095
- 095_00【Nasal cavity鼻腔 Cavitas nasi】
→(鼻腔は気道の起始部であり、内壁は鼻粘膜によっておおわれ、鼻中隔によって二分される。外界への開口部は外鼻孔とよばれ、後方は後鼻孔をもって咽頭鼻部につづく。鼻腔は鼻前庭と狭義の鼻腔とに分けることができる。鼻前庭は鼻翼の形に拡張し、粘膜は皮膚からつづく重層扁平上皮で剛毛(鼻毛)を有する。鼻前庭の降誕は鼻限とよばれる弓状の隆起を示し、固有鼻腔に移行する。鼻中隔は篩骨垂直板と鋤骨よりなる尾骨および鼻中隔軟骨よりなる軟骨部がその大部分を占め、その前部の左右の外鼻孔の間は軟組織からなり、篩骨篩板と鋤骨の間にはさまる。鼻中隔軟骨の前下部には鋤鼻軟骨中に嗅覚器の名ごり(鋤鼻器)の盲孔がみられることがある。鋤鼻器は両性類、爬虫類では嗅覚器として機能し、哺乳類の中では単孔類、有袋類、食虫類、齧歯類でよく発達している。人では胎生期前半にはよく発達するが、次第に萎縮し痕跡器官となる。鼻中隔軟骨下縁の前側にはよく発達するが、次第に萎縮痕跡器官となる。微衷飼う軟骨下縁の前側に、盲端に終わる切歯管が勧誘している。鼻腔の外側壁より上・中・下鼻甲介が突出し、それぞれの下に上・中・下鼻道をつくる。下鼻甲介の基部で中鼻道の前方は中鼻道前房とよばれる弓状の隆起で、中鼻甲介の基部に移行する。また、中鼻道には篩骨蜂巣の一部が膨らみでて篩骨胞をなし、その全科法の篩骨突起との間に半月裂孔をはさむ。半月裂孔は副鼻腔の一つである上顎洞に向かって深く入り篩骨漏斗となる。上鼻道の後上方にはときに最上鼻甲介とよばれる小さな突起があり、その後上方の鼻腔上壁は篩骨迷路の内側壁と蝶形骨体前面で裂かされるへこみで蝶篩陥凹という。上・中・下鼻道は鼻腔後部で狭い鼻咽道に集合し、後鼻孔を通じて後頭鼻部につづく。鼻粘膜の大部分は多裂腺毛円柱上皮性の呼吸部で、混合性の鼻尖と杯細胞を有する。粘膜固有層にはしばしばリンパ小節をみる。呼吸部のうち鼻中隔と鼻甲介の粘膜は上皮下の静脈網がきわめてよく発達しているため肥厚し、鼻甲介海面層とよばれる。鼻腔甲状壁の上鼻道から上と鼻中隔のこれに対する面は分散する鼻粘膜の球部が位置する。中鼻甲介の根部と嗅部粘膜上皮の構成にあずかっている。嗅上皮下には漿液性の休戦がある。嗅部の体積は両側の鼻腔を合わせて約500mm2といわれ、かれいとともに縮小する傾向がある。 (解剖学事典 朝倉書店より引用))
- 095_01【Nasal bone鼻骨 Os nasale】 Bone located between the right and left frontal processes of the maxilla. Its superior end articulates with the frontal bone.
→(鼻骨は三角形に近い長方形の薄い骨で、左右のものが正中で接合して鼻背の骨格を作る。骨化様式は結合組織性骨化である。鼻腔を前上方からおおう台形の骨である。上方は狭く、下方は広い。上縁は前頭骨鼻部の鼻棘に接し、下縁は遊離縁で骨鼻孔の梨状口の上縁をなす。外側縁は上顎骨の前頭突起と結合し、内側縁は他側の鼻骨と結合し、両者間に鼻骨間結合をなす。鼻骨の前面は軽度膨隆し、後面は軽度陥凹している。前面のほぼ中央に鼻骨孔があり、この孔は後面で篩骨孔につづき、ここを前篩骨神経の外鼻枝が通る。)
- 095_02【Frontal process of maxilla前頭突起(上顎骨の) Processus frontalis (Maxilla)】
→(前頭突起は上顎体の上前内側隅から起こって上方に向かい、鼻骨と涙骨の間を前頭骨の鼻縁まで達する。細長く扁平で内外面、前後縁があるが、外側面は前後2部に分かれる。前縁は鼻骨に接する縁で薄く鋭い。後縁は涙骨前縁に接し、涙骨縁として上顎体鼻腔面まで延びて涙嚢溝の前縁をつくる。内側面の上部は篩骨迷路の前端部が着くやや粗な面で、しばしば篩骨蜂巣の一部に対応する陥凹がある。この部の下界で、眼窩面の高さをほぼ水平に不明瞭な篩骨稜が走るが、これは中鼻甲介の前端部が着くところである。外側面は眼窩下縁につづく前涙嚢稜により前後2部に分かれる。前の部は鼻背の一部(眼輪筋眼窩部、上唇鼻翼挙筋が起こる)をつくる。後部は縦にくぼんだ涙嚢溝となり、その上部は涙骨の同名の溝と合して涙嚢窩をつくり、下部は上顎体の内面の涙嚢溝につづく。前涙嚢稜の下端が上顎体の眼窩面に移る所にある半月上の涙嚢切痕の外側部は涙骨鈎のつく所である。)
- 095_03【Lacrimal bone涙骨 Os lacrimale】 Bone located in the orbit in front of the orbital plate of the ethmoid.
→(涙骨は左右1対の不正長方形の薄い骨で、上顎骨の前頭突起後方の眼窩の内壁の一部をなす。これに続く鼻涙管の骨壁の一部もつくる。この骨も結合組織性骨化によって生ずる。涙骨の全体の形は手指の爪に似ているが、厚さは爪よりも薄い。下鼻甲介、篩骨、前頭骨、上顎骨と連結する。外面は眼窩に向かい、中央を縦走する稜縁の前方にある溝状のくぼみが涙嚢窩の構成に加わる部分である。外側面は眼窩の内側壁の前部を形成し、内側面は鼻腔(中鼻道)の外側壁の一部を作る。上縁は前頭骨眼窩部と、下縁は上顎骨眼窩面と、前縁は上顎骨前頭突起と、後縁は篩骨眼窩板とそれぞれ接している。外側面の前半部には縦に走る涙骨溝があり、これは上顎骨の前頭突起の同名溝と合して涙嚢窩を形成する。涙嚢孔の後方の境界を後涙嚢稜といい、下方へ延びて涙嚢鈎となり、上顎骨前頭突起の涙嚢溝および下鼻甲介の涙骨突起とともに鼻涙管壁の一部を形成する。Lacrimaleはlacrima(涙)の形容詞である。)
- 095_04【Frontal sinus前頭洞 Sinus frontalis】 It can extend beyond the squamous part of frontal bone into the orbital part of frontal bone. It opens below the middle nasal concha above the sphenoidal sinus.
→(前頭洞は眉間の辺りにある副鼻腔をなす空洞。篩骨漏斗により同側の中鼻道に連なる。)
- 095_05【Middle nasal concha中鼻甲介 Concha nasalis media】
→(上鼻甲介の下方に、内側壁の全長から下方に突出し、内側壁の下界をつくる中鼻甲介がある。その下端は遊離して外側に巻き、前端は上顎体の、後端は口蓋骨の篩骨稜に着く。中鼻甲介の外側にできる空間は中鼻道の上部にあたる。)
- 095_06【Middle nasal meatus中鼻道 Meatus nasi medius】 Middle nasal passageway between the middle and inferior nasal conchae. Opening of the middle ethmoidal cells.
→(中・下鼻甲介間にある。 (Feneis))
- 095_07【Superior nasal concha上鼻甲介 Concha nasalis superior】
→(篩骨迷路の上部の後半には水平に走る上鼻甲介がある。これは単なる隆起にすぎないこともあり、また、その下縁が外側に巻くようになることもある。)
- 095_08【Superior nasal meatus上鼻道 Meatus nasi superior】 Upper nasal passageway above the middle nasal concha. Opening of the posterior ethmoidal cells.
→(上鼻甲介と中鼻甲介との間の鼻道を上鼻道という。)
- 095_09【Opening of sphenoidal sinus蝶形骨洞口 Apertura sinus sphenoidalis】 Anterior opening of the sphenoidal sinus into the spheno-ethmoidal recess.
→(左右の蝶形骨洞は蝶形骨体の前面の蝶形洞口で外部に開く。)
- 095_10【Sphenoidal sinus蝶形骨洞 Sinus sphenoidalis】 Paired sinus in the body of sphenoid that varies in size. It opens at the spheno-ethmoidal recess.
→(蝶形骨体の内部は殆ど蝶形骨洞でしめられ、空洞である。その大きさは不定で、ときには体の後に結合する後頭骨の底部にも進入している。蝶形骨洞は蝶形骨体部の頭蓋底部に位置する副鼻腔である。思春期以降に発達し、成人にて含気化が顕著になるが、含気の程度にバリエーションがあり、視神経管周囲・視神経が隣接しており、(内頚動脈が走行している)頚動脈隆起・視神経管の骨性隆起、その間に視神経管頚動脈裂optico-carotid recessとよばれる陥凹が蝶形骨内面より観察される。)
- 095_11【Sella turcicaトルコ鞍 Sella turcica】 It is located above the sphenoidal sinus and houses the pituitary gland.
→(トルコ鞍は蝶形骨体上面には、トルコ風の馬の鞍に似ている骨隆起で中頭蓋窩の中央部にある。この骨のくぼみには、重要な内分泌腺の一つである下垂体が入る。)
Blumenbach, Clivus of
- 095_12Blumenbach, Clivus of【Clivus斜台 Clivus】 Bony structure that slopes downward from the dorsum sellae to the foramen magnum. It is formed by the occipital bone and the sphenoid.
→(後頭蓋窩の正中部では中頭蓋窩の後端である鞍背から後方に大後頭孔まで「すべり台」のような急な斜面がある。これが斜台で、その上半は蝶形骨、下半は後頭骨からなる(その境界は骨が癒合しているのでわからない)。)
- 095_13【Sphenopalatine foramen蝶口蓋孔;蝶口蓋口 Foramen sphenopalatinum】 Opening in the superior part of the pterygopalatine fossa that connects it with the nasal cavity. The palatine bone contributes the greater portion and the sphenoid the lesser portion.
→(蝶口蓋孔は上鼻道の後端で、蝶形骨と口蓋骨との間にある孔で、鼻腔と翼口蓋窩とを連絡する。蝶口蓋孔は鼻腔の後半部に分布する血管・神経の通路として重要である。鼻腔の外側壁の後部にある口蓋骨の垂直板の上端に蝶口蓋孔がみられる。)
- 095_14【Medial plate of sphenoid; Medial plate of pterygoid process; Medial pterygoid plate内側板(蝶形骨翼状突起の) Lamina medialis (Processi pterygoideus ossis sphenoidalis)】
→(翼状突起の内側板は細長く殆ど矢状位に立ち、その下端は鈎形に外方に曲がって翼突鈎をつくる。その上にある浅い翼突鈎溝は口蓋帆張筋の腱が通るところである。内側板は後縁は上部で2分して浅い舟状窩(口蓋帆張筋が起こる)を囲む。舟状窩の上に接して上に述べた耳管溝が斜めに上外方に向かい大翼後縁までつづく。これは耳管軟骨部の着く所である。また、内側板の上端から内方に向かって、蝶形骨体の下面に沿う薄板上の鞘状突起が出る。この突起の下面の細い溝(口蓋骨鞘突溝)は後方から前方にすすむんい従って深さを増し、口蓋骨の蝶形骨突起と合して口蓋骨鞘突管をつくる。なお鞘状突起の内側縁と蝶形骨体の間にできる鋤骨鞘突溝は鋤骨翼が蝶形骨に着くと鋤骨鞘突管となる。この2小管はいずれも翼口蓋神経節の咽頭枝の通る所である。)
- 095_15【Nasopharyngeal meatus鼻咽道 Meatus nasopharyngeus】 The part of the nasal cavity extending from the posterior margin of the nasal conchae to the choana.
→(上鼻道、中鼻道、下鼻道などの鼻道は後方で合して鼻咽道となり、後鼻孔を経て咽頭に開く。)
- 095_16【Inferior nasal concha下鼻甲介 Concha nasalis inferior】 The independent lower nasal concha, which is attached to the lateral nasal wall.
→(中鼻甲介と殆ど同じ形状でこれより大きく、その下方で鼻腔外側壁に付着する1対の独立した小骨で、縁が湾曲した薄い海綿状骨板で、鼻腔の側壁にあり、中鼻道と下鼻道を分ける。篩骨、涙骨、上顎骨、口蓋骨とで関節をなす。下鼻甲介の内側面は鼻腔内に向かってふくらんだ粗面である。下縁は中鼻甲介のように外側に少し巻いている。上縁に涙骨突起、上顎突起、および篩骨突起がある。海綿状骨板とその肥厚した粘膜骨膜で、熱交換のための広範な海綿状の血管床を含む)
- 095_17【Inferior nasal meatus下鼻道 Meatus nasi inferior】 Lower nasal passageway between the inferior nasal concha and the floor of the nose.
→(下鼻甲介の下方の鼻道を下鼻道という。)