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Hoche, Bundle of, Tract of; Phillippe-Gombault, Triangle of; Schultze's comma tract
- 888_01Hoche, Bundle of, Tract of; Phillippe-Gombault, Triangle of; Schultze's comma tract【Interfascicular fasciculus束間束;半月束;コンマ束;半円束;下行部;コンマ状部(後索の) Fasciculus interfascicularis; Fasciculus semilunaris; Pars descendens funiculus posterior】 Fibers of the propriospinal system that consist of descending axon collaterals of ascending projection tracts. They are grouped in bundles in the cervical and upper thoracic spinal cord between the gracile and cuneate fasciculi.
→(後索の主体を構成する薄束と楔状束の間に存在するコンマ形の領域をコンマ野comma fieldとよび、この部を形成する線維群をコンマ束comma tractという。この神経束の存在はWestphal (1880)によって最初に記載されたが、Schultze(1883)がコンマ束の名称を使ったことから後年Schultzesches Kommaの用語が広く使われるようになった。かれはC4とC5のレベル後根を横断したとき、手術巣から約2.5cm尾側でコンマ上の領域に変性繊維の集団を出現することを記載した。コンマ束はその位置から束間束または半月束ともよばれる。典型的なコンマ状を呈する変性線維の束は、頚髄に侵入する後根を切断したとき、胸髄上部の後索で観察することができる。しかしその時もコンマ束の形状と出現位置は正確には一致しない。コンマ状を尾方にに辿るとその形が変化し、コンマの頭の部分だけになり、尾の部分がなくなる。胸髄下半分以下で後根を切断しても、腰仙髄への後索でコンマ束を認めることはできない。これらのことを総称して、この固有束は頚神経と第1~7胸神経の後根由来の付帯的な下行枝によって構成される神経束とであると考えられる。胸髄下半分とそれ以下の後根から進入する線維の下行枝は後索内では分散して走行し、コンマ束となってまとまることはない。コンマ束は頚髄および胸部上半部に親友する後根線維の下行性分枝からなり、胸髄中央部以下に入る後根線維の下行枝はコンマ野に入らず、分散して下行枝、まとまりを示さないと考えられる。内在性の介在ニューロンの軸索の参加は完全には否定できないが、たとえあってもその数は少ない。T7以下で後根を切断してもコンマ束線維の変性は起こらない。後根線維の下行性分枝はコンマ区束、または中隔縁束、とくに卵円野領域を主として下行するとみられる。人ではC5からC6後根線維の下行枝はT12レベルまで追跡でき、C8の切断でもT12までたどれる。T4での切断では仙髄まで変性線維を追うことができる。これらの線維は後柱および後交連の領域に進入し、終末する。)
- 888_02【Cuneate fasciculus楔状束 Fasciculus cuneatus】 Lateral part of the posterior funiculus with fibers from the upper half of the body.
→(ブルダッハ束ともよばれる。ドイツの解剖・生理学者Karl Friedrich Burdach (1776-1847)の名を冠する。以前に同部についての報告はあったが、ブルダッハの正確な報告で知られるようになった。楔状束は最初、およそ第六胸髄の高さで出現し、上位の6胸神経と前頚神経の後根の長い上行枝を含む。薄束と楔状束の神経線維は同側を上行し、後索の延髄中継核、すなわち薄束核と楔状束核に終わる。後索系には2部があり、薄束(Goll束)および楔状束(Burdach束)として脊髄の後索を上行する。これらの線維束は太い後根線維の直接の続きであって、延髄の後索核にまで達してシナプス結合する。後索系は主として四肢から起こる線維からなり、系統発生的に新しくて、ヒトでもっとも発達している。ヒトではこの線維の長さは長いもので約150cmである。楔状束は後索の外側部。身体の上半分から起こる線維を含む。)
- 888_03【Posterior root fibers; Dorsal root fibers後根根糸;後根線維 Fila radicularia posterioris; Fila radicularia radicis posterioris】
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Lissauer's tract
- 888_04Lissauer's tract【Posterolateral tract; Dorsolateral tract後外側路;背外側路 Tractus posterolateralis】 Tract arising from the short myelinated and unmyelinated fibers between the apex of the posterior horn and the surface. It is part of the lateral fasciculus proprius.
→(リッスウェル路Lissauer's tractとも呼ばれる。側索の後外側部と後索の外側部との間にあって、後核の背側表面をおおう薄い線維層を指す。後根線維の外側群に相当する。後根神経節に由来する細い線維で、分岐した後、数mm上行あるいは下行し、その間の後角のⅠ層~Ⅲ層におわる。痛覚および温覚を伝える。Lissauer, Heinrich(1861-1891)ドイツの神経科医、Lissauer's tract or bundle, Lissauer's zone (marginal zone)に名を残した。肉体的、精神的荒廃、てんかん発作、片麻痺、失語症などの症状を伴う進行性麻痺をLissauer's paresisというが、この1855年に書かれた論文は、Lissauerが30歳で他界したあと10年を経て、E.Storch(1901)によってUber einige Falle atypischer progressiver Paralyse. Nach einem hinterlassenen Manuskript Dr. H. Lissauer's. Mschr Psychiat Neurol 9: 401-434, 1901として発表した。)
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- 888_05【Lateral corticospinal tract; Lateral pyramidal tract外側皮質脊髄路;錐体側索路 Tractus corticospinalis lateralis; Tractus pyramidalis lateralis】 Pyramidal tract in the lateral funiculus lying lateral to the posterior horn. Most of its fibers cross below the pyramids of the medulla oblongata to the contralateral side. Its fibers are somatotopically organized. The shortest fibers, which end in the cervical spinal cord, lie medially and the longest, which end in the lower spinal cord, lie furthest lateral. These transmit impulses for voluntary movements and mostly end in laminae VIII-IX, but also in laminae I-VII.
→(錐体側索路
錐体路線維のうち、錐体交叉で交叉する線維で構成される神経路をいう。反対側の脊髄側索後部(後側索ないし背側索)を下行し、途中で漸次脊髄灰白質に線維を出しながら、次第に小さな線維束となり脊髄下端まで達する。通常、9割以上の錐体路線維が交叉性で錐体側索を通ると考えられているが、これら交叉性の錐体路線維と錐体前索路を通る非交叉性のものとの割合は、特にヒトでは個体差が著しい。[医学大辞典:高田昌彦]
外側皮質脊髄路は脊髄全長にわたって下行し、全髄節の灰白質に線維を送り、尾方へ行くに従って徐々に小さくなる。下位腰髄と仙髄で後脊髄小脳路の下方では、外側皮質脊髄の線維が脊髄の背外側表面に達する。交叉性外側皮質脊髄路音線維は中間部で脊髄灰白質に入り、第Ⅳ、Ⅴ、Ⅵ、Ⅶ層の部分に分布する。サルでは少数の線維が直接前角細胞あるいは第Ⅸ層内のその突起に終わる。)
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- 888_06【Cerebellospinal fibers小脳脊髄線維;小脳脊髄束;小脳脊髄路 Fibrae cerebellospinales; Fasciculus cerebellospinalis】
→(小脳脊髄線維は小脳の室頂核と介在する(主として後)小脳核から起こり、脊髄の対側を下降する線維束。)
- 888_07【Lateral fasciculus proprius側索固有束;外側固有束 Fasciculus proprius laterales】 Ground bundle of the lateral funiculus. Its fibers interconnect consecutive segments of the spinal cord.
→(外側固有束は側索は前根と後根をつくる最外側の根糸の間を占有する白質で、その中を走る固有線維を総合して外側固有束という。この神経束も脊髄全長を通して存在し、膨大部ではよく発達している。この固有束も種々の長さをもつ上行性および下行性線維からできている。ただし、この神経束はもっぱら同側性の分節を連絡する線維から構成されている。これらの線維の起始ニューロンは口中と中間質に局在し、一部が前柱に存在する。側索の灰白質に近い領域をlateral limiting layerとよび、この層を背側半と腹側半に分ける。また、とくに脊髄上部でみられる後柱基部の外側部にみられる灰白質と白質の混じり合った部分を網様体という。外側固有束は主としてlateral limiting layerと網様体の領域を走行している。側索には重要な上行性と下行性の長い神経路が走っているが、固有束線維はいずれの投射路の間にも混在している。)
Flechsig's tract
- 888_08Flechsig's tract【Posterior spinocerebellar tract; Dorsal spinocerebellar tract後脊髄小脳路;背側脊髄小脳路;フレヒシッヒ路 Tractus spinocerebellaris posterior】 Uncrossed fibers traveling to the inferior cerebellar peduncle. Its function is similar to that of the anterior spinocerebellar tract.
→(後脊髄小脳路は胸髄核から出て交叉せずにすぐ側索周辺部の背側部を上行し、下小脳脚を通って同側の小脳の前葉、一部は虫部錐体、虫部垂などの皮膚に達する。脊髄の側索後外側辺縁部を上行するこの非交叉性の伝導路は胸髄核の大細胞から起始する。後根の求心性線維は直接に、または後索を上下行した後に胸髄核に終わる。胸髄核の大細胞は太い線維を出し、これは側索の後外側部(すなわち皮質脊髄路の外側)に入り、上行する。延髄にあってはこの伝導路の線維は下小脳脚に組み込まれ、小脳に入って同側性に虫部の吻側と尾側に終わる。虫部全部では線維は第Ⅰ小葉から第Ⅳ小葉に終わり、後部では主として虫部錐体と正中傍小葉に終わる。胸髄核は第三胸髄から尾方には存在しないから、尾方の髄節からの後根線維はまず後索内を上位の胸髄まで伝達され、それから胸髄核の細胞へ伝えられる。後脊髄小脳路を経由して小脳へ中継されるインパルスは伸展受容器である筋紡錘やGolgi腱器官および触圧覚受容器から起こる。胸髄核のニューロンは主としてⅠa群、Ⅰb群およびⅡ群の求心線維を経由する単シナプス性興奮を受ける。Ⅰ群の求心性線維と胸髄核の間のシナプス結合では高頻度のインパルスの伝達が行われる。一部の外受容器由来のインパルスもまた後脊髄小脳路を経由して伝達される。これらは皮膚の触覚と圧覚の受容器およびゆっくり反応する圧受容器に関係する。後脊髄小脳路は脊髄レベルおよび小脳の終始部において体部位局在性に配列されている。伝導路によって伝達されるインパルスは意識のレベルに達することはない。これらの伝導路によって伝達されるインパルスは姿勢とここの四肢筋の運動の細かい協調作用に役立っている。)
Gower's tract
- 888_09Gower's tract【Anterior spinocerebellar tract; Ventral spinocerebellar tract前脊髄小脳路;腹側脊髄小脳路;ガワース路 Tractus spinocerebellaris anterior】 Some of its fibers cross from the posterior horns to the contralateral side, ascend to the superior border of the pons, and bend around to the superior cerebellar peduncle. It transmits information from afferent nerves in the lower half of the body about muscle tone and limb position for coordination of lower limb movement.
→(ガワーズ路ともよばれる。前脊髄小脳路は発育が悪い。この伝導路は後脊髄小脳路の前方で脊髄の外側辺縁部に沿って上行する。これは最初下部胸髄にあらわれるが、その起始細胞は胸髄核ほどには、はっきりと分離していない。線維は第Ⅴ、Ⅵ、Ⅶ層の一部の細胞から起こる。この伝導路の起始となる細胞は、尾髄と仙髄から上方へ第一腰髄まで広がっている。前脊髄小脳路の線維は後脊髄小脳路より数が少なく、均一に太く、また、結局すべて交叉する。後脊髄小脳路のように、主として下肢からのインパルスの伝達に関与する。前脊髄小脳路を出す細胞はGolgi腱器官由来のⅠb群求心性線維からの単シナプス性興奮を受けるが、そのGolgi腱器官の受容範囲はしばしば下肢の各関節における一つの協力筋群を包含している。小脳へのこの経路は2個のニューロンで構成されている。すなわち①脊髄神経節のニューロンⅠおよび②腰髄、仙髄および尾髄の前角と後角の基部の散在性の細胞群のニューロンⅡである。ニューロンⅡの線維は脊髄内で交叉し外脊髄視床路の線維の辺縁部を上行する。その線維は橋上位の高さで上小脳脚の背側面を通って小脳に入る。この伝導路の大部分の線維はは対側の小脳虫部の前部のⅠからⅣ小葉に終わる。おの伝導路線維は下肢全体の協調運動や姿勢に関係するインパルスを伝達する。臨床的には、他の脊髄伝導路が混在するために、脊髄小脳路の損傷に対する影響を決めることは結局不可能である。小脳へ投射されるインパルスは意識の領野には入らないから、このような損傷によって触覚や運動覚が失われることはない。Gowers, Sir William Richard(1845-1915)イギリスの神経科医、病理学者。ロンドン大学の教授。ヘモグロビン測定器の発明(1878年)、検眼鏡の活用に尽力し、ブライト病での眼底所見を示す(1876年)。脊髄疾患について記し、このときガワーズ路を記述(「The diagnosis of disease of the spinal cord」, 1880)。彼はまた速記術に興味を持ち、医学表音速記者協会を創設した。)
- 888_10【Lateral spinothalamic tract外側脊髄視床路;脊髄視床路 Tractus spinothalamicus lateralis】 Unmyelinated nerve fibers that arise from the gelatinous substance and cross to the contralateral lateral funiculus via the anterior white commissure. They convey mainly pain and temperature sensations and to a lesser extent exteroceptive and proprioceptive impulses.
→(この伝導路は前脊髄視床路と密接に関係しているが、痛覚や温度覚に関係するインパルスを伝達するため、臨床医学上はるかに重要である。この経路の線維はより集中化され、視床に直接投射する長い線維を含んでいる。前脊髄視床路の起始細胞に関する知見は外側脊髄視床路にもあてはまる。主として第Ⅰ層、Ⅳ層および第Ⅴ層の細胞が、白前交連で交叉して反対側の側索を外側脊髄視床路として上行する軸索の大部分を出している。この伝導路の線維は斜めに反対側へ横断するが、普通一髄節内で行われる。この伝導路はまた前脊髄視床路と類似した配列で体部位局在的に構成されており、また前脊髄小脳路の内側に位置している。痛覚と温度覚に関係する神経線維は不完全に分離している。温度覚に関係する線維は痛覚に関係する線維の後側に位置する傾向がある。脳幹にあってはこの伝導路は網様体に枝を出すが、主幹は視床の後外側腹側核尾部(VPLc)に終わる。)
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- 888_11【Triangular fasciculus; Olivospinal tract三角束;オリーブ脊髄路 Fasciculus triangularis; Tractus olivospinalis】
→( 延髄にある下オリーブ核から起こり、交叉性に脊髄側索を下行し、前角の運動ニューロンに接続する。
下オリーブ核は大脳皮質・線条体・赤核や脊髄(脊髄オリーブ路)からの入力を受け、骨格筋の活動を調節すると考えられている。(解剖学講義))
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- 888_12【Anterior root fibers; Ventral root fibers前根根糸;前根線維(運動性の) Fila radicularia anterioris; Fila radicularia radicis anterioris】
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- 888_13【Anterior reticulospinal tract; Ventral reticulospinal tract前網様体脊髄路;腹側網様体脊髄路 Tractus reticulospinalis anterior】 Descending fibers from the gigantocellular reticular nucleus to the intermediate substance of the spinal cord.
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- 888_14【Anterior spinothalamic tract; Ventral spinothalamic tract前脊髄視床路;腹側脊髄視床路 Tractus spinothalamicus anterior】 Tract arising from myelinated nerve fibers that cross from the posterior horns via the white commissure to the contralateral anterior funiculus. They transmit perception of crude pressure and tactile sensation.
→(脊髄視床路は後索の線維とちがって、脊髄内のニューロンから始まる。脊髄灰白質内から始まる線維は交叉して視床まで上行する。この伝導路は脊髄内で交叉し視床に達するという、古くから知られた経路であるが、その起始細胞はごく最近になって確定された。脊髄視床路の起始細胞は次のようにして証明された。①生理学的には、視床の特殊感覚中継核の逆行性刺激、②解剖学的には、西洋ワサビ過酸化酵素horseradish peroxidase (HRP)を用いた逆行性軸索流の追跡によった。これらのデータは、脊髄視床路の線維が脊髄では対側性に主に第Ⅰ、Ⅳおよび第Ⅴ層の細胞からでることを裏付けているもっとも、いくらかの線維は第Ⅵ層と第Ⅶ層の細胞から起こっている。霊長類の動物で、大量のHRPを注入すると、多数の脊髄視床路のニューロンが反対側の下位腰髄に見出される。脊髄の各領域では同側性に標識された脊髄視床路のニューロンは全体の約10%を占めている。脊髄視床路を形成するニューロンは異なった髄節や灰白層では大きさ、形、数量が変わる不均質な細胞分布でできている。後角内の一時間核線維の神経終末とこれと関わるシナプス結合に関する詳細は不明であるが、求心性線維が第Ⅳ層と第Ⅴ層の細胞の樹状突起と接触していることは考えられることである。脊髄視床路は白前交連で交叉するが、その交叉はいくつかの髄節わたり、また対側性に上行する。前脊髄小脳路を形成する線維は前索と前外側索を上行し、また、体部位局在的に配置されているので、仙髄と腰髄からはじまる線維は最も外側で、胸髄と頚髄からのものは最も内側を占める。前脊髄視床路は、一部の線維かまたは側枝が網様体の核に投射しているから、延髄の高さで大きさが小さくなる。この伝導路を構成する脊髄視床路線維は橋および中脳で内側毛帯と密接に関連をもっている。中のレベルでは前脊髄視床路は2つの構成成分から成る。外側部分の線維は大きくて視床後核と後外側腹側核尾部(VPLc)視床核に終止し、内側の線維は中心灰白質と両側性に髄板内核とに投射する。前脊髄視床路の線維は”軽い触覚”の感覚に関係するインパルスを伝達する。この感覚は毛のないところの皮膚を羽毛や綿辺でさすることで起こされる。前脊髄視床路の損傷は、たとえあるとしても、非常に軽い障害しか起こさない。これは触覚が、後索によっても伝達されるからである)
- 888_15【Tectospinal tract視蓋脊髄路 Tractus tectospinalis】 Efferent fibers arising in the superior colliculi that cross in the posterior tegmental decussation and travel within the longitudinal fasciculus, mostly to the propriospinal system of cervical segments 1-4. They coordinate eye and head movements.
→(視蓋脊髄路は主として中脳の上丘(第4および第6層)および一部は下丘から出て、すぐに背側被蓋交叉で交叉し、反対側の脳幹の正中部の知覚で内側縦束の腹側を下り(背前束)、脊髄では前索の前正中裂に近い部分を下行し、頚髄、ことに上位頚髄の前角の腹内側部から灰白質に入り、中間質外側部およびその付近に分布するが、直接に前角細胞に終わるものはない。これは視覚、一部は聴覚刺激に応じた頭部、上肢の反射的姿勢運動による。)
Goll's tract
- 888_16Goll's tract【Gracile fasciculus薄束;ゴル索;内側部(後索の) Fasciculus gracilis; Pars medialis funiculus posterior】 Medial portion of the posterior funiculus. It lies medial to the posterior intermediate sulcus and contains fibers of tactile sensation and deep sensibility from the lower half of the body (coccygeal vertebrae to T5).
→(薄束はゴル束ともよばれる。楔状束(ブルダッハ束)とともに脊髄後索をなす。両側の後索は胸髄上部と頚髄において後中間中隔によって2分される。この中隔はおよそ第六胸髄の高さで認められ、薄束(内側)と楔状束(外側)を分ける。薄束は脊髄全長にわたって存在し、仙髄部、腰髄部、下位6胸髄部の後根由来の長い上行枝を含む。薄束は後索の内側部にある。体の下半分から線維を含む。触覚と深部知覚を伝える。Goll, Frindrich (1829-1903)スイスの解剖学者、チューリヒ大学の教授。脊髄後索の内側部(薄束)について1860年に記述(「Beitrage zur feineren Anatomie・・・」;, Denk. Medchir. Ges. Kanton Zurich, 1860, 130-171).)
Flechsig, Oval bundle of
- 888_17Flechsig, Oval bundle of【Septomarginal fasciculus; Tractus spinalis ovalis descendens中隔縁束;卵円野;卵円部(後索の) Fasciculus septomarginalis; Oval area of Flechsig】 Propriospinal fibers that are formed by descending axon collaterals from ascending projection tracts. They lie along the posterior median septum, and in bundles in the lower thoracic spinal cord, lumbar spinal cord (Flechsig's tract), and sacral spinal cord (triangle of Phillippe-Gombault). They end in the gray substance of the medullary cone.
→(中隔縁束は卵円野ともよぶ。これは胸髄下部から腰髄の高さで、後索に入った後根線維内側群の下行枝が薄束の内側部、すなわち後正中中隔に接して集まってできた線維束である。後根を通過っして後索に親友する一次求心性感覚線維は、分岐して下行性に向かう側副枝を出す。下半身から脊髄に到達した感覚線維は薄束を形成し、その下行枝が中隔縁束をつくる。中隔縁束はコンマ束(束間束)と部位によって癒合することが認められ、また他方卵円野より腹側の正中域に中隔縁束と別の神経束として前中隔線維の存在も報告されている。)
- 888_18【Posterior fasciculus proprius; Dorsal fasciculus proprius後索固有束;後固有束;背側固有束 Fasciculus proprius posterior】 Ground bundle of the posterior funiculus. Tract of varying thickness whose fibers interconnect consecutive spinal segments.
→(後固有束は灰白質に接す。脊髄節間を連絡し協調運動に役立つ。後柱にコンマ束、中隔縁束、角交連束などとよばれる固有脊髄系に数えられる線維束が存在する。そのため後固有束とこれらの線維束との関係について研究者の見解が分かれる。多くの研究者が後固有束を角交連束と同じとみなし、両者を区別していない。固有束線維は前索でも、側索でもその全域に散在性にひろがって存在している。後固有束を後索の固有線維の総称名として用いている。)
- 888_19【Spinal lamina I; Marginal nucleus; Dorsomarginal nucleus; Posteromarginal nucleus (of spinal cord)辺縁核;脊髄第I層;後縁縁核;背側辺縁核;後縁細胞群(核) Nucleus marginalis; Lamina spinalis I; Nucleus posteromarginalis (Medullae spinalis)】 Narrow layer of a neural plexus containing various types of neurons along the apex.
→(Rexedは脊髄灰白質も横断面において層的構造を示すとしてこれを10層に分けた。縦長な脊髄の内部では、灰白質ニューロンの似たものどおしの集合箇所が何本かの柱のように縦に連なっていて、そのような細胞柱の各々を、脊髄横断面での灰白質各層としてとらえることができる。この点を利用しRexedが行った第Ⅰ層から第Ⅹ層までの層区分は、脊髄灰白質の機能的全体像をみやすいという点で旧来、諸柱(または諸核)を個別に命名するよりも利用価値が高い。しかし、旧来の方式による名称も存続させてある。 第Ⅰ層は後角の帽子に相当するような薄層である。ここには小形ないし中型の神経細胞がみられ、まれに比較的大型の紡錘形の細胞が後角の突出面に平行に向いた状態で散在する。後縁細胞核群Posteriomarginal nucleusに連絡する錯綜した無髄神経線維束、小樹状突起ならびにシナプス釦がこの層の中にある。第Ⅱ層の中の神経細胞に軸索-細胞体性に終末枝、一方、一次求心性線維は同じ細胞群に対して軸索-樹状突起性に終末する。これらの2つの起源をもつ大量の軸索群はLissauerの後外側束dorsolateral fasciculus of Lissauerを通って第Ⅰ層に到達する。すべてお起源からの証拠をみて第Ⅰ層の神経細胞は侵害性刺激noxious stimuli並びに温度刺激に対して特異的に反応し、その線維を対側の脊髄視床路に向かって伸ばしている。免疫組織化学的研究によれば、第Ⅰ層中にP物質並びにエンケファリンEnkephalin陽性の細胞が含まれており、かつ又、P物質陽性線維の他エンケファリン陽性線維、ソマトスタチンソマトスタチン陽性線維、セロトニン陽性線維も含まれることが示されている。この層のニューロンは後根から脊髄に侵入する温・痛覚線維の一部を受け、反対側の脊髄視床路の成分の一部になるような上行線維を伸ばす。)
- 888_20【Spinal lamina II; Gelatinous substance of posterior horn of spinal cord膠様質(脊髄の後角の);脊髄第II層 Substantia gelatinosa (Cornu posterioris medullae spinalis); Lamina spinalis II】 Main part of the nerve tissue of the head that has a glassy appearance if unmounted. It contains mainly neurons of various types and unmyelinated nerve fibers.
→(第Ⅱ層は後角尖にある、境界の明らかな、かなり幅広い帯状の領域であり、細胞体染色並び髄鞘染色により容易に認められるぎっしりとつまった神経細胞からなる膠様質に相当する。これ第Ⅱ層には2つの領域が認められる。①やや小形の細胞から成る比較的狭い外帯outer zone、②比較的幅広い内帯inner zoneである。そのいずれの領域においてもニューロンは円形ないし、楕円形で長軸を表面に対して放射状に配列している。紡錘状の細胞体の大きさは殆ど同じで、その一方ないし両極から、多くの樹状突起を出している。第Ⅱ層のニューロンは痛覚に関係したかなりの量の神経信号を、後根からの線維群ばかりでなく延髄網様体の下行線維群からも受ける。したがって痛みの調節(セロトニン、ノルエピネフリン、P物質、エンケファリンなど多様な神経伝達物質が使われ、また触覚受容ニューロンも関与するが、第Ⅱ層のなかでおこなわれる。この層内に存在するニューロン細胞体は、軸索突起を、上行性伝導路に直接伸ばすのではなく第Ⅰ・Ⅳ・Ⅴ層ニューロンにシナプス伝達を行うために伸ばすだけである。)
- 888_21【Head of posterior horn; Head of posterior column (of spinal cord)頭;後角頭;後柱頭(脊髄の) Caput cornu posterioris; Caput columnae posterioris (Medullae spinalis)】 Part of the posterior horn that is bounded anteriorly by the apex. It is thicker in the cervical and thoracic regions of the spinal cord.
→(脊髄の後角頭は下部頚髄および胸髄で膨大下後角中間部。)
Clarke's column, nucleus; Stiling-Clarke's column, nucleus
- 888_22Clarke's column, nucleus; Stiling-Clarke's column, nucleus【Posterior thoracic nucleus; Dorsal thoracic nucleus胸髄核;背核;背側核 Nucleus thoracicus posterior; Nucleus dorsalis】 Column of nuclei at the base of the posterior horn, generally from C8 to L3. It partly belongs to the posterior spinocerebellar tract.
→(背核ともよび、一般にClarke柱あるいはClarke背核ともよばれている。T1からL3の高さまで中間帯の背内側に存在する細胞群で大、中、小の細胞から構成されている。大ないし中等大細胞の軸索は同側の側索の背外側部を上行する後脊髄小脳路となる。Clarke柱はその高さの後根線維を受けるが、胸髄上部の高さではC5以下C8の後根線維を、腰髄の高さではL4以下の後根線維を受ける。その入力は主にⅠa群(筋紡錘由来の求心性線維)、Ⅱ群線維(腱器官由来の求心性線維)に由来する。)
- 888_23【Anterior horn of spinal cord; Ventral horn of spinal cord前角;腹側角(脊髄の) Cornu anterius medullae spinalis】 Appearance of the anterior column in transverse section.
→(前角は前柱の横断像で同義として扱われる。前角は後角より太く短く、頭と底に区分され、両者の間は多少細くなっている。前角細胞は多くは非常に大きく、多極性で、ところどころに群集する。これらの集団は縦方向に柱状に配列する。外側部の細胞は内側聞それよりも一般に大きく、頚膨大および腰膨大では特に大きい。前角細胞の軸索(神経突起)は前根線維となり、運動性脊髄神経線維として体幹および四肢の骨格筋に達する。各運動神経線維は筋内に入ると、分枝してそれぞれ運動終板を形成する。前角細胞の軸索の骨格筋への分布には対局剤的局在が明らかで、一般に体幹筋を支配する細胞は前角の内側部にあるが、四肢筋を支配するものは外側部にあり、しかも四肢の末端の筋に線維を出す細胞は近位の筋に分布する物よりも外側にある。したがって四肢に強大な神経を出す頚膨大並びに腰膨大の部分では、前柱は外側方に延びて幅が広いが、これらの間の部分(胸髄)では内側部のみからなり、細い。また前角の周辺部の細胞は心筋および外転筋へ、中央部の細胞は屈筋および内転筋へ線維を出す。前角の大細胞は横紋筋に運動線維を出すが(α運動細胞)、小さい細胞の一部は介在細胞であり、また一部は筋紡錘内の錐内筋線維を支配するものと考えられる(γ運動細胞)筋紡錘は筋緊張の調整を反射的に行う機序に関係している。なお第1~5頚髄の前柱の背外側部には副神経脊髄根を出す細胞群、すなわち副神経脊髄核がある。これは上方に行くにしたがって中心管に近づく。その根は外方に走り、前根と後根の間から脊髄を出る(副神経脊髄根)。一般に、身体遠位の筋ほど、外側よりの神経細胞群によって支配されている。前角のもっとも内側から外側へと移行するにつれて、運動ニューロンは順次、体幹筋、上肢帯筋・下肢帯筋、上下肢の近位筋、次いで上下肢遠位筋を支配している。後背外側の神経細胞群は、手と足の筋を支配する。脊髄前角のα運動ニューロンはアセチルコリンをを含有していて、その神経終末からこれを分泌する。この事実は同物質の合成酵素であるコリン・アセチルトランスフェラーゼの免疫組織化学により立証されている。脊髄前角中の小形神経浅部のあるものは、抑制性の神経伝達物質であるガンマ・アミノ酪酸gamma-aminobutyric acid(GABA)に免疫染色される。脊髄灰白質の腹側の部分で、RexedのⅨ層、Ⅷ層およびⅦ層の腹側部がこれに属する。Ⅸ層は運動細胞群でα運動細胞とγ運動細胞とが存在する。Α運動細胞の軸索からの反回性側枝はⅦ層腹側部およびⅧ層にある抑制性のRenshaw細胞やⅨ層のα運動細胞結合する。前角には脊髄下行路や一次求心性線維(後根神経)がおわり、運動細胞と直接あるいはそこに存在する固有束細胞(介在細胞)と結合する。その他、脊髄視床路、脊髄小脳路、脊髄網様体路などの上行路の起始細胞の一部も前角に分布している。)
- 888_24【Dorsolateral cell group of anterior column後外側細胞群(前柱の) Cellulae dorsolateralis (Columna anterior)】
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- 888_24a【Posterolateral nucleus of spinal cord; Dorsolateral nucleus of spinal cord後外側核;背外側核(脊髄の) Nucleus posterolateralis medullae spinalis】 Nucleus located behind the anterolateral nucleus in spinal cord segments C5-T1 and L2-S2. It innervates the muscles of the limbs.
→(第5頚髄節から第1胸髄節および第2腰髄節から第2仙髄節で腹外側核の後方にみられる。四肢の筋肉を支配する。)
- 888_25【Central cell group of anterior column中心細胞群(前柱の) Cellulae centralis (Columna anterior)】
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- 888_25a【Central nucleus of spinal cord中心核(脊髄の) Nucleus centralis medullae spinalis】 Small group of cells located in a few cervical and lumbar segments.
→(脊髄の中心核は頚髄および腰髄の二、三の節にあるあまり目立たない細胞群。)
- 888_26【Ventrolateral cell group of anterior column前外側細胞群(前柱の) Cellulae ventrolateralis (Columna anterior)】
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- 888_26a【Anterolateral nucleus of spinal cord; Ventrolateral nucleus of spinal cord腹外側核;前外側核(脊髄の) Nucleus anterolateralis medullae spinalis】 Cell groups with identical function located in the anterolateral part of the anterior horn of segments C4-C8 and L2-S1. They are responsible for innervating muscles of the limbs.
→(脊髄の前外側核は前角の内部にある神経核でC4-C8とL2-S1にみられる。四肢の筋肉を支配する。)
- 888_27【Ventromedial cell group of anterior column前内側細胞群(前柱の) Cellulae ventromedialis (Columna anterior)】
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- 888_27a【Anteromedial nucleus of spinal cord; Ventromedial nucleus of spinal cord前内側核;腹内側核(脊髄の) Nucleus anteromedialis medullae spinalis】 Anteromedial nucleus that extends over the entire length of the spinal cord. It is responsible for innervation of the muscles of the trunk.
→(脊髄の前内側核は脊髄全長の前柱(前角)にみられる細胞群で骨格筋を支配しているとかんがえられている。)
- 888_28【Posteromedial nucleus of spinal cord; Dorsomedial nucleus of spinal cord後内側核;背内側核(脊髄の) Nucleus posteromedialis medullae spinalis】 Nucleus situated near the posterior white commissure that extends over spinal cord segments T1-L3. It is responsible for innervation of the muscles of the trunk.
→(脊髄の背内側核は白交連の付近にある。Th1-L3にわたって存在する。腰部の筋肉を支配する。)
Marie, Tract of
- 888_29Marie, Tract of【Sulcomarginal fasciculus溝縁束 Fasciculus sulcomarginalis】 Part of the anterior fasciculus proprius lying along the anterior median fissure.
→(溝縁束は前正中裂に接している深部知覚の線維束。)
Turck, Column of
- 888_30Turck, Column of【Anterior corticospinal tract; Ventral corticospinal tract; Anterior pyramidal tract前皮質脊髄路;前錐体路 Tractus corticospinalis anterior; Tractus pyramidalis anterior】 Uncrossed part of the pyramidal tract lying lateral to the anterior median fissure.
→(錐体路線維は大脳皮質から起こり、内包の後脚を通り、次いで大脳脚ではその中央2/3の部分を占める。ここでは錐体路は皮質橋核線維を伴っている。錐体路線維は橋では多数の線維群に分かれ、横走する橋核小脳路として交叉して走る。延髄では、これらの線維は再び一つにまとまり、錐体を形成する。延髄と脊髄の移行部で約80%の錐体路線維が交叉する(錐体路交叉)。その結果、交叉性の外側脊髄路が脊髄の側索を、非交叉性の前皮質脊髄路が前索を通って脊髄へ下行する。注意すべき点は、皮質脊髄路線維は内包の後脚を通るさい、皮質皮質下脊髄路線維や視床大脳皮質線維など、多くの線維と一緒に走るということである。したがって、しばしば起こる内包の血管損傷のさいにみられる症状は皮質脊髄路線維の遮断のみその原因があるわけではない。)