096
- 096_00【Nasal cavity鼻腔 Cavitas nasi】
→(鼻腔は気道の起始部であり、内壁は鼻粘膜によっておおわれ、鼻中隔によって二分される。外界への開口部は外鼻孔とよばれ、後方は後鼻孔をもって咽頭鼻部につづく。鼻腔は鼻前庭と狭義の鼻腔とに分けることができる。鼻前庭は鼻翼の形に拡張し、粘膜は皮膚からつづく重層扁平上皮で剛毛(鼻毛)を有する。鼻前庭の降誕は鼻限とよばれる弓状の隆起を示し、固有鼻腔に移行する。鼻中隔は篩骨垂直板と鋤骨よりなる尾骨および鼻中隔軟骨よりなる軟骨部がその大部分を占め、その前部の左右の外鼻孔の間は軟組織からなり、篩骨篩板と鋤骨の間にはさまる。鼻中隔軟骨の前下部には鋤鼻軟骨中に嗅覚器の名ごり(鋤鼻器)の盲孔がみられることがある。鋤鼻器は両性類、爬虫類では嗅覚器として機能し、哺乳類の中では単孔類、有袋類、食虫類、齧歯類でよく発達している。人では胎生期前半にはよく発達するが、次第に萎縮し痕跡器官となる。鼻中隔軟骨下縁の前側にはよく発達するが、次第に萎縮痕跡器官となる。微衷飼う軟骨下縁の前側に、盲端に終わる切歯管が勧誘している。鼻腔の外側壁より上・中・下鼻甲介が突出し、それぞれの下に上・中・下鼻道をつくる。下鼻甲介の基部で中鼻道の前方は中鼻道前房とよばれる弓状の隆起で、中鼻甲介の基部に移行する。また、中鼻道には篩骨蜂巣の一部が膨らみでて篩骨胞をなし、その全科法の篩骨突起との間に半月裂孔をはさむ。半月裂孔は副鼻腔の一つである上顎洞に向かって深く入り篩骨漏斗となる。上鼻道の後上方にはときに最上鼻甲介とよばれる小さな突起があり、その後上方の鼻腔上壁は篩骨迷路の内側壁と蝶形骨体前面で裂かされるへこみで蝶篩陥凹という。上・中・下鼻道は鼻腔後部で狭い鼻咽道に集合し、後鼻孔を通じて後頭鼻部につづく。鼻粘膜の大部分は多裂腺毛円柱上皮性の呼吸部で、混合性の鼻尖と杯細胞を有する。粘膜固有層にはしばしばリンパ小節をみる。呼吸部のうち鼻中隔と鼻甲介の粘膜は上皮下の静脈網がきわめてよく発達しているため肥厚し、鼻甲介海面層とよばれる。鼻腔甲状壁の上鼻道から上と鼻中隔のこれに対する面は分散する鼻粘膜の球部が位置する。中鼻甲介の根部と嗅部粘膜上皮の構成にあずかっている。嗅上皮下には漿液性の休戦がある。嗅部の体積は両側の鼻腔を合わせて約500mm2といわれ、かれいとともに縮小する傾向がある。 (解剖学事典 朝倉書店より引用))
- 096_01【Nasal bone鼻骨 Os nasale】 Bone located between the right and left frontal processes of the maxilla. Its superior end articulates with the frontal bone.
→(鼻骨は三角形に近い長方形の薄い骨で、左右のものが正中で接合して鼻背の骨格を作る。骨化様式は結合組織性骨化である。鼻腔を前上方からおおう台形の骨である。上方は狭く、下方は広い。上縁は前頭骨鼻部の鼻棘に接し、下縁は遊離縁で骨鼻孔の梨状口の上縁をなす。外側縁は上顎骨の前頭突起と結合し、内側縁は他側の鼻骨と結合し、両者間に鼻骨間結合をなす。鼻骨の前面は軽度膨隆し、後面は軽度陥凹している。前面のほぼ中央に鼻骨孔があり、この孔は後面で篩骨孔につづき、ここを前篩骨神経の外鼻枝が通る。)
- 096_02【Lacrimal bone涙骨 Os lacrimale】 Bone located in the orbit in front of the orbital plate of the ethmoid.
→(涙骨は左右1対の不正長方形の薄い骨で、上顎骨の前頭突起後方の眼窩の内壁の一部をなす。これに続く鼻涙管の骨壁の一部もつくる。この骨も結合組織性骨化によって生ずる。涙骨の全体の形は手指の爪に似ているが、厚さは爪よりも薄い。下鼻甲介、篩骨、前頭骨、上顎骨と連結する。外面は眼窩に向かい、中央を縦走する稜縁の前方にある溝状のくぼみが涙嚢窩の構成に加わる部分である。外側面は眼窩の内側壁の前部を形成し、内側面は鼻腔(中鼻道)の外側壁の一部を作る。上縁は前頭骨眼窩部と、下縁は上顎骨眼窩面と、前縁は上顎骨前頭突起と、後縁は篩骨眼窩板とそれぞれ接している。外側面の前半部には縦に走る涙骨溝があり、これは上顎骨の前頭突起の同名溝と合して涙嚢窩を形成する。涙嚢孔の後方の境界を後涙嚢稜といい、下方へ延びて涙嚢鈎となり、上顎骨前頭突起の涙嚢溝および下鼻甲介の涙骨突起とともに鼻涙管壁の一部を形成する。Lacrimaleはlacrima(涙)の形容詞である。)
- 096_03【Nasolacrimal canal鼻涙管 Canalis nasolacrimalis】 Opening below the inferior nasal concha.
→(涙嚢窩は下方では上顎骨、涙骨、下鼻甲介により形成される骨性の鼻涙管という骨のトンネルになって鼻腔に通じている。)
- 096_04【Frontal sinus前頭洞 Sinus frontalis】 It can extend beyond the squamous part of frontal bone into the orbital part of frontal bone. It opens below the middle nasal concha above the sphenoidal sinus.
→(前頭洞は眉間の辺りにある副鼻腔をなす空洞。篩骨漏斗により同側の中鼻道に連なる。)
- 096_05【Ethmoidal infundibulum篩骨漏斗 Infundibulum ethmoidale】 Passageway below the middle nasal concha for the drainage of mucinous material. The frontal sinus, maxillary sinus, and anterior ethmoidal cells open here.
→(半月裂孔の前上方はややせばまって、篩骨迷路の前部の中を下降する管状の篩骨漏斗に続いている。)
- 096_06【Uncinate process of ethmoid鈎状突起(篩骨の) Processus uncinatus (Ossis ethomoidalis)】 Hooked process directed posteroinferiorly. It is almost completely concealed by the middle nasal concha. It projects across the wide opening to the maxillary sinus.
→(篩骨胞と下鼻甲介の間を、中鼻甲介の起部前端から起こる長い薄い板状の鈎状突起が前上方から後下方に斜めに走り、その下端は下鼻甲介に達する。)
- 096_07【Semilunar hiatus半月裂孔 Hiatus semilunaris】 Opening of the ethmoidal infundibulum between ethmoidal bulla and the uncinate process.
→(鈎状突起の外側には篩骨胞を前方から下方に囲む弯曲した裂目状の空間が残される。これを半月裂孔と呼ぶ。)
- 096_08【Ethmoidal bulla篩骨胞 Bulla ethmoidalis】 Rudimentary nasal concha below the middle nasal concha that resembles the blisterlike elevation of an ethmoidal cell.
→(中鼻甲介の下、中鼻道の篩骨迷路内壁の胞状に隆起した篩骨蜂巣からなる痕跡的な鼻甲介。)
Highmore, Antrum of
- 096_09Highmore, Antrum of【Maxillary sinus上顎洞;ハイモア腔 Sinus maxillaris】 It measures over 3 cm vertically and sagittally and 2.5 cm in the frontal plane. Its floor is usually at least 1 cm below the floor of the nose and its lowest point is usually at the level of the first molar.
→(上顎洞は上顎体中にある最大の副鼻腔で、その形はだいたいにおいて上顎体の形に一致するが、尖端を外上方、すなわち頬骨突起の方に出しているので錐体状に近く、その底は鼻腔面にむく。ここにはなはだ大きい上顎洞裂孔があるが、完全な頭蓋ではこの裂孔は口蓋骨の垂直板、篩骨の鈎状突起および下鼻甲介の上顎、篩骨稜突起によりその一部がふさがれて著しく小さくなる。(生体では、さらに鈎状突起まで鼻粘膜に被われるため、中鼻甲介の下の半月裂孔に開く小さな開口を残すのみとなる。)上顎洞はその前壁が最も厚く、つぎは後壁、上壁の順で内側壁が最も薄い。下壁は歯槽突起に入り、場所によってその厚さが異なるが、大臼歯および小臼歯の歯根をおおう部、とくに第1、第2臼歯の付近で最も薄く、それらの歯根はしばしば洞に達する。また、下壁には歯槽中隔の為に多くの骨の高まりやくぼみを見るのを常とする。なお、上顎洞の前後稜壁には多くの細い歯槽溝または歯槽管および歯槽孔が見られる。『ハイモア洞』:イギリスの自然科学者Nathaniel Highmore (1613-1685)の名を冠するが、レオナルド・ダ・ビンチがすでに観察している。ハイモアは、この他にも精巣縦隔(Highmore's body)に名を残している。)
- 096_10【Posterior ethmoidal cells後篩骨洞;後篩骨蜂巣 Cellulae ethmoidales posteriores; Sinus ethmoidalis posterior】 Posterior group of ethmoidal cells that open below the superior nasal concha.
→(上鼻甲介の下に開く。 (Feneis))
- 096_11【Opening of sphenoidal sinus蝶形骨洞口 Apertura sinus sphenoidalis】 Anterior opening of the sphenoidal sinus into the spheno-ethmoidal recess.
→(左右の蝶形骨洞は蝶形骨体の前面の蝶形洞口で外部に開く。)
- 096_12【Sphenoidal sinus蝶形骨洞 Sinus sphenoidalis】 Paired sinus in the body of sphenoid that varies in size. It opens at the spheno-ethmoidal recess.
→(蝶形骨体の内部は殆ど蝶形骨洞でしめられ、空洞である。その大きさは不定で、ときには体の後に結合する後頭骨の底部にも進入している。蝶形骨洞は蝶形骨体部の頭蓋底部に位置する副鼻腔である。思春期以降に発達し、成人にて含気化が顕著になるが、含気の程度にバリエーションがあり、視神経管周囲・視神経が隣接しており、(内頚動脈が走行している)頚動脈隆起・視神経管の骨性隆起、その間に視神経管頚動脈裂optico-carotid recessとよばれる陥凹が蝶形骨内面より観察される。)
- 096_13【Sphenopalatine foramen蝶口蓋孔;蝶口蓋口 Foramen sphenopalatinum】 Opening in the superior part of the pterygopalatine fossa that connects it with the nasal cavity. The palatine bone contributes the greater portion and the sphenoid the lesser portion.
→(蝶口蓋孔は上鼻道の後端で、蝶形骨と口蓋骨との間にある孔で、鼻腔と翼口蓋窩とを連絡する。蝶口蓋孔は鼻腔の後半部に分布する血管・神経の通路として重要である。鼻腔の外側壁の後部にある口蓋骨の垂直板の上端に蝶口蓋孔がみられる。)
- 096_14【Medial plate of sphenoid; Medial plate of pterygoid process; Medial pterygoid plate内側板(蝶形骨翼状突起の) Lamina medialis (Processi pterygoideus ossis sphenoidalis)】
→(翼状突起の内側板は細長く殆ど矢状位に立ち、その下端は鈎形に外方に曲がって翼突鈎をつくる。その上にある浅い翼突鈎溝は口蓋帆張筋の腱が通るところである。内側板は後縁は上部で2分して浅い舟状窩(口蓋帆張筋が起こる)を囲む。舟状窩の上に接して上に述べた耳管溝が斜めに上外方に向かい大翼後縁までつづく。これは耳管軟骨部の着く所である。また、内側板の上端から内方に向かって、蝶形骨体の下面に沿う薄板上の鞘状突起が出る。この突起の下面の細い溝(口蓋骨鞘突溝)は後方から前方にすすむんい従って深さを増し、口蓋骨の蝶形骨突起と合して口蓋骨鞘突管をつくる。なお鞘状突起の内側縁と蝶形骨体の間にできる鋤骨鞘突溝は鋤骨翼が蝶形骨に着くと鋤骨鞘突管となる。この2小管はいずれも翼口蓋神経節の咽頭枝の通る所である。)
- 096_15【Perpendicular plate of palatine bone垂直板;鉛直板;上顎板;鉛直部(口蓋骨の) Lamina perpendicularis; Lamina maxillaris; Pars perpendicularis (Os palatinum)】 Vertical bony plate contributing to the walls of the nasal and maxillary sinuses.
→(垂直板の内側面は鼻腔外側壁の後部をつくり、前後に走る上下二つの稜があり、上のもの(篩骨稜)には中鼻甲介後端がつき、下のもの(鼻甲介稜)は発達よく、下鼻甲介をつける垂直板の上縁は深く切れ込むが(蝶口蓋切痕)、上方に蝶形骨体があるので孔(翼口蓋孔)となり、鼻腔と翼口蓋窩を連絡する。蝶口蓋切痕の前の突起(眼窩突起)はうしろの突起(蝶形骨突起)より大きく、上前方に向かって5面あり、内側の3面は他骨との接触面で、前は上顎骨、中のは篩骨(この部分は篩骨洞をおおうためへこむ)、うしろのは蝶形骨体につく。外側面に2面あり、ともに自由面で、上の面は眼窩底の一番後ろをつくり、下の面は翼口蓋窩に面する。蝶形骨突起は上内方に向かい、下面は内面で鼻腔外側壁をつくり、上(外)面は翼状突起につき、内方にのびて鋤骨翼に達し、これと静脈のとおる管(咽頭管)をかこむ。垂直板の外側面(上顎面)は上顎骨体内面をおおう部のうしろに、縦の前後の二つの粗面があり、前のは上顎骨内面に、うしろのは蝶形骨翼状突起につく。2面の間には蝶口蓋切痕から下る第3の面があって、上は翼口蓋窩の底をつくり、下方は垂直な溝(大口蓋溝)となり、上顎骨の同名溝と合して大口蓋管をつくり、大口蓋孔で口蓋にひらく。大口蓋神経、下行口蓋動脈が通る。この管から通常2本の小管(小口蓋管)が分かれて、錐体突起の基部をつらぬき、その下面下、内側に小孔(小口蓋孔)でひらく。)
- 096_16【Nasolacrimal duct; Lacrimal ducts鼻涙管 Ductus nasolacrimalis】 Duct arising directly from the lacrimal sac. Measuring 1.2-2.4 cm in length, it travels through the nasolacrimal canal and opens into the inferior nasal meatus. Its flattened lumen has a mucosal lining covered with stratified (dual-layered or multilayered) columnar epithelium that in places is ciliated.
→(鼻涙管は涙嚢より直接に始まり、1.2~2.4cmの長さで、鼻涙管中を通り、下鼻道前上部に開く通路で涙を鼻腔に運ぶ管。その扁平になった管腔はところどころに繊毛をもった2層から重層の円柱上皮ににより被われる。)