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- 876_00【Brain stem脳幹 Truncus encephali】 Collective anatomical term for the rhombencephalon and mesencephalon. The clinical definition includes the basal ganglia, diencephalon, and portions of the 【rhinencephalon】.
→(TAで脳幹は髄脳(延髄)、橋、中脳を脳幹と定義している。かつては、脳を運ぶ際に脳幹をもって運んでいた、脳幹は、脳の柄のような部分という意味で付けられた。日本の神経解剖の教科書では間脳を含める場合や間脳と大脳核を含めて脳幹と称している場合が多いので注意をようする。)
- 876_01【Interfastigial decussation室頂核間交叉 Decussatio interfastigiosa】
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- 876_02【Fastigial nucleus; Nucleus medialis cerebelli室頂核;小脳内側核;内側核 Nucleus fastigii; Nucleus medialis cerebelli】
→(室頂核は小脳核のうち最も内側で、第四脳室上壁の正中線知覚に位置する。核の中で細胞に差があり、小型細胞が腹側を示す。この核の外側縁の細胞は腹外側に伸びて前庭神経核に向かっているが、GolgiⅡ型細胞は存在しないようである。他の小脳核の細胞と異なり、室頂核細胞からは交叉性および非交叉性軸索が出、そのうち交叉性のものは核の吻側部から多く出る。小脳核の細胞はPurkinje細胞とは異なり、促進的で、小脳の外に投射する。免疫組織化学の研究結果から、小脳核の全ての細胞の促進性伝達物質はグルタミン酸塩およびアスパラギン酸塩であるらしいと考えられる。小脳皮質からの唯一の出力であるプルキンエ細胞は一定の配列様式をもって小脳核に投射し、小脳髄質中に存在する細胞群(小脳核)から起こる促進性出力系に対して抑制的に働く。室頂核からの遠心性線維は、①上小脳脚を通らない、②大部分が小脳内で交叉する。③脳幹各部の神経核に投射する、点で特徴的である。室頂核からの交叉性線維は鈎状束を通って小脳の外に出るが、これは上小脳脚の周囲を弓形に走る。また非交叉性線維は傍索状体を通って脳幹に投射する。鈎状束中の交叉性線維は室頂核のすべての部位の細胞から起こり、その数は傍索状体中を走る非交叉性線維より多い。室頂核からの投射線維のうちで最も多いのは下位脳幹へ到るものである。前庭神経核への投射は両側性で、前庭神経外側核および下核の腹側部に対称性に終わる。室頂核網様体線維は主に核の吻側部から起こり、大部分交叉して、①巨大細胞性網様核の内側部、②橋網様体尾側部、③傍正中網様核背側部および④外側網様核の各部に終止する。交叉性の室頂核橋線維は鈎状束から分かれて腹側に走り、橋核の背外側部に終わる。また少数の交叉性室頂核脊髄線維が上部頚髄まで下行し、そこで前柱細胞に接続する。室頂核からの線維のうち、少数のものは脳幹の背外側部を上行し、側枝を上丘および交連核に送り視床の細胞が疎らな部位(VLcとVPLo)に両側性に終わる。これらの終止は歯状核および中位核からの中位核からの終止と重なり合うことはない。)
- 876_03【Medullary reticular formation延髄網様体 Formatio reticularis; Substantia reticularis】
→(延髄網様体は系統発生的に脳幹の中で最も古い部分で、脳幹の中心の基質を形成している。菱脳蓋中、迷走神経核、前庭神経核および顔面神経核近くに位置する核。鰓弓および身体の筋肉の調節作用をおこなう。網様体は上方および下方につづいている。)
- 876_04【Raphe of medulla oblongata延髄縫線 Raphe medullae oblongatae】 Seamlike median line at the decussation of medial lemniscus.
→(延髄の縫線は毛帯交叉のなかの正中線。間に神経細胞体が分散している線維束の交叉が特徴。)
- 876_05【Medial longitudinal fasciculus; MLF内側縦束 Fasciculus longitudinalis medialis】 Bundle of various fiber systems that enter and leave at different levels. Its fibers interconnect the motor nuclei of cranial nerves and also connect the vestibular apparatus with ocular muscles, neck muscles, and the extrapyramidal system. This serves to coordinate muscle groups, e.g., masticatory, tongue, and pharyngeal muscles when swallowing or speaking; or ocular muscles for movements of the globe.
→(前索の後部には脳幹のいろいろなレベルにある種々な神経核からでる複雑な下行線維束がある。この複雑な神経線維束は内側縦束として知られている。この神経束の脊髄部は同じ名称で呼ばれる脳幹にある伝導路の一部にすぎない。内側縦束の上行線維は主として前庭神経内側核および上核から起こり、同側性および対側性に主として外眼筋支配の神経核(外転、滑車、動眼神経核)に投射する。内側核からの上行線維は主に交叉をし、両側の外転神経核と左右の動眼神経核に非対称性に終わるが、滑車神経核へは対側性に投射する。上核の中心部にある大形細胞は非交叉性上行線維を内側縦束に出し、これは滑車神経核および動眼神経核に終わる。同核の周辺部にある周辺部にある小型細胞は交叉性の腹側被蓋束(内側縦束の外側にある)を経て動眼神経核に投射するが、これは主として対側の上直筋を支配する細胞に作用する。生理学的には、前庭神経核から外眼筋支配核から外眼筋支配核への上行性投射のうち、交叉性線維は促進的に働くが、非交叉性線維は抑制的に働く。内側縦束にはこのほかに、左右の外転神経核の間にある神経細胞から起こり、交叉して上行し、動眼神経核の内側直筋支配部に終わる明瞭な線維が含まれる。この経路は一方の外転神経核の活動を対側の動眼神経核内側直筋支配部へ連絡する物で、外側視の場合に、外側直筋が収縮すると同時に対側の内側直筋が共同して収縮するための神経機構を形成している。内側縦束の上行線維の一部は、動眼神経核を回ってCajal間質核に終わる。これは内側縦束内にうまっている小さい神経細胞群である。前庭神経内側核は対側性に間質核へ投射するが、上核は同側性に終わる。前庭神経二次線維は両側性に視床の中継核へ投射し、その数は中等度で、後外側腹側核に終止する。前庭からの入力を受ける視床の細胞は体性感覚情報にも対応するが、これは視床には特定の前庭感覚中継核がないことを示唆している。)
- 876_06【Medial vestibular nucleus in medulla oblongata前庭神経内側核;内側前庭神経核 Nucleus vestibularis medialis in medulla oblongata】 (Schwalbe's nucleus) Terminal nucleus located lateral to the sulcus limitans that receives afferents from the ampullary crests and the maculae of saccule and utricle. Its efferents travel bilaterally in the medial longitudinal fasciculus to nuclei of the extraocular muscles, Cajal's interstitial nucleus, and into the spinal cord.
→(前庭神経内側核は小型および中型細胞からなり、比較的線維が少ない。これは前庭神経核のうちで最も大きく、舌下神経核の吻側端の高さから外転神経核の高さまで伸び、上方は前庭神経上核と融合する。前庭神経内側核から起こり内側前庭神経核脊髄路を下行する神経線維は反対側の中心頚髄核にも終止する。)
- 876_07【Root of facial nerve顔面神経根 Radix nervus facialis】
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- 876_08【First part of facial nerve root顔面神経根第1部 Pars prima radicis nervus facialis】
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Bechterew, Nucleus of
- 876_09Bechterew, Nucleus of【Superior vestibular nucleus前庭神経上核;上前庭神経核;前庭神経背側核;ベヒテレフ核 Nucleus vestibularis superior; Nucleus terminalis dorsalis nervus vestibuli; Nucleus angularis (Bechterew)】 Nucleus situated above the lateral vestibular nucleus that receives afferents from the ampullary crests. It has projections to the medial longitudinal fasciculus and cerebellum.
→(ベヒテレフ核とも呼ばれる。前庭神経上核は前庭神経外側核の上方背側にあり、その背側を上小脳脚の線維が通る。核の中央には大型細胞があり、その周囲をそれより小形の細胞が取り囲んでいる。Bechterew, Vladimir Michaliorich (Bekhterev)(1857-1927)ロシアの神経学者。1893年からペテルスブルグ大学の教授。1918年に同市の脳精神研究所の初代所長となる。ロシアの神経学の先駆者、聴神経のベヒテレフ核、大脳皮質のベヒテレフ層、ベヒテレフ病(強直性脊椎関節炎)を記述(1892年))
Deiters' nucleus
- 876_10Deiters' nucleus【Lateral vestibular nucleus前庭神経外側核;外側前庭神経核;ダイテルス核 Nucleus vestibularis lateralis】 Smaller collection of cells near the lateral recess of the rhomboid fossa with projections to the anterior horn of the spinal cord.
→(前庭神経外側核はダイテルス核ともよばれる。前庭神経核は4つの小核からなるが、その内の外側核をいう。前庭神経外側核は前庭神経が脳幹内に入る高さにあり、巨大型細胞よりなるが、細胞の数および形には部位的差異が認められる。前庭神経の根線維はこの核の腹側部を通る。ドイツの解剖学者Otto Friedrich Karl Deiters (1834-1863)によって記載された。)
- 876_11【Restiform body索状体;髄小脳脚 Corpus restiforme; Corpus medullocerebellare】 Posterolateral group of afferent fibers passing to the cerebellum.
→(索状体は下小脳脚の大部分を占める外側部の純求心性線維束である。脊髄から小脳への脊髄小脳線維と延髄から小脳への楔状束小脳線維・網様体小脳線維を含む。)
- 876_12【Vestibular nerve前庭神経;平衡神経;前庭部(内耳神経の) Nervus vestibularis; Nervus staticus; Pars vestibularis】 Collection of fibers of the vestibular apparatus that travel to the vestibular nuclei. Upper portion of the vestibulocochlear nerve.
→(前庭神経は内耳神経のうち前庭根より末梢の部分。内耳道底に前庭神経節を有するが、これはラセン神経節と同じく双極神経細胞からなり、この点は、前庭神経と蝸牛神経とは発生学的に相同であって偽単極性神経細胞からなる脊髄神経節とは異なる。)
- 876_13【Anterior cochlear nucleus; Ventral cochlear nucleus蝸牛神経前核;蝸牛神経腹側核;腹側蝸牛神経核 Nucleus cochlearis anterior; Nucleus cochlearis ventralis】 Nucleus that can be subdivided into two parts.
→(蝸牛神経腹側核は発育がよく、下小脳脚の腹外側で、蝸牛神経の根の外側にある。蝸牛神経腹側核はその部位と細胞構築によって、前腹側核と後腹側核の2亜核に分けられる。蝸牛神経腹側前核anteroventral cochlear nucleusは吻側で卵円形細胞が密につまっており、また蝸牛神経腹側後核posteroventral cochlear nucleusは蝸牛神経の脳内侵入部近くにあって種々の形の神経細胞よりなるが、そのうちの主な物は多極性である。これらの亜核には音階的配列があり、音階に応じて連続的に対応している。蝸牛神経の線維は脳幹内に入ったのち、規則正しく順番に分岐して蝸牛神経背側核および腹側核の両方に音快的配列をもって終止する。蝸牛神経核内で線維が次々と規則正しく分岐と分布を行うので全ての亜核内で重なりあった周波数配列が認められる。蝸牛神経核では高い周波数に反応する細胞が背側に、低い周波数に反応する細胞が腹側に位置するが、これは蝸牛とは反対の配列である。)
- 876_14【Trapezoid body台形体 Corpus trapezoideum】 Interwoven, crossing fibers from the two anterior cochlear nuclei. It is part of the auditory pathway.
→(台形体は橋下位の高さで蝸牛神経腹側核および一部台形体背側核(上オリーブ核)から出て橋被蓋の背側部を横走し対側に向かう線維の総称(もしくはこれらの線維で構成された部位)。これらの線維は交叉の後、前背側方に進み、外側毛帯に加わる。)
- 876_15【Motor nucleus of facial nerve顔面神経核 Nucleus nervi facialis】 Motor nucleus for innervation of the masticatory muscles located near the level of the exit of the nerve.
→(第7脳神経、すなわち顔面[中間]神経を形成する神経線維のうち、表情筋・広頚筋・アブミ骨筋・茎突舌骨筋などの横紋筋を支配する運動神経線維の起始核であり、橋の最尾側レベルにおいて橋被蓋の腹外側部に位置する。顔面神経核からおこる神経線維は核の背側から出て背内頭側に走り(顔面神経上行根)、第四脳室底の直下で外転神経核の内側部に達してはじめて密な神経束を形成する。ついで、この線維束は外転神経核の頭側レベルで核の背側を外側に向かい顔面神経膝を形成する。ついで、線維束は三叉神経脊髄路核の内側縁に沿うように腹外側に走り(顔面神経下行根)、橋の尾側レベルで脳幹を出る。顔面神経の支配を受ける横紋筋のうち顎二腹筋後腹は副顔面神経核に支配される。副顔面神経核の神経細胞は顔面神経核と三叉神経運動核を結ぶ線上に散在性に存在する。顔面神経に含まれる副交感神経線維の起始核として、上唾液核が記載されている。この核の神経細胞は、橋被蓋網様体の尾側レベルでその背外側部において、三叉神経脊髄路核の内側縁付近に比較的散在性に存在するようである。)
Varolius, Pons of
- 876_16Varolius, Pons of【Pons橋 Pons】 Part of the brain situated between the interpeduncular fossa and the pyramids. It surrounds the anterior part of the fourth ventricle and consists mainly of descending tracts from the cerebrum that travel to nuclei, synapse, cross, and continue to the cerebellum.
→(Ponsとは、橋(ハシ)という意味である。腹側から見ると左右の小脳半球の間に架かった太鼓橋の様に見えるところから橋という名前が付けられた。比較解剖学的には、橋が延髄から区別されるのは哺乳類に限られ、橋は人類で最もよく発達している。後脳の腹側部にあたる。すなわち、小脳の腹側に位置しており、延髄と中脳の間に介在する。橋の腹側面は横走する幅広い神経線維束(横橋線維)によっておおわれる。この神経線維束はさらに橋の外側面において、橋と小脳を連結する中小脳脚を形成しており、左右の小脳半球の間にかかる「橋」のようにみえる。橋は既にユースタキウスEustachius (1524-1574)の図に載っているというが、この図は1714年まで出版されなかったので、Ponsという名称は、このような外見に基づいて、イタリアの解剖学者であり外科医でもあったC.Varolio (1543-1573)が用いたものである(ヴォロイオ橋)。橋は横断面では橋腹側部または橋底部と橋背部または橋被蓋とに区分される。両者の境界は橋被蓋の腹側部を上行する内側毛帯の腹側縁にあたる。橋底部の神経線維群には、上記の横橋線維のほかに、橋底部の中心部を縦走する橋縦束があり、神経細胞としては橋縦束を取り囲んで橋核が存在する。橋縦束の線維はその大部分が大脳皮質からの下行神経線維であり、橋核に連絡する皮質橋核路を含む。橋核は大脳皮質からおこる求心性神経線維のほか、小脳核や上丘からおこる求心性神経線維を受けることが知られている。橋核からおこる遠心性神経線維は横橋線維、ついで中小脳脚を形成して、主として反対側の小脳半球の皮質に連絡する。また、その際、小脳核、とくに歯状核に側枝を送る可能性が大きい。このように、橋縦束・橋核・橋横線維は大脳皮質や小脳半球など、系統発生的に新しい部位との関係が深く、哺乳動物ではじめて出現する構造であって、高等な哺乳類において良好な発育を示す。 一方、橋被蓋は系統発生的に古い構造であり、脳幹網様体の基本構造を示す部位がもっとも広い領域を占める。脳神経核としては、三叉神経核(主感覚核・脊髄路核・中脳路核・運動核)・顔面神経核・内耳神経核(蝸牛神経核と前庭神経核)が存在する。また、橋被蓋の外側部を上行する外側毛帯、および橋被蓋の腹側部を横走する台形体の線維は聴覚路を形成する神経線維群であり、聴覚神経路の中継核として、外側毛帯核および台形体核が存在する。その他の線維群としては、第四脳室底の腹側において正中線背側部の両側を内側縦束が縦走し、上小脳脚が第四脳室蓋の外側部を形成している。また、神経細胞群としては、橋被蓋の背外側部に青斑核が、上小脳脚の周辺部には結合腕傍核が存在する。)
Gower's tract
- 876_17Gower's tract【Anterior spinocerebellar tract; Ventral spinocerebellar tract前脊髄小脳路;腹側脊髄小脳路;ガワース路 Tractus spinocerebellaris anterior】 Some of its fibers cross from the posterior horns to the contralateral side, ascend to the superior border of the pons, and bend around to the superior cerebellar peduncle. It transmits information from afferent nerves in the lower half of the body about muscle tone and limb position for coordination of lower limb movement.
→(ガワーズ路ともよばれる。前脊髄小脳路は発育が悪い。この伝導路は後脊髄小脳路の前方で脊髄の外側辺縁部に沿って上行する。これは最初下部胸髄にあらわれるが、その起始細胞は胸髄核ほどには、はっきりと分離していない。線維は第Ⅴ、Ⅵ、Ⅶ層の一部の細胞から起こる。この伝導路の起始となる細胞は、尾髄と仙髄から上方へ第一腰髄まで広がっている。前脊髄小脳路の線維は後脊髄小脳路より数が少なく、均一に太く、また、結局すべて交叉する。後脊髄小脳路のように、主として下肢からのインパルスの伝達に関与する。前脊髄小脳路を出す細胞はGolgi腱器官由来のⅠb群求心性線維からの単シナプス性興奮を受けるが、そのGolgi腱器官の受容範囲はしばしば下肢の各関節における一つの協力筋群を包含している。小脳へのこの経路は2個のニューロンで構成されている。すなわち①脊髄神経節のニューロンⅠおよび②腰髄、仙髄および尾髄の前角と後角の基部の散在性の細胞群のニューロンⅡである。ニューロンⅡの線維は脊髄内で交叉し外脊髄視床路の線維の辺縁部を上行する。その線維は橋上位の高さで上小脳脚の背側面を通って小脳に入る。この伝導路の大部分の線維はは対側の小脳虫部の前部のⅠからⅣ小葉に終わる。おの伝導路線維は下肢全体の協調運動や姿勢に関係するインパルスを伝達する。臨床的には、他の脊髄伝導路が混在するために、脊髄小脳路の損傷に対する影響を決めることは結局不可能である。小脳へ投射されるインパルスは意識の領野には入らないから、このような損傷によって触覚や運動覚が失われることはない。Gowers, Sir William Richard(1845-1915)イギリスの神経科医、病理学者。ロンドン大学の教授。ヘモグロビン測定器の発明(1878年)、検眼鏡の活用に尽力し、ブライト病での眼底所見を示す(1876年)。脊髄疾患について記し、このときガワーズ路を記述(「The diagnosis of disease of the spinal cord」, 1880)。彼はまた速記術に興味を持ち、医学表音速記者協会を創設した。)
Flechsig's tract
- 876_18Flechsig's tract【Posterior spinocerebellar tract; Dorsal spinocerebellar tract後脊髄小脳路;背側脊髄小脳路;フレヒシッヒ路 Tractus spinocerebellaris posterior】 Uncrossed fibers traveling to the inferior cerebellar peduncle. Its function is similar to that of the anterior spinocerebellar tract.
→(後脊髄小脳路は胸髄核から出て交叉せずにすぐ側索周辺部の背側部を上行し、下小脳脚を通って同側の小脳の前葉、一部は虫部錐体、虫部垂などの皮膚に達する。脊髄の側索後外側辺縁部を上行するこの非交叉性の伝導路は胸髄核の大細胞から起始する。後根の求心性線維は直接に、または後索を上下行した後に胸髄核に終わる。胸髄核の大細胞は太い線維を出し、これは側索の後外側部(すなわち皮質脊髄路の外側)に入り、上行する。延髄にあってはこの伝導路の線維は下小脳脚に組み込まれ、小脳に入って同側性に虫部の吻側と尾側に終わる。虫部全部では線維は第Ⅰ小葉から第Ⅳ小葉に終わり、後部では主として虫部錐体と正中傍小葉に終わる。胸髄核は第三胸髄から尾方には存在しないから、尾方の髄節からの後根線維はまず後索内を上位の胸髄まで伝達され、それから胸髄核の細胞へ伝えられる。後脊髄小脳路を経由して小脳へ中継されるインパルスは伸展受容器である筋紡錘やGolgi腱器官および触圧覚受容器から起こる。胸髄核のニューロンは主としてⅠa群、Ⅰb群およびⅡ群の求心線維を経由する単シナプス性興奮を受ける。Ⅰ群の求心性線維と胸髄核の間のシナプス結合では高頻度のインパルスの伝達が行われる。一部の外受容器由来のインパルスもまた後脊髄小脳路を経由して伝達される。これらは皮膚の触覚と圧覚の受容器およびゆっくり反応する圧受容器に関係する。後脊髄小脳路は脊髄レベルおよび小脳の終始部において体部位局在性に配列されている。伝導路によって伝達されるインパルスは意識のレベルに達することはない。これらの伝導路によって伝達されるインパルスは姿勢とここの四肢筋の運動の細かい協調作用に役立っている。)
- 876_19【Lateral vestibulospinal tract外側前庭脊髄路;外側前庭神経核脊髄路 Tractus vestibulospinalis lateralis】 Tract receiving efferent fibers from the Deiters' nucleus which extend to the sacral spinal cord and terminate at the cells of the anterior horn of laminae VII and VIII. Their function in humans has not been clearly shown.
→(ダイテルス脊髄路ともよばれる。前庭神経核群から出て脊髄に向かう線維の経路を前庭脊髄路と総称する。このうち前庭神経外側核(Deiters核)から起こり交叉せず、延髄腹外側部を下行し、脊髄の前索外側部を経て同側の脊髄前角の内側部におわる経路を外側前庭脊髄路(狭義の前庭脊髄路)という。この伝導路は脊髄の全長にわたっており、それぞれの高さで前角内側部に線維を送っている。この経路には体局在性が存在し、外側前庭神経核のなかでその上腹側部から出たものは頚髄へ、下背側部から出たものは腰仙髄へ、これらの中間からは胸髄へいたる。この神経路の運動興奮によって深筋群の活動が強まる。)
- 876_20【Lemniscal interolivary layer毛帯オリーブ間層;絨帯オリーブ間層 Stratum interolivare lemnisci】
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- 876_21【Pyramid of medulla延髄錐体;錐体(延髄の) Pyramis medullae oblongatae; Pyramis bulbi】 Longitudinal prominence consisting of fibers from the pyramidal tract on both sides of the anterior median fissure. It ends at the decussation of pyramids.
→(延髄錐体は前正中裂両側にある隆起。第一脊髄神経根を越え、錐体交叉で終わる。皮質脊髄路が通る。皮質脊髄路は延髄下端で、外側皮質脊髄路と前皮質脊髄路に分かれる。錐体路の線維の85%以上は錐体交叉により外側皮質脊髄路に入る。)
- 876_22【Globose nucleus; Posterior interpositus nucleus球状核;後中位核 Nucleus interpositus posterior; Nucleus globosus】 Collection of cells lying medial to the dentate nucleus.
→(球状核は2~3個の円い細胞集団で、栓状核の内側、室頂核の外側に位置する。ここには大型および小型の多極細胞がある。下等哺乳動物では栓状核と球状核は連続しているように見え、これらを一括して中位核とよぶ。その組成細胞および線維連絡の違いにより、これはヒトの、①栓状核に相当する前中位核と、②球状核に相当する後中位核に区別される。)
- 876_23【Emboliform nucleus; Anterior interpositus nucleus栓状核;前中位核 Nucleus interpositus anterior; Nucleus emboliformis】 Cerebellar nucleus situated directly in front of the hilum of the dentate nucleus.
→(栓状核は楔形の細胞集団で、歯状核門の知覚に位置する。歯状核とよく似た細胞からなり、しばしば両者を区別することが困難である。小脳皮質中間域のPurkinje細胞の軸索を受ける。この核の細胞の軸索は上小脳脚から小脳を出て行く。 TAではAnterior interpositus nucleus; Emboliform nucleusとなっている。)
- 876_24【Dentate nucleus; Nucleus lateralis cerebelli歯状核;小脳外側核 Nucleus dentatus; Nucleus lateralis cerebelli】 Largest cerebellar nucleus. It resembles a folded pouch and is situated in the white substance of cerebellum.
→(歯状核は小脳核の中で最も外側にある最も大きい核。小脳半球の白質中に位置する。この核は横断切片では渦巻形の灰白質が袋状に並び、袋の口(歯状核門)が内側方に向かい、下オリーブ複合核によく似ている。核は主に大型で多くの分枝した樹状突起をもつ多極細胞よりなる。より内側に位置している球状核や栓状核とともに、上小脳脚または結合腕を形成する線維の主な起始をなす。)
- 876_25【Acoustic stria of von Monakow聴条;モナコフ聴条 Striae acusticae (Monakow)】
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- 876_26【Peduncle of flocculus片葉脚;片葉柄 Pedunculus flocculi】 Connecting stalk, part of which is continuous with the inferior medullary velum.
→(片葉脚は虫部小節との結合索で一部は下髄帆に移行する。)
- 876_27【Spinal nucleus of trigeminal nerve三叉神経脊髄路核;三叉神経脊髄核 Nucleus spinalis nervi trigeminalis】 Long column of cells in the cervical spinal cord that is bounded rostrally by the principal sensory nucleus, and extends caudally into laminae I-V of the posterior horn of the spinal cord. It constitutes a termination site for protopathic afferents.
→(三叉神経脊髄路核は三叉神経脊髄路の内側にそってあり、橋の三叉神経根のレベルから第二頚髄まで存在する。三叉神経脊髄路の線維は全域にわたってこの神経核の細胞に終止する。細胞構築上三叉神経脊髄核は①吻側部、②中間部、尾側部に分けられる。)
- 876_28【Spinal tract of trigeminal nerve三叉神経脊髄路 Tractus spinalis nervi trigemini】 Descending fibers from the trigeminal nerve for pain and temperature stimuli.
→(三叉神経脊髄路は延髄から橋の横断面上にコンマ状に明確に認められる線維束。脊髄路核の各部の第Ⅰ層と第Ⅲ層細胞から起こる。これらのうち、下部と中間部からの線維は同側性であるが、上部からのものは両側性に下行し、後柱に入る感覚性情報を調節し、種々の反射に関係し、さらに三叉神経支配の受容器と脊髄の体性および内臓性効果器を連絡している。)
- 876_29【Flocculus [H X]片葉[第X半球小葉] Flocculus [H X]】 Paw-shaped part of the cerebellum located between the inferior cerebellar peduncle and biventral lobule.
→(片葉は下小脳脚と二腹小葉の後方で中小脳脚後縁にある小脳の小葉。虫部結節と連絡しており、これらの2つの構造は小脳前庭部を構成する。Larsellの区分に従えば小脳半球小葉(H-Ⅹ)に相当する。)
- 876_30【Cochlear nerve蝸牛神経;聴神経;蝸牛神経根 Nervus cochlearis; Nervus acusticus; Nervus octavi; Pars cochlearis; Radix nervi cochlearis; Radix nervi cochlearis】 Collection of fibers passing from the cochlea to the cochlear ganglion.
→(蝸牛神経は内耳神経の一部をなす神経で、内耳道を通り蝸牛に達すると神経細胞体の集団(ラセン神経節、時に蝸牛神経節ともよばれる)を含むようになる。蝸牛神経の末梢枝は蝸牛内のラセン器に達する。ラセン神経節の神経細胞体から出る授受突起が蝸牛神経末梢枝の中を走行し、神経突起が蝸牛神経本幹および蝸牛根を経て中枢の蝸牛神経核に向かう。すなわち蝸牛神経は聴覚を伝える神経であるということができる。なお球形嚢に分布する神経として球形嚢神経があるが、これも聴覚の一部を伝えるする説が有力である。)
- 876_31【Inferior olivary complex下オリーブ核群;下オリーブ複合体;オリーブ核 Complexus olivaris inferior; Nuclei olivares inferiores; Nucleus olivaris】 Nuclear complex of the inferior olive.
→(下オリーブ核は延髄腹側部にあり、①主オリーブ核(主核)、②内側副オリーブ核(内側副核)、③背側副オリーブ核(背側副核)の三つの部分から成る。主オリーブ核は系統発生的に新しく、ヒトおよびサルなどの高等哺乳類では発育がよい。その形はしわのある袋状をなし、その内側に向けられた袋の口はオリーブ核門とよばれる。そこにはオリーブ核の細胞の軸索が集まって出るところである。オリーブ核からの遠心路はオリーブ小脳路となる。主オリーブ核は系統発生的に新しい小脳の半球皮質と結合し、副オリーブ核は虫部および中位核(栓状核、球状核)と結合する。オリーブ核は非常に広汎な領域からの求心線維を受け、その終枝には局在性が認められる。その起源は大脳皮質運動野、赤核、視蓋前域、不確帯、Cajal間質核、後索核、三叉神経脊髄路核、小脳核(歯状核と中位核)および脊髄などである。)