1003


- 1003_00【Orbit; Orbital cavity眼窩 Orbita; Cavitas orbitalis】 Orbital cavity that contains the eyeball and its appendages.
→(眼窩は眼球とその付属器とを容れる不規則な四角錐体状の大きなくぼみで、最深部はその後内方にある。錐体底にあたる部はほぼ四辺形の眼窩口で、軽度外下方に傾いており、顔面に開いている。その上縁を眼窩上縁、下縁を眼窩下縁という。眼窩上縁は前頭鱗からなり、その内側半分に2個の切痕または孔があり、その内側のものを前頭切痕(まれに前頭孔)、外側のものを眼窩上孔(まれに眼窩上切痕)とう。眼窩下縁は上顎骨体および頬骨からなり、その下方に眼窩下孔が開口している。眼窩は上・下・内側・外側の4壁を有し、7種類の骨による10部より形成されている。上壁は大部分が前頭骨眼窩面および蝶形骨小翼腹側面よりなり、外側には涙腺窩、小翼内には視神経管があり、ここに視神経および眼動脈を通す。下壁は大部分が上顎骨眼窩面によりなるが、外側の一部が頬骨眼窩面、後方の小部分が口蓋骨眼窩突起により形成されている。また後方から前方へ眼窩下溝その延長部である眼窩下管が走り、これが既述の眼窩下孔に開口する。内側壁は大部分が篩骨眼窩板により形成され、残りの部分のうちの前部は上顎骨前突起および涙骨、後部は蝶形骨体側面最前部によって形成されている。なお篩骨眼窩板上縁と前頭骨眼窩部との間には、前篩骨孔および後篩骨孔があり、前者は鼻腔に行く前篩骨神経および前篩骨動脈を通し、後者は篩骨蜂巣に行く後篩骨神経および後篩骨動脈を通す。また内側壁の前部にある涙嚢窩は、上顎骨の前涙嚢稜と涙骨の孔涙嚢稜との間にあり、稜骨の涙嚢溝が合して形成されたものである。外側壁は前半部は頬骨眼窩面、後半部は蝶形骨大翼眼窩面と上壁の蝶形骨小翼との間には頭蓋腔に通ずる上眼窩裂があり、動眼神経、滑車神経、眼神経、外転神経、上眼静脈などを通す。また外側壁後半部の蝶形骨大翼眼窩面と下壁の上顎骨眼窩面との間には翼口蓋窩および側頭下窩に通ずる下眼窩裂があり、眼窩下神経、頬骨神経、下眼静脈などを通す。)
- 1003_01【Trochlear nerve [IV]滑車神経[脳神経IV] Nervus trochlearis [IV]】 Nerve exiting on the dorsal side, caudal to the tectal plate. It supplies the superior oblique muscle.
→(滑車神経は脳神経中最少のもので、滑車神経核からでて上斜筋を支配する鈍体性運動性神経である。この神経は脳の背側から脳をでる唯一の脳神経で、下丘のすぐ後方で、上小脳脚と上髄帆小帯との間から出て、大脳脚をめぐり、(側頭骨)錐体尖の近くで硬膜を貫いて海綿静脈洞の上壁に達し、動眼神経の外側から上側に向かって前進し、上眼窩裂を通って眼窩内に入り、上直筋、上眼瞼挙筋起始部の上を前内側にすすんで、上斜筋に分布する。)
- 1003_02【Frontal nerve; *Frontal branch of ophthalmic nerve前頭神経;前頭枝(眼神経の) Nervus frontalis; Ramus frontalis (Nervus ophthalmicus)】 Nerve passing through the superior orbital fissure, lies on the levator palpebrae superioris muscle, and continues to the forehead.
→(眼窩上壁に沿って前進し、眼窩上神経と滑車上神経の2枝に分かれる。眼窩上神経はもまく外側枝および内側枝に分かれ、それぞれ眼窩上孔(または切痕)および前頭切痕(または孔)を通って前頭部に現われ、また滑車上神経は滑車の上を通って皮下に現われ、いずれもその付近の前頭部、上眼瞼、結膜および鼻背皮膚に分布する。なお滑車上神経の1枝は鼻毛様体神経から出る滑車下神経と交通する。)
- 1003_03【Lacrimal nerve; *Lacrimal branch of ophthalmic nerve涙腺神経 Nervus lacrimalis】 Nerve passing laterally through the superior orbital fissure to supply the lacrimal gland, conjunctiva, and lateral portion of the upper eyelid.
→(眼窩の上外縁を前進し涙腺枝を出した後に、上眼瞼外側部に分布する。頬骨神経との交通枝を出す。)
- 1003_04【Superior ophthalmic vein上眼静脈 Vena ophthalmica superior】 Vein arising medially above the eyeball with the nasofrontal vein and passing through the superior orbital fissure to the cavernous sinus.
→(上眼静脈は眼動脈に沿って走る。すなわち内眼角でおこり、この部で顔面静脈や眼角静脈と吻合し、眼窩上壁を内側に沿って走行する。おおよそ眼動脈の分布域からの静脈を集める。上眼窩裂を通って頭蓋腔に入り海綿静脈洞に注ぐ。)
- 1003_05【Lateral rectus muscle外側直筋;外側眼球直筋 Musculus rectus lateralis; Musculus rectus bulbi lateralis】 o: Common tendinous ring and lesser wing of sphenoid, i: 5.5 mm behind the corneal margin. Action: Abduction of the corneal pole. I: Abducent nerve.
→(外側直筋は眼球の鼻側および耳側を走り、その停止腱は角膜縁の後方約6mmの強膜に放射状に停止する。目の動き:視線を外側に向ける。)
- 1003_06【Check ligament of lateral rectus muscles外側直筋制動靱帯;外側直筋腱膜 Lacertus musculi recti lateralis bulbi】 Sheet of fascia extending to the zygomatic bone.
→(大翼近くにある外側直筋の起始腱。(Feneis))
- 1003_07【Lateral wall of orbit外側壁(眼窩の) Paries lateralis orbitae】
→(眼窩の外側壁は頬骨の眼窩面および蝶形骨大翼眼窩面からなり、その下部にある小さな頬骨眼窩孔は頬骨管(頬骨神経の通路)の入口である。外側壁の後半は上壁との間に上眼窩裂(動眼神経、滑車神経、眼神経、外転神経、上眼静脈などの通路)、下壁との間に下眼窩裂(眼窩神経、頬骨神経、下眼静脈などの通路)をはさみ、上眼窩裂は中頭蓋窩、下眼窩裂は側頭下窩に通ずる。霊長類以外の哺乳動物では、外側壁はなく、眼窩は直接に側頭窩に連なる。)
- 1003_08【Inferior orbital fissure下眼窩裂 Fissura orbitalis inferior】 Opening between the greater wing of the sphenoid and the orbital surface of the maxilla. It transmits the zygomatic nerve, infraorbital nerve, and accompanying vessels.
→(眼窩の下壁と外側壁との間に長く大きな下眼窩裂(蝶形骨大翼と上顎骨眼窩部の間の裂隙)がある。下眼窩裂は側頭下窩・翼口蓋窩に通じ、眼窩下動・静脈、眼窩下神経、頬骨神経などの通路となる。眼窩裂の前内側縁から前方に向かって深い溝が出る。この溝を眼窩下溝といい、さらに下壁の下を走って眼窩下縁の下方で眼窩下孔となって上顎骨の前面に開く。)
- 1003_09【Nasociliary nerve; *Nasociliary branch of ophthalmic nerve鼻毛様体神経 Nervus nasociliaris】 Furthest medial branch of the ophthalmic nerve. It initially lies beneath the superior rectus and then between the superior oblique and medial rectus muscles.
→(眼球、類の、鼻粘膜の一部および鼻背皮膚に分布する鈍知覚神経で、上眼窩裂を通って眼窩に入り視神経と上直筋との間を通って斜めに前内側にすすみ、前篩骨孔のあたりで滑車下神経と前篩骨神経とに分かれる。その経過中に出す枝はつぎのようである。)
- 1003_10【Roof of orbit上壁(眼窩の) Paries superior orbitae】
→(眼窩の入口は四辺形をなすので、それに応じて内壁も上・下・内側・外側の区別がされている。眼窩の上壁はほとんど前頭骨眼窩面で作られるが、後端の小部分は蝶形骨小翼である。上壁の面は上方に向かい内側部の高い弓状をえがき、外側はゆるやかに外側壁につづく。上壁前部の外側に涙腺窩がある。後端の小翼部には視神経管(視神経および眼動脈の通路)があり、頭蓋腔に通ずる。)
- 1003_11【Superior rectus muscle上直筋;上眼球直筋 Musculus rectus superior; Musculus retus bulbi superior】 o: Common tendinous ring, i: Along an oblique line passing anterior to the equator, 7-8 mm behind the corneal margin. Action: Elevation and intorsion of superior pole. I: Oculomotor nerve.
→(上直筋は、眼球の上部を斜め外側に進んで眼球の周囲に達し、そこで角膜縁の後方約7-8mmの胸膜に停止腱が放射上に胸膜組織と絡まるように停止する。目の動き:視線を外側かつ上方に向ける。)
- 1003_12【Levator palpebrae superioris muscle上眼瞼挙筋 Musculus levator palpebrae superioris】 o: Upper portion of optic canal and dural sheath of optic nerve. Its insertion tendon widens anteriorly and divides into a superior and an inferior layer. I: Oculomotor nerve.
→(上眼瞼挙筋は視神経管の縁の総腱輪の外側で視神経鞘から起こり、眼窩上壁のすぐ下で前頭神経の下を通り上眼瞼にいく。上眼瞼挙筋の腱は分離して上眼瞼挙筋浅板と上眼瞼挙筋深板に分かれる。前者は上眼瞼中を縁に向かって進み、後者は上瞼板筋の平滑筋細胞を伴って上眼瞼の瞼板に付く。下瞼板筋は下眼瞼板と下結膜円蓋の間の下眼瞼に存在する平滑筋層である。)
- 1003_13【Optic canal; *Optic foramen視神経管;視神経孔 Canalis opticus; Foramen opticum; Canalis fasciculi optici】 Canal for transmission of the optic nerves and the ophthalmic artery.
→(視神経孔Optic foramenともよばれる。眼窩の上壁の最も深部で蝶形骨の小翼の蝶形骨体よりの根部は視神経管が貫通し、この管の外側には前床突起が延びだしている。視神経および眼動脈が通る。)
- 1003_14【Superior oblique muscle上斜筋;上眼球斜筋 Musculus obliquus superior; Musculus obliquus bulbi superior】 o:Medial to the common tendinous ring on the body of sphenoid, i: After a hook-shaped course, obliquely behind the equator. Its tendon passes through the trochlea. Action: Abduction, intorsion, and depression of the eye. I: Trochlear nerve.
→(上斜筋は眼窩傍結合組織すなわち視神経鞘と(おもに)蝶形骨体の結合組織である総腱輪の内側から起こる。上斜筋は眼窩錐体の内側直近の上を前方に走行する。眼球の縁で上斜筋の丸みのある腱は結合組織性の吊り索(滑車)を通過し鋭角で後方に曲がる。さらに上斜筋の腱は上直筋の下でこれと交差し眼球上後側頭部の強膜に停止する。目の動き:視線を内側かつ下方に向ける。)
- 1003_15【Medial rectus muscle内側直筋;内側眼球直筋 Musculus rectus medialis; Musculus rectus bulbi medialis】 o: Common tendinous ring, i: About 5.5 mm from the corneal margin. Action: Adduction of the corneal pole. I: Oculomotor nerve.
→(内側直筋は眼球の鼻側および耳側を走り、その停止腱は角膜縁の後方約6mmの強膜に放射状に停止する。目の動き:視線を内側に向ける。)
- 1003_16【Ophthalmic artery眼動脈 Arteria ophthalmica】 Artery arising from the anteriorly convex arch of the internal carotid artery and passing under the optic nerve within the optic canal into the orbit.
→(眼動脈は内頚動脈の枝で、頭蓋腔から視神経管を通って眼窩に入る幹動脈である。眼動脈は中頭蓋窩において前床突起の内側で内頚動脈から起こり、視神経管の中を視神経の下を通るが眼窩に入ると、視神経の上を斜めに横切って前内方にすすむ。眼窩でいろいろの枝(①網膜中心動脈、②涙腺動脈、③筋枝、④毛様体動脈、⑤前篩骨動脈・後篩骨動脈、⑥眼窩上動脈・眼窩下動脈、⑧鼻背動脈)に分かれ、眼窩の内容(眼球・副眼器)および前頭部・鼻腔壁の一部に分布する。)
- 1003_17【Oculomotor nerve [III]動眼神経[脳神経III] Nervus oculomotorius [III]】 Nerve containing motor and parasympathetic fibers that exits the oculomotor sulcus and passes through the superior orbital fissure into the orbit.
→(動眼神経の主成分は動眼神経主核から出る体性運動性のもので外側直筋および上斜筋以外の眼筋を支配する。このほかに副交感性の動眼神経副核[Edinger-Westphal核]から出る線維が加わる。以上の2核から出る線維は多数の根をつくって大脳脚内側溝から出て1神経幹となり、滑車神経、外転神経および眼神経とともに、蝶形骨体の両側にある海綿静脈洞の上壁に沿ってすすみ、上眼窩裂を通って眼窩内に入り、上下の2枝に分かれる。上枝は上瞼挙筋および上直筋に、下枝は内側直筋、下直筋および下斜筋に分布する。また下枝からはきわめて短い動眼神経からの根が出て、毛様体神経節に入るが、これは動眼神経副核から出て、下枝を通って毛様体神経節に入る副交感線維にほかならない。)
- 1003_18【Abducent nerve[VI]; Abducens nerve [VI]外転神経[脳神経VI] Nervus abducens [VI]】 Cranial nerve emerging from the brain at the angle between the pons and medulla oblongata. It penetrates the dura mater at a point half as high as the clivus, continues laterally in the cavernous sinus, and then passes through the superior orbital fissure into the orbit where it supplies the lateral rectus.
→(外転神経は第六脳神経である。外側直筋に至る鈍体性運動性神経で、その起始核たる外転神経核は橋の中にあり、これから出る神経は橋の後縁で正中線に近く表面に現れ、内頚動脈の外側を通って上眼窩裂から眼窩に入り、外側直筋の内側からそのなかに入る。)
- 1003_19【Medial wall of orbit内側壁(眼窩の) Paries medialis orbitae】
→(眼窩の内側壁は篩骨眼窩板を主とし、前方には涙骨および上顎骨前頭突起、後方には蝶形骨体側面の最前部がこれに加わる。)
- 1003_20【Inferior rectus muscle下直筋;下眼球直筋 Musculus rectus inferior; Musculus rectus bulbi inferior】 o: Common tendinous ring, i: Along an oblique line about 6 mm from the corneal margin. Action: Depression of the eye and extorsion of the superior pole. I: Oculomotor nerve.
→(下直筋は眼球下部で上直筋と同じ方向性をもち、眼球下部の周囲に角膜縁の後方約6mmの胸膜に放射状に停止する。目の動き:視線を外側かつ下方に向ける。)
- 1003_21【Inferior ophthalmic vein下眼静脈 Vena ophthalmica inferior】 Vein from the lower eyelid and lacrimal gland that unites with the superior ophthalmic vein or passes directly to the cavernous sinus and pterygoid plexus.
→(眼窩底の近傍で細い静脈が集まってできる。大部分が眼窩底で下直筋の上面を後方に走行し、上眼静脈にそそぐ。下眼静脈は前方では顔面静脈と、下方では下眼窩裂を通過し翼突筋静脈叢と交通している。後方では上眼静脈に合流した後、海綿静脈洞にはいるか、るいは直接海綿静脈洞に注ぐ。下眼静脈は細いことが多く、眼窩静脈撮影でも抽出されにくい。)
- 1003_22【Foramen rotundum of sphenoid bone正円孔;正円管(蝶形骨の) Foramen rotundum (Ossis sphenoidalis)】 Foramen that opens anteriorly into the pterygopalatine fossa. It transmits the maxillary nerve.
→(蝶形骨大翼が蝶形骨体から出る根部を貫く3孔が前内方から後外方にならぶ。最前のものは正円孔で、前方に向かって翼口蓋窩に開く。中の最も大きい卵円孔と最後の棘孔はともに頭蓋底下面に開く。正円孔は上顎神経が通る。)
- 1003_23【Floor of orbit下壁(眼窩の) Paries inferior orbitae】
→(眼窩の下壁は主として上顎骨眼窩面からなり、前外側では頬骨眼窩面の一部、後端では口蓋骨眼窩突起がこれに加わる。下壁の中部には後方から前方へ走る眼窩下溝および眼窩下管(眼窩下神経および動静脈の通路)があり、眼窩下孔につづく。)