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- 227_00【Pelvis骨盤 Pelvis】
→(骨盤を形づくる骨は左右の寛骨とそれらの間にある仙骨ならびに尾骨である。寛骨は腸骨、坐骨および恥骨の3個の骨が合して1つの骨となったもので、胎生期から少年期までは軟骨によって結合されているが、16~17才頃に骨化して完全に一つの寛骨となる(骨結合)。これら3つの骨がY字型に合するところは股関節の関節窩に相当し、寛骨臼といわれ、臼のような形に凹んでいる。仙骨は5個の仙椎が癒合して1つの骨なったものであり、また尾骨も3~6個の小さい尾椎がくっついて1つの骨になったものである。さて、左右の寛骨は前の方では線維軟骨によって結合(線維軟骨結合)されており、恥骨結合とよばれる。後ろの方では寛骨の茸状面と仙骨の同じ名の面とが仙骨関節によって結合される。仙腸関節は関節という名がついているけれども、向かい合う関節面の形や大きさがほぼ同じで、そのうえ関節包は狭く、且つ4つの短いが、強い仙腸靱帯により結びつけれているので、ほとんど動かない(半関節)。骨盤は大骨盤と小骨盤とに区分され、その界には分界線がある。分界線は岬角(第5腰椎と仙骨の結合するところで、前下にとびだしている)、腸骨の弓状線、恥骨櫛および恥骨結合の上縁を結ぶ線の事で、その囲む面は平面に近い。大骨盤は広く、浅い鉢のような容器で、腹腔の下部に位し、腹部内臓を容れる。外側には腸骨翼があり、後ろには仙骨の上端があるが、そのほかに第4、5腰椎と腸骨稜との間に張る腸腰靱帯もまた後壁をなす。しかし前は開放されている。また上前腸骨棘と恥骨結節との間には鼡径靱帯があり、これと腸骨前縁との間を腸腰筋や血管が通る。小骨盤は短い円筒状で、骨盤腔の中に骨盤内臓を容れる。ふつう骨盤といえば小骨盤(狭義の骨盤)だけをさすが、大骨盤を含めた広義の骨盤は骨格の中でも性差の最もはっきりした部分で、産科学で重要視される。小骨盤の前壁は恥骨、両側壁は坐骨と腸骨の一部でつくられる。前外側壁には閉鎖孔があり、閉鎖孔のところだけを残して閉鎖膜が張っており、筋のつき場所となる。後壁は仙骨と尾骨でつくられるが、大部分は骨のないところで、ほぼ縦に走る仙結節靱帯と、その前でこれと交叉するように横に張る仙棘靱帯の両者がここを補っている。大と小の坐骨切痕は仙結節靱帯によりそれぞれ大と小の坐骨孔にわけられる。そして大坐骨孔は梨状筋(仙骨前面から起こり、大転子につく)が骨盤の外へ出る通路をなし、またこの孔の中で梨状筋より上の部分を梨状筋上孔といい、上臀神経と同名の血管が通る。下の部分を梨状筋下孔といい、坐骨神経、下臀神経と同名の血管、陰部神経と同名の血管が通る。また小坐骨孔は内閉鎖筋(骨盤の内面)で、閉鎖膜とそのまわりから起こり、大転子につく)の腱が骨盤の外へ出る通路をなす。小骨盤の入口は分界線によって囲まれ、小骨盤の出口は坐骨結節、恥骨下縁および尾骨の下端を結ぶ凸凹の線によって境される。なお骨盤の入口と出口の前後径の各中点を通る前に向かって凹な曲線を骨盤軸といい、分娩のとき胎児の頭が通る道(産道)の軸をなす。恥骨結合の下部は恥骨価格といわれ、男では角度が急であり、女では角度が鈍く弓状をなすので、恥骨弓と呼ばれる。骨盤の出口をふさぐ軟部組織として前上に尿生殖角隔膜と深会陰横筋がある。これらを男では尿道、女では尿道と腟が貫く。また後ろ下には肛門挙筋があり、内閉鎖筋の筋膜の一部(腱弓といわれ、特に丈夫になっている部分)から起こり、漏斗上に肛門に付く。骨盤は全身の骨格のなかで性差の最もはっきりした部分で、特に目立つのは小骨盤腔(狭義の骨盤腔)が女では男よりもひろく、たけが低いことであるこれは分娩ということを考えれば当然である。Pelvisはギリシャ語のpelisに由来するラテン語で、ローマ時代には縁がややめくれた広口の深い容器を意味した。骨盤のことをpelvisというようになったのは16世紀の末である。)
- 227_01【Diagonal conjugate対角径;対角結合線;対角真結合線 Conjugata diagonalis】 Distance between the inferior border of the pubic symphysis and the promontory of the sacrum.
→(岬角から恥骨結合下縁までの距離。機器を用いた骨盤内計測によっても得られるが、ふつうは内診で計測し、12.7~13.0cmとされる。(イラスト解剖学))
- 227_02【Anatomical conjugate解剖学的結合線;解剖学的真結合線 Conjugata anatomica】 Distance between the anterosuperior border of the pubic symphysis and the promontory of the sacrum.
→(解剖学的結合線は骨盤上口付近の縦径で、岬角中点と恥骨結合上縁中点間に引く径は真結合線より少し長く、平均11.8cm。これを真結合線(産科学的結合線)に対して解剖学的真結合線ともいう。)
- 227_03【True conjugate真結合線;産科学的結合線 Conjugata vera】 Distance between the posterosuperior border of the pubic symphysis and the promontory of the sacrum.
→(恥骨結合の後面(恥骨後隆起)と岬角を結んぶ最短距離で、骨盤腔の正中径のなかで最も狭い場所なので、産科学でとくに重要であることから産科学的結合線とも呼ばれる。胎児の頭部が産道を通れるか否かの判断の基準とされる。日本女性の真結合線の平均値は約11cmである。これが9cm以下になっている場合を狭骨盤といい、その程度によって分娩が困難または不可能(帝王切開が必要)になる。しかし真結合線は生体では計測できないので、産科の臨床では対角結合線(岬角と恥骨結合下縁を結ぶ正中径)を測り、これから2cmを減じて真結合線を算出する。更に簡単な便法としては、外結合線(恥骨結合上縁と第5腰椎棘突起先端を結ぶ正中径)8cmを引く方法、棘間径(左右の上前腸骨棘間の距離)から11cmを引く方法などもある。人類の大きな特徴は直立歩行と大脳の著しい発達である。直立二足歩行によって上肢が体重の負荷から開放されて種々の手仕事できるようにはなったが、全身の体重は下肢にかかることになり、いきおい骨盤も他動物よりも丈夫になり産道も狭くなった。ところが大脳の発達は必然的に胎児の頭を大きくし、狭い産道を大きな頭が無理にすり抜けないと出産できない羽目になった。これは人類が抱え込んだ大きな矛盾の一つである。他の哺乳動物では出産は決して難治ではない。)
- 227_04【Axis of pelvis骨盤軸 Axis pelvis】 Imaginary line passing through the midpoints of all diameters from the pubic symphysis to the anterior surface of the sacrum. The fetal head follows its course during birth.
→(恥骨結節と仙骨前面の間のすべての正中結合線の中点をむすぶ線。骨盤軸は産道の走行に一致し、仙骨と尾骨の弯曲にほぼ平行する。)
- 227_05【Pelvic inclination骨盤傾斜 Inclinatio pelvis】 The angle formed by the plane of the pelvic inlet and the horizontal plane (around 65°).
→(骨盤傾斜は解剖学的真結合線が水平面となす角度(約60°)すなわち腰椎点の高さと結合線の高さの差を一辺とし、外結合線を斜辺とする直角三角形を描いたとき、第三辺と斜辺がなす角度。)
- 227_06【Pelvic largeness; Wide portion of pelvis骨盤広部 Pars latus pelvis】
→(骨盤上口と下口との間が骨盤腔である。骨盤腔は上・下2部に分かれ、上部は広く骨盤広部、下部は狭く骨盤峡部ともいわれる。上口では横径が最長であり、下口では前後径が長い。(解剖学講義))
- 227_07【Narrow portion of pelvis骨盤峡部 Pars isthmus pelvis】
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- 227_08【Straight conjugate直径;直結合線(骨盤下口の) Conjugata recta】 Distance between the tip of the coccyx and the inferior border of the pubic symphysis.
→(骨盤下口にあって、尾骨尖と恥骨結合下縁との距離で、9.5~10cm。この結合線はたいていは尾骨の屈曲性によって変化しうるから、骨盤峡部における正中結合線が縦経として大切な役割を演ずることになる。)