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- 686_00【Stomach胃 Gaster; Ventriculus】 Organ extending from the end of the esophagus to the pylorus.
→(胃は食道と十二指腸の間にある不規則な洋梨状の消化管。胃液を分泌し食物を糜汁とする。容量は日本人の胃の平均は♂1407.5ml、♀1270.5ml。形状は死体ではウシの角状の嚢であることが多いが、生体では内容の充満度、体位、機能状態によって著しく変化する。位置は上端は左第5肋間、下端は内容の空虚なとき臍より三横指上方。胃の大部分は左下肋部と上胃部に位置する。部域は①噴門十二指腸が胃に連続する部。その内腔は狭く噴門口をなす。その①は、正中線よりわずか左側で、第7肋軟骨が胸骨に付着する高さにある。前腹壁より約10cm深部で、切歯から食道を経て40cmで達する。②幽門(幽門口)胃と十二指腸の境界。壁内に輪状に走行する幽門括約筋が発達しているため壁は輪状の高まりとなって幽門孔をとり囲む。その位置は、第1腰椎の下端の高さ正中線の約1.5cm右方である。③幽門部胃体と幽門部の間に介在する比較的細い部。その胃体側を幽門洞、幽門へつづく管状部を幽門管とよんでいる。④胃体噴門と幽門部との間で胃のもっと広い部域。胃体管は胃の小弯に沿って生じるとされる十二指腸への通路。胃体の上端部で行き詰まりの嚢状の部分を胃底といい横隔膜の直下に位置する。胃底が噴門へつづく面と食道下端は鋭角状の噴門切痕をつくる。このほか胃の前壁と後壁を区別しこの量壁が上縁と下縁で互いに移行する弓状の縁をそれぞれに小弯と大弯といい、小綱と大網の付着線をなしている。胃体と幽門部の境目の小弯は内方へ深く落ち込み角切痕(胃角)をつくる。胃壁の構造は外表は腹膜の一部である漿膜でおおわれ小綱および大網表層へ移行している。平滑筋からなる筋層は外層が縦走筋(外縦筋)、中層は最もよく発達し、輪走筋(中輪筋)、食道の内層筋から発して胃体を斜走するが、胃底では輪走する。幽門部では中輪筋がとくに発達し幽門括約筋となるが、内斜筋は欠いている。胃の内面は胃の粘膜でおおわれ、収縮時には多数の縦走するヒダ(胃粘膜ヒダ)がみられる。粘膜の表面には小さい陥凹が多数みられ(胃小窩)、その底部に固有胃腺が数個ずつ開口する。胃粘膜は浅い溝によって直径約2~3mmの多角形に区画されている。これを胃小区という。固有胃腺を構成する細胞は主細胞、傍細胞、副細胞がある。幽門腺は幽門部にある分枝単一管状胞状腺である。)
- 686_01【Oesophagus; Esophagus食道 Oesophagus; Esophagus】 Passageway measuring 23-26 cm in length that begins below the cricoid cartilage at the level of the sixth cervical vertebra and ends at the cardia of the stomach.
→(食道は咽頭につづき、下方は胃に流入する長い管で、狭義の消化管の最初の部分である。輪状軟骨下縁(上食道狭窄)にはじまり、脊柱の前を下って胃の噴門部に接合するまで、全長23~26cm。内腔は適宜拡がり、義歯を飲み込んだ例もある。内腔の狭い部分は上端(上食道狭窄)、大動脈弓・気管支と交叉する部分(中食道狭窄)、下端(下食道狭窄)の3カ所で、上下端では内腔が普通は閉じ、括約筋の存在が想定されている。食道を上から頚部・胸部・腹部に分ける。頚部は脊椎の前にある部分、胸部は以下横隔膜で、腹部は横隔膜の食道裂孔を抜けて腹腔内に入り、噴門部に流入する短い部分である。食道の壁の粘膜は重層扁平上皮におおわれ、粘膜筋板を有し、食道腺が散在する。上部または下端に食道噴門腺をみる。筋層は上部で横紋筋、下部で平滑筋で、平滑筋束の一部は気管支食道筋、胸膜食道筋として、周囲の器官に連続する。筋層の外側は疎性結合組織性の外膜におおわれる。)
- 686_02【Cardia; Cardial part of stomach噴門;噴門部(胃の) Cardia; Pars cardiaca gastricae】 Area near the opening of the esophagus.
→(噴門は食道腹腔部が胃に接続する部位を指すが、そこには特別な括約筋層が存在するわけではない。しかし、胃の内容物が食道内に逆流するのを防ぐような機能が噴門に備わっていることはほぼ疑いない。)
- 686_03【Pylorus幽門 Pylorus; Pylorus ventriculi】 End of the stomach that is reinforced by a ring of muscle.
→(幽門は、強力な輪状筋を備えた胃下端部。胃の空腹時、背臥位では正中線の1~2cm右方で、第1腰椎の右前方にある。)
- 686_04【Superior part of duodenum上部(十二指腸の) Pars superior (Duodenum)】 Horizontal initial segment.
→(十二指腸の上部は幽門につづく長さ約5cmの部で、第1腰椎の右側で幽門から後上方に走る。上部のうちの後側半部(長さ2.5cmの始部)は意図同様に前面と後面とが腹膜で被われる。前後両面の腹膜は、上方では小綱、下方では大網に連なる。このように始部は腹膜に包まれているので可動性である。内腔は十二指腸のうちで最も広く、粘膜には、他の部と異なって輪状ヒダを欠く。)
- 686_05【Descending part of duodenum下行部(十二指腸の) Pars descendens (Duodenum)】 Lateral, vertically descending segment.
→(十二指腸の下行部は上部は下方に屈曲して(上十二指腸曲)、下行部になる。下行部は長さ約8cm、第2・3腰椎の右側で右腎臓腎門の前を垂直に下行する。下行部の後内側壁には、膵管と総胆管が開口している。この開口部は、下行部のほぼ中央(幽門から約8cmのところ)で、やや隆起し、大十二指腸乳頭(ファーテル乳頭)をつくる。開口部はオッディの括約筋と呼ぶ平滑筋で輪状に囲まれる。大十二指腸乳頭の約2cm上方に、小十二指腸乳頭が見られ、ここに副膵管が開口することもある。大十二指腸乳頭の付近で、十二指腸は膵臓に向かって嚢状に内腔が膨出することがある。十二指腸憩室という。消化管で、しばしばみられる憩室である。)
- 686_06【Fundus of stomach胃底 Fundus gastricus; Fundus ventriculi】 Dome-shaped part of the stomach located beneath the diaphragm.
→(胃底は横隔膜の左側のドームのすぐ舌にあり、胃底の上端は左第5肋骨の高さにある。胃底とは噴門の左側で上方に膨隆した部位の呼び名であるが、その部位はガスを満たすことが多い。)
- 686_07【Body of stomach; Corpus of stomach胃体 Corpus gastricum; Corpus ventriculi】 Proper body of stomach, bounded superiorly by the cardia and fundus and inferiorly by the pyloric part of stomach.
→(胃体は噴門部につづく胃の大部で、小弯にみられる角切痕までの部である。上方は噴門および胃底、下方は幽門部と境す。)
- 686_08【Anterior wall of stomach前壁(胃の) Paries anterior gastricae】
→(胃は前壁と後壁との2面をもち、両壁は弓状に弯曲する上縁と下縁とで連なる。)
His, Angle of
- 686_09His, Angle of【Cardial noth噴門切痕 Incisura cardialis】 Sharp angle formed by the esophagus and the wall of stomach.
→(噴門切痕は噴門と左側の胃底との間の鋭角部(50~80°)。)
- 686_10【Abdominal part of oesophagus; Abdominal part of esophagus; Abdominal esophagus腹部(食道の) Pars abdominalis (Oesophagus)】 Short segment of the esophagus between the diaphragm and stomach.
→(食道の腹部は横隔膜と胃の間の短かく2~3cmである。腹部は第10胸椎の高さで横隔膜の食道裂孔を通ると、やや左方にまがり、第11胸椎の前左方で胃の噴門に連なる。胃体で胃が充満すると、腹部はやや長くなる。)
- 686_11【Lesser curvature of stomach小弯(胃の);胃小弯 Curvatura minor gastricae; Curvature ventriculi minor】 Smaller curvature in the contour of the stomach.
→(胃の上縁は右縁でもあり、小弯といわれる。)
- 686_12【Angular incisure of stomach; Angular notch of stomach角切痕(胃の);胃角切痕 Incisura angularis gastricae; Incisura angularis ventriculi】 Notch at the lowermost point of the lesser curvature that is visible on radiographs.
→(胃体と幽門部の境目の小弯は内方へ深く落ち込み角切痕をつくる。英語ではAngular incisureとなっているがAngular notchの方が一般的である。)
- 686_13【Pyloric part of stomach幽門部(胃の) Pars pylorica gastricae; Pars pylorica ventriculi】 Distal part of the stomach that begins with the angular incisure and extends to and includes the pylorus.
→(胃の幽門部は遠位側の、角切痕から幽門を含めた胃部分。幽門部はさらに幽門洞と幽門管との2部に分けられる。幽門付近は、幽門腺と呼ばれる単一分枝管状腺によって構成されている。しかし、これら各部の間には、明瞭な境界はなく、隣接部付近では、各部の腺が混在する。特に、固有胃底腺を構成する細胞の一つである壁細胞は、幽門部を除く広い領域に存在するといわれている。)
- 686_14【Superior duodenal flexure上十二指腸曲 Flexura duodeni superior】 Flexure between the superior and descending parts of duodenum, medial to the gallbladder.
→(上十二指腸曲は上部と下行部の間の弯曲。胆嚢の内側にある。)
- 686_15【Peritoneum腹膜 Peritoneum】
→(腹膜は中皮と不規則な結合組織の薄い層からなる漿膜で、腹壁の内面(横隔膜の下面・骨盤壁の内面も含む)を被い、さらに腹腔・骨盤腔にあるいろいろな臓器の表面を包む。腹壁の内面を被う腹膜を腹膜を壁側腹膜といい、臓器の表面を被う腹膜を臓側腹壁という。)
- 686_16【Longitudinal muscle layer of small intestine; Long pitch helicoidal layer of small intestine縦筋層;縦層;長ピッチラセン層(小腸の) Stratum longitudinale tunicae muscularis intestini tenuis; Stratum helicoidale longi gradus tunicae muscularis intestini tenuis】 Outer layer of longitudinally oriented muscle fibers. Its cells are organized in a helicoidal form in long coils.
→(小腸の縦筋層は外側にある縦走筋層。)
- 686_17【Greater curvature of stomach大弯(胃の);胃大弯 Curvatura major gastricae; Curvatura ventriculi major】 Larger curvature in the contour of the stomach.
→(胃の大弯は小弯よりも長く、噴門の左側から始まり、胃底上縁を越えたのち、胃体の左縁を通り、幽門下部にまで達している。大弯の上方部からは胃膵間膜が出て脾臓に達しており、大弯の下方部からは大網がたさえがっている。)