オリーブ核主核の背側板に終わる。これを赤核オリーブ路といい、小脳へのフィードバック系の一部をなす。赤核からの視床への投射はない。)
Soemmering's substance
- 882_20Soemmering's substance【Substantia nigra黒質;黒核 Substantia nigra; Nucleus niger】 Black nucleus lying on the cerebral crura. It is characterized by pigmented ganglion cells making it visible to the naked eye. It extends through the entire mesencephalon into the diencephalon.
→(黒質は中脳被蓋腹側部の核で大脳脚の背側に接して存在する。ヒトの黒質の神経細胞は顆粒状のメラニン色素を豊富に含有するため、黒質は全体として肉眼的に黒くみえる。黒質には背側の緻密部と腹側の網様部が区分される。緻密部が神経細胞に富むのに対し、網様部では神経細胞の密度は粗で、細い神経線維に富む。したがて、前者は黒色部、後者は赤色部とよばれることがある。黒質からおこる遠心性神経線維としては、緻密部からおこり線条体に分布する黒質線条体線維、網様部から起こり視床のとくに内側腹側核(VM)に分布する黒質視床線維、および網様部からおこり上丘の中間灰白質に分布する黒質上丘線維などが主なものである。また、黒質に分布する求心性神経線維の起始としては、線条体・淡蒼球・視床下核(Luys体)が主なものである。これらのほか、前頭葉皮質・背側縫線核・扁桃体中心核・外側手綱核なども報告されているが不確実である。黒質は中枢神経系のうちでドーパミンとGABAの含有量が高い部位として知られる。ドーパミンは線条体に神経線維を送る黒質緻密部の神経細胞に主として含まれ、またGABAは線条体よりおこり黒質網様体に至る神経線維の軸索終末に主として含まれる。黒質に見られる線維はまたは11個のアミノ酸が連絡したペプチドとしてのP物質(SP)も含む。黒質は脳において最も高濃度にP物質を有する部位で、この物質は黒質の緻密部および緻密部内の神経終末に凝集している。網様部はまたエンケファリン作働性線維および終末も有する。尾状核および被殻の樹状突起の棘突起に含むニューロンから起こる線条体黒質線維はGABA、P物質、エンケファリンを含む。これらの線維は同様の伝達物質を有する線条体淡蒼球線維を出すニューロンとは異なる細胞集団から起こる。黒質はパーキンソン病(振戦麻痺)の原因となっている代謝障害に緻密に関係しており、Huntington舞踏病および異常な不随意運動や筋緊張の変化を特徴とする他のタイプの運動障害にも関与しているようである。パーキンソン病では黒質から線条体へのドーパミンの輸送および合成が極度に傷害される。Huntington舞踏病では線条体のドーパミンは正常であるがGABAは著明に減少している。)
- 882_21【Medial longitudinal fasciculus; MLF内側縦束 Fasciculus longitudinalis medialis】 Bundle of various fiber systems that enter and leave at different levels. Its fibers interconnect the motor nuclei of cranial nerves and also connect the vestibular apparatus with ocular muscles, neck muscles, and the extrapyramidal system. This serves to coordinate muscle groups, e.g., masticatory, tongue, and pharyngeal muscles when swallowing or speaking; or ocular muscles for movements of the globe.
→(前索の後部には脳幹のいろいろなレベルにある種々な神経核からでる複雑な下行線維束がある。この複雑な神経線維束は内側縦束として知られている。この神経束の脊髄部は同じ名称で呼ばれる脳幹にある伝導路の一部にすぎない。内側縦束の上行線維は主として前庭神経内側核および上核から起こり、同側性および対側性に主として外眼筋支配の神経核(外転、滑車、動眼神経核)に投射する。内側核からの上行線維は主に交叉をし、両側の外転神経核と左右の動眼神経核に非対称性に終わるが、滑車神経核へは対側性に投射する。上核の中心部にある大形細胞は非交叉性上行線維を内側縦束に出し、これは滑車神経核および動眼神経核に終わる。同核の周辺部にある周辺部にある小型細胞は交叉性の腹側被蓋束(内側縦束の外側にある)を経て動眼神経核に投射するが、これは主として対側の上直筋を支配する細胞に作用する。生理学的には、前庭神経核から外眼筋支配核から外眼筋支配核への上行性投射のうち、交叉性線維は促進的に働くが、非交叉性線維は抑制的に働く。内側縦束にはこのほかに、左右の外転神経核の間にある神経細胞から起こり、交叉して上行し、動眼神経核の内側直筋支配部に終わる明瞭な線維が含まれる。この経路は一方の外転神経核の活動を対側の動眼神経核内側直筋支配部へ連絡する物で、外側視の場合に、外側直筋が収縮すると同時に対側の内側直筋が共同して収縮するための神経機構を形成している。内側縦束の上行線維の一部は、動眼神経核を回ってCajal間質核に終わる。これは内側縦束内にうまっている小さい神経細胞群である。前庭神経内側核は対側性に間質核へ投射するが、上核は同側性に終わる。前庭神経二次線維は両側性に視床の中継核へ投射し、その数は中等度で、後外側腹側核に終止する。前庭からの入力を受ける視床の細胞は体性感覚情報にも対応するが、これは視床には特定の前庭感覚中継核がないことを示唆している。)
- 882_22【Fourth ventricle第四脳室 Ventriculus quartus】 Dilatation of the embryonic neural tube lumen in the rhombencephalon.
→(第四脳室は菱脳の中にできる脳室で、頭方は中脳水道に、尾方は中心管につづく。第四脳室はその上壁をなす第四脳室蓋と底部の菱形窩により囲まれる。第四脳室蓋の前方は左右の上小脳脚とその間にある薄い白質板の上髄帆とからなる。上髄帆は尾側に伸びて上髄帆小帯となる。第四脳室蓋の後方は下髄帆と第四脳室脈絡組織とからなる。前者は虫部小節と片葉との間にある薄い白質板で、その下面をおおう上衣細胞の尾方延長部は軟膜によっておおわれる。この軟膜が第四脳室脈絡組織(上衣細胞と粘膜とを脈絡組織と呼ぶ場合もある)で、そこに出入る血管とともに脈絡叢をつくる。第四脳室脈絡組織の延髄への付着部が第四脳室ヒモである。第四脳室は左右の第四脳室陥凹に開く第四脳室外側口(Lateral aperture)と尾方の第四脳正中口とによりクモ膜下腔と交通する。)
- 882_23【Surperior part of rhomboid fossa菱形窩上部 Pars superior (Fossa rhombidea)】
→()
- 882_24【Hilum of dentate nucleus歯状核門;歯状核口 Hilum nuclei dentati】 Opening of the dentate nucleus that gives exit to the majority of fibers forming the superior cerebellar peduncle.
→(小脳の歯状核門は小脳のフラスコ状歯状核門で、内方を向き、上小脳脚または結合腕をつくる線維群に出口を与えている。)
- 882_25【Fastigial nucleus; Nucleus medialis cerebelli室頂核;小脳内側核;内側核 Nucleus fastigii; Nucleus medialis cerebelli】
→(室頂核は小脳核のうち最も内側で、第四脳室上壁の正中線知覚に位置する。核の中で細胞に差があり、小型細胞が腹側を示す。この核の外側縁の細胞は腹外側に伸びて前庭神経核に向かっているが、GolgiⅡ型細胞は存在しないようである。他の小脳核の細胞と異なり、室頂核細胞からは交叉性および非交叉性軸索が出、そのうち交叉性のものは核の吻側部から多く出る。小脳核の細胞はPurkinje細胞とは異なり、促進的で、小脳の外に投射する。免疫組織化学の研究結果から、小脳核の全ての細胞の促進性伝達物質はグルタミン酸塩およびアスパラギン酸塩であるらしいと考えられる。小脳皮質からの唯一の出力であるプルキンエ細胞は一定の配列様式をもって小脳核に投射し、小脳髄質中に存在する細胞群(小脳核)から起こる促進性出力系に対して抑制的に働く。室頂核からの遠心性線維は、①上小脳脚を通らない、②大部分が小脳内で交叉する。③脳幹各部の神経核に投射する、点で特徴的である。室頂核からの交叉性線維は鈎状束を通って小脳の外に出るが、これは上小脳脚の周囲を弓形に走る。また非交叉性線維は傍索状体を通って脳幹に投射する。鈎状束中の交叉性線維は室頂核のすべての部位の細胞から起こり、その数は傍索状体中を走る非交叉性線維より多い。室頂核からの投射線維のうちで最も多いのは下位脳幹へ到るものである。前庭神経核への投射は両側性で、前庭神経外側核および下核の腹側部に対称性に終わる。室頂核網様体線維は主に核の吻側部から起こり、大部分交叉して、①巨大細胞性網様核の内側部、②橋網様体尾側部、③傍正中網様核背側部および④外側網様核の各部に終止する。交叉性の室頂核橋線維は鈎状束から分かれて腹側に走り、橋核の背外側部に終わる。また少数の交叉性室頂核脊髄線維が上部頚髄まで下行し、そこで前柱細胞に接続する。室頂核からの線維のうち、少数のものは脳幹の背外側部を上行し、側枝を上丘および交連核に送り視床の細胞が疎らな部位(VLcとVPLo)に両側性に終わる。これらの終止は歯状核および中位核からの中位核からの終止と重なり合うことはない。)
- 882_26【Capsule of dentate nucleus歯状核嚢 Capsula nuclei dentati】
→()
- 882_27【Dentate nucleus; Nucleus lateralis cerebelli歯状核;小脳外側核 Nucleus dentatus; Nucleus lateralis cerebelli】 Largest cerebellar nucleus. It resembles a folded pouch and is situated in the white substance of cerebellum.
→(歯状核は小脳核の中で最も外側にある最も大きい核。小脳半球の白質中に位置する。この核は横断切片では渦巻形の灰白質が袋状に並び、袋の口(歯状核門)が内側方に向かい、下オリーブ複合核によく似ている。核は主に大型で多くの分枝した樹状突起をもつ多極細胞よりなる。より内側に位置している球状核や栓状核とともに、上小脳脚または結合腕を形成する線維の主な起始をなす。)
- 882_28【Cerebellar cortex; Cortex of cerebellum小脳皮質 Cortex cerebelli; Substanitia corticalis cerebelli】 It is about 1 mm thick and consists mainly of nerve cells.
→(小脳皮質は小脳のすべての部分で均一な構造を示し、左右を分ける正中の縫線もなく広がり、表面から①分子層、②Purkinje細胞層、③顆粒層の3層に明瞭に分かれ、その中に5種類の細胞が含まれる。)
- 882_29【White matter; White substance; Medullary body (of cerebellum)小脳白質;小脳髄体;小脳の髄体 Corpus medullare cerebelli】
→(小脳髄体は小脳の内部にあり、これから小脳回に向かって突起、すなわち白質板(髄板)を出す。髄体は小脳内を互いに連絡する線維と、小脳に出入りする線維からなる。前者には同側の小脳皮質の各部の間を結合するもの(連合線維)、両側の皮質を結ぶもの(交連線維)および皮質から小脳核に至るもの(小脳皮質核線維)がある。小脳皮質核線維には局在が認められ、小脳半球部の大部分は歯状核と結合し、虫部は主として室頂核に、半球部と虫部の中間部は球状核および栓状核と結合する。片葉と小節は前庭神経核に線維を出している。小脳核から出る線維は小脳の遠心路をなし、小脳脚を通って小脳を出る。小脳に入る線維は小脳脚を経て直接小脳皮質に分布する。これには2種類がある。苔状線維は顆粒層内で盛んに分岐して小脳糸球を作り、顆粒細胞の樹状突起と連接して終わるが、登上線維はPurkinje細胞体のまわりにからみ、ついでその樹状突起をよじのぼりつつ分子層を上る。苔状線維は脊髄小脳路、副楔状束核小脳路、橋小脳路、網様体小脳路および前庭神経路の終末と考えられれ、登上線維はオリーブ小脳に続くといわれる。)