889
- 889_01【Anterior root of spinal nerve; Motor root; of spinal nerve; Ventral root of spinal nerve前根;運動根;腹側根(脊髄神経の) Radix anterior; Radices ventrales; Radix motoria (Nervus spinalis)】
→(脊髄神経の前根は脊髄の前角にある運動ニューロンの神経線維(運動線維)と側角にある自律神経系ニューロンの線維とからなる。いずれも遠心性線維である。)
"
- 889_02【Lateral corticospinal tract; Lateral pyramidal tract外側皮質脊髄路;錐体側索路 Tractus corticospinalis lateralis; Tractus pyramidalis lateralis】 Pyramidal tract in the lateral funiculus lying lateral to the posterior horn. Most of its fibers cross below the pyramids of the medulla oblongata to the contralateral side. Its fibers are somatotopically organized. The shortest fibers, which end in the cervical spinal cord, lie medially and the longest, which end in the lower spinal cord, lie furthest lateral. These transmit impulses for voluntary movements and mostly end in laminae VIII-IX, but also in laminae I-VII.
→(錐体側索路
錐体路線維のうち、錐体交叉で交叉する線維で構成される神経路をいう。反対側の脊髄側索後部(後側索ないし背側索)を下行し、途中で漸次脊髄灰白質に線維を出しながら、次第に小さな線維束となり脊髄下端まで達する。通常、9割以上の錐体路線維が交叉性で錐体側索を通ると考えられているが、これら交叉性の錐体路線維と錐体前索路を通る非交叉性のものとの割合は、特にヒトでは個体差が著しい。[医学大辞典:高田昌彦]
外側皮質脊髄路は脊髄全長にわたって下行し、全髄節の灰白質に線維を送り、尾方へ行くに従って徐々に小さくなる。下位腰髄と仙髄で後脊髄小脳路の下方では、外側皮質脊髄の線維が脊髄の背外側表面に達する。交叉性外側皮質脊髄路音線維は中間部で脊髄灰白質に入り、第Ⅳ、Ⅴ、Ⅵ、Ⅶ層の部分に分布する。サルでは少数の線維が直接前角細胞あるいは第Ⅸ層内のその突起に終わる。)
"
- 889_03【Anterior reticulospinal tract; Ventral reticulospinal tract前網様体脊髄路;腹側網様体脊髄路 Tractus reticulospinalis anterior】 Descending fibers from the gigantocellular reticular nucleus to the intermediate substance of the spinal cord.
→()
Turck, Column of
- 889_04Turck, Column of【Anterior corticospinal tract; Ventral corticospinal tract; Anterior pyramidal tract前皮質脊髄路;前錐体路 Tractus corticospinalis anterior; Tractus pyramidalis anterior】 Uncrossed part of the pyramidal tract lying lateral to the anterior median fissure.
→(錐体路線維は大脳皮質から起こり、内包の後脚を通り、次いで大脳脚ではその中央2/3の部分を占める。ここでは錐体路は皮質橋核線維を伴っている。錐体路線維は橋では多数の線維群に分かれ、横走する橋核小脳路として交叉して走る。延髄では、これらの線維は再び一つにまとまり、錐体を形成する。延髄と脊髄の移行部で約80%の錐体路線維が交叉する(錐体路交叉)。その結果、交叉性の外側脊髄路が脊髄の側索を、非交叉性の前皮質脊髄路が前索を通って脊髄へ下行する。注意すべき点は、皮質脊髄路線維は内包の後脚を通るさい、皮質皮質下脊髄路線維や視床大脳皮質線維など、多くの線維と一緒に走るということである。したがって、しばしば起こる内包の血管損傷のさいにみられる症状は皮質脊髄路線維の遮断のみその原因があるわけではない。)
- 889_05【Grey matter; Grey substance; Gray matter; Gray substance灰白質 Substantia grisea】 Mass of neural cell bodies.
→(脳と脊髄では神経細胞体の集合している部分は有髄神経線維がないか、きわめて少なく灰色を呈するところからこの名称がある。脊髄では中心管を囲みH状を呈する。大脳半球と小脳では表面に神経細胞体が帯状分布するので、これをとくに皮質とよんでいる。灰白質には神経細胞の核周体、樹状突起、輪索起始部、軸索の終末やシナプス、神経膠細胞、血管が存在している。同じ機能をもつ神経細胞の細胞体の集団に区分し、これを神経核とよぶ。)
Gower's tract
- 889_06Gower's tract【Anterior spinocerebellar tract; Ventral spinocerebellar tract前脊髄小脳路;腹側脊髄小脳路;ガワース路 Tractus spinocerebellaris anterior】 Some of its fibers cross from the posterior horns to the contralateral side, ascend to the superior border of the pons, and bend around to the superior cerebellar peduncle. It transmits information from afferent nerves in the lower half of the body about muscle tone and limb position for coordination of lower limb movement.
→(ガワーズ路ともよばれる。前脊髄小脳路は発育が悪い。この伝導路は後脊髄小脳路の前方で脊髄の外側辺縁部に沿って上行する。これは最初下部胸髄にあらわれるが、その起始細胞は胸髄核ほどには、はっきりと分離していない。線維は第Ⅴ、Ⅵ、Ⅶ層の一部の細胞から起こる。この伝導路の起始となる細胞は、尾髄と仙髄から上方へ第一腰髄まで広がっている。前脊髄小脳路の線維は後脊髄小脳路より数が少なく、均一に太く、また、結局すべて交叉する。後脊髄小脳路のように、主として下肢からのインパルスの伝達に関与する。前脊髄小脳路を出す細胞はGolgi腱器官由来のⅠb群求心性線維からの単シナプス性興奮を受けるが、そのGolgi腱器官の受容範囲はしばしば下肢の各関節における一つの協力筋群を包含している。小脳へのこの経路は2個のニューロンで構成されている。すなわち①脊髄神経節のニューロンⅠおよび②腰髄、仙髄および尾髄の前角と後角の基部の散在性の細胞群のニューロンⅡである。ニューロンⅡの線維は脊髄内で交叉し外脊髄視床路の線維の辺縁部を上行する。その線維は橋上位の高さで上小脳脚の背側面を通って小脳に入る。この伝導路の大部分の線維はは対側の小脳虫部の前部のⅠからⅣ小葉に終わる。おの伝導路線維は下肢全体の協調運動や姿勢に関係するインパルスを伝達する。臨床的には、他の脊髄伝導路が混在するために、脊髄小脳路の損傷に対する影響を決めることは結局不可能である。小脳へ投射されるインパルスは意識の領野には入らないから、このような損傷によって触覚や運動覚が失われることはない。Gowers, Sir William Richard(1845-1915)イギリスの神経科医、病理学者。ロンドン大学の教授。ヘモグロビン測定器の発明(1878年)、検眼鏡の活用に尽力し、ブライト病での眼底所見を示す(1876年)。脊髄疾患について記し、このときガワーズ路を記述(「The diagnosis of disease of the spinal cord」, 1880)。彼はまた速記術に興味を持ち、医学表音速記者協会を創設した。)
- 889_07【Spinoreticular fibres脊髄網様体線維 Fibrae spinoreticulares】
→(後柱に局在する一部のニューロンが軸索を前側索に出し、それらが上行して脳幹網様体の広い領域に分布している。脊髄網様体線維はの多くは延髄に終止し、同側性であるが、橋まで上行する線維は少なく、両側性に連絡するものが多い。)
- 889_08【White matter of spinal cord; White substance of spinal cord白質(脊髄の) Substantia alba】 Portion mainly consisting of myelinated nerve fibers.
→(白質は主として縦走する有髄線維からなり、灰白質の外方に脊髄索、すなわち前索、後索および側索をつくる。後索は下等動物では発育が悪いが、高等動物、ことにヒトではよく発達し、左右の後索は後正中溝およびそれに続いて正中面にある薄い隔板(後正中中隔)によって分離される。白質には脊髄と脳を結ぶ投射神経路と脊髄の各部を結ぶ連合神経路がある。前者には上行性(知覚性)のものと下行性(運動性)のものがある。)
- 889_09【Lateral vestibulospinal tract外側前庭脊髄路;外側前庭神経核脊髄路 Tractus vestibulospinalis lateralis】 Tract receiving efferent fibers from the Deiters' nucleus which extend to the sacral spinal cord and terminate at the cells of the anterior horn of laminae VII and VIII. Their function in humans has not been clearly shown.
→(ダイテルス脊髄路ともよばれる。前庭神経核群から出て脊髄に向かう線維の経路を前庭脊髄路と総称する。このうち前庭神経外側核(Deiters核)から起こり交叉せず、延髄腹外側部を下行し、脊髄の前索外側部を経て同側の脊髄前角の内側部におわる経路を外側前庭脊髄路(狭義の前庭脊髄路)という。この伝導路は脊髄の全長にわたっており、それぞれの高さで前角内側部に線維を送っている。この経路には体局在性が存在し、外側前庭神経核のなかでその上腹側部から出たものは頚髄へ、下背側部から出たものは腰仙髄へ、これらの中間からは胸髄へいたる。この神経路の運動興奮によって深筋群の活動が強まる。)
Deiters' nucleus
- 889_10Deiters' nucleus【Lateral vestibular nucleus前庭神経外側核;外側前庭神経核;ダイテルス核 Nucleus vestibularis lateralis】 Smaller collection of cells near the lateral recess of the rhomboid fossa with projections to the anterior horn of the spinal cord.
→(前庭神経外側核はダイテルス核ともよばれる。前庭神経核は4つの小核からなるが、その内の外側核をいう。前庭神経外側核は前庭神経が脳幹内に入る高さにあり、巨大型細胞よりなるが、細胞の数および形には部位的差異が認められる。前庭神経の根線維はこの核の腹側部を通る。ドイツの解剖学者Otto Friedrich Karl Deiters (1834-1863)によって記載された。)
- 889_11【Red nucleus赤核 Nucleus ruber】 Principal nucleus of the central tegmental tract. The iron-containing nucleus is situated between the periaqueductal gray substance and substantia nigra, extending from the superior colliculus into the diencephalon. It is composed of two or possibly more components.
→(赤核は中脳被蓋では最も明瞭な部分で、網様体のほぼ中央にあり、桃黄色を呈し、周囲を上小脳脚線維で囲まれている。赤核全体として卵円形で、横断面は円形を呈し、上丘の下端から間脳の下部まで広がる。細胞学的には後方の大細胞部と前方の小細胞部によりなる。赤核の細胞の間には主として上小脳脚からの有髄線維の細い束が存在する。動眼神経根の一部が脚間窩に至る途中で赤核を貫く。赤核の求心性線維は主として小脳核および大脳皮質からくる。これらの線維は体部的局在性をもって赤核に終止する。上小脳脚の線維は中脳下部で完全に交叉し、対側の赤核およびその周囲に至る。小脳歯状核からの側枝は対側赤核の上1/3部に終止し、一方、栓状核(前中位核)および球状核(後中位核)からの線維は赤核の下2/3部に体部位的局在性をもって終わる。この連絡は小脳の傍虫部皮質と赤核大細胞部をつなぎ、さらに赤核から脊髄へ体部位的局在性に投射する。これには上小脳脚交叉および赤核脊髄路の交叉の2つの交叉が含まれる。赤核の大細胞部からの体部位的局在投射は主に頚髄と腰髄に終わる。皮質赤核線維は中心前回や前運動野から起こり、ともに両側の赤核小細胞部に体部位的局在性をもって終止する。大脳皮質6野の内側部(補足運動野)からの投射線維は対側の赤核大細胞部に終わる。中心前回の運動野から赤核大細胞部に終止する線維は同側性で、赤核運動路の体部位的局在性をもつ起始に対応する。これらの皮質赤核線維は体部位的局在性をもち、赤核脊髄路(交叉性)と共に運動野皮質から脊髄へインパルスを伝える経路の一部をなす。赤核からの下行性遠心路は腹側被蓋交叉で交叉し、①小脳の中位核、②三叉神経主知覚核および脊髄路核、③顔面神経核の一部、④いくつかの延髄の中継核および⑤脊髄に投射する。また赤核の小細胞部からの非交叉性の線維束が中心被蓋路に入り、オリーブ核主核の背側板に終わる。これを赤核オリーブ路といい、小脳へのフィードバック系の一部をなす。赤核からの視床への投射はない。)
- 889_12【Spinal nerves脊髄神経 Nervi spinales】 Nerves of the spinal cord. Portion of the nerve between the union of both roots and its bifurcation behind the intervertebral foramen: trunk of spinal nerve.
→(脊髄から出る神経。31対あり、頚神経8対、胸神経12対、腰神経5対、仙骨神経5対、尾骨神経1対に分けられる。それぞえ前根(運動根)、後根(知覚根)として脊髄から出る。後根には膨隆部すなわち脊髄神経節がある。2根は椎間孔で合流し混合脊髄神経となるが、すぐに前枝と後枝に別れる。前枝は体壁の前外側部と四肢に、後枝は前枝に比べると著しく細く、固有背筋と背部の皮膚に分布する。)
- 889_13【Spinal ganglion; Spinal sensory ganglion; Dorsal root ganglion脊髄神経節;感覚性脊髄神経節 Ganglion sensorium nervi spinalis; Ganglion spinale】 The ganglion belonging to the dorsal root.
→(脊髄神経の後根に存在する神経細胞体の集団を脊髄神経節(時に後根神経節と別称)という。これらの神経細胞体は知覚性ニューロンの物であり、その樹状突起は線維状を呈して長く、皮膚・筋・腱・関節包・内臓などに分布する。また細胞体から中枢側に向かう神経突起は後根内を走り脊髄に入る。)
- 889_14【Spinal ganglion cell脊髄神経節細胞 Neuron sensorium ganglii spinalis】
→()
- 889_15【Cerebellospinal fibers小脳脊髄線維;小脳脊髄束;小脳脊髄路 Fibrae cerebellospinales; Fasciculus cerebellospinalis】
→(小脳脊髄線維は小脳の室頂核と介在する(主として後)小脳核から起こり、脊髄の対側を下降する線維束。)
- 889_16【Posterior root of spinal nerve; Sensory root of spinal nerve; Dorsal root of spinal nerve後根;感覚根;背側根(脊髄神経の) Radix posterior; Radix dorsalis; Radices dorsalis; Radix sensoria (Nervus spinalis)】
→(脊髄神経の後根は脊髄神経節の神経芽細胞の中枢性の突起が集まってできる。後根の線維は脊髄にはいると長い上行枝と短い下行枝に分ける。上行枝と下行し共に灰白質の細胞とシナプス結合する。上行枝の一部は延髄の楔状束核(Burdach核)と薄束核(Goll核)に終止する。)
- 889_17【Posterior horn of spinal cord; Dorsal horn of spinal cord後角;背側角(脊髄の) Cornu posterius medullae spinalis】 Posterior column in cross-section.
→(後柱の横断面を後角とよび同義的に扱われる。後角は後根線維のおもな終止部をなし、背外側方に長く延び、その主部は頭と底に区別され、両者の間は細くなり、頚と言われる。頭の背外側に接して後角尖がある。これは腹内束にある半月形の後角膠様質と背外側成る狭い海綿体からなる。膠様質は後角内の連合に与り、これには、横断面では小さいが、縦に細内外神経細胞が密集し、そのⅣBN部ではより大きい細胞が散在する。海綿体の少数のやや大きい神経細胞(後縁細胞)を含む海綿状の層である。海綿体と脊髄の表面との間にはなお細い神経線維からなる部分がある。これを後外側束または終帯といい、元来は後索に属すべき部分で、痛覚および温度覚を伝える細い後根線維、連合線維などからなる。固有の後角の細胞は一般に小ないし中等大で、円形、紡錘形あるいは三角形である。後角の頭はごく少数の大細胞を含む。形と底の外側部は内側部よりもやや大きい散在した細胞から成り、外側方は網様体に移行する。なお底の内側部には明らかに区画された大細胞の集団があり、これを胸髄核または背核といい、これは頚髄下端部、胸髄および腰髄上部で見られるが、下部胸髄で最も著明で、後脊髄小脳路に線維を送る。脊髄灰白質の背側部のことで、後角尖、後角頭、後角頚、後角底などが区別されている。後角尖は海綿体と膠様質とからなる。脊髄灰白質は層構造をなし、RexedのⅠ層からⅥ層までが後角に属する。細胞構築学的には背腹方向に次の細胞集団が区別される。①海綿帯または縁帯(Ⅰ層)、②膠様質(Ⅱ層)、③後角固有核(Ⅲ層、Ⅳ層)④脊髄網様体核(Ⅴ層外側部)。Ⅰ層の細胞は後縁細胞とよばれる外側脊髄視床路の起始細胞で、Ⅳ層~Ⅵ層の細胞は前世奇瑞視床路その他の上行路を出す。後下君求心線維としてはⅠ層~Ⅲ層には主に後根がおわり、Ⅳ層~Ⅵ層には後根線維および脊髄下行路が終止する。その他後角の細胞は細胞間で複雑な相互作用を行うと同時に後根を含む他の経路と運動細胞間の介在細胞として役立っている。膠様質の細胞はC線維を受け、後縁細胞や他の後角の細胞と結合する。後縁細胞は温度受容器、機械的受容器からのC線維やや、Aδ線維を受ける。なお頚髄の高さの後角基部の外側部(Ⅴ層、Ⅵ層外側部)は延髄網様体のつづきとみなされ[脊髄]網様体ともよばれる。)
- 889_18【Posterior root fibers; Dorsal root fibers後根根糸;後根線維 Fila radicularia posterioris; Fila radicularia radicis posterioris】
→()