278_00【Hip bone; Coxal bone; Pelvic bone寛骨 Os coxae】 Bony structure comprising the ilium, ischium, and pubis. →(骨盤の前および側壁をなす厚い板状の大きな扁平骨で、腸骨、坐骨、恥骨からなる。中央部がくびれ、上方と下方に扇状に拡がった形をなし、全体の形は8の字に似ている。内面の後上方から前下方に走る隆起が腸骨弓状線で、この弓状線を境にして寛骨の上半部の前方が外側へ開くようにねじれた形をしている。中央部の外側面には杯よりやや大きい半球状の深い陥凹が寛骨臼である。寛骨臼の関節面は半月の形に似ているので月状面ともよばれ大腿骨頭を入れる関節窩で前下外側へ向く。寛骨臼縁は1平面上にはなく、下方で欠如する部分が寛骨臼切痕である。寛骨臼底部の円形の粗面が寛骨臼窩で、寛骨臼窩の外側の、丈夫が広い馬蹄形の平滑な関節面が月状面である。寛骨臼の前下方にある大きな卵形または三角形の空隙が閉鎖孔である。閉鎖孔の上縁を上方(内面)から下方(外面)へ走る溝が閉鎖溝である。恥骨の前閉鎖結節および坐骨の後閉鎖結節を結んだ線より下方の閉鎖孔は、生体では線維性の閉鎖膜によって閉鎖される。寛骨臼の上方で扇に拡がった部分が腸骨翼で、腸骨翼の上縁が腸骨稜である。寛骨は腸骨、坐骨、恥骨の三つの骨で構成される。若年者では軟骨結合により結合しているが、成人では骨結合により癒合している。寛骨臼の上部の板状に拡がった部分が腸骨、寛骨臼の下部(2/5強)および寛骨臼より下方と後方部が坐骨、寛骨臼の前部(1/5)および寛骨臼より前下方部が恥骨である。ラテン語のCoxa(臀)に由来する。やや古い英米の解剖学書では寛骨をinnominate bone(無名骨)と呼んでいる。この骨はA.C. CelsusがA.D.30年ころにos coxaeと命名しているにもかかわらず、Galenos(131-201 A.D.)は無責任にも「名なしの骨」と記載した。Vesalius (1514-1564)もこの呼び名を流用してos innominatumとしたのが、現在でも英語の中に生きているのである。)
278_01【Ischium坐骨 Os ischii; Ischium】 Bone involved in formation of the acetabulum. It surrounds the obturator foramen from inferoposterior. →(寛骨の後下方部にあり、閉鎖溝の後方と下方部を囲む。寛骨臼の後下部とこの下方の肥厚した三角柱状部が坐骨体で、坐骨体から前内側上方へ伸びる細い扁平柱状部が坐骨枝である。坐骨体の前縁は稜線状で、閉鎖孔の上縁後部および後縁を形成する。寛骨臼切痕の下方、恥骨との癒合部の近くの前縁でしばしばみられる棘上の突起が後閉鎖結節である。後面は後上方やや背側に面し、上方で広く、腸骨臀筋面下部につらなる。腸骨との癒合部は寛骨臼の後部にあたり、やや隆起している。後面下部から坐骨体下端にある隆起しいた比較的大きな粗面部分が坐骨結節である。坐骨結節は上方で幅が広く下方で狭い。後上方から前下方へ比較的水平に走る隆線により、上下の2部分に分けられる。三角形の下部は中央を縦に走る隆線で内外の2部分に分けられる。坐骨のとき身体を支持するのは坐骨結節下部の内側部である。寛骨臼後部と坐骨結節の間に、後上内側から前下外側へ走る浅い溝がある。後面の内側縁が後縁へつづき、後縁の上部は腸骨の後縁とともに大坐骨切痕を形成する。大坐骨切痕の下方で、内後方へ突出する扁平三角錐部が坐骨棘であり、坐骨棘と坐骨結節の間にある丸みをおびた浅い陥凹部が小坐骨切痕である。坐骨結節の外側縁と坐骨体前縁との間にある大腿面および坐骨体前縁と坐骨体後縁の間にある骨盤面は平滑である。坐骨枝は前内側上方へ伸び恥骨下枝と癒合する。癒合部はやや隆起し粗面を呈していることが多い。前面はやや粗で後面は平滑である。上縁は鋭利縁をなし閉鎖溝の下縁を形成する。下縁は粗で恥骨下枝内縁とともに恥骨弓・恥骨下角の形成に関与する。ギリシャ語のIschion(股関節)に由来し、臀部全体や坐るときにあたる骨を意味していた。)
278_02【Ilium腸骨 Os ilium; Ilium】 →(寛骨のうち幅広く外方に張り出している部分。出生児には別個の骨であるが、後に坐骨および恥骨と癒合する。下端のやや肉厚な寛骨臼付近が腸骨体で、扇状に拡がる上方部が腸骨翼である。腸骨翼の上縁が腸骨稜で、腸骨翼の内外2面との境の稜線がそれぞれ内唇・外唇、これらの間の粗な部分が中間線である。下端のやや肉厚な寛骨臼付近が腸骨体で、扇状に拡がる上方部が腸骨翼である。腸骨翼の上縁が腸骨稜で、腸骨翼の内外2面との境の稜線がそれぞれ内唇・外唇、これらの間の粗な部分が中間線である。腸骨稜は上方に張り出し、中央やや後方寄りのところが最も高位にあって第3腰椎棘突起と第4腰椎棘突起の間に相当する。また前方で内面に凹、後方で外面に凹のS字状を呈す。幅は中央部が狭く前方と後方で広い。腸骨稜が前縁に移行することで、前下方に突出する丸みを帯びた部分が上前腸骨棘である。この下方の浅い陥凹を隔てて前下方へ突出する部分が下前腸骨棘である。腸骨稜と後縁の境で後方へ突出する部分が下腸骨棘である。腸骨稜と後縁の境で後方へ突出する部分が上後腸骨棘で、この直下の浅い陥凹を隔てて幅広く突出する部分が下後腸骨棘である。下後腸骨棘直下で、坐骨後縁とともに深い切れ込みを呈する部分が大坐骨切痕である。腸骨の内面で、後上方(腸骨稜後方1/3位)から前下方恥骨上肢へ向かう隆線が弓状線で、前上方部の平滑で浅い陥凹を示す腸骨窩と、後下方部の粗な部分である仙骨盤面との境をなす。仙骨盤面では、上方の粗面が腸骨粗面、下方の耳介状を呈し、仙骨との関節面をなす部分が耳状面である。大坐骨切痕に面する平滑な部分は小骨盤側壁をなす。腸骨の外面で寛骨臼縁より上部が粗面状の臀筋面あり、前方で軽く外方へ張り出し後方で陥凹している。前上方から後下方へ向かう3本の隆線が臀筋線で、前殿筋線は最も長く、腸骨稜の前方約1/4から後下方大坐骨切痕上縁の中央部へ向かう。後臀筋線は最も短く、上後腸骨棘の少し前方から下後腸骨棘の少し前方にいたる。下臀筋線は下前腸骨棘の少し上方から後下方へ向かい、大坐骨切痕の尖端近くに達する。)
278_04【Pubis; Pubic bone恥骨 Os pubis; Pubis】 Bone involved in formation of the acetabulum and the anterior and inferior borders of the obturator foramen. →(恥骨は寛骨の前下部を占める。恥骨体、恥骨上枝および恥骨下枝の3部に分けられる。寛骨臼の前方約5分の1と寛骨の前下方部を形成し、対側の恥骨と恥骨結合面で軟骨(線維軟骨)結合をする。長楕円形の恥骨結合面を含む前上部が恥骨体である。丸みをおびた恥骨体上縁の外側端にある隆起が恥骨結節で、恥骨結節から恥骨結合面へ向かう、恥骨体前面との移行部の粗な隆線が恥骨稜である。恥骨体の上外側から後上外側へ伸び、寛骨臼に達する三角柱状の部分が恥骨上枝である。恥骨上枝上面(櫛状面)は三角形を呈す。恥骨結節から寛骨臼部へいたる、上面外側前方の丸みをおびた隆線が閉鎖稜であり、恥骨結節から後上外側の橈骨との癒合部を示す粗な隆起へいたる、上面内側後方の稜線が恥骨櫛である。腸骨との境界部は肥厚しているが、寛骨臼前下縁にいたる、とくに肥厚した部分が腸恥隆起である。恥骨櫛・恥骨稜は分界線の恥骨部をなす。内側面(骨盤面)は恥骨櫛と、鋭利縁をなす下縁との間の平滑な面で、外側部で幅が狭くなる。下面(閉鎖面)には内側面下後方から下面前下方へ向かう閉鎖溝がある。閉鎖溝は前方が閉鎖稜で、後方は下縁で境される。下縁中央部で、やや後方へ突出した小隆起が前閉鎖結節である。生体では前閉鎖結節と後閉鎖結節との間に、閉鎖膜の上縁をなす線維束が張って閉鎖溝の底となり閉鎖管を形成する。腸骨体の下外側から後下外側方へ伸びる扁平な部分が恥骨下枝で、坐骨枝と癒合し閉鎖溝の下縁をなす。癒合部は粗な隆起部として残ることがある。恥骨下枝の上縁は鋭いが、下縁は被厚し粗面をなす。下縁の内側部が粗に隆起して陰茎稜を示すことがある。ラテン語のPubes(陰部)に由来する。Pubesはpuberty(思春期)の語でわかるように、元来は成人の意味で、これから成人のシンボルである陰毛(pubes)のこととなった。このpubesはやがて陰部を指すようになり、その所有格によって「恥部の骨」os pubisの名が生まれた。)