689_00【Stomach胃 Gaster; Ventriculus】 Organ extending from the end of the esophagus to the pylorus. →(胃は食道と十二指腸の間にある不規則な洋梨状の消化管。胃液を分泌し食物を糜汁とする。容量は日本人の胃の平均は♂1407.5ml、♀1270.5ml。形状は死体ではウシの角状の嚢であることが多いが、生体では内容の充満度、体位、機能状態によって著しく変化する。位置は上端は左第5肋間、下端は内容の空虚なとき臍より三横指上方。胃の大部分は左下肋部と上胃部に位置する。部域は①噴門十二指腸が胃に連続する部。その内腔は狭く噴門口をなす。その①は、正中線よりわずか左側で、第7肋軟骨が胸骨に付着する高さにある。前腹壁より約10cm深部で、切歯から食道を経て40cmで達する。②幽門(幽門口)胃と十二指腸の境界。壁内に輪状に走行する幽門括約筋が発達しているため壁は輪状の高まりとなって幽門孔をとり囲む。その位置は、第1腰椎の下端の高さ正中線の約1.5cm右方である。③幽門部胃体と幽門部の間に介在する比較的細い部。その胃体側を幽門洞、幽門へつづく管状部を幽門管とよんでいる。④胃体噴門と幽門部との間で胃のもっと広い部域。胃体管は胃の小弯に沿って生じるとされる十二指腸への通路。胃体の上端部で行き詰まりの嚢状の部分を胃底といい横隔膜の直下に位置する。胃底が噴門へつづく面と食道下端は鋭角状の噴門切痕をつくる。このほか胃の前壁と後壁を区別しこの量壁が上縁と下縁で互いに移行する弓状の縁をそれぞれに小弯と大弯といい、小綱と大網の付着線をなしている。胃体と幽門部の境目の小弯は内方へ深く落ち込み角切痕(胃角)をつくる。胃壁の構造は外表は腹膜の一部である漿膜でおおわれ小綱および大網表層へ移行している。平滑筋からなる筋層は外層が縦走筋(外縦筋)、中層は最もよく発達し、輪走筋(中輪筋)、食道の内層筋から発して胃体を斜走するが、胃底では輪走する。幽門部では中輪筋がとくに発達し幽門括約筋となるが、内斜筋は欠いている。胃の内面は胃の粘膜でおおわれ、収縮時には多数の縦走するヒダ(胃粘膜ヒダ)がみられる。粘膜の表面には小さい陥凹が多数みられ(胃小窩)、その底部に固有胃腺が数個ずつ開口する。胃粘膜は浅い溝によって直径約2~3mmの多角形に区画されている。これを胃小区という。固有胃腺を構成する細胞は主細胞、傍細胞、副細胞がある。幽門腺は幽門部にある分枝単一管状胞状腺である。)
689_01【Oesophageal mucosa; Esophageal Mucous membrane of oesophagus; Mucous membrane of esophagus粘膜(食道の);食道粘膜 Tunica mucosa oesophageae】 It consists of nonkeratinized, stratified squamous epithelium, lamina propria, and muscularis mucosae. →(粘膜
食道粘膜は重層扁平上皮、疎性結合組織からなる粘膜固有層、および縦走する平滑筋からなる粘膜筋板で構成されている。
食道の粘膜は、上皮、粘膜固有層、および粘膜固有層からなる(図17-2)。食道の内腔は普段は圧平されていて狭いが、食道の嚥下時には内腔がひろがる。食道の内壁は厚さ約0.5mmの非角化重層扁平上皮で被われている。この上皮にはランゲルハンス細胞と呼ばれる抗原提示細胞が散在している。この細胞は抗原を貪食し、エポトープという小さなポリペプチドに分解する。また、主要組織適合性抗原(MHC)Ⅱ型分子を産生してエピトープを結合させ、このMHCⅡ-エピト-プ複合体を細胞膜の外表面に出す。その後、ランゲルハンス細胞はリンパ節まで遊走して、そこでリンパ球にMHCⅡ-エピト-プ複合体を提示する。(最新カラー組織学))
689_02【Oesophagus; Esophagus食道 Oesophagus; Esophagus】 Passageway measuring 23-26 cm in length that begins below the cricoid cartilage at the level of the sixth cervical vertebra and ends at the cardia of the stomach. →(食道は咽頭につづき、下方は胃に流入する長い管で、狭義の消化管の最初の部分である。輪状軟骨下縁(上食道狭窄)にはじまり、脊柱の前を下って胃の噴門部に接合するまで、全長23~26cm。内腔は適宜拡がり、義歯を飲み込んだ例もある。内腔の狭い部分は上端(上食道狭窄)、大動脈弓・気管支と交叉する部分(中食道狭窄)、下端(下食道狭窄)の3カ所で、上下端では内腔が普通は閉じ、括約筋の存在が想定されている。食道を上から頚部・胸部・腹部に分ける。頚部は脊椎の前にある部分、胸部は以下横隔膜で、腹部は横隔膜の食道裂孔を抜けて腹腔内に入り、噴門部に流入する短い部分である。食道の壁の粘膜は重層扁平上皮におおわれ、粘膜筋板を有し、食道腺が散在する。上部または下端に食道噴門腺をみる。筋層は上部で横紋筋、下部で平滑筋で、平滑筋束の一部は気管支食道筋、胸膜食道筋として、周囲の器官に連続する。筋層の外側は疎性結合組織性の外膜におおわれる。)
689_03【Gastric folds; Gastric rugae; Rugae of stomach胃粘膜ヒダ Plicae gastricae; Plicae gastricae mucosae】 Mucosal folds that mainly run longitudinally. →(胃の内面の粘膜面には何条かのしわ(胃粘膜ヒダ)があり、これらは小弯の所では主に縦走している。)
689_04【Pylorus幽門 Pylorus; Pylorus ventriculi】 End of the stomach that is reinforced by a ring of muscle. →(幽門は、強力な輪状筋を備えた胃下端部。胃の空腹時、背臥位では正中線の1~2cm右方で、第1腰椎の右前方にある。)
689_05【Mucous membrane of duodenum粘膜(十二指腸の) Tunica mucosa (Duodenum)】 →()
689_07【Pyloric sphincter muscle; Sphincter pylori muscle幽門括約筋 Musculus sphincter pyloricus】 Thickened ring of muscle fibers around the pylorus. →(幽門括約筋は幽門の厚い輪走筋層。)
689_08【Gastric mucosa; Mucous membrane of stomach粘膜(胃の);胃粘膜 Tunica mucosa gastricae; Tunica mucosa ventriculi】 Mucous membrane lining of the stomach that is composed of simple columnar epithelium, connective tissue (lamina propria), and muscularis mucosae. →(胃の粘膜に限らず、消化管の粘膜上皮は、絶えず新生され、古くなった上皮細胞と置き換わっていく。胃小窩深部あるいは腺の上端部に、有糸分裂像がよく観察される。この領域は増殖細胞帯generative cell zoneまたはprogenitor cell zoneと呼ばれ、この領域で分裂、増加した未分化上皮細胞undiffereted epithelial cellが、表面上皮細胞あるいは腺細胞に分化し、成熟していく。未分化上皮細胞の数は少なく、立方ないし丈の低い円柱状で、細胞質は弱塩基好性を呈す。核は細胞体の割に大きく、円形である。細胞質の塩基好性は、幼若な細胞の特徴ともいえる。豊富な自由リボゾームの存在に起因する。大部分の未分化上皮は胃表面に移動しつつ、表面上皮細胞ないしは頚部粘液細胞に分化していく。両細胞は、2~8日周期で更新される。壁細胞は腺頚部の未分化上皮細胞より分化し、その寿命は約3ヶ月にも及ぶ。主細胞もまた未分化上皮細胞から分化、成熟してくる以外に、一部は成熟した主細胞自身が分裂、増殖する。主細胞の細胞周期は約2ヶ月といわれている。噴門腺付近の表面上皮細胞および腺細胞の寿命は約2日、腺細胞は約3~10日とされている。幽門腺付近の表面上皮細胞および腺細胞は1~2日で更新されているので、幽門の胃小窩あるいは腺上端部においては、他の部位よりも多くの有糸分裂増が認められる。)
689_09【Submucosa of stomach粘膜下組織(胃の) Tela submucosa gastricae】 Layer between the muscularis mucosae and the muscular coat that consists mainly of collagenous connective tissue and contains vessels and nerves. →(胃の粘膜下組織は主として、膠原線維からなる疎性結合組織である。脂肪細胞、形質細胞、リンパ球や好酸球も多数認められる。マイスナー神経叢、比較的太い動静脈、リンパ管が分布している。)
689_10【Muscular layer of stomach筋層(胃の) Tunica muscularis gastricae; Tunica muscularis ventriculi】 Muscular coat of stomach composed of muscle fibers running in three directions. →(胃の筋層は内斜、中輪、外縦走平滑筋層が区別されるが、胃の部位によって各筋層の発達の程度に違いがある。外縦筋層は、食道の外縦筋層からの続きで、噴門部から放射状に広がっている。特に小弯および大弯ではよく発達し、ヒモを形成する。中輪筋層は、食道の内輪筋層からの続きで、胃壁全体に走行し、3層の内で最もよく発達している。また、幽門では特に発達しており、厚い幽門括約筋を形成している。括約筋によって、十二指腸との境界では、輪状の粘膜ヒダ(幽門弁)を管腔に突出さえている。内斜筋層は、食道の内輪筋層の一部から分岐し、噴門から斜めに分散しているが、幽門部には達していない。中輪筋層と外縦筋層の間には、アウエルバッハ神経叢が存在する。胃において輪筋層がよく発達しているのは、胃内容積の変化に際し、胃壁の緊張を一定に保つためである。幽門部では、内外二層構造となっていることから、この部では腸運動に類似した蠕動を行うと考えられる。)