908
- 908_00【Maxilla; Maxillary bone上顎骨 Maxilla】
→(上顎骨は不規則な形をした含気骨。顔面頭蓋の中央を占める有対性の骨で、左右のものが正中で結合して、眼窩・鼻腔・骨口蓋などの骨格に関与する。上顎骨はその主部をなす体と、これから突出する4種類の突起で構成される。上顎の歯をつけるほぼ四角形の有対骨で、内に鼻洞(上顎洞)のある中央部(上顎体)と四つの突起に区別される。四つの突起とは上方にのびて鼻根の外側部つくり前頭骨に接する前頭突起、外方にのびて頬骨につづく頬骨突起、水平の内方にのび、他側のそれと合して硬口蓋の大部分をつくる口蓋突起と、そこから堤防状に下方に高まり、歯をつける歯槽突起である。上顎骨の前面をみると、体の上縁は眼窩下縁で、その下0.5~1.0cmに大きい孔(眼窩下孔)がある。眼窩下神経、血管がとおり、三叉神経第2枝の圧痛点である。ときに眼窩下縁から眼窩下孔まで縫合がみられる(眼窩下縁から眼窩下孔まで縫合がみられる(眼窩下縫合)。眼窩下孔の下方の浅いへこみ(犬歯窩)は口角挙筋の起始部である。体の内側縁はするどい稜で、弓状に折れこみ(鼻切痕)、対側のものとで骨性鼻腔の前口(梨状口)をかこむ。上顎骨外面をみると眼窩下縁の延長が前頭突起に鋭い稜を(前涙嚢稜)をつくる。犬歯窩の後ろで大きい頬骨突起が外方に出て、この突起の上面(眼窩面)が眼窩底をつくる。そこには前後に走る溝(眼窩下溝)があり、前にいくにつれ骨の下に入る(眼窩下管)。眼窩面の後縁は大翼とともに下眼窩裂を境する。頬骨突起より後ろの面は側頭下面で、後縁口蓋骨垂直板と結合する。上顎洞後壁のうしろへの膨隆を上顎結節といい、ここにある二、三の孔(歯槽孔)が歯槽管につづき、そこから歯槽に開口する管が出る。後上歯槽神経が通る。内側面では上2/3と下1/3の境から口蓋突起が水平に突出し、それより上の部は鼻腔面である。前頭突起の基底部に上下2条の稜があり、上のもの(篩骨稜)は中鼻甲介につき、したのもの(鼻甲介稜)は下鼻甲介上縁前端がつく。前頭突起の控除迂遠は半月状に切れ込み(涙嚢切痕)、そこから後下方に深い溝(涙嚢溝)があり、涙骨の下の部分ととともに鼻涙管をつくる。前頭突起には涙骨につづく縁(涙骨稜)がある。体の内側面、涙嚢溝のうしろに指をとおす大きさの上顎洞の入口(上顎洞裂孔)がある。内側面後縁上半分は滑らかで翼口蓋窩の前壁をつくり、下半部は口蓋骨につき、粗面で、大口蓋溝があり、口蓋骨の同名溝と合して垂直な管(大口蓋管)をつくる。口蓋突起の上面は滑らかで、鼻腔の床に当たり、内縁は高まって他側のものと合して鋤骨をつける鼻稜をつくり、前方では梨状口下縁で棘上に高まる(前鼻棘)。その少しうしろに開口があり、下方は正中面で溝となり、他側のものと合して1本の管(切歯管)として、口蓋面前方正中部の切歯窩に切歯孔としてひらく。下面は粗で口腔の天井をつくり、大口蓋孔から出て前方に向かう神経血管のために生じた前後に走る口蓋溝、それと平行な稜(口蓋稜)がみられる。歯槽突起については下顎骨をみよ。歯槽突起外面にある歯槽に起因する膨隆群を歯槽隆起という。Maxillaという言葉はローマ時代から「アゴ」の意味でも上顎にも下顎にも使われてきた。Vesaliusも、上顎骨をmaxilla superior,下顎骨をmaxilla inferiorと呼んでいる。Maxillaが上顎骨だけに限定され、下顎骨がmandibulaと呼ばれるようになったのは近代に入ってからである。顎下腺(下顎骨の下にある唾液腺)も1935年まではglandula submaxillarisと呼ばれていた。)
- 908_00a【Orbit; Orbital cavity眼窩 Orbita; Cavitas orbitalis】 Orbital cavity that contains the eyeball and its appendages.
→(眼窩は眼球とその付属器とを容れる不規則な四角錐体状の大きなくぼみで、最深部はその後内方にある。錐体底にあたる部はほぼ四辺形の眼窩口で、軽度外下方に傾いており、顔面に開いている。その上縁を眼窩上縁、下縁を眼窩下縁という。眼窩上縁は前頭鱗からなり、その内側半分に2個の切痕または孔があり、その内側のものを前頭切痕(まれに前頭孔)、外側のものを眼窩上孔(まれに眼窩上切痕)とう。眼窩下縁は上顎骨体および頬骨からなり、その下方に眼窩下孔が開口している。眼窩は上・下・内側・外側の4壁を有し、7種類の骨による10部より形成されている。上壁は大部分が前頭骨眼窩面および蝶形骨小翼腹側面よりなり、外側には涙腺窩、小翼内には視神経管があり、ここに視神経および眼動脈を通す。下壁は大部分が上顎骨眼窩面によりなるが、外側の一部が頬骨眼窩面、後方の小部分が口蓋骨眼窩突起により形成されている。また後方から前方へ眼窩下溝その延長部である眼窩下管が走り、これが既述の眼窩下孔に開口する。内側壁は大部分が篩骨眼窩板により形成され、残りの部分のうちの前部は上顎骨前突起および涙骨、後部は蝶形骨体側面最前部によって形成されている。なお篩骨眼窩板上縁と前頭骨眼窩部との間には、前篩骨孔および後篩骨孔があり、前者は鼻腔に行く前篩骨神経および前篩骨動脈を通し、後者は篩骨蜂巣に行く後篩骨神経および後篩骨動脈を通す。また内側壁の前部にある涙嚢窩は、上顎骨の前涙嚢稜と涙骨の孔涙嚢稜との間にあり、稜骨の涙嚢溝が合して形成されたものである。外側壁は前半部は頬骨眼窩面、後半部は蝶形骨大翼眼窩面と上壁の蝶形骨小翼との間には頭蓋腔に通ずる上眼窩裂があり、動眼神経、滑車神経、眼神経、外転神経、上眼静脈などを通す。また外側壁後半部の蝶形骨大翼眼窩面と下壁の上顎骨眼窩面との間には翼口蓋窩および側頭下窩に通ずる下眼窩裂があり、眼窩下神経、頬骨神経、下眼静脈などを通す。)
- 908_01【Inferior rectus muscle下直筋;下眼球直筋 Musculus rectus inferior; Musculus rectus bulbi inferior】 o: Common tendinous ring, i: Along an oblique line about 6 mm from the corneal margin. Action: Depression of the eye and extorsion of the superior pole. I: Oculomotor nerve.
→(下直筋は眼球下部で上直筋と同じ方向性をもち、眼球下部の周囲に角膜縁の後方約6mmの胸膜に放射状に停止する。目の動き:視線を外側かつ下方に向ける。)
- 908_02【Superior rectus muscle上直筋;上眼球直筋 Musculus rectus superior; Musculus retus bulbi superior】 o: Common tendinous ring, i: Along an oblique line passing anterior to the equator, 7-8 mm behind the corneal margin. Action: Elevation and intorsion of superior pole. I: Oculomotor nerve.
→(上直筋は、眼球の上部を斜め外側に進んで眼球の周囲に達し、そこで角膜縁の後方約7-8mmの胸膜に停止腱が放射上に胸膜組織と絡まるように停止する。目の動き:視線を外側かつ上方に向ける。)
- 908_03【Short ciliary nerves短毛様体神経 Nervi ciliares breves】 Up to 20 short nerves that pierce the sclera around CN II. They contain postganglionic parasympathetic fibers from the ciliary ganglion as well as postganglionic sympathetic fibers of the sympathetic root that carry information to the eye. They contain sensory fibers of the nasociliary root that carry impulses away from the eye.
→()
- 908_04【Optic nerve [II]視神経;視束[脳神経II] Nervus opticus; Fasciculus opicus [II]】 Nerve emerging medial to the posterior pole of the eyeball and extending to the optic chiasma.
→(視神経は脳神経の1つとして扱われてはいるが、実は前脳胞の延長部である。眼球網膜の第8層である神経細胞層中にある多極神経細胞から出る神経線維が集まって出来る神経である。すなわち杆状体細胞および錐体状細胞よりの興奮は網膜の内顆粒層の双極細胞に伝わり、それがさらに神経細胞層の細胞に連絡し、この神経細胞の出す神経突起である線維はまず眼球の後極よりやや内下方の一ヶ所に集まって、視神経円板を作り、強大な神経幹となり、網膜の続きである視神経鞘に囲まれて後内側に向かう。眼球から約15~20mm隔ったたところで、眼動脈の枝である網膜中心動脈およびこれに伴う静脈が外側から入り込み、その中軸を通って網膜に分布する。左右両側の視神経は眼窩後端の視神経管を通って頭蓋腔に入り、次第に相近づいて蝶形骨体上の視神経溝でほぼ半交叉をして視交叉を作り、そのつづきは視索と名が変わって間脳の外側膝状体および中脳の上丘などの第一次視覚中枢に達して、ここで終わる。網膜が眼胚から発達するので経路に相応する。ヒトの視神経は眼球網膜の神経細胞層中にある多極神経細胞から出る100万本以上の神経線維からなる。すなわち、杆状体細胞および錐体状細胞よりの興奮は網膜の内顆粒層の双極細胞に伝わり、それがさらに神経細胞層の細胞に連絡し、この神経細胞の出す神経突起である線維はまず眼球の後極よりやや内下方の一ヶ所に集まって、視神経円板を作り、強大な神経幹となり、網膜の続きである視神経鞘に囲まれて後内側に向かう。眼球から約15~20mm隔ったたところで、眼動脈の枝である網膜中心動脈およびこれに伴う静脈が外側から入り込み、その中軸を通って網膜に分布する。左右両側の視神経は眼窩後端の視神経管を通って頭蓋腔に入り、次第に相近づいて蝶形骨体上の視神経溝でほぼ半交叉をして視交叉を作り、そのつづきは視索と名が変わって間脳の外側膝状体および中脳の上丘などの第一次視覚中枢に達して、ここで終わる。)
- 908_05【Levator palpebrae superioris muscle上眼瞼挙筋 Musculus levator palpebrae superioris】 o: Upper portion of optic canal and dural sheath of optic nerve. Its insertion tendon widens anteriorly and divides into a superior and an inferior layer. I: Oculomotor nerve.
→(上眼瞼挙筋は視神経管の縁の総腱輪の外側で視神経鞘から起こり、眼窩上壁のすぐ下で前頭神経の下を通り上眼瞼にいく。上眼瞼挙筋の腱は分離して上眼瞼挙筋浅板と上眼瞼挙筋深板に分かれる。前者は上眼瞼中を縁に向かって進み、後者は上瞼板筋の平滑筋細胞を伴って上眼瞼の瞼板に付く。下瞼板筋は下眼瞼板と下結膜円蓋の間の下眼瞼に存在する平滑筋層である。)
- 908_06【Superior branch of oculomotor nerve上枝(動眼神経の) Ramus superior (Nervus oculomotorus)】 Upper branch innervating the superior rectus muscles and levator palpebrae superioris.
→(動眼神経の上枝は上直筋および下眼瞼挙筋を支配する。)
- 908_07【Ciliary ganglion毛様体神経節 Ganglion ciliare】 Ganglion situated on the posterolateral aspect of the optic nerve that contains cells for the postganglionic parasympathetic fibers to the ocular muscles. They constrict the pupils and contract the ciliary muscle for near vision.
→(眼窩内にある自律神経節でそこに含まれれる神経細胞の大多数は副交感神経節後ニューロン(その興奮により眼球内の虹彩にある瞳孔括約筋を収縮させて縮瞳をおこさせると同時に、毛様体筋をも収縮させて毛様小帯を弛緩させることにより水晶体の厚みを増加させる)の細胞体である。この自律神経節には①動眼神経からの枝(副交感性根)、②交感神経枝、③鼻毛様体神経との交通枝(知覚根)、および④数条の短毛様体神経が連絡するが、動眼神経からの枝の中に含まれる副交感神経節前線維のみが上記の神経細胞体とシナプスを形成する。一方、②および③の中にはそれぞれ交感神経節後線維(虹彩の瞳孔散大筋を支配)と眼球の近くをつかさどる神経線維が含まれるが、これらは毛様体神経節内を素通りするだけで同神経節内から新たにおこる副交感性節後線維群とともに④を形成して眼球内にすすむ。)
- 908_08【Communicating branch with ciliary ganglion; Sensory root of ciliary ganglion; Nasociliary root of ciliary ganglion; Communicating branch of nasociliary nerve with ciliary ganglion毛様体神経節との交通枝;毛様体神経節の感覚根;毛様体神経節の鼻毛様体根;毛様体神経節長根 Ramus communicans cum ganglio ciliari; Radix sensoria ganglii ciliaris; Radix nasociliaris ganglii ciliaris; Radix longa(Ganglion ciliare)】 Sensory fibers passing through the ciliary ganglion from the eye to the nasociliary nerve.
→()
- 908_09【Sympathetic root to ciliary ganglion交感神経根(毛様体神経節への);毛様体神経節交感根 Radix sympathica ganglii ciliaris; Radix sympathica ad ganglii ciliaris】 Postganglionic sympathetic fibers from the internal carotid plexus.
→(毛様体神経節の交感神経根は内頚動脈神経叢から出て毛様体神経節を素通りして眼球に至る節後線維で、その細胞体は上頚神経節にある。)
- 908_10【Parasympathetic root of ciliary ganglion; Oculomotor root of ciliary ganglion; Branch of oculomotor nerve to ciliary ganglion副交感神経根;動眼神経根;毛様体神経節への動眼神経根;毛様体神経節短根 Radix parasympathica; Radix oculomotoria; Ramus nerve oculomotorii ad ganglion ciliare; Radix brevis(Ganglion ciliare)】 Preganglionic parasympathetic fibers from CN III.
→(毛様体神経節の副交感神経根は毛様体神経節へ副交感神経の節前線維を送っている動眼神経の枝。)
- 908_11【Inferior branch of oculomotor nerve下枝(動眼神経の) Ramus inferior (Nervus oculomotorius)】 Lower branch supplying the medial rectus, inferior rectus, and inferior oblique muscles.
→(動眼神経の下枝は運動枝を内側直筋・下直筋・下斜筋に送り、副交感神経節前枝をその根部から毛様体神経節に送る。)
Zinn, Anulus of
- 908_12Zinn, Anulus of【Common tendinous ring of extra-ocular muscles; Common annular tendon総腱輪(外眼筋の) Anulus tendineus communis】 Tendinous ring giving origin to the rectus muscles. It surrounds the optic canal and medial part of the superior orbital fissure.
→(眼筋の4つの直筋群(内側直筋、外側直筋、上直筋、下直筋)は眼窩の後端から起こる。筋の起始腱は全体として視神経管のまわりで輪、すなわち総腱輪をつくる。各直筋は総腱輪から、それぞれ、眼窩の4壁(内側壁・外側壁・上壁・下壁)に沿って前進し、眼球の前半部(赤道より前方)につく。)
- 908_13【Oculomotor nerve [III]動眼神経[脳神経III] Nervus oculomotorius [III]】 Nerve containing motor and parasympathetic fibers that exits the oculomotor sulcus and passes through the superior orbital fissure into the orbit.
→(動眼神経の主成分は動眼神経主核から出る体性運動性のもので外側直筋および上斜筋以外の眼筋を支配する。このほかに副交感性の動眼神経副核[Edinger-Westphal核]から出る線維が加わる。以上の2核から出る線維は多数の根をつくって大脳脚内側溝から出て1神経幹となり、滑車神経、外転神経および眼神経とともに、蝶形骨体の両側にある海綿静脈洞の上壁に沿ってすすみ、上眼窩裂を通って眼窩内に入り、上下の2枝に分かれる。上枝は上瞼挙筋および上直筋に、下枝は内側直筋、下直筋および下斜筋に分布する。また下枝からはきわめて短い動眼神経からの根が出て、毛様体神経節に入るが、これは動眼神経副核から出て、下枝を通って毛様体神経節に入る副交感線維にほかならない。)
- 908_14【Trochlear nerve [IV]滑車神経[脳神経IV] Nervus trochlearis [IV]】 Nerve exiting on the dorsal side, caudal to the tectal plate. It supplies the superior oblique muscle.
→(滑車神経は脳神経中最少のもので、滑車神経核からでて上斜筋を支配する鈍体性運動性神経である。この神経は脳の背側から脳をでる唯一の脳神経で、下丘のすぐ後方で、上小脳脚と上髄帆小帯との間から出て、大脳脚をめぐり、(側頭骨)錐体尖の近くで硬膜を貫いて海綿静脈洞の上壁に達し、動眼神経の外側から上側に向かって前進し、上眼窩裂を通って眼窩内に入り、上直筋、上眼瞼挙筋起始部の上を前内側にすすんで、上斜筋に分布する。)
- 908_15【Ophthalmic nerve; Ophthalmic division [Va; V1]眼神経 [三叉神経第1枝] Nervus ophthalmicus [Va; V1]】 First division of the trigeminal nerve, which passes through the superior orbital fissure.
→(眼神経は第五脳神経の第一枝(CN V1)。蝶形骨体上の海綿静脈洞の外側に沿って前方にすすみ、上眼窩裂を通って眼窩に入る。つぎの枝(①涙腺神経、②前頭神経、③鼻毛様体神経)に分かれる。また眼筋にいたる動眼、滑車、外転の3神経および交感神経との間に交通がある。)
Gasserian ganglion
- 908_16Gasserian ganglion【Trigeminal ganglion三叉神経節;半月神経節 Ganglion trigeminale; Ganglion semilunare】 Crescent-shaped equivalent of a spinal ganglion of the trigeminal nerve lying in an outpouching in the subarachnoid space (trigeminal cavity) above the foramen lacerum on the medial, anterior surface of the petrous temporal bone.
→(ガッセル神経節またはガッサー神経節とよばれる。三叉神経の大きい扁平な知覚神経節で、中頭蓋窩の正中部分に沿った静脈洞に密接して脳硬膜の三叉神経腔にある。オーストラリアの解剖学者Johann Laurentius Gasser (1723-1765頃)によって報告された。彼自身についてはよく判っていない。)
- 908_17【Sensory root of trigeminal nerve感覚根;知覚性根;知覚根;大部(三叉神経の);三叉神経根 Radix sensoria; Portio major; Radix nervi trigemini】 Sensory part of the nerve that emerges caudally from the pons and extends to the trigeminal ganglion.
→(三叉神経の知覚根は体性感覚線維で三叉神経の大部に相当し、橋に入り、三叉神経主感覚核と三叉神経脊髄路核に分布する。)
- 908_18【Mandibular nerve; Mandibular division of trigeminal nerve [Vc; V3]下顎神経[三叉神経第3枝] Nervus mandibularis [Vc; V3]】 Third division of the trigeminal nerve that passes through the foramen ovale into the infratemporal fossa. It contains sensory fibers and motor fibers for the muscles of mastication.
→(三叉神経節からの感覚線維と運動根が卵円孔で結合してできる三叉神経の第三枝で最も太く、この神経は三叉神経節から出てただちに蝶形骨大翼の卵円孔を通って側頭下窩に出て硬膜、咀嚼筋、頬粘膜、耳介、外耳道付近その他へ枝を与えた後、舌神経、下歯槽神経の2終枝に分かれる。)
- 908_19【Maxillary nerve; Maxillary division [Vb; V2]上顎神経[三叉神経第2枝] Nervus maxillaris [Vb; V2]】 Second division of the trigeminal nerve. It passes though the foramen rotundum to the pterygopalatine fossa and continues through the orbital fissure into the orbit.
→(三叉神経の第2枝で蝶形骨大翼の正円孔を通って頭蓋腔を去り、翼口蓋窩で頬骨神経および翼口蓋神経を出した後、眼窩下神経となって眼窩下裂を経て眼窩に入り、顔面まで達する。知覚枝は下眼瞼の皮膚と結膜、上唇と頬の皮膚と粘膜、口蓋、上顎歯と歯肉、上顎洞、鼻翼および鼻腔の後下部に分布する)
Vidian nerve
- 908_20Vidian nerve【Nerve of pterygoid canal; Root of facial nerve翼突管神経;顔面神経根 Nervus canalis pterygoidei; Radix facialis; Radix nervi facialis】 Nerve lying in the pterygoid canal situated in the root of the pterygoid process. It contains parasympathetic and sympathetic fibers and passes to the pterygopalatine ganglion.
→(翼状突起根部の同名の管中にあり、知覚性、副交感性(顔面神経)および交感性線維を含む。翼口蓋神経節へ入る。 (Feneis))
Meckel's ganglion
- 908_21Meckel's ganglion【Pterygopalatine ganglion翼口蓋神経節;蝶口蓋神経節 Ganglion pterygopalatinum; Ganglion sphenopalatinum】 Ganglion measuring 4-5 mm that lies lateral to the sphenopalatine foramen in the pterygopalatine fossa. It contains cells for the postganglionic parasympathetic fibers to the lacrimal gland and the small nasal and palatine glands.
→(『メッケル神経節』ともよばれる。翼口蓋上部に位置する副交感神経節で、ここからの節後線維は涙腺などに分布する。上顎神経に付属する神経節で翼口蓋窩に位置し上顎神経の内側にある。形は不規則扁平でその頚は4~6mmである。毛様体神経節とおなじく3根ある。そのなかで知覚根は翼口蓋神経節由来で、一部はこの神経節で終わるが、一部はそのままこれを通って鼻腔および口蓋に分布する。運動根は顔面神経から出る大錐体神経で上唾液核から出て中間神経に入った副交感線維からなり、交感根は上顎神経節から出て内頚動脈神経叢を通ってくる抗感染位からなる深錐体神経である。大錐体神経および深錐体神経は、破裂孔の頭底軟骨を貫いて頭蓋下面に達して合し、翼突管神経として翼突管中を前進して翼口蓋神経節に入る。翼口蓋神経節から出る神経は主として鼻腔後部、口蓋および眼窩の一部などに分布して、知覚および植物神経線維を与える。ドイツの解剖学者・産科医Johann Friedrich Meckel (1714-1774)によって、1748年に記載された。メッケル憩室を発見したJohann F. Meckel (1781-1833)は彼の孫にあたる。)
- 908_22【Sensory root of pterygopalatine ganglion; Ganglionic branches of maxillary nerve to pteygopalatine ganglion翼口蓋神経節の感覚根;上顎神経の神経節枝;翼口蓋神経 Radix sensoria ganglii pterygopalatini; Rami ganglionares nervus maxillaris ad ganglion pterygopalatinum; Nervi pterygopalatini】 Sensory fibers from the maxillary nerve that travel through the ganglion.
→(翼口蓋神経節感覚根は翼口蓋窩の上顎神経の2本の短い知覚枝、翼口蓋神経節を通るがシナプスは作らない。)
- 908_23【Palatine nerves口蓋神経 Nervi palatini】
→(大口蓋神経および小口蓋神経の総称。)
- 908_23a【Greater palatine nerve大口蓋神経 Nervus palatinus major】 Nerve traveling in the greater palatine canal and emerging from the greater palatine foramen to supply the mucosa of the hard palate and palatine glands.
→(大口蓋管をへて同名の孔よりでて、硬口蓋粘膜および腺へ分布。(Feneis))
- 908_24【Posterior superior alveolar branches; Posterior superior alveolar nerves後上歯槽枝;後上歯槽神経(上歯槽神経の) Rami alveolarium superiorum posteriores; Nervi alveolares superiores posteriores】 Two or three branches that pass through the alveolar foramina to the maxilla. They supply the maxillary sinus, molar teeth, and adjacent buccal gingiva.
→(上歯槽神経の後上歯槽枝は通常2本あり、上顎結節に沿って下り、歯肉および口腔粘膜の後部に分布するほか、歯槽管を通じて上顎洞の外側壁、大臼歯およびその頬側の歯肉へ分布する。)
- 908_25【Middle superior alveolar branch; Middle superior alveolar nerve中上歯槽枝(上歯槽神経の) Ramus nervus alveolarium superiorum medius】 Branch that enters the maxilla through the infra-orbital groove and runs in the lateral wall of the maxillary sinus to the superior dental plexus, from which it supplies the premolar teeth.
→(上歯槽神経の中上歯槽枝は上顎骨の眼窩下溝へ入り、上顎洞側壁中を走り上歯神経叢へいたる。)
- 908_26【Inferior oblique muscle下斜筋;下眼球斜筋 Musculus obliquus inferior; Musculus obliquus bulbi inferior】 o:Lateral alongside the nasolacrimal canal, i: Behind the equator. Action: Gaze elevation, abduction, and extorsion. I: Oculomotor nerve.
→(下斜筋は眼窩口内側縁の後方の上顎骨に存在する前涙嚢稜から起こり眼窩下縁と並行に走る。下斜筋は停止部近くで扇のように後方へ放射状に広がり眼球の下後側頭部眼球赤道の強膜に停止する。目の動き:視線を内側かつ上方に向ける。)
- 908_27【Eyeball眼球 Bulbus oculi】
→(眼球は名前のように球状(直径約25mm・体積約8cm3)で、視覚器の主要部をなす。眼窩脂肪体、眼筋筋膜、眼球鞘などに包まれて眼窩中にあり、前方からは眼瞼により保護されている。また眼筋の働きにより球関節に似た自由度の高い体軸性運動を行う。眼球の内部には前方に眼房水、後方に硝子体が満ちて、12~22mmHgの内圧が保たれる。眼球の形状を規定するため、前極、後極、赤道、経線、外眼球軸(前・後極を結ぶ)、内眼球軸、視軸などを用いる。眼球軸は角膜と水晶体前・後面の曲率中心を通る軸で、網膜面では中心窩と円板の中間を通る。したがって水晶体後面の屈曲率中心と中心窩を結ぶ視軸とは一致しない。眼球壁は組織発生的に、①眼球線維膜(強膜、角膜)、②眼球血管膜(脈絡膜、毛様体筋、虹彩支質、角膜内皮、胎児期の瞳孔膜)、③眼球内膜(網膜視部、毛様体・虹彩色素上皮層)の3層よりなる。①と②は中胚葉、③は神経外胚葉に由来する。内部の水晶体は体表外胚葉、硝子体は中胚葉由来であり、眼瞼・眼球膜、角膜上皮は皮膚の表皮の続きである。)
- 908_28【Supra-orbital nerve眼窩上神経 Nervus supraorbitalis】 Thickest branch of the frontal nerve which supplies the conjunctiva, upper eyelid, frontal sinus, and the skin of the forehead.
→(眼窩上神経は眼窩上縁の眼窩上孔(切痕)を通り前頭部に出て結膜、上眼瞼、前頭洞および前額の皮膚に分布する前頭神経の太い枝である。)
- 908_29【Orbital part of lacrimal gland眼窩部(涙腺の);上涙腺 Pars orbitalis (Glandulae lacrimalis); Glandula lacrimalis superior】 Larger portion of the lacrimal gland situated above the tendon of the levator palpebrae.
→(涙腺は二つの部分からなり、比較的小さい下の部分(涙腺の眼瞼部)が、上眼瞼挙筋の腱膜よりも表層にあり、大きい上の部分(涙腺の眼窩部)はこの上眼瞼挙筋の腱膜の裏側(下層)に存在する。)
- 908_30【Frontal nerve; *Frontal branch of ophthalmic nerve前頭神経;前頭枝(眼神経の) Nervus frontalis; Ramus frontalis (Nervus ophthalmicus)】 Nerve passing through the superior orbital fissure, lies on the levator palpebrae superioris muscle, and continues to the forehead.
→(眼窩上壁に沿って前進し、眼窩上神経と滑車上神経の2枝に分かれる。眼窩上神経はもまく外側枝および内側枝に分かれ、それぞれ眼窩上孔(または切痕)および前頭切痕(または孔)を通って前頭部に現われ、また滑車上神経は滑車の上を通って皮下に現われ、いずれもその付近の前頭部、上眼瞼、結膜および鼻背皮膚に分布する。なお滑車上神経の1枝は鼻毛様体神経から出る滑車下神経と交通する。)
- 908_31【Supratrochlear nerve滑車上神経 Nervus supratrochlearis】 Thin, medial branch. It divides at the medial angle of the eye into ascending and descending branches.
→(細い内側の枝。内眼角より上下方向に分かれる。(Feneis))
- 908_32【Infratrochlear nerve滑車下神経 Nervus infratrochlearis】 Nerve passing beneath the muscle sling of the superior oblique to the inner angle of the eye. It supplies the lacrimal sac, Iacrimal caruncle, and surrounding skin.
→(上斜筋の下を通り眼窩内側壁を前進し、滑車上神経内側枝と結合して神経弓を作り、これから眼瞼枝を出し上、下眼瞼および内眼角の皮膚と涙嚢に分布する。)
- 908_33【Anterior superior alveolar branches of superior alveolar nerve; Anterior superior alveolar nerves前上歯槽枝;前上歯槽神経(上歯槽神経の) Rami nervus alveolarium superiorum anteriores; Rami alveolares superiores anteriores】 Branches running in a separate canal to the superior dental plexus and from there to the canine, incisor, premolar, and first molar teeth.
→(上歯槽神経の枝で、上歯槽神経叢の上を通り切歯、犬歯、小臼歯、第一大臼歯に分布する。)
- 908_34【Maxillary sinus mucosa; Mucous membrane of maxillary sinus粘膜(上顎洞の);上顎洞粘膜 Tunica mucosa sinus maxillaris】
→()
Highmore, Antrum of
- 908_34aHighmore, Antrum of【Maxillary sinus上顎洞;ハイモア腔 Sinus maxillaris】 It measures over 3 cm vertically and sagittally and 2.5 cm in the frontal plane. Its floor is usually at least 1 cm below the floor of the nose and its lowest point is usually at the level of the first molar.
→(上顎洞は上顎体中にある最大の副鼻腔で、その形はだいたいにおいて上顎体の形に一致するが、尖端を外上方、すなわち頬骨突起の方に出しているので錐体状に近く、その底は鼻腔面にむく。ここにはなはだ大きい上顎洞裂孔があるが、完全な頭蓋ではこの裂孔は口蓋骨の垂直板、篩骨の鈎状突起および下鼻甲介の上顎、篩骨稜突起によりその一部がふさがれて著しく小さくなる。(生体では、さらに鈎状突起まで鼻粘膜に被われるため、中鼻甲介の下の半月裂孔に開く小さな開口を残すのみとなる。)上顎洞はその前壁が最も厚く、つぎは後壁、上壁の順で内側壁が最も薄い。下壁は歯槽突起に入り、場所によってその厚さが異なるが、大臼歯および小臼歯の歯根をおおう部、とくに第1、第2臼歯の付近で最も薄く、それらの歯根はしばしば洞に達する。また、下壁には歯槽中隔の為に多くの骨の高まりやくぼみを見るのを常とする。なお、上顎洞の前後稜壁には多くの細い歯槽溝または歯槽管および歯槽孔が見られる。『ハイモア洞』:イギリスの自然科学者Nathaniel Highmore (1613-1685)の名を冠するが、レオナルド・ダ・ビンチがすでに観察している。ハイモアは、この他にも精巣縦隔(Highmore's body)に名を残している。)
- 908_35【Superior dental plexus; Superior dental nerve plexus上歯神経叢 Plexus nervosus dentalis superior; Plexus dentalis superior】 Network of nerves formed by the superior alveolar branches that lies in the maxilla above the roots of the teeth.
→(上歯神経叢は眼窩下神経の枝でつくられる。上方へ上歯枝を、歯肉へ上歯肉枝をだす。)
- 908_36【Superior dental branches; Superior dental nerves上歯枝(上歯槽神経の) Rami plexi nervosi dentales superiores】 Branches supplying individual roots of the teeth.
→(上歯槽神経の上歯枝は上顎の歯根に分布する。)
- 908_37【Superior gingival branches; Superior gingival nerves上歯肉枝(上歯槽神経の) Rami plexi nervosi gingivales superiores】 Branches supplying the gingiva.
→(上歯槽神経の上歯肉枝は上顎の歯肉に分布する。)
- 908_38【Gingiva歯肉 Gingiva】
→(歯肉は口腔粘膜でおおわれたち密な線維組織で、上顎および下顎の歯突起を包み、歯頚部を取り巻いて、固く骨膜と癒着している。頬または口唇と歯肉の間の移行帯ではこれに対し、この結びつきはゆるく、ここでは炎症過程によって粘膜がもり上がることがある(このときにはしばしば鼻唇溝やオトガイ唇溝が消失する)。外縁上皮は歯槽突起の外面の粘膜上皮であって、厚みがあり高い乳頭突起でもって粘膜結合組織としっかり咬み合っており、ところどころで角化がみられることがある。内縁上皮は歯槽の上縁を越えて、歯頚に達し歯根膜を上から被っている。)