692
- 692_00【Duodenum十二指腸 Duodenum; Intestinum duodenum】 The ca. 25-30 cm long segment of the small intestine between the pylorus and duodenojejunal flexure.
→(十二指腸は胃の幽門から十二指腸空腸曲まで約25cmの腸管。十二指腸Duodenumは12で、intestinum duodenum digitorumの意味。長さが指を12本横にならべた幅に等しいことによる。第1腰椎の椎体右縁の前方ではじまり、C字状に屈曲して膵臓の頭を取り囲む。腸間膜を欠き、後腹膜臓器の一つであり、胆管、膵管が開口するなど他の小腸とは異なる。十二指腸には4部が区別される。上部は幽門につづく5cmの長さの部で、上背外側へはしる。最初の2.5cmは可動性。上縁には小綱が付着する。上十二指腸曲において、ほぼ下方へ屈曲し、下行部(約8cm)へ移行する。その半ばで後内側壁に一条の十二指腸ヒダがり、その下端に大十二指腸乳頭が隆起し、ここに総胆管と膵管が共通に開口する。その上方2~3cmの部に小十二指腸乳頭があることが多く、副膵管の開口をみる。下行部は下十二指腸曲で左方へ屈曲し、水平部(下部、約8cm)へ移行し、第3腰椎体左縁に達し、左上方へ屈曲し、上行部へつづく。この部は約5cm走行したのち、第2腰椎の左方で急に前方に曲がり空腸へ移行する。この部を十二指腸空腸曲という。この曲がりは、横隔膜直下の後大動脈壁から下降する十二指腸提筋で固定されている。十二指腸の前半、ほぼ大小十二指腸乳頭までには、よく発達した十二指腸腺がある。複合管状胞状腺で、分泌物は粘液性でアルカリ性を示すことから胃酸から粘膜を保護するのではないかといわれる。)
- 692_01【Small intestine小腸 Intestinum tenue】 The small intestine consists of the duodenum, jejunum, and ileum.
→(小腸は胃の幽門から始まり、回盲口によって盲腸に開くまでの細長い管。十二指腸、空腸、回腸からなる。その長さは成人の死体では、全長約7mであるが、小腸の長さは平滑筋層の張力に依存しているために、死後伸びる。生体では平均5mといわれている。食物の消化吸収の主な場所であり、その属腺として肝臓と膵臓がある。小腸は腸間膜を欠く十二指腸と腸間膜小腸が区別され、後者は空腸(はじめの2/5)と回腸(あとの3/5)に分けられる。吸収上皮は内腔への大小の突起を突出させ、表面積は約20m2にも達する。最大の突起は粘膜下組織までを含む輪走する輪状ヒダで、十二指腸で最も発達している。これより一段小さい突起は高さ約1mmの腸絨毛上皮と粘膜固有層とからなり小腸内面をおおう。十二指腸では養状を呈し、空腸、回腸では円柱状である。絨毛の粘膜固有層へは1~2本の動脈が侵入し、先端部で上皮直下の密な毛細血管網に移行したのち1本の小静脈へ注ぐ。絨毛の内輪には太いリンパ管があり脂質の吸収にあずかる。粘膜固有層にはリンパ球、形質細胞、大食細胞などが多数みられる。ことにリンパ球は集族増殖して孤立リンパ小節やそれらが集合して集合リンパ小節をつくる。後者は回腸に多い。発達したリンパ小節は粘膜筋板をおおって粘膜下組織へも侵入する。)
- 692_02【Head of pancreas膵頭 Caput pancreatis】 Part of the pancreas nestled in the duodenal loop.A
→(膵頭は十二指腸ワナの中に入り込んだ部分。)
- 692_03【Superior part of duodenum上部(十二指腸の) Pars superior (Duodenum)】 Horizontal initial segment.
→(十二指腸の上部は幽門につづく長さ約5cmの部で、第1腰椎の右側で幽門から後上方に走る。上部のうちの後側半部(長さ2.5cmの始部)は意図同様に前面と後面とが腹膜で被われる。前後両面の腹膜は、上方では小綱、下方では大網に連なる。このように始部は腹膜に包まれているので可動性である。内腔は十二指腸のうちで最も広く、粘膜には、他の部と異なって輪状ヒダを欠く。)
- 692_04【Descending part of duodenum下行部(十二指腸の) Pars descendens (Duodenum)】 Lateral, vertically descending segment.
→(十二指腸の下行部は上部は下方に屈曲して(上十二指腸曲)、下行部になる。下行部は長さ約8cm、第2・3腰椎の右側で右腎臓腎門の前を垂直に下行する。下行部の後内側壁には、膵管と総胆管が開口している。この開口部は、下行部のほぼ中央(幽門から約8cmのところ)で、やや隆起し、大十二指腸乳頭(ファーテル乳頭)をつくる。開口部はオッディの括約筋と呼ぶ平滑筋で輪状に囲まれる。大十二指腸乳頭の約2cm上方に、小十二指腸乳頭が見られ、ここに副膵管が開口することもある。大十二指腸乳頭の付近で、十二指腸は膵臓に向かって嚢状に内腔が膨出することがある。十二指腸憩室という。消化管で、しばしばみられる憩室である。)
- 692_05【Inferior part of duodenum; Horizontal part of duodenum; Transverse part of duodenum水平部;横行部;下部(十二指腸の) Pars horizontalis duodeni; Pars inferior duodeni】 Horizontal segment below the head of pancreas.
→(十二指腸の水平部は長さ約8cmで、膵頭の下縁(第3頚椎の高さ)に沿って右大腰筋・下大静脈・左大腰筋の前を水平に走る。水平部の前面を上腸間動脈が下行する。)
- 692_06【Body of pancreas膵体 Corpus pancreatis】 Part of the pancreas situated mainly anterior to the vertebral column. It arises from the dorsal pancreatic anlage.
→(膵体は主として脊柱の前方にある部分。背側原基に由来する。)
- 692_07【Tail of pancreas膵尾 Cauda pancreatis】 Upper left part of the pancreas that is in contact with the spleen.
→(膵尾は脾臓に接し、左側上方にある尾部。)
- 692_08【Jejunum空腸 Jejunum; Intestinum jejunum】 Middle segment of the small intestine, extending about 2.5 m from the duodenojejunal flexure.
→(空腸は剖検に察してしばしば空虚であったため「空」とう意味からnestisとよばれ、のちjejunumとなった。十二指腸と回腸の間長さ約2.4cm、直径約2.7cm、の小腸部分。十二指腸空腸曲で十二指腸と境される。一方、回腸との境は明瞭ではない赤みを帯び、可動性で幅広い腸間膜を介して後腹壁の腸間膜根に付着している。壁の厚さは回腸に比してやや厚く、輪状ひだが大きくてよく発達しており、血管分布が豊富で動脈弓が少なく、直細動脈が長い。腸絨毛は十二指腸と同様3600個/cm2。空腸の吸収上皮面績は37m2に達する。粘膜固有層には孤立リンパ小節が発達する。腸腺の底部にはエオジンに好染する顆粒をもつパネート細胞がみられる。また腸腺の下半分には腸クロム親和細胞が多数分布し、セロトニンを分泌する。その他消化器ホルモンの分泌細胞を混ずる。)
- 692_09【Ascending part of duodenum上行部(十二指腸の) Pars ascendens (Duodenum)】 Segment to the left of the head of pancreas ascending to the duodenojejunal flexure.
→(十二指腸の上行部は水平につづき、左上方に向かって斜めに上行する部である。長さ約5cm。第2腰椎の左側で、急に前方に屈曲して(十二指腸空腸曲)、空腸に移行する。)
- 692_10【Omental eminence of pancreas小網隆起;小網結節(膵臓の) Tuber omentale pancreatis】 Prominence on the body of pancreas near the head that is produced by the vertebral column and projects into the omental bursa.
→(膵臓の小綱隆起は膵頭近くの錐体にあり、脊柱に一致して、網嚢内へ隆起する部分。)
- 692_11【Superior duodenal flexure上十二指腸曲 Flexura duodeni superior】 Flexure between the superior and descending parts of duodenum, medial to the gallbladder.
→(上十二指腸曲は上部と下行部の間の弯曲。胆嚢の内側にある。)
- 692_12【Transverse mesocolon横行結腸間膜 Mesocolon transversum】 Peritoneal fold attached to the transverse colon. It arises anterior to the head of pancreas and along the inferior border of the body of pancreas. It is fused with the posterior layer of the greater omentum.
→(横行結腸間膜は膵臓の前面から起こる広い腹膜ヒダで、横行結腸の後壁に達し、これを包む。また、左結腸曲は横隔膜と腹膜ヒダで結ばれる。)
Winslow's pancreas
- 692_13Winslow's pancreas【Uncinate process of pancreas鈎状突起(膵臓の) Processus uncinatus pancreatis】 Hooked process that projects behind the mesenteric vessels.
→(膵臓の鈎状突起は腸間膜動脈の後ろに鈎状にのびた部分。)
- 692_14【Inferior duodenal flexure下十二指腸曲 Flexura duodeni inferior】 Flexure between the descending and horizontal parts of duodenum.
→(下十二指腸曲は下行部と水平部の間の弯曲。)
- 692_15【Root of mesentery; Mesentery root腸間膜根 Radix mesenterii】 Attachment of the mesentery to the posterior wall of the abdominal cavity that extends from the second lumbar vertebra to the right iliac fossa.
→(十二指腸を除く小腸を後壁につなぐ腸間膜が後腹壁から発する線。長さは約15cmで、第2腰椎左側から右仙腸関節に達する。腸間膜根は十二指腸の水平部、腹大動脈、下大静脈、右大腰筋、右尿管、および右精巣あるいは卵巣動静脈と交叉する。[医学書院医学大辞典:大谷修] 腸間膜根は後壁側腹膜から小腸(空腸と回腸)の腸間膜がおこるところ。長さ約23cmで、第二腰椎の高さの正中線のすぐ左の十二指腸空腸曲から、腸骨窩の怪網部まで広がっている。)
- 692_16【Anterior surface of body of pancreas前面(膵臓の) Facies anterior (Pancreas) 】
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- 692_17【Superior border; Superior margin of body of pancreas上縁(膵体の) Margo superior corporis pancreatis】 Upper border between the anterior and posterior surfaces.
→(膵体の上縁は前面と後面の間にある縁。)
pl. pancreata
- 692_18pl. pancreata【Pancreas膵臓 Pancreas】 Organ measuring 13-15 cm in length, lying partly in the duodenal loop and partly behind the omental bursa at the level of L1-L2.
→(膵臓は上腹部および左下肋部で、第1および第2腰椎の高さに位置する。成人では長さ14~18cm、重さ65~100gの細長い三角稜柱形をなし、十二指腸のC字形弯曲部に囲まれた頭部、頭部を貫いて総胆管と膵管が走るので、臨床医学的に重要である。腺は外分泌部から腸に注がれる膵液、内分泌部からインスリンとグルカゴンを分泌する。頭部の下方左側より上腸間膜動静脈の後方へ伸びる鈎状突起、左方へ徐々に細くなりながら下大静脈および腹大動脈の上をおおい脾臓の方へ伸びる体部、膵臓と接する尾部に区別される。Pancreasのpanは全、creasは肉を意味するギリシャ語。全体が肉様である意。この臓器は漢方医学で知られていなかったので、蘭学導入後、肉を萃(あつ)めるの意から膵の字が作られた。宇田川玄真が医範提綱(1805)ではじめてこの国字を公表。 膵臓は膵液を分泌する外分泌腺であると同時に、ホルモンを産生する内分泌器官としても働く(ランゲルハンス島)。膵液には食物の三大要素(タンパク質・デンプン・脂肪)を分解する酵素が含まれており、膵臓のホルモン(インスリン・グルカゴン)には糖代謝を調節する作用がある。 膵臓を分泌する松果腺。長さ約15cmの細長い臓器で、第1~2腰椎の高さで後腹壁に接して位置し、前面のみ腹膜におおわれる(腹膜後器官retroperitoneal organs)。十二指腸に囲まれる膵頭、第2腰椎の前面に位置する錐体、脾臓に接する膵尾に区分される。なお、消化腺(外分泌腺)の機能のほか、膵臓には内分泌部(ランゲルハンス島)もある。動脈分布:上膵十二指腸動脈(腹腔動脈の末梢枝)・下膵十二指腸動脈(←上腸間膜動脈)。(イラスト解剖学))
- 692_19【Inferior surface of pancreas下面(膵臓の) Facies inferior (Pancreas)】
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- 692_20【Inferior border of body of pancreas下縁(膵体の) Margo inferior; Margo posterior (Corpus pancreatis)】 Lower border situated between the anterior and posterior surfaces.
→(膵体の下縁は下面と後面の間にできる縁。)
- 692_21【Anterior border; Anterior margin of body of pancreas前縁(膵体の) Margo anterior corporis pancreatis】 Border that corresponds to the line of attachment of the transverse mesocolon and thus the inferior boundary of the omental bursa on the posterior wall of the abdomen.
→(膵体の前縁は横行結腸間膜がつく線と一致し、同時に後腹壁における網嚢の下限界線となる。)
- 692_22【Duodenojejunal flexure十二指腸空腸曲 Flexura duodenojejunalis】 Flexure between the duodenum and jejunum.
→(十二指腸と空腸の間の弯曲。(Feneis))
- 692_23【Superior mesenteric artery上腸間膜動脈 Arteria mesenterica superior】 Second unpaired aortic branch. It arises about 1 cm below the celiac trunk at the level of the first lumbar vertebra. It initially runs behind the pancreas, then on the uncinate process and gives off branches to the mesentery and mesocolon. It supplies the head of pancreas, the small intestine as far as the superior part of duodenum, and the colon up to the splenic flexure.
→(上腸間膜動脈は腹腔動脈の約1~2cm下方(第1腰椎の高さ)で、腹大動脈の前側から起こる。動脈ははじめ膵臓の後ろを走り、膵臓の頭の左側に沿って前方に出て、十二指腸水平部の前面を下行し、小腸間膜のなかに入る。小腸間膜内で、左方にやや凸のカーブを描いて右腸骨窩に向かって下行し、下膵十二指腸動脈、空腸動脈、腸骨動脈、回結腸動脈、虫垂動脈、右結腸動脈、中結腸動脈に分布する。上膵十二指腸動脈、左結腸動脈と吻合する。)
- 692_24【Superior mesenteric vein上腸間膜静脈 Vena mesenterica superior】 It drains the area from about the inferior half of the duodenum to the splenic flexure. It unites with the splenic vein to form the hepatic portal vein.
→(分布域は十二指腸遠位側の半分から左結腸曲に拡がる。脾静脈と一緒になって門脈をつくる。 (Feneis))