869
- 869_00【Brain stem脳幹 Truncus encephali】 Collective anatomical term for the rhombencephalon and mesencephalon. The clinical definition includes the basal ganglia, diencephalon, and portions of the 【rhinencephalon】.
→(TAで脳幹は髄脳(延髄)、橋、中脳を脳幹と定義している。かつては、脳を運ぶ際に脳幹をもって運んでいた、脳幹は、脳の柄のような部分という意味で付けられた。日本の神経解剖の教科書では間脳を含める場合や間脳と大脳核を含めて脳幹と称している場合が多いので注意をようする。)
Varolius, Pons of
- 869_00aVarolius, Pons of【Pons橋 Pons】 Part of the brain situated between the interpeduncular fossa and the pyramids. It surrounds the anterior part of the fourth ventricle and consists mainly of descending tracts from the cerebrum that travel to nuclei, synapse, cross, and continue to the cerebellum.
→(Ponsとは、橋(ハシ)という意味である。腹側から見ると左右の小脳半球の間に架かった太鼓橋の様に見えるところから橋という名前が付けられた。比較解剖学的には、橋が延髄から区別されるのは哺乳類に限られ、橋は人類で最もよく発達している。後脳の腹側部にあたる。すなわち、小脳の腹側に位置しており、延髄と中脳の間に介在する。橋の腹側面は横走する幅広い神経線維束(横橋線維)によっておおわれる。この神経線維束はさらに橋の外側面において、橋と小脳を連結する中小脳脚を形成しており、左右の小脳半球の間にかかる「橋」のようにみえる。橋は既にユースタキウスEustachius (1524-1574)の図に載っているというが、この図は1714年まで出版されなかったので、Ponsという名称は、このような外見に基づいて、イタリアの解剖学者であり外科医でもあったC.Varolio (1543-1573)が用いたものである(ヴォロイオ橋)。橋は横断面では橋腹側部または橋底部と橋背部または橋被蓋とに区分される。両者の境界は橋被蓋の腹側部を上行する内側毛帯の腹側縁にあたる。橋底部の神経線維群には、上記の横橋線維のほかに、橋底部の中心部を縦走する橋縦束があり、神経細胞としては橋縦束を取り囲んで橋核が存在する。橋縦束の線維はその大部分が大脳皮質からの下行神経線維であり、橋核に連絡する皮質橋核路を含む。橋核は大脳皮質からおこる求心性神経線維のほか、小脳核や上丘からおこる求心性神経線維を受けることが知られている。橋核からおこる遠心性神経線維は横橋線維、ついで中小脳脚を形成して、主として反対側の小脳半球の皮質に連絡する。また、その際、小脳核、とくに歯状核に側枝を送る可能性が大きい。このように、橋縦束・橋核・橋横線維は大脳皮質や小脳半球など、系統発生的に新しい部位との関係が深く、哺乳動物ではじめて出現する構造であって、高等な哺乳類において良好な発育を示す。 一方、橋被蓋は系統発生的に古い構造であり、脳幹網様体の基本構造を示す部位がもっとも広い領域を占める。脳神経核としては、三叉神経核(主感覚核・脊髄路核・中脳路核・運動核)・顔面神経核・内耳神経核(蝸牛神経核と前庭神経核)が存在する。また、橋被蓋の外側部を上行する外側毛帯、および橋被蓋の腹側部を横走する台形体の線維は聴覚路を形成する神経線維群であり、聴覚神経路の中継核として、外側毛帯核および台形体核が存在する。その他の線維群としては、第四脳室底の腹側において正中線背側部の両側を内側縦束が縦走し、上小脳脚が第四脳室蓋の外側部を形成している。また、神経細胞群としては、橋被蓋の背外側部に青斑核が、上小脳脚の周辺部には結合腕傍核が存在する。)
- 869_01【Tegmentum of pons橋被蓋;橋背側部;橋背部 Tegmentum pontis; Pars dorsalis pontis】 Phylogenetically older part of the brainstem situated between the transverse pontine fibers and the fourth ventricle.
→(橋被蓋には数個の脳神経核と橋に特異的な神経核がある。脳神経核は外転神経核や顔面神経核と、三叉神経脊髄路核などの三叉神経群である。外転神経核は第四脳室柄底の直下にあり、顔面神経核は他の特殊内臓性遠心性神経核「副神経核、疑核、三叉神経運動核」と同様、深部に位置する。三叉神経脊髄路核の一位は変化はない。橋に特異的な神経核では、まず胸郭をあげねばならない。さらに、上オリーブ核と台形体格がある(両者とも聴覚神経路の中継核である)。また、台形体格は上オリーブ核群の一つとして取り扱われることも多い。上オリーブ核は顔面神経核の吻側で腹内側方に位置しており、紡錘形の細胞より成る。台形体核は小さい核であり、台形体の線維のあいだにうもれているため、境界を定めるのは容易ではない。第四脳室底の直下で外転神経核の尾方の続きには舌下神経前位核があり、その外側方には前庭神経核群(内側核、下核、外側核)が位置する。)
- 869_02【Basilar part of pons橋底部;橋底;橋腹側部 Pars basilaris pontis】 Anterior portion mainly formed by fibers from the corticopontocerebellar tract.
→(橋底部は橋の腹側部で、主に大脳、橋および小脳の伝導路よりなる部分。 この部分は規則正しく配列する横走および縦走線維束とその間に散在する橋核よりなる。縦走する線維束は橋底部の中央を通り、これに①皮質脊髄路、②皮質延髄路、③皮質橋核路が含まれる。皮質脊髄路は橋底部を通り、矢状断切片では延髄錐体まで追跡することができる。皮質橋核路は大脳半球の前頭葉、頭頂葉、後頭葉および側頭葉から起こり、交叉せずに下行して橋核に終わる。橋核は皮質脊髄路および皮質橋路繊維の周囲に散在し、ここから横橋線維が起こり、下行路線維の背側または腹側を通り、正中線で交叉したのち中小脳脚となって小脳に至る。したがって橋底部は大脳皮質からの神経インパルスを対側の小脳半球部に伝える2ニューロン伝導路の大きな中継核と考えることができる。橋底部を下行する皮質延髄路線維は、橋被蓋に投射する。)
- 869_03【Lingula of cerebellum [I]小脳小舌;第I小葉 Lingula cerebelli [I]】 Unpaired part of the vermis belonging to the archicerebellum that is fused with the superior medullary velum.
→(小脳小舌は小脳虫部の前端(または上端)を形成し、2つの盛り上がる上小脳脚の間の上髄帆の表面上を前方へのびる。Larsellの区分に従えば小葉(Ⅰ)に相当する。Larsellは比較解剖学的立場より、小脳虫部の小葉にⅠからⅩまでの番号を付した。一方、人の小脳虫部は9の虫部小葉と、Larsellの小葉の対応関係は単純ではない。)
- 869_04【Locus caeruleus; Locus coeruleus青斑 Locus caeruleus; Locus coeruleus】 Elongated collection of bluish-black cells lying below the lateral wall of the fourth ventricle.
→(青斑は中脳水道に近い菱形窩の最前部の外側にある細胞群で、三叉神経中脳路核の腹内側に位置する。肉眼的には第四脳室底において、上小脳脚の内側に吻尾側方向に伸びた青黒色の帯状のものとして認められる。これは細胞体に含まれるメラニン色素によるもので、そのため青斑には鉄色質の別名がある。青斑の細胞群は青斑核とよばれる。ノルアドレナリンを含む大型細胞の集団である。青斑核の腹側には同じような細胞が散在しており、青斑下核と呼ばれる。青斑核細胞の遠心性ノルアドレナリン線維は3群を形成する。①上行線維群:内側前脳束に入り扁桃核にいたるもの、帯状回線維となって帯状回、海馬台にいたるもの、その他梨状葉皮質、前頭葉新皮質に分布する線維からなる。②外側線維群:上小脳脚を通り小脳前葉の皮質の分子層、Purkinje細胞同区に分布する線維である。③下行線維群:これは広く脳幹に分布した後、脊髄前索、前側索を下行し、脊髄全長にわたって後角基部から前角にかけて分布する。求心性線維は次の領域からくる。視床下部(視索前野、後側、背側、外側視床下野)、中脳の中心灰白質、黒質、背側被蓋核、橋縫線核、その他脳幹に分布するカテコールアミンニューロンからの線維を受ける。機能は十分解明されていないが、REM睡眠と深い関係にある。)
- 869_05【Superior medullary velum上髄帆;前髄帆 Velum medullare superius; Velum medullare anterius】 Layer of white substance stretched between the two cerebellar peduncles. It is fused with the lingula.
→(上髄帆は両側の上小脳脚の間にある薄い白質板で、第4脳室の上陥凹の被蓋を形成する白質の薄い層。背側は小脳小舌と癒着する。)
Sylvius, Aqueduct of
- 869_06Sylvius, Aqueduct of【Aqueduct of midbrain; Cerebral aqueduct中脳水道;脳水道 Aqueductus mesencephali; Aqueductus cerebri】 Narrow canal in the mesencephalon between the third and fourth ventricles.
→(中脳水道はシルビウス水道ともよばれる。中脳では脳室系は細い管となり、間脳の第三脳室と菱脳の第四脳室とを結合する。これを中脳水道と称し、横断面は円形または底辺を背側に向けた角のとれた三角形をなし、中心灰白質によってかこまれる。その存在については古くから知られていたが、フランスの解剖学者Jacobus Sylvius (1478-1555)の著書(1555年)で初めて説明がなされた。)
- 869_07【Periaqueductal grey substance; Central grey substance中脳中心灰白質;中脳水道周囲灰白質 Substantia grisea centralis】 Gray substance surrounding the cerebral aqueduct.
→(中脳中心灰白質は中脳水道を取り囲み密集する比較的小型の細胞からなり、機能的には均一ではない。この領域はこれまで中枢の鎮痛機構、発生、生殖行動の制御、攻撃行動、上方注視機構と深く関係するとされてきた。この中脳中心灰白質は視床下部、脳幹毛様体、縫線核、青斑核および脊髄からの入力を受け、これらの多くはさらに中脳中心灰白質からの相互の投射を受ける。中脳中心灰白質のニューロンはエンケファリン、P物質、コレシストキニン、ニューロテンシン、セロトニン、ダイノルフィン、ソマトスタチンに対して免疫反応陽性であり、ひとつのニューロンがしばしば複数のニューロペプチドを有する。中脳中心灰白質の腹外側部は、刺激による鎮痛に関して最も効果的な部位と思われる。中脳中心灰白質の腹側部へのモルヒネの微量注入により著明な鎮痛を引き起こすことが齧歯類動物において認められている。)
- 869_08【Medial longitudinal fasciculus; MLF内側縦束 Fasciculus longitudinalis medialis】 Bundle of various fiber systems that enter and leave at different levels. Its fibers interconnect the motor nuclei of cranial nerves and also connect the vestibular apparatus with ocular muscles, neck muscles, and the extrapyramidal system. This serves to coordinate muscle groups, e.g., masticatory, tongue, and pharyngeal muscles when swallowing or speaking; or ocular muscles for movements of the globe.
→(前索の後部には脳幹のいろいろなレベルにある種々な神経核からでる複雑な下行線維束がある。この複雑な神経線維束は内側縦束として知られている。この神経束の脊髄部は同じ名称で呼ばれる脳幹にある伝導路の一部にすぎない。内側縦束の上行線維は主として前庭神経内側核および上核から起こり、同側性および対側性に主として外眼筋支配の神経核(外転、滑車、動眼神経核)に投射する。内側核からの上行線維は主に交叉をし、両側の外転神経核と左右の動眼神経核に非対称性に終わるが、滑車神経核へは対側性に投射する。上核の中心部にある大形細胞は非交叉性上行線維を内側縦束に出し、これは滑車神経核および動眼神経核に終わる。同核の周辺部にある周辺部にある小型細胞は交叉性の腹側被蓋束(内側縦束の外側にある)を経て動眼神経核に投射するが、これは主として対側の上直筋を支配する細胞に作用する。生理学的には、前庭神経核から外眼筋支配核から外眼筋支配核への上行性投射のうち、交叉性線維は促進的に働くが、非交叉性線維は抑制的に働く。内側縦束にはこのほかに、左右の外転神経核の間にある神経細胞から起こり、交叉して上行し、動眼神経核の内側直筋支配部に終わる明瞭な線維が含まれる。この経路は一方の外転神経核の活動を対側の動眼神経核内側直筋支配部へ連絡する物で、外側視の場合に、外側直筋が収縮すると同時に対側の内側直筋が共同して収縮するための神経機構を形成している。内側縦束の上行線維の一部は、動眼神経核を回ってCajal間質核に終わる。これは内側縦束内にうまっている小さい神経細胞群である。前庭神経内側核は対側性に間質核へ投射するが、上核は同側性に終わる。前庭神経二次線維は両側性に視床の中継核へ投射し、その数は中等度で、後外側腹側核に終止する。前庭からの入力を受ける視床の細胞は体性感覚情報にも対応するが、これは視床には特定の前庭感覚中継核がないことを示唆している。)
- 869_09【Reticular formation網様体(橋被蓋の);橋網様体 Formatio reticularis tegmentum pontis】
→(橋網様体は、主として下(橋)網様核と上(核)網様核の2つの大きな細胞集団よりなる。下網様核は延髄の巨大細胞網様核の上方部に相当し、上方は三叉神経運動核の高さにまで及ぶ。上網様核は、上方が中脳下部にまで伸びるが、正確な境界は明らかではない。橋網様体の細胞からは非交叉性の網様体脊髄路が起こり、脳幹では内側縦束の一部として下行する。その他の細胞からの線維には中心被蓋路の一部として上行するものもあり、また多くの細胞の線維は二分して上方および下方に分枝を送る。このうち上行枝は中心被蓋路を経て視床の髄板内核に投射する。これらの視床核に至るインパルスは大脳皮質の広い部位の電気活動に強い影響を及ぼす。橋にあるその他の網様核として被蓋網様核と上中心核がある。前者は縫線の近くで内側毛帯の背側にあり、胸郭が被蓋の中にあり、菱脳峡の高さで大きくなり、縫線正中核となる。)
- 869_10【Raphe of pons橋縫線 Raphe pontis】 Middle line of the pons containing fibers from the nucleus of trigeminal nerve.
→(橋縫線は延髄縫線が橋背側部(被蓋)に続いたもの。)
- 869_11【Mesencephalic tract of trigeminal nerve三叉神経中脳路;三叉神経下行根 Tractus mesencephalicus nervi trigemini; Radix descendens [Nervus trigeminus]】 Fibers for the mesencephalic nucleus of trigeminal nerve that run lateral to the cerebral aqueduct in the floor of fourth ventricle. They convey proprioceptive impulses from the teeth, masticatory muscles, and temporomandibular joints.
→(三叉神経中脳路核の細胞体からの主な突起は鎌状をした三叉神経中脳路を作り、これは三叉神経運動核の高さまで下行し、側副枝を運動核に送るが、大部分は運動根の一部として脳外に出る。)
Gower's tract
- 869_12Gower's tract【Anterior spinocerebellar tract; Ventral spinocerebellar tract前脊髄小脳路;腹側脊髄小脳路;ガワース路 Tractus spinocerebellaris anterior】 Some of its fibers cross from the posterior horns to the contralateral side, ascend to the superior border of the pons, and bend around to the superior cerebellar peduncle. It transmits information from afferent nerves in the lower half of the body about muscle tone and limb position for coordination of lower limb movement.
→(ガワーズ路ともよばれる。前脊髄小脳路は発育が悪い。この伝導路は後脊髄小脳路の前方で脊髄の外側辺縁部に沿って上行する。これは最初下部胸髄にあらわれるが、その起始細胞は胸髄核ほどには、はっきりと分離していない。線維は第Ⅴ、Ⅵ、Ⅶ層の一部の細胞から起こる。この伝導路の起始となる細胞は、尾髄と仙髄から上方へ第一腰髄まで広がっている。前脊髄小脳路の線維は後脊髄小脳路より数が少なく、均一に太く、また、結局すべて交叉する。後脊髄小脳路のように、主として下肢からのインパルスの伝達に関与する。前脊髄小脳路を出す細胞はGolgi腱器官由来のⅠb群求心性線維からの単シナプス性興奮を受けるが、そのGolgi腱器官の受容範囲はしばしば下肢の各関節における一つの協力筋群を包含している。小脳へのこの経路は2個のニューロンで構成されている。すなわち①脊髄神経節のニューロンⅠおよび②腰髄、仙髄および尾髄の前角と後角の基部の散在性の細胞群のニューロンⅡである。ニューロンⅡの線維は脊髄内で交叉し外脊髄視床路の線維の辺縁部を上行する。その線維は橋上位の高さで上小脳脚の背側面を通って小脳に入る。この伝導路の大部分の線維はは対側の小脳虫部の前部のⅠからⅣ小葉に終わる。おの伝導路線維は下肢全体の協調運動や姿勢に関係するインパルスを伝達する。臨床的には、他の脊髄伝導路が混在するために、脊髄小脳路の損傷に対する影響を決めることは結局不可能である。小脳へ投射されるインパルスは意識の領野には入らないから、このような損傷によって触覚や運動覚が失われることはない。Gowers, Sir William Richard(1845-1915)イギリスの神経科医、病理学者。ロンドン大学の教授。ヘモグロビン測定器の発明(1878年)、検眼鏡の活用に尽力し、ブライト病での眼底所見を示す(1876年)。脊髄疾患について記し、このときガワーズ路を記述(「The diagnosis of disease of the spinal cord」, 1880)。彼はまた速記術に興味を持ち、医学表音速記者協会を創設した。)
- 869_13【Middle cerebellar peduncle中小脳脚;橋腕;橋小脳脚 Pedunculus cerebellaris medius; Brachium pontis】 Part conveying the transverse fibers of the pons, mainly neencephalic tracts, to the cerebellum.
→(中小脳脚(橋腕)は3対ある小脳脚のうち最大のもので、主として橋核から起始する線維からなり、橋底の正中線を越えて対側の背側に移り太い束となって橋被蓋の外側を乗り越えて小脳にはいる。少数の対側へ移らない線維もある。少数の側副線維が小脳核に達している以外ほとんどが橋小脳路線維からできている。)
- 869_14【Lateral lemniscus外側毛帯 Lemniscus lateralis】 Ascending continuation of the trapezoid body. It is part of the auditory pathway.
→(外側毛帯は中脳まで上行し、大部分の線維が下丘に終わる。背側および腹側蝸牛神経核からの線維は、背側、中間および腹側聴条として対側に向かい、多くは対側の台形体背側核におわるが一部はそのまま上行する。この上行する線維と同側の台形体背側核から出て上行する線維が一緒になって外側毛帯を形成する。外側毛帯は橋の高さで内側毛帯(系)の背外側の位置を占めて上行し、大部分は下丘に終わるが、一部は途中下丘のすぐ腹側に存在する外側毛帯核におわる。)
- 869_15【Nuclei of lateral lemniscus外側毛帯核 Nuclei lemnisci lateralis】 Groups of cells embedded in the lateral lemniscus.
→(外側毛帯核は背腹方向に長い帯状の神経核で、橋被蓋を中脳に向かって上行する外側毛帯中にある核で、外側毛帯の線維のあいだにはニューロンが散在している。腹側核、中間核、背側核に区別される。外側毛帯の線維の中にはこれらのニューロンとシナプス結合するものがある。左右の外側毛帯背側核と腹側核の間には、プローブスト交連Probst's commissureとよばれる交連線維がある。外側毛帯を構成する線維は上行し、下丘に終わっている。外側毛帯は脳幹の聴覚路の中でもっとも重要な物である。)
Flechsig's tract
- 869_16Flechsig's tract【Posterior spinocerebellar tract; Dorsal spinocerebellar tract後脊髄小脳路;背側脊髄小脳路;フレヒシッヒ路 Tractus spinocerebellaris posterior】 Uncrossed fibers traveling to the inferior cerebellar peduncle. Its function is similar to that of the anterior spinocerebellar tract.
→(後脊髄小脳路は胸髄核から出て交叉せずにすぐ側索周辺部の背側部を上行し、下小脳脚を通って同側の小脳の前葉、一部は虫部錐体、虫部垂などの皮膚に達する。脊髄の側索後外側辺縁部を上行するこの非交叉性の伝導路は胸髄核の大細胞から起始する。後根の求心性線維は直接に、または後索を上下行した後に胸髄核に終わる。胸髄核の大細胞は太い線維を出し、これは側索の後外側部(すなわち皮質脊髄路の外側)に入り、上行する。延髄にあってはこの伝導路の線維は下小脳脚に組み込まれ、小脳に入って同側性に虫部の吻側と尾側に終わる。虫部全部では線維は第Ⅰ小葉から第Ⅳ小葉に終わり、後部では主として虫部錐体と正中傍小葉に終わる。胸髄核は第三胸髄から尾方には存在しないから、尾方の髄節からの後根線維はまず後索内を上位の胸髄まで伝達され、それから胸髄核の細胞へ伝えられる。後脊髄小脳路を経由して小脳へ中継されるインパルスは伸展受容器である筋紡錘やGolgi腱器官および触圧覚受容器から起こる。胸髄核のニューロンは主としてⅠa群、Ⅰb群およびⅡ群の求心線維を経由する単シナプス性興奮を受ける。Ⅰ群の求心性線維と胸髄核の間のシナプス結合では高頻度のインパルスの伝達が行われる。一部の外受容器由来のインパルスもまた後脊髄小脳路を経由して伝達される。これらは皮膚の触覚と圧覚の受容器およびゆっくり反応する圧受容器に関係する。後脊髄小脳路は脊髄レベルおよび小脳の終始部において体部位局在性に配列されている。伝導路によって伝達されるインパルスは意識のレベルに達することはない。これらの伝導路によって伝達されるインパルスは姿勢とここの四肢筋の運動の細かい協調作用に役立っている。)
- 869_17【Medial lemniscus内側毛帯 Lemniscus medialis】 Ascending fibers passing from the decussation of medial lemniscus through the brainstem to the thalamus. They convey impulses of general cutaneous sensation.
→(延髄の後索(薄束および楔状束)を通過する伝導路は圧覚と触覚や固有知覚の興奮を後索核(薄束核および楔状束核)や視床を経て大脳皮質に伝達する神経路である。薄束核および楔状束核から起こる二次ニューロンは延髄視床路(内側毛帯)となり正中縫線近く延髄の中心を通り上行する。橋にはいると外側に広がり、橋核の背側縁を越えて上行する扁平な帯になる。中脳内では、黒質の背側縁を越えて赤核で外側に移る。内側膝状体まで内側を通り視床の後腹側核に入り、そこで終わる。視床を出た第3ニューロンの線維は、上行して大脳皮質におもむく。内側毛帯系は脊髄から上行する識別性感覚路の最初の一環を形成するのは後根を通って入ってくる太い有髄神経の枝であり、後索を上行する。後索を上行するこれらの神経線維は身体部位対応配列を示す。すなわち、仙骨神経根や腰神経塊を通って入ってくる上行枝は後索の内側部を占めて薄束を形成する。一方、頚神経根を通って入ってくる上行枝は後索の外側部を占めて楔状束を形成する。また、胸神経根を通って入ってくる少数の上行枝は、薄束と楔状束との間に位置する。薄束と楔状束は、延髄の尾側端でそれぞれ対応する神経核、すなわち、薄束核と[内側]楔状束核に終止する。ある後根が支配する皮膚領域は、同時にその後根の上下の後根からも支配されている。このように一定の皮膚領域を支配する隣接後根の神経線維群は、後根から後索、さらに後索核へと向かう経過のうちに、一つの神経束にまとまる。このような集束の結果として、隣接する皮節(dermatome)間の重なり合いは解消されるのであるが(一つの皮節からの情報を伝道する神経線維が集合して一つにまとまる)、後索で最初にみられたような層構造は次第に不明瞭になる。薄束核の背側部と[内側]楔状束核の背側部にはニューロンが幾つかの小群をつくって分布する。超す悪を上行する神経線維の中で、四肢の遠位部を支配するものがこれらのニューロン小群に終止して身体部位対応配列を示す。後索核の腹側部と吻側部では身体部位対応配列はあまり精細でない。後索には後核固有核から起こる内在性神経線維も含まれている。これらの内在性神経線維は後索核の腹側部と吻側部に終止する。その他、後側索(側索後部)を上行する神経線維は両側の後索核の腹側部と吻側部、およびZ群(group Z)に終止する。Z群は薄束核の吻側端に位置するニューロン群であり、下肢の筋からの入力を視床に中継する。上枝からの固有感覚性入力を中継するのは外側楔状束核である。この核から起こる投射神経線維は主として下小脳脚を通って小脳へ入る。後索核の腹側部と吻側部から起こる投射神経線維は、後索核背側部(ニューロンの小群の集合から成る)から起こる投射神経線維に比べて、分布範囲が広い。すなわち、前者も後者も反対側の視床へ向かうのであるが、前者はさらに小脳や下オリーブ核に投射し、脊髄の後角へ向かうものもある。薄束核と[内側]楔状束核からは内弓状線維が起こり、正中部で交叉してのち、内側毛帯を形成して上行枝、視床の後外側腹側核、後核群、内側膝状体大細胞部、および不確帯に終止する。後索核から後外側腹側核への投射は”核と殻(core-and-shell)”の様式を示す。すなわち、後索核背側部から起こる皮膚感覚の投射線維は後外側腹側核の中心部(すなわちcoreの部分)に終止し、後索核腹側部と吻側部から起こる固有感覚の投射線維は後外側腹側核の辺縁部(すわなち、shellの部分)に終止する。内側毛帯線維は後外側腹側核において一連の平行な層板をなして終止する。これらの層板は核のcoreの部分とshellの部分を通じて前後方向に伸びており、それぞれの層板が身体の特定の部位に対応している。また、各層板の前後軸に沿って、種々の感覚要素に対応する投射線維の終末が次々と配列分布する。)
- 869_18【Deep pontine fibres深橋線維 Fibrae pontis profundae】
→()
- 869_19【Longitudinal pontine fasciculi; Longitudinal pontine bundles橋縦束;縦束 Fasciculi longitudinales pontis】
→(橋縦束は皮質遠心性の太い神経束で、橋腹側部を縦走する。皮質網様体、中脳蓋橋、皮質橋、皮質延髄、および皮質脊髄線維からなる。)
- 869_20【Superficial pontine fibres浅橋線維 Fibrae pontis superficiales】
→()