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- 302_00【Third cervical vertebra; C3 vertebra; [CIII]第3頚椎 Vertebrae cervicalis III; [CIII]】
→(第三頚椎では上関節突起の両関節面が互いに後方に向かって開く角度(開口角Öffnungswinkel, Putz)は142℃の状態にあるが、第4~7頚椎でのこの角度は約180°である。(分冊))
- 302_01【Atlas; First cervical vertebra; [CI]環椎[C1];第1頚椎 Atlas [CI]】 First cervical vertebra. It does not have a body.
→(第一頚椎(環椎)は、ほかの頚椎と比べて特殊な形をしていしている。環椎(第一頚椎)には椎体と棘突起は存在せず、短い前弓と長い後弓および外側塊の三つの部分が大きな椎孔を囲んでいる。前弓は椎体の前縁部に相当し、前面中央には前結節が、後面の中央には歯突起窩がある。後弓は椎弓に相当する部分で、後面の中央には棘突起に相当する部分で、後面の中央には棘突起に相当する後結節がある。外側塊は前弓と後弓を結合する分で著しく肥厚している。外側塊からは外側へ向かってかなり大きい横突起が出ており、横突起の基部には比較的内頚の大きな横突孔がある。外側塊の上面には長楕円形の上関節窩が、下面には平らな下関節窩があって、それぞれ後頭骨の後頭顆、軸椎の歯突起がおさめられてりう。後半の部分は本来の椎孔に相当し、三角形状である。頭上に天空を支えるギリシャの神Atlas(Titan)にちなんで命名された。)
- 302_02【Axis; Second cervical vertebra; C2 vertebra; [CII]軸椎[C2];第2頚椎 Axis; Epistropheus [CII]】 Second cervical vertebra.
→(軸椎(第二頚椎)上半部は特異的な形をしており、犬歯によくにた歯突起が上方に突出している。これは本来環椎の軸体であり、発生の途中、椎体の周辺部から分離し、軸椎体と結合したものである。歯突起の前後面にはそれぞれ前関節面、後関節面があり、前者は軸椎の歯突起窩に、後者は環椎横靱帯と対向する。頭蓋の回旋運動は歯突起を軸とする環椎の回旋運動にによって行われる。椎体上面の上関節面は対向する環椎の下関節面の形によく似て円形平坦である。また、椎弓は強大であり、下椎切痕も著明であるが、上椎切痕は明らかでない。横突起はやや小さく、尖端では後結節だけが認められる。)
- 302_03【Occipital bone後頭骨 Os occipitale】 Bone located between the sphenoidal, temporal, and parietal bones.
→(脳頭蓋の後下部にある単一の骨で、頭蓋の脊柱上端に連なる部をつくる。前端に近く大きな大後頭孔があって、それより前方の底部、両側の外側部、後方の後頭鱗の3部に分けられる。前方は蝶形骨体、外方は側頭骨の岩様部、上方は頭頂骨と接するその形はほぼ舟状で、内面はくぼみ、外面はふくれる。後頭骨は胎生期後半には4つの部分に分離している。これらの4部が癒合して単一の骨になるのは生後3~4年たってからであるが、各部の名前だけは成人の骨にも残されている。)
- 302_04【Tectorial membrane of atlanto-axial joint蓋膜(環軸関節の) Membrana tectoria】 Double-layered continuation of the posterior longitudinal ligament. It extends from the axis to the anterior margin of the foramen magnum where it passes into the periosteal layer of the cranial dura mater.
→(蓋膜は後縦靱帯の上部がつくる幅広い膜で、環椎十字靱帯を後から被い、大後頭孔前縁を越えて斜台に至り、後縦靱帯を後方から被う脳硬膜と共に骨に着く。Fickなど記述では、蓋膜は後縦靱帯上部の特に深層を指し、その線維は表層の後縦靱帯に比較して短く、下端は第2~3頚椎体に終わるとしている。蓋膜とは硬膜上腔の蓋をする膜という意味である。Tectoriaはtectum(蓋、屋根)の形容詞。)
- 302_05【Cruciate ligament of atlas環椎十字靱帯 Ligamentum cruciforme atlantis】 Ligament that comprises the following two ligaments and extends from the dens to the tectorial membrane.
→(環椎十字靱帯は軸椎歯突起を後面から被う十字形の靱帯で、環椎横靱帯、縦束の2部よりなる。)
- 302_06【Apical ligament of dens歯尖靱帯;歯突起尖靱帯 Ligamentum apicis dentis】 Unpaired band extending from the apex of the dens to the anterior margin of the foramen magnum.
→(歯尖靱帯は歯突起の尖端と大後頭孔前縁を結ぶ細い靱帯で、脊索があった位置にあたる。)
- 302_07【Anterior arch of atlas前弓(環椎の);環椎前弓 Arcus anterior atlantis】
→(環椎は椎体を持たないという転で根本的にほかの椎骨とは異なっている。環椎はしたがって小さい方の前弓と大きい方の後弓からなっている。)
- 302_08【Dens axis; *Dens of axis歯突起;軸椎歯突起 Dens axis; Dens epistrophei】
→(軸椎の椎体はその頭側面に歯突起という歯の形をした突起をもっており、この突起は歯突起尖に終わる。この突起を軸として軸椎が回転する。)
- 302_09【Articular cavity関節腔 Cavitas articularis】
→(連結部全体は骨膜の続きである関節包(関節嚢)に包まれるため、骨間の間隙は閉鎖された関節腔をつくる。《関節腔は裂隙状の毛細腔であって、その中には滑液が含まれる。この滑液は粘素(ムチン)を含み糸を引く無色透明な液であって、卵白に似た性状をもっている。滑液は滑液作用の他軟骨を栄養する働きをもっている。その粘度はヒアルロン酸の含量によるものであって、温度依存性がある。すなわち温度が低いほど、粘液は粘稠となる。滑液はまた、血漿の透析濾過液に滑膜細胞の分泌物が加わったものとも見なすことができるから、種々の疾患の際、その組成すなわち化学的および物理的性状を診断の補助手段として利用することができる。《》解剖学アトラスより引用》)
- 302_10【Transverse ligament of atlas環椎横靱帯 Ligamentum transversum atlantis】 Transverse band that extends from one side of the atlas to the other, passing behind the dens and holding it in position.
→(環椎横靱帯は環椎の左右の外側塊の間に張り、その前面中央には線維軟骨を帯びて歯突起と関節するとともに、歯突起の後方への移動を防ぐ。)
- 302_11【Anterior longitudinal ligament前縦靱帯;前総縦靱帯 Ligamentum longitudinale anterius; Ligamentum longitudinale commune ventrale】 Ligament that mainly connects the anterior surfaces of the vertebral bodies.
→(脊柱前面を上下に縦走する帯状の靱帯で、上端は後頭骨底部からおこり、上部では狭く厚いが、環椎前結節を通り、しだいに幅を広げて薄くなり下行し、仙骨前面に至る。中央を走る長い線維と、各椎の前面を結ぶ短い弓状に走る線維とがある。深層の線維は椎間円板の前縁とも結合する。椎間円板ならびに椎体上・下縁との結合は強く、椎体中央部との結びつきは弱い。)
- 302_12【Intervertebral disc椎間円板;椎間線維軟骨 Discus intervertebralis; Fibrocartilagines intervertebrales】 An elastic disc that compresses and rebounds under pressure, consisting of layered rings of fibrous tissue and fibrocartilage around a gelatinous nucleus. It is attached to two adjacent vertebral bodies by their hyaline cartilage plates and by the posterior longitudinal ligament.
→(椎間円板は隣接する2個の椎体間にあって厚い円盤状をなすが、脊柱の部位によりその厚さは異なる。また個々の円板ではその中央部がもっとも厚く、辺縁がやや薄い。円板の厚さが絶対的に、また隣接する椎骨の厚さと相対して厚いほど、椎骨の可動性が大きい。胸椎の中位の椎間円板はそのいずれの意味でも最も薄い。また、頚椎と腰椎では椎間円板の前縁が後縁よりやや厚い。椎間円板の上下面は椎体の面を被う硝子軟骨層と固く結合し、組織的には明瞭な境界がなくて移行する。中心部の髄核とそれを取り囲む外側の結合線維部分(線維輪)からなる。(1)線維輪:外周を輪状に走る部分。(2)髄核:中央にあって弾性に富む。胎生期の脊索の遺物といわれる。胎児の椎間円板中には、この部でとくに太くなる脊索が明瞭である。成人でも髄核組織の一部が脊索の遺物にあたる。椎間円板は単に椎体を結合するのみではなく、弾性体として脊柱の運動および体重をささえることに重要な役割を果たしている。脊柱の屈伸に際して椎間円板の屈側は低く圧迫され、伸側は引き延ばされるが、線維輪のラセン状の線維配列はこのような外力に対する抵抗と、変形のあとの復元とに大切な意義を有する。また、髄核はかたい線維輪のなかにあって、あたかも水枕のように作用し、圧をすべての方向に分散させるとともに屈伸に向かって若干おしつけられる。)
- 302_13【Vertebral body; Body of vertebra椎体;椎骨体 Corpus vertebrae】
→(椎体は椎骨の前部を占める短い円柱で、上下端は平らな面をつくる。上面と下面はやや広いため、椎体を側面から見ると、中央でややくびれている。後面は椎孔の前壁にあたり、縦に走る浅く広い溝となっている。椎体の上下面は椎間円板と固着する硝子軟骨で被われる。この軟骨の周縁部は骨化し、後方部分が欠けた不完全な輪の形の骨端板を作る。加令によりこの骨端板の骨化はさらに進行し、椎体の上下面の縁が側面から水平に突出するようになる。)
- 302_14【Posterior longitudinal ligament後縦靱帯;後総縦靱帯 Ligamentum longitudinale posterius; Ligarnentum longitudinale commune dorsale】 Ligament that mainly connects the intervertebral discs, traveling along the posterior surfaces of the vertebral bodies within the anterior wall of the vertebral canal. It is continuous with the tectorial membrane from the third cervical vertebra upward.
→(後縦靱帯は椎体と椎間円板の後面に沿い、脊柱管の前壁を縦走する。上端は幅が広く、大後頭孔前縁より約1cm上方の斜台から起こり(この部の深層の部は蓋膜と呼ばれる)、下方ほど狭くなって仙骨管の前壁に達する。椎間円板およびそれに接する椎体の縁と固く結合し、椎体後面の中部とは結合がゆるい。とくにひゅそうの線維は4~5個の椎体を越えて椎間円板から椎間円板へと結合し、この靱帯が椎間円板に着くところでは特に幅が広くなっている。前・後縦靱帯は椎体と椎間円板からなる柱を前後から支えるとともに、椎間円板の弾性によって緊張させられている。)
- 302_15【Hypoglossal canal舌下神経管 Canalis nervi hypoglossi; Canalis hypoglossi】 Passageway that begins superolateral to the foramen magnum and ends anterolateral to the occipital condyle. It transmits CN XII and a venous plexus.
→(後頭顆の上方には後内方から前外方に舌下神経の通路である舌下神経管が走る。)
- 302_16【Posterior atlanto-occipital membrane後環椎後頭膜 Membrana atlantooccipitalis posterior; Membrana atlantooccipitalis dorsalis】 Membrane in the posterior wall of the vertebral canal that extends from the posterior arch of the atlas to the occipital bone.
→(後環椎後頭膜は黄色靱帯のつづきとみなされるもので、環椎後弓と大後頭孔後縁の間に張り、弾性線維に富む。その外側端の環椎後頭関節包に近い所で、椎骨動脈および第1頚神経を通す孔を環椎後弓との間につくる。同じく黄色靱帯のつづきで環椎後頭弓との間にある部は、後環軸膜(JNA)の名もある。)
- 302_17【Vertebral artery; VA椎骨動脈 Arteria vertebralis】 Artery arising posterior to the anterior scalene muscle and usually passing from the sixth cervical vertebra through the foramina transversaria, then over the arch of the atlas behind its lateral mass, passing anteriorly through the posterior atlantooccipital membrane and foramen magnum into the cranial cavity.
→(椎骨動脈(VA)は鎖骨下動脈から最初に出る枝であり、前斜角筋の後面に沿って上行し、6番目の頚椎(ときには5番目の頚椎)の横突孔を通って上行するが、そのさい、椎間孔から出てくる脊髄神経の腹側方に位置する。やがて、椎骨動脈は外側方に曲がり、孔環椎後頭膜を貫通し、大後頭孔を通り、硬膜を貫いて後頭蓋窩にはいる。頭蓋窩にはいる少し前に椎骨動脈が示す弯曲は「予備」のループであって、頭部の運動時に動脈に張力が加わるのをふせいでいる。橋の下縁のレベルで、両側の椎骨動脈が1本になって脳底動脈が形成される。形態学的にみて椎骨動脈と内頚動脈はよく似ている。すなわち、外形動脈を分枝する以外には重要な枝を出さずに両者とも垂直に上行する。また、両者ともに特徴的な曲がりくねったコース(「頚動脈サイフォン」、「椎骨動脈サイフォン」)をとって脳底に達する。両者の主な差異は、左右の椎骨動脈が合して1本の脳底動脈になるのに対して、内頚動脈の方は左右のものがそれぞれ独立に走る点である。しかし、流体力学的に見ると、左右の椎骨動脈から脳底動脈に流入する血液は混合することはなく、左側椎骨動脈からの血液は脳幹の左側を流れ、右側椎骨動脈からの血液は脳幹の右側を流れる。)
- 302_18【Posterior arch of atlas後弓(環椎の);環椎後弓 Arcus posterior atlantis】
→(環椎の長い後弓は椎弓に相当する部分。)
- 302_19【First cervical nerves; C1 spinal nerve; [C1]第1頚神経 Nervus cervicalis I; [C1]】
→()
- 302_20【Intervertebral foramen椎間孔 Foramen intervertebrale】 Opening between two adjacent vertebrae for the passage of a spinal nerve and small vessels. It is bounded by two adjacent vertebral notches (above and below), the vertebral bodies, and the intervertebral disc.
→(椎骨をその順位にしたがって連結すると、上の椎骨の下椎切痕と舌の椎骨の上椎切痕は互いに向き合って椎間孔を作る。椎間孔は脊柱管の中にある脊髄から出る脊髄神経の通路となる。椎弓根と椎弓板の移行部が合する椎弓の後端から1本の棘突起が出る。)
- 302_21【Ligamenta flava; Ligament flavum黄色靱帯;黄靱帯;椎弓間靱帯;弓間靱帯 Ligamenta flava; Ligamenta interarcualia】 Yellow ligaments. A mesh of elastic fibers distorted to form nearly parallel bands running between the vertebral arches.
→(黄色靱帯は椎弓板下縁前面から隣接下位椎骨の椎弓板上縁に張る椎間靱帯であり、軸椎より上と仙椎間にはない。多量の弾性線維を含み黄色を呈し、脊柱の屈伸の際に椎弓間の距離が変わっても常に緊張した状態を保つ。)
- 302_22【Vertebral arch椎弓 Arcus vertebrae】 It forms the posterior and lateral boundaries of the vertebral foramen.
→(椎弓は椎体から後方に向かって出る鱗状の部で、椎体につく椎弓根と、それより後の板を曲げたような椎弓板に分ける。)