886
- 886_01【Anterior commissure前交連 Commissura anterior】 Transverse nerve fibers between the anterior parts of the right and left cerebral hemispheres. It lies posterior to the lamina terminalis.
→(間脳の前交連は第三脳室の前壁をつくる終板の後ろにある横走線維束である。小さくて左右の嗅球を連結する前部と、左右の側頭葉を連結する大きな後部からなる。)
- 886_02【Hidden part of column of fornix脳弓柱蓋部;脳弓柱没部 Pars tecta columnae fornicis】
→()
- 886_03【Head of caudate nucleus尾状核頭 Caput nuclei caudati】 Anterior portion of the nucleus. It forms that lateral wall of the anterior horn of lateral ventricle.
→(尾状核頭は側脳室の前角の中に膨隆し、その外側壁をなし、視床の前方に位置する。尾状核頭は後方にしだいに小さくなり、視床の出現とともにその背外側に位置するようになり、尾状核尾に移行する。)
- 886_04【Anterior limb of internal capsule前脚(内包の);内包前脚;内包前頭部 Crus anterius (Capsula interna); Pars frontalis capsulae internae】 Portion of the anterior capsule situated between the lentiform nucleus and head of caudate nucleus.
→(内包前脚はレンズ核(被殻および淡蒼球)と尾状核頭部との間にり、内包膝の前方に存在する。内包前脚には、前視床放線、前頭橋核路が含まれる。)
- 886_05【Putamen被殻 Putamen】 Lateral telencephalic part of the lentiform nucleus.
→(被殻はレンズ核の外側部を形成し、外側髄板によって淡蒼球の外節とへだてられている。島皮質とは最外包、前障、外包によってわけられる。被殻の構造は尾状核とまったく同様で、太い有髄線維をほとんど含まず、主として小さい神経細胞からなるが、散在性の大細胞を含む。被殻と尾状核は発生学的にみると、同一の細胞群が内包の発達によって隔てられたもので、両者の間には互いに結合する灰白質の線条が多数見られる。そのため、両者をあわせて線条体または新線条体と呼ぶ。線維連絡も尾状核と原則的に等しい。霊長類において動物が高等になると、相対的な意味で尾状核の体積が減少し、被殻の体積が増大するといわれている。)
- 886_06【Claustrum前障 Claustrum】 Layer of gray substance between the lentiform nucleus and insular cortex.
→(前障はレンズ核と島との間にある、内側が凹面をなす板状の核で、腹側方に厚くなる。この核とレンズ核との間には外包があり、また島の皮質との間には最外包がある。これらは狭い白質で、大部分は連合線維から、一部は交連および投射線維からなる。前障は種々の視床核、扁桃体などから線維を受け、大脳皮質に広く投射する。前障は以前は線条体とともにいわゆる基底核に数えられたり、あるいは皮質層の付け足しとして島皮質に属するものとされた。しかしながら、発生学的ならびに比較解剖学的研究によって、前障は発生の途中で位置がずれた古皮質の細胞群であることが証明されている。前障はその広い底の所で古皮質の領域へ移行する(すなわち梨状前野や扁桃体の外側核へ)。頭頂葉、側頭葉および後頭葉の皮質からの、無髄線維が局在的配列をなして前障に終わると言われている。前障の機能についてはわかっていない。)
- 886_07【Pallidum; Globus pallidus; Paleostriatum淡蒼球;古線条体;旧線条体 Pallidum; Globus pallidus】 Structure arising in the diencephalon and forced by the internal capsule away from its original site, with the greater portion of the site giving rise to the subthalamus.
→(淡蒼球はレンズ核の最内側部を占め、被殻よりは小さい灰白質。垂直に走る板状の有髄神経線維(外側髄板)によって外側部の被殻と隔てられており、また、内側髄板によって内節と外節に分かれる。系統発生学的に線条体よりは古く、下等動物でよく発達している。発生に関しては、「間脳」性とするものののほか、その一部を「終脳」由来とするものがある。鉄反応が強陽性にでることが知られている。淡蒼球には大型の紡錘形ニューロンが多く、樹状突起は無棘で、長く髄板に平行して円板状に分枝する。淡蒼球の大型ニューロンの定量分析によれば、これらの細胞は単一のニューロン群に属する。淡蒼球の内節と外節の大型ニューロンには、なんら形態学的又は化学的な差異は見られない。ヒトでは外節は淡蒼球全体の約70%を占め、細胞密度が最も高い。淡蒼球の内節、外節の大型ニューロンはすべてGABA作働性である。淡蒼球ニューロンの軸索は少数の側枝を出している。淡蒼球の内側・外側髄板に存在する大型のコリン作働性ニューロンは、淡蒼球の腹側に存在する無名質のつづきである。多数の有髄線維束が淡蒼球を横走しているので、新鮮な脳では被殻や尾状核に比べ色が淡く見える。淡蒼球への求心性神経線維のもっとも主な起始は尾状核と被殻である。また、視床下核や黒質からの神経線維が内包を横切って主として内節に入る。淡蒼球が大脳皮質からの求心線維を受けるかどうかについては不確かである。視床からの求心線維については否定的な見解が多い。淡蒼球からおこる遠心性神経線維の主なものは視床と視床下核におわる。これらのうち、内節の腹側から出る神経線維は淡蒼球の腹側表面に集合してレンズ核ワナを形成し、内方後脚の腹内側部を背方にまわり、背尾側方へ走ってフォレル野に達する。一方、内節の背側からでる神経線維は淡蒼球の背内側部からおこる。これらは多数の小線維束として内包の腹側部を横切り、不確帯の腹側部に集合してレンズ核束(H2)を形成する。ついで、レンズ核束はフォレル野に入り、ここでレンズ核ワナの神経線維と一つになり、不確帯の内側端を取り囲むように腹側から背側にまわり、視床束(H1)を形成する。視床束は不確帯の背側を吻外方へ走り、視床に入って主として前腹側核(VA)、外腹側核(VL)、正中中心核(CM)などに分布する。なお、視床束には小脳視床線維も含まれている。淡蒼球から視床下核にいたる神経線維は主として外節からおこり、内包の尾側レベルにおいてその腹内側部を横切って視床下核に達する。淡蒼球からおこり中脳被蓋(脚橋被蓋核)や黒質へ向かう遠心性神経線維もある。)
Vicq d'Azyr's bundle
- 886_08Vicq d'Azyr's bundle【Mammillothalamic fasciculus乳頭体視床束;乳頭体視床路;乳頭視床束;乳頭視床路;ヴィック・ダジール束 Fasciculus mammillothalamicus; Tractus mamillothalamicus (Vicq d'Azyr)】
→(乳頭視床束は乳頭体と視床前核を結ぶ神経線維束。主乳頭束として、乳頭被蓋束とともに乳頭体の背側よりでる。乳頭体内側核からおこる神経線維は同側の視床前核のうちでも前腹束核と前内側核に分布し、乳頭体外側核からおこる神経線維は両側の視床前背側核に分布するといわれる。また、乳頭視床束には視床前核から乳頭立ちに向かう神経線維も少数含まれるらしい。)
Luys, Nucleus of (Corpus Luysii)
- 886_09Luys, Nucleus of (Corpus Luysii)【Subthalamic nucleus視床下核;ルイ体;ルイス体 Nucleus subthalamicus; Nucleus hypothalamicus】 Nucleus lying between the inferior end of the internal capsule and the zona incerta. It has reciprocal connections with the globus pallidus.
→(視床下核はルイ核ともよばれている。脳の断面の肉眼観察の際にも「目立つ」神経核であって、大型ニューロンから成り、間脳の最尾部において内包後脚の背内方に位置している。この神経核の内側部は黒質吻側部の背方に位置する。背側の不確帯とはレンズ核束(H2)によりへだてられている。核の境界は明瞭で、前頭断面では両凸レンズ形を呈し、矢状断面ではほぼ円形を呈する。核の尾側端のレベルでは、核の内側部が黒質の最吻側端の背縁に接している。主な求心出力神経線維を淡蒼球や脚橋被蓋核受け、また、遠心性神経線維を主として淡蒼球内節に送る。大脳皮質とくに前頭葉からの求心性線維や、黒質や淡蒼球への遠心性線維の存在が報告されているが、その他の線維連絡関係については不確実な点が多い。ヒトでこの核が損傷されると、反対側の半身に激しい不随意運動、すなわちヘミバリスムがおこる。視床下核の細胞はグルタミン酸塩を含有しており、淡蒼球と黒質のニューロンに興奮性に作用すると言われている。グルタミン酸塩は細胞の基礎代謝にも存在するもので、視床下核の細胞がグルタミン酸塩免疫反応陽性であっても、かならずしもグルタミン酸塩がこの核の細胞により使用される神経伝達物質とはいえない。視床下核は視床下部外側核の最後の細胞集団から発生してくる。吻側の細胞集団は淡蒼球の内節、外節の原基となる。Luys, Jules Bernard (1828-1898)フランスの神経学者。)
- 886_10【Posterior limb of internal capsule後脚(内包の);内包後脚;内包後頭部 Crus posterius (Capsula interna); Pars occipitalis capsulae internae】 Portion situated between the lentiform nucleus as well as thalamus and body of caudate nucleus.
→(内包後脚の主部は大部分視床とレンズ核の間の空間を占め、内包膝の後方にある内包の一部分でほぼ垂直の方向に走る線維群からなる。その前部に皮質脊髄線維(頭部を除く上半身に対する線維は前、下半身に対するものは後)があり、皮質脊髄線維の外側を皮質赤核路が走る。皮質脊髄線維の後方には上視床脚(視床後腹側核から大脳皮質の知覚野に至る線維および前外側腹側核から運動野と運動前野に行く線維を含む)がある。その後方に、レンズ核の後方をほぼ水平に後頭葉に向かう部分がある。これは後脚のレンズ後部で後視床脚、視放線、頭頂橋路、皮質被蓋路などがここを通る。後脚のレンズ下部はレンズ核の腹側を外側方に延びて側頭葉に向かう部分で、下視床脚、視放線および側頭橋路を含む。系統発生学的に古い投射路は古皮質および原始皮質から起こり、通常内包を通らず皮質かの脳部に至るもので、そのうち特異な所見を示すのは脳弓である。)
Meynert's retroflex bundle
- 886_11Meynert's retroflex bundle【Habenulo-interpeduncular tract; Fasciculus retroflexus手綱脚間核路;手綱脚間路;反屈束;マイネルト束 Tractus habenolointerpeduncularis; Fasciculus retroflexus】 Nerve tract connecting the habenulae and interpeduncular nucleus.
→(手綱三角の内部には内側および外側手綱核がある。内側核は小細胞性で、外側核は大小の細胞を含む。これらの核は手綱の線維を受け、主として脚間核に向かう反屈束または手綱脚間路を出す。)
- 886_12【Red nucleus赤核 Nucleus ruber】 Principal nucleus of the central tegmental tract. The iron-containing nucleus is situated between the periaqueductal gray substance and substantia nigra, extending from the superior colliculus into the diencephalon. It is composed of two or possibly more components.
→(赤核は中脳被蓋では最も明瞭な部分で、網様体のほぼ中央にあり、桃黄色を呈し、周囲を上小脳脚線維で囲まれている。赤核全体として卵円形で、横断面は円形を呈し、上丘の下端から間脳の下部まで広がる。細胞学的には後方の大細胞部と前方の小細胞部によりなる。赤核の細胞の間には主として上小脳脚からの有髄線維の細い束が存在する。動眼神経根の一部が脚間窩に至る途中で赤核を貫く。赤核の求心性線維は主として小脳核および大脳皮質からくる。これらの線維は体部的局在性をもって赤核に終止する。上小脳脚の線維は中脳下部で完全に交叉し、対側の赤核およびその周囲に至る。小脳歯状核からの側枝は対側赤核の上1/3部に終止し、一方、栓状核(前中位核)および球状核(後中位核)からの線維は赤核の下2/3部に体部位的局在性をもって終わる。この連絡は小脳の傍虫部皮質と赤核大細胞部をつなぎ、さらに赤核から脊髄へ体部位的局在性に投射する。これには上小脳脚交叉および赤核脊髄路の交叉の2つの交叉が含まれる。赤核の大細胞部からの体部位的局在投射は主に頚髄と腰髄に終わる。皮質赤核線維は中心前回や前運動野から起こり、ともに両側の赤核小細胞部に体部位的局在性をもって終止する。大脳皮質6野の内側部(補足運動野)からの投射線維は対側の赤核大細胞部に終わる。中心前回の運動野から赤核大細胞部に終止する線維は同側性で、赤核運動路の体部位的局在性をもつ起始に対応する。これらの皮質赤核線維は体部位的局在性をもち、赤核脊髄路(交叉性)と共に運動野皮質から脊髄へインパルスを伝える経路の一部をなす。赤核からの下行性遠心路は腹側被蓋交叉で交叉し、①小脳の中位核、②三叉神経主知覚核および脊髄路核、③顔面神経核の一部、④いくつかの延髄の中継核および⑤脊髄に投射する。また赤核の小細胞部からの非交叉性の線維束が中心被蓋路に入り、オリーブ核主核の背側板に終わる。これを赤核オリーブ路といい、小脳へのフィードバック系の一部をなす。赤核からの視床への投射はない。)
- 886_13【Periaqueductal grey substance; Central grey substance中脳中心灰白質;中脳水道周囲灰白質 Substantia grisea centralis; Stratum griseum centrale】 Gray substance surrounding the cerebral aqueduct.
→(中脳中心灰白質は中脳水道を取り囲み密集する比較的小型の細胞からなり、機能的には均一ではない。この領域はこれまで中枢の鎮痛機構、発生、生殖行動の制御、攻撃行動、上方注視機構と深く関係するとされてきた。この中脳中心灰白質は視床下部、脳幹毛様体、縫線核、青斑核および脊髄からの入力を受け、これらの多くはさらに中脳中心灰白質からの相互の投射を受ける。中脳中心灰白質のニューロンはエンケファリン、P物質、コレシストキニン、ニューロテンシン、セロトニン、ダイノルフィン、ソマトスタチンに対して免疫反応陽性であり、ひとつのニューロンがしばしば複数のニューロペプチドを有する。中脳中心灰白質の腹外側部は、刺激による鎮痛に関して最も効果的な部位と思われる。中脳中心灰白質の腹側部へのモルヒネの微量注入により著明な鎮痛を引き起こすことが齧歯類動物において認められている。)
- 886_14【Medial geniculate body内側膝状体 Corpus geniculatum mediale】 Part of the auditory pathway that is connected with the inferior colliculus.
→(内側膝状体は、視床の尾方腹側面で、外側膝状体の内側方、大脳脚の背方に位置する。この核は、視床における聴覚の中継核であって、聴放線を出す。下位脳幹にある聴覚の中継核群とは違って、両側の内側膝状体の間には交連線維による連絡がない。内側膝状体は、明瞭な細胞構築と連絡から更に幾つかの部分にに分けられる。内側膝状体は内側部、背側部および腹側部と呼ばれる三つの主要な部分から構成される。内側膝状体のこれらの細区分域は、普通の組織学的標本では区別するのが容易ではないが、Golgi標本では明らかである。内側膝状体腹側核は、内側膝状体の吻尾方向の全長にわたって広がり、内方が、下丘腕によって境されている。内側膝状体の他の大きな部分とは違って、腹側核には、明確な層板構造がある。腹側部の細胞の大きさと形は、かなり一定しており、房状の樹状突起をもつ。房状細胞の樹状突起と下丘腕の神経線維によってできた層状構造は、らせん形、または、弯曲した垂直の板状を示す。下丘からの求心性線維は特定の層板にはいり、そのまま同じ層と連絡しつづける。内側膝状体の側腹部にある層板構造は、外側膝状体のそれに類似しているが、細胞の層が有髄神経線維帯によって区切られることがない。内側膝状体の腹側部に生理学的な性質によって地図をつくると、この細胞層は音の高低に一致した局在と関係しており、高い周波数の音は内側に、低い周波数の音は外側に復元される。内側膝状体の腹側部のニューロンから聴放線が起こり、一次聴覚野に終わるが、ここでは、音の周波数が空間的に配置されている。一次聴覚野からは内側膝状体の腹側部に終わる両方向性皮質視床線維が起こる。膝状体皮質線維と皮質膝状体線維は、両者とも同側性である。ヒトでは、内側膝状体の主な皮質投射は、膝状体側頭葉放線、あるいは聴放線を経て、側頭葉上面の隆起部(横側頭回)に達する。皮質のこの投射野(41野)は、音の高低に一致した局在をもっている、すなわち、高音は内側方に、また低音は前外側方に復元される。内側膝状体の背側部には、幾つかの核が含まれ、それらの中には、膝状体上核と背側核がある。背側核は、内側膝状体の尾方の高さでは顕著であり、外側被蓋野からの投射を受ける。この外側被蓋野は上丘の深い層から、外側毛帯に隣接する領域へと広がった領域である。内側膝状体の内側部の大細胞性部は、下丘、外側被蓋および脊髄からの入力を受ける。内側膝状体の中の層構造を示さない部分はすべて一次聴覚野を取り囲む皮質の帯状部に同側性の線維を送っている。)
- 886_15【Pulvinar of thalamus視床枕 Pulvinar thalami】 Posterior, freely projecting portion of the thalamus.
→(視床枕は視床の後部と背外側を形成する大きな灰白質塊で、これの尾方は、内側膝状体、外側膝状体および中脳の背外側面の上に張り出している。視床枕は視床枕核群ともよばれており細胞学的にはかなり均一であるので、局所的な位置関係を基にして細分される。視床枕を形成するのは、明るく染まった、中等度の大きさの、多極性の細胞で、それらの細胞の分布密度と配列は、視床枕の部位によって異なっている。視床枕の前部の細胞は小さく、明るく染まり、散在性に配列している。下部は、視床枕の主部から、上丘腕の神経線維によって隔てられており、散在性の濃染する細胞で構成される。外側部を、外側髄板から広がる斜めの線維束が横切っている。視床枕の諸核は、長い、上行性の感覚神経路からは入力を受けてはいないが、その下部は、上丘の浅層のいくつかの層からの投射を受けている。局所的には、この投射は、反対側の視野の半分に相当する。視床枕の下部とそれい隣接する外側部とは、線条野を含む後頭葉の皮質と相互に結合する。視床枕の下部とそれに隣接する外側部はそれぞれ、反対側の視覚野の半分が復元され、網膜の部位局在的に、次の各部に投射している。すなわち、①皮質の18野と19野と、②有線野(17野)で、そこでは、線維が、顆粒層の上にある諸層に終止する。これらの結果によって、3つの視覚局在性をもった系統の入力が、視床(外側膝状体、視床枕の下部、およびそれに隣接する視床枕の外側部)から、一次視覚野に達し、しかも、そのいろいろな層に終止することが明らかになった。視床枕の下部から17野、18野および19野への投射は、膝状体外視覚神経路の中の最後の連絡を形成する。(視床枕の下核に隣接している部分以外の)視床枕の外側核は、側頭葉に投射し、同じ領域と相互に連絡している。視床枕の内側部は、上側頭回に投射しているらしい。)
- 886_16【Tectum of midbrain中脳蓋;四丘体 Tectum mesencephali; Corpora quadrigemina】 Part of the mesencephaIon lying on the tegmentum of midbrain.
→(中脳蓋は中脳水道が通り、屋根状になった脳背側部。上丘と下丘が含まれる。)
Gratiolet's radiation
- 886_17Gratiolet's radiation【Optic radiation視放線;後頭視床放線 Radiatio optica; Radiatio occipitothalamica】 Portion of the visual pathway leaving the lateral geniculate body. It passes through the occipital portion of the posterior limb of internal capsule around the posterior horn of the lateral ventricle to the visual cortex.
→(外側膝状体鳥距線維は外側膝状体の小細胞性部の細胞から起こり、内包のレンズ後部を通って視放線を形成する。これらの線維は鳥距溝の上、下両側で、有線野の皮質に終枝する。視放線のすべての線維が最短経路を通って皮質に達するわけではない。最も背方にある線維はほとんどまっすぐに後方に進み有線野に達するが、より腹方にある線維はまず前方、かつ下方に向きを変えて側頭葉の中に入って、側脳室の下角の吻側部の上に拡がり次いで後方に曲がり、側脳室の外壁に接して走り(外矢状層)、後頭葉の皮質に達する。最も腹方の線維が最も長い弧状の経路をとる。網膜の各領域は外側膝状体と正確な点対点の対応関係をもち、網膜の各部分は外側膝状体の局所的に限局された特殊な部分に投射する。網膜の上内側および上外側の両1/4の領域(視野の下半分に該当する)からの線維は外側膝状体の内側半に、また下内側および下外側の両1/4の領域からの線維は外側膝状体の外側半に終止する。黄斑からは、水平経線を通る面の両側で、外側膝状体尾尾側部において、クサビ形を領域に投射する。単眼視による三日月形の視野も含めて、周辺視野からの投射は、外側膝状体の吻側方に終わり、水平経緯線を越えて連続している。同様な点対点の関係は外側膝状体と有線野の皮質の間にも存在する。上外束の両1/4の領域(視野の下半分)に対応する外側膝状体の内側半は鳥距溝の上唇に投射し、しかも、これらの線維は視放線の下部を占める。黄斑からの線維は視放線の中間部を構成し、鳥距溝を囲む大脳皮質の尾方1/3の領域に終止する。網膜の中心傍野および周辺部からの線維はそれぞれ、更に吻側方の部位に終わる。網膜の一定のの場所に光点を停止させた実験的研究によって、次のことが明らかにされた。すなわち、網膜における視神経節細胞の受容野は同心円上に配列している。網膜においては、受容野は受容器である杆状体と錐状体ならびに単一神経節細胞の興奮性に影響を与える網膜の他のニューロンと関係している。網膜は、そこに存在する神経節細胞の数と同じほどの多くの受容野はいずれも次の2つの領域に分けられる。すなわち、①円形の小さい中心領域および②それを取り囲む同心性の領域で、周辺部、あるいは包囲部とよばれる部分である。これら2つの領域は機能的には拮抗している。受容野には一般に次の2型が記載されている。すなわち、①“開”を中心に“閉”を周辺に有する受容野および②“閉”領域を照射すると、神経細胞は活発に発火することになろう。もし、光刺激が、互いに抑制作用を示す“開”および“閉”の両領域を照射すると、それらの刺激は互いに無効になる。網膜の連絡は神経節細胞のレベルにおける同心円上受容野によく一致する。中心部からのインパルスは受容細胞、双極細胞および神経節細胞の間の直接結合によって伝達されるといわれ、他方、おれと拮抗的に働く周辺の領域は、無軸索細胞によって仲介される結合(すなわち、双極細胞と神経細胞の間の結合)を有する。外側膝状体のニューロンの受容野は光りの点を網膜の一定の場所に停止させた場所と類似しているように思われる。しかし、外側膝状体のニューロンは周辺の受容野に比較的大きな抑制を示す。外側膝状体の各層にある細胞は、同側、あるいは反対側、いずれかの一眼の受容野からの投射を受ける。外側膝状体の中の細胞で、両眼からの影響を受けるものは、たとえあるとしても、きわめて少ない。外側膝状体と有線野の細胞との間には受容野固有の重要な変形が生じる。有線野の細胞が“裂隙”光、あるいは、特定の方向に働く視覚模様に敏感である。有線野の中で起こる変形は、いろいろな作動様式をもった皮質細胞の柱状配列によるものであり、これらのはたらきによって、垂直形と水平形の中でのいろいろな変化が記号化される。)
- 886_18【Calcarine spur鳥距 Calcar avis】 Elevation on the medial side of the posterior horn produced by the calcarine sulcus.
→(鳥距は後角内側面の2個の隆起の下方のもので、鳥距溝の沈下によって生じたもの。)
- 886_19【Calcarine sulcus; Calcarine fissure鳥距溝;鳥距裂 Sulcus calcarinus; Fissura calcarina】 Deep groove beneath the cuneus in the region of primary visual perception.
→(鳥距溝は大脳半球の内側面で、後頭極の近くから前方に向かってほぼ水平に走る深い溝である。前端で頭頂後頭溝に合する。一次視覚野は視覚中枢で、後頭葉の内側面において、鳥距溝の両側(Brodmannの17野)にある。視床の外側膝状体からの線維が視放線をつくってここに達する。視覚野の皮質は他の皮質部に比べて薄く(約1.5mm)、皮質内に表面に平行に走る有髄線維束(ジェンナリ線Gennari's strai or line)が発達し、これが肉眼的に認められるので有線野area striataといわれる。一側の視覚野には、同側の網膜耳側半部と反対側の網膜尾側半部とからの入力が復元される。また、網膜の上半分は鳥距溝の上方に、網膜の下半分は鳥距溝の下方に復元される。黄斑(網膜の後端で、視覚が最も鋭い部)は視覚野(17野)の後約3分の1部を占める広い領域に復元される。)
- 886_20【Occipital lobe後頭葉 Lobus occipitalis】 Lobe that is partially bounded by the transverse occipital sulcus, parieto-occipital sulcus, and preoccipital notch.
→(後頭葉は大脳半球の後部に位置し、外側面では頭頂葉および側頭葉の後方に続き、上外側面ではこれらとは明瞭な境界はない。しかし大脳半球内側面では頭頂後頭溝により頭頂葉と明確に区分される。機能的には視覚野がある。頭頂間溝の後端にほぼ横に走る小溝、すなわち横後頭溝がある。上外側面における溝および回は一般に不規則で、これらを上および外側後頭溝ならびに、上および外側後頭回と呼ぶ。外側後頭溝の後部はしばしば前方に凸部を向けた弓状を呈し、前部の溝と叉状に交わる。この弓状の溝は月状溝または猿裂と呼ばれる。しかしサルの月状溝はヒトの月状溝、頭頂後頭溝および横後頭溝の連続したものと考えられる。)
Gennari, Stria of, Line of; Vicq d'Azyr's stria
- 886_21Gennari, Stria of, Line of; Vicq d'Azyr's stria【Occipital stripe of internal granular layer of isocortex; Occipital line of internalgranular layer of isocortex後頭線条;ジェンナリ条(等皮質の内顆粒層の) Stria occipitalis laminae granularis internae isocorticis; Linea Gennari】 Bandlike zone that has scant cells and contains giant stellate neurons.
→(同皮質の内顆粒層線条は視覚野では特に著明でジェンナリ線条ともよばれる。後頭線は皮質灰白質の厚さのほぼ中央にあって、視覚皮質(Brodmann第17野)の垂直面に現れる明瞭な白線。この皮質領域における特によく発達したBaillarger外線に相当する。主として接線方向に配列した皮質内連合線維からなる。1776年、イタリアの内科医Francesco Gennari (1750-1795)によって大脳皮質に発見された。彼の生涯はほとんど不明である。)
- 886_22【Cerebellum小脳 Cerebellum】 Part of the brain situated above the rhomboid fossa.
→(Cerebellumは、「大脳、脳」を意味するcerebrumの指小形で、「小さい脳」という意味である。Cerebrumは、「頭」を意味するギリシャ語のkararan由来する。 小脳は筋、関節などの深部組織、前庭、視覚、聴覚系などからの入力を直接あるいは間接的に受け、眼球運動を含む身体の運動調節を司る。小脳は正中部の虫部と外側部の小脳半球とに分けられる。いずれも多数の小脳溝により小脳回に細分される。この中、特定の小脳溝は深く、これにより小脳回の集合ができる。これを小脳小葉とよぶ。ヒトでは小脳は深い水平裂により上面と下面とに分けられ、虫部とそれに対応する半球に九つの小葉が区別される。系統発生的には小脳は前葉、後葉、片葉小節葉の3部分に分けられる。前葉は系統発生的に古く古小脳(Paleocerebellum)ともよばれ、脊髄小脳路、副楔状束核小脳路、オリーブ小脳路の一部、網様体小脳路などをうける。後葉は系統発生的に新しく、新小脳(Neocerebellum)とよばれる。とくに半球部は虫部より新しく、橋核、主オリーブ核などを介して大脳皮質と結合している。前葉と後葉とは第1裂により境される。片葉小節葉は原小脳(Archicerebellum)とよばれ最も古く前庭系との結合が著明である。後葉とは後外側裂で境される。後葉には虫部錐体と虫部垂との間に第2裂がある。ヒトの小脳小葉の形は他の動物のものと大きく異なりる。小脳全体は灰白質と白質とからなる。灰白質には小脳皮質と小脳核とがある。小脳皮質は小脳小葉の表面をなし遠心性軸索を出すPurkinje細胞と皮質内での結合を行う細胞とからなる。小脳核は深部にあり、室頂核、球状核、栓状核、歯状核の4核からなる。小脳皮質にはその結合から三つの縦帯が認められる。すなわち、正中部の虫部皮質、外側部の半球皮質および両者の境界部の虫部傍皮質である。虫部皮質のPurkinje細胞は室頂核に、虫部傍皮質は球状核と栓状核に、半球皮質は歯状核に投射する。小脳の中心部の白質塊は髄体とよばれ、遠心性および求心性繊維から出来ている。ここからは白質が分枝して(白質板)、小葉に分かれる。全体として樹の枝のようにみえるので、小脳活樹と名づけられている。小脳は三つの小脳脚により、延髄、橋、中脳と結合している。これは小脳の遠心路および求心路の通路となっている。 小脳の発生 development of the cerebellum:小脳は後脳の菱脳唇から発生する。後脳の菱脳唇は翼板の背外側につづく背内方に突出する高まりで、胎生2ヶ月の後半において急速に増大し、小脳板とよばれるようになる。左右の小脳板の間には菱脳蓋の頭側半分が介在するので、頭側部では左右の小脳板は相接しているが、尾側部では広く離れている。菱脳の中央部を頂点とする橋弯曲が高度になると、この部の菱脳蓋の左右方向の拡大によって、左右の小脳板の尾側部はいよいよ高度に引き離され、左右の小脳板は菱脳の長軸に直角な一直線をなすようになる。これと同時に左右の小脳板の頭側部(今では内側部)が合一するので、結局、正中部が小さくて左右両部が大きい単一の小脳原基が成立する。正中部からは小脳虫部が、左右両部からは小脳半球が形成される。 増大していく小脳原基の背側部には、やがて中部から半球に向かって走る溝が次々に出現して小脳を区画する。胎生5ヶ月のおわりには小脳虫部における10個の主な区分(小脳葉)がほぼ完成する。これらの小脳葉はそれぞれ固有の発育を行うが、その間に第2次、第3次の溝が生じて、各小脳葉を多数の小脳回に分ける。このような形態発生の結果広大な表面積を獲得した小脳の表面には小脳皮質とよばれる特別な灰白質が形成され、これに出入りする神経線維はその深部に集まって小脳白質を形成する。 小脳原基においても菱脳室に接する内側から表面に向かって胚芽層・外套層・縁帯の3層が分化する。胚芽層は神経が細胞をつくりだすが、胚芽層から発生するのは小脳核の神経細胞と小脳皮質のPurkinje細胞およびGolgi細胞である。小脳原基が3層に分化するとまもなく、外套層の表層部にやや大型の神経芽細胞が出現し、小脳板の背側面(表面)に平行に1列にならぶ。これがPurkinje細胞の幼若型である。ついで小脳板の尾側端部の胚芽層でさかんな細胞分裂がおこり、ここで生じた未分化細胞は縁帯の表層部を頭方に遊走して、小脳原位の全表面をおおう未分化細胞層を形成する。これを胎生顆粒層という。 胎生顆粒層の細胞は胚芽層における細胞分裂が終わるころから活発な分裂を開始し、神経細胞をつくりだす。この神経細胞は縁帯およびPurkinje細胞の層を貫いて、Purkinje細胞の層の下に達し、ここに新しい細胞層(内顆粒層)をつくる。胎生顆粒層からは、このほかに縁帯の中に散在する籠細胞や小皮質細胞が生ずる。必要な数の神経細胞を送り出すと胎生顆粒層における分裂はやみ、本層は速やかに消失する。一方、Purkinje細胞は縁帯の中に多数の樹状突起を伸長させる。縁帯はPurkinje細胞の樹状突起で満たされて厚くなり、核をあまり多く含まな灰白層となる。このようにして小脳の全表面は、表面から灰白層・Purkinje細胞層・内顆粒層の3層から成る小脳皮質でおおわれることになる。)
- 886_23【Frontal lobe前頭葉 Lobus frontalis】 Portion extending from the frontal pole to the central sulcus.
→(前頭葉は中心溝の前、そして外側溝の上にある。前頭葉の上外側表面は3つの脳溝によって4つの脳回に分けられる。前頭葉には、1次運動野はBrodmannの脳区分でいうと領域4(中心前回から中心傍小葉)を中心に錐体外路系の中枢があり、身体の反対側の随意運動を起こす。Betzの巨大細胞が特徴的であるが、この細胞からの線維は皮質脊髄路の3%程である。運動前野(2次運動野)はBrodmannの領域6,8,44など(中心前回の前部から上・中・下前頭回後部)にある錐体外路系の運動中枢。この部は一次運動野の活動プログラム化に働き、障害されると習得した運動が障害される。通常の運動障害はなく、失行と呼ばれる。前頭眼野は中心前回で、顔面支配領域の前方に位置する(主に8野で6,9野の一部)。眼球や眼瞼の共同運動の中枢である。補足運動野は上前頭回内部に位置し、姿勢や運動開始と関係するらしい。運動性言語中枢はBrodmannの領域44,45(三角部)に位置する。Brocaの言語野ともいい、言語発声に必要な口から口頭の筋を統合支配する中枢で、運動野と連絡して発声運動を行うという。この部が障害されると意味のある言語を発声できなくなる運動失語が生じる。運動前野は大脳皮質の前頭葉の前方を広く占有している連合野である(Brodmannの9,10野)。前頭前野は脳の極めて広範囲から上方を集めて行動のプログラミングを行う。靴紐を結んだり、ボタンをかけるなどの学習・経験による複雑な組織化された運動の遂行と関係がある。背側運動前野は運動の企画や準備に対応し、腹側運動前野は物体を認知して動作へ変換する情報に変えるといわれる。)
- 886_24【Trunk of corpus callosum; Body of corpus callosum脳梁幹;脳梁体 Truncus corporis callosi】 Portion between the splenium and genu of corpus callosum.
→(脳梁幹は脳梁膨大と脳梁膝の間の主に脳梁の弓状部分。)
- 886_25【Frontal horn of lateral ventricle; Anterior horn of lateral ventricle前角;前頭角(側脳室の) Cornu frontale ventriculi lateralis; Cornu anterius ventriculi lateralis】 Portion extending anteriorly from the interventricular foramen. It is bounded medially by the septum pellucidum, laterally by the head of caudate nucleus, superiorly by the body of corpus callosum, and anteriorly and inferiorly by the genu and rostrum of corpus callosum, respectively.
→(側脳室の前角は室間孔より前方の部分、内側壁は透明中隔、外側壁は尾状核頭、前壁及び上下壁は脳梁によってつくられる。)
- 886_26【Free part of column of fornix脳弓柱自由部;脳弓柱出部 Pars libera columnae fornicis】
→()
- 886_27【Internal capsule内包 Capsula interna; Capsula interna nuclei lentiformis】 Band of nerve fibers lying medial to the lentiform nucleus and medial to the thalamus and caudate nucleus.
→(内包は外側のレンズ核と内側の尾状核および視床との間にある、大きい線維束の集団で、その大部分は下方に集まって大脳脚に移行する。内包は大脳半球の水平断でみると、内包前脚と内方後脚からなり、これらは鈍角をなして交わり、内包膝の名で知られる接合部を形成する。内包前脚はレンズ核と尾状核の間にあり、また内包後脚(レンズ核視床部)はレンズ核と視床の間にある。内包のレンズ後部は尾方に、レンズ核の少し後ろにまで伸びる。この尾方の領域にはレンズ核の下を通って側頭葉に達する一群の線維があり、これらはまとまって内包のレンズ下部を形成する。①視覚、聴覚、体性感覚放線などを構成して視床から大脳皮質へ上行している線維と、②大脳皮質から視床、視床腹側部、中脳、後脳、脊髄へ下降している線維から構成される。)
- 886_28【Genu of internal capsule膝(内包の);内包膝 Genu capsulae internae】 Part situated between the anterior and posterior limbs of internal capsule. It contributes to formation of the lateral wall of the ventricular system
→(内包膝は前および後脚の間にある。皮質延髄路および皮質網様体路の線維が含まれる。大脳水平断面において、鈍角をもって外側に開いているのがわかる。)
- 886_29【Lentiform nucleus; Lenticular nucleusレンズ核 Nucleus lentiformis】 Nucleus arising from the telencephalon and diencephalon.
→(レンズ核は小細胞性の被殻と大細胞性の淡蒼球を合わせたもので、その形が全体として両凸レンズに似ており、その全外面を神経線維群で包まれているため、一括してレンズ核とよばれる。尾状核頭および視床の腹外側にある大きい核で、前頭断でも水平断でも三角形で、頂点は内側に、底辺は外側にある。レンズ核は薄い外側髄板によって内側の淡蒼球と外側の被殻に分かたれる。レンズ核の内面は内包によって囲まれ、外面は外包によっておおわれる。しかし、両者の発生・細胞構築・線維連絡などは互いに異なる。被殻はレンズ核の外側面の近くにあって多少赤茶色を帯び、淡蒼球はレンズ核の内側面よりを占めて色も白っぽい。発生学的には、淡蒼球が最も古く、古線条体paleostriatumとも呼ばれる。これに対して尾状核と被殻は新しいので、この両者を合わせて新線条体neostriatum(または狭義の線条体striatum)という。また古線条体と新線条体をあわせたものすなわちレンズ核(淡蒼球+被殻)と尾状核を総称して、広義の線条体corpus striatumと呼ぶ(線状体ではない)。また広義の線条体にに扁桃体と前障を加えたものが大脳基底核basal gangliaである。大脳基底核の障害としては、パーキンソン病が有名である。)
- 886_30【External capsule外包 Capsula externa】 White substance between the claustrum and lentiform nucleus.
→(外包は前障と被殻の外表面とのあいだには幅の狭い白質の層があり、大脳皮質から被殻に達する神経線維はこの線維層を通る。)
Reil, Island of
- 886_31Reil, Island of【Insula; Insular lobe島;島葉 Insula lobus; Lobus insularis】 Portion of the cerebral cortex situated in the lateral cerebral fossa that is originally uncovered but is overlapped during ontogenesis.
→(ライルの島とも呼ばれる。外側溝の深部にある大脳皮質で、その表面は前頭葉、頭頂葉および側頭葉によりおおわれている。島をおおっているこれらの大脳葉の部分を前頭弁蓋、前頭頭頂弁蓋、および側頭弁蓋という。すなわち、弁蓋は島をおおう外套部である。島の周囲は輪状溝により囲まれ、これにより弁蓋と境される。この溝は島の下端部では欠き、この部分を島限とよぶ。ほぼ胎生17週からこの部はその周囲が厚くなるため、陥没してその輪郭が明瞭になり、第19週ごろから前頭葉、側頭葉および頭頂葉の発達につれてしだいにこれらによっておおわれ、生後は全くかくれてしまう。このように島の表面には前頭葉、頭頂葉、および側頭葉の部分が延びて来て、外側溝後枝の上下唇をなし、島を被っている。島は後上方から前下方に走る島中心溝によって後方の1~2個の長回と前方の4~5個の短回に分かたれる。Reil, Johann Christian (1759-1813)オランダ人解剖学者。精神病理学者。大脳のライル島を記述(「Exercitationum anatomicarum fasciculus primus.etc」, 1796)、生体の生理学機能の、化学的表現としての生命力を提唱(「Von der Lebenskraft」, Arch. Physiol, (Halle), 1796, 1,8-162)。最初の生理学雑誌「Arch. Physiol.」と最初の精神病学雑誌「Magazin fur Nerven heilkundle」を刊行。)
- 886_32【Thalamus; Dorsal thalamus視床;背側視床 Thalamus】 Part extending from the interventricular foramen to the tectal plate. Medially it borders on the third ventricle, laterally on the internal capsule and basal ganglia. It is formed by a collection of nuclei derived during ontogenetic development from the dorsal thalamus.
→(視床は、間脳の大きいほうの背側部分を形成する灰白質。背側間脳溝と視床下溝の間の領域であるが、発生の間に大きく発育して、間脳背側部の広い範囲を占めるようになる。間脳は個体発生上、背側視床、腹側視床、視床下部および視床上部の四つの部位に分けられるが、その中で最も大きな部位を占めるのが背側視床である。単に視床といった場合は背側視床を指す。視床は第三脳室の両壁をなす卵円形の構造で、背側の遊離面は薄い髄質から成る帯層におおわれ、肺内側端に視床上部の構造である視床髄条が、前端より後方に走り手網核に付く。また背外側端は分界条によって終脳の尾状核と、外側方は外髄板によっておおわれ腹側視床の視床網様核と境されている。左右の視床は第三脳室内にまたがる視床間橋(中間質)によってつながり、視床下溝で視床下部と境される。視床の内部を構成している視床核は視床脚を介して大脳皮質と相互に結合する。内部には内髄板とよばれる線維板視床を内側部、外側部および前部に分けている。視床は感覚系と統合系との非常に重要な連絡部位である。嗅覚路以外のすべての感覚路がそれぞれ相当する視床の領域に投射する。「最近の研究によれば、嗅覚系も視床を投射する可能性がある」。視床で処理された感覚系情報の流れは視床大脳皮質線維を経て大脳皮質へと送られるが、大脳皮質の側からは多数の大脳皮質視床線維を介して視床における情報処理系に影響が及んでおり、したがって、視床と大脳皮質とは一つの機能単位としてはたらく。「運動」情報は小脳と大脳基底核を経て伝達され、統合系(大脳辺縁系や脳幹網様体など)からのさらに複雑な情報も視床に達する。したがって、視床は一方では大脳辺縁系と脳幹網様体との連結点として機能し、他方では大脳皮質も連絡しているわけである。)
- 886_33【Medial nuclei of thalamus視床内側核群;視床内側核 Nuclei mediales thalami】 Group of nuclei consisting mainly of the dorsomedial nucleus. It receives afferents from other thalamic regions and subcortical structures as well as the amygdaloid body, basal ganglia, and reticular formation of the mesencephalon.
→(視床内側核は視床内髄板と髄板内核に取り囲まれている。その内方および腹内方には視床正中線核群(midline thalamic nuclei)が分布する。正中線核群は菱形核、結合核、および紐傍核である。視床内側核は内側の巨大細胞部(magnocellular part)と外側の小細胞部(paraveocellular part)に区分される。小細胞部と内髄板の境界部に大型細胞から成る髄板傍部(pars paralemellaris)が記載されることがあるが、これはむしろ視床外側中心核(CL)に属するものと考えられる。視床内側核は腹側線条体からの投射もうける。この経路によって「側坐核(腹側線条体のもっとも主要な部分)-視床内側核-前頭前野皮質」の連絡系が成立する。視床から腹側線条体への投射線維は紐傍核(parataenial nucleus)から起こる。)
- 886_34【Lateral thalamic nuclei; Lateral nuclei of thalamus視床外側核;視床大核;視床外側核群 Nuclei laterales thalami; Nucleus magnus】
→(視床前核群の尾方で視床の背外側部を占める。特定の上行性線維を受け連合核に属する。本核群は内髄板の背側縁に沿って広がる背側外側核(LD)とその尾方の後外側核(LP)とに分かれる。ヒトではLPの胞が大きく発達している。(医学書院医学大辞典:徳永叡))
- 886_35【Habenular nuclei手綱核;内側および外側手綱核 Nuclei habenulae】
→(手綱核は手綱の灰白質で、小型神経細胞からなる内側手綱核と大型神経細胞からなる外側手綱核からなる。両核は、脳基底部(中隔、基底核、外側視索前核)からの神経線維を受ける。さらに外側手綱核は淡蒼球の内節からの線維も受けている。両核は反屈束を通じて脚間核および中脳被蓋の内側域へ線維を出す。)
- 886_36【Pineal gland; Pineal body松果体;松果腺 Glandula pinealis; Epiphysis cerebri; Corpus pineale】 It develops from the roof of the diencephalon and overlies the tectal plate.
→(松果体は円錐形の小体で、後交連の領域で、第三脳室の天井に付着している。これは痕跡的な腺であるらしく、血管の豊富な結合組織の小柱の網工からなり、その網眼の中には神経膠細胞および松果体細胞pinealocytesあるいはepiphysial cellがみられる。サルの松果体細胞はセロトニン(5-HT)とコレシストキニン(CCK)を含んでいる。哺乳類の松果体細胞は、系統発生学的には、感覚神経性光受容体の要素と関係しており、これは、分泌細胞になる物が多いが、間接的に光受容性をもっている。これらの突起の棍棒状をした終末は、血管血管を取り囲む血管周囲腔に接して終わる。松果体の分泌のうちで最もよく知られた物は、セロトニン、ノルアドレナリンおよびメラトニンという生体産生アミンであるが、その他に、サイロトロピン遊離ホルモン(TRH)、黄体形成ホルモン遊離ホルモン(LHRH)およびソマトスタチン(SRIF)のような、視床下部で形成されると同定されたペプチドを、かなりの濃度で含んでいる。セロトニンは、松果体細胞の中で合成されて細胞外の隙間に放出される。ノルアドレナリンは、松果体の実質細胞に終止ししている交感神経ニューロンの中で合成される。松果体は、昼間光の変動に敏感なN-アセチルトランスフェラーゼおよびヒドロキシインドール-o-メチルトランスフェラーゼという2つの酵素の働きによって、セロトニンからメラトニンを合成する。メラトニン合成の毎日の変動は周期性であり、光入力の毎日の周期に直接関係している。光は、日周期を環境の光周期に一致させる。そして、さらに、まだ確認されていない経路を経て、神経性信号が松果体に運ばれることを速やかに遮断するように働く。N-アセチルトランスフェラーゼの活性は、昼夜に高められるが、光にさらすと、酵素の活性が失われる。視床下部の視交叉上核を両側性に傷害すると、この核は網膜視床下部経路を受けているので、松果体のN-アセチルトランスフェラーゼにおける周期がなくなり、その結果、ヒドロキシインドール-o-メチルトランスフェラーゼの活性のレベルが下がる。そのような傷害によって、自発運動の活性の日周期および栄養補給と水飲み行動の両方の日周期がなくなる。雄のネズミでは、視交叉上核の傷害によって、正常な発情周期がなくなる。網膜視床下部路は、視交叉上核の構造との直接の相互作用によって、松果体のはたらきを変える。環境の光は、日周期をその周期に一致させる働きと伝達する働きをもっているとみなされ得る。内在性振動発生装置を光周期にのせるための光後下はゆっくりであるが、信号伝達に及ぼす光の後下は速やかである。そして、それによって、光によってN-アセチルトランスフェラーゼが速やかに“消失”することと、持続光によって日周期が妨げられることを、おそらくは説明できるであろう。視交叉上核からの単一神経路が、松果体によるメラトニン形成に関係する両酵素を調節しているが、これらの結合についての詳細は、なお、あきらかになっていない。間接的に証明された根拠は視交叉上核から松果体への神経路には、視床下部の灰白隆起の領域、内側前脳束および中間質外側路への中継路が含まれることを示唆している。このように、松果体は、交感神経ニューロンを経て受けた信号をメラトニンという内分泌物に変換させる、神経内分泌変換体ともいうべきものであるらしい。松果体の分泌は視床下部の働きを変化さえるが、それは、内分泌が心身の血液循環あるいは、脳脊髄液に入ってからののちに作用する。松果体のセロトニンとメラトニンの日内変動は、光入力の周期に応じて起こる。松果体活動のこれらの周期性変化は、この腺が生物学的時計としてはたらいて、生理学的過程と行動学的過程とを調節する信号を出していることを示唆している。これらの変動は日周期circadian rhythmsと呼ばれ、環境からの刺激が存在すれば、ほぼ24時間周期を示すだけである。松果体実質の腫瘍は、性的機能を低下させて思春期を送らせるが、他方、松果体を破壊するとしばしば早発思春期を伴う。これらの観察は、松果体が、性腺および生殖器系に抑制的影響を及ぼすことを示す実験的研究の結果と一致する。)
- 886_37【Tail of caudate nucleus尾状核尾 Cauda nuclei caudati】 Portion of the nucleus that tapers off posteroinferiorly.
→(尾状核尾は視床と分界条によって境される。側脳室の中心部の底面の外側縁を後走し、ついで側脳室の弯曲に従って前下方に開いた弓を描きつつ下角の上壁に至り、扁桃体の後端部の外側部に接して終わる。)
- 886_38【Fimbria of hippocampus海馬采 Fimbria hippocampi】 Band of fibers arising from the alveus that lies on the superomedial aspect of the hippocampus. It is continuous with the fornix via the crus of fornix.
→(海馬采は脳弓脚に続いて前下方に海馬の内側部と癒着しつつ走って海馬傍回の鈎に至る。脳弓は主として海馬、海馬台などから出て海馬白板を通って脳弓に入り、乳頭体などに至る海馬乳頭路からなる。脳弓脚から海馬の内側縁にあるが、成書によっては脳弓脚に続く海馬采をを脳弓采とし区別しているものもある。)
- 886_39【Hippocampus海馬 Hippocampus】 Crescent-shaped, elongated elevation on the floor of the inferior horn of lateral ventricle. It forms the main part of the archicortex.
→(海馬は(海馬はウマの前半身と長い魚の尾をもったギリシャ神話における動物)またはアンモン角(アンモンはエジプトの巻いた角をもった神)は海馬溝による長い弯曲したたかまりで、側脳室下角の内側壁の大部分を占め、その肥厚した前端部の上面にはいくつかの指のような肥厚があり、これは海馬足または海馬指とよばれ、ほとんど下角の前端に達している。海馬の側脳室表面は海馬白板によっておおわれる。これは内側方は海馬采に続く。海馬采は海馬をおおってその内側部に付く。大脳半球内側面の部分から形成される古い皮質(原皮質)で解剖学的に海馬を厳密に定義することはむずかしい。すでに爬虫類で海馬に相当する皮質がみられ、哺乳類でみられる基本的な要素が発達している。ある種の出力と入力が共通しており、互いに密接に関連(結合)している単純な層形成をもっている部分、すなわち、固有の海馬(アンモン角)と歯状回および、ときに海馬台(海馬支脚、海馬床)、海馬采、脳弓を加えて考えた方が研究目的上都合がよいことが多い。また、しばしばこの意味で、海馬体(hippocampal formation)という言葉が用いられる。さらにBrodmannの脳区分27野(海馬支脚前野),29e野(脳梁膨大後野)、49野(海馬支脚傍野),28野(内嗅領),からなるretrohippocampal foramtionを含めて海馬領域(Angevin, 1965)とよばれる。海馬は構造上部位差がみられ、CA1~CA4の亜核に分けられる(Lorente de No, 1933, 1934)。また、構造上、分子層、錐体細胞層および多形細胞層の各層に区別される。海馬からの遠心性線維は、主として前部から中核部に、また、主として後部から脳弓線維となって視床下部とくに乳頭体に終わる。求心性線維には、嗅内野(entorhinal area, 28野)や嗅周野からくる穿通線維および中隔核や対角帯核からくる中隔海馬線維がある。嗅脳からの直接投射はない。海馬は以前、嗅覚系に関係すると考えられ、ついで情動に、最近では臨床的知見により記憶、とくに短期記憶に関係があることが示唆している。側頭葉基底部の皮質および海馬を両側性に除去すると最近のできごとに関係する記憶が失われる。患者はまったく正常に会話についていけるが、話題が変わるとたちまち前の話の筋を忘れてしまう。)
- 886_40【Occipital horn of lateral ventricle; Posterior horn of lateral ventricle後角;後頭角(側脳室の) Cornu occipitale ventriculi lateralis; Cornu posterius ventriculi lateralis】 It extends into the occipital lobe.
→(側脳室の後角(後頭角)は側頭葉中に向かって突出し、その上壁および外側壁はやはり壁板からなる。その他の壁は後頭葉の髄室によって作られ、内側壁には上下各1個のかたまりがある。上のものは不定で、後角球と呼ばれ、脳梁膨大から後方に延びる線維群、すなわち大鉗子によって作られる。下のものは恒存し、鳥距溝のため生じたもので、鳥距という。)
- 886_41【Splenium of corpus callosum脳梁膨大 Splenium corporis callosi】 Bulging, exposed posterior end of corpus callosum.
→(脳梁膨大は脳梁幹の後端は著しく膨大化し、松果体と蓋板とを上方から被っている。膨大部と中脳との間の大脳横裂からは脳軟膜が進入し、脈絡組織を形成する。)
- 886_42【Parieto-occipital sulcus; *Occipitoparietal sulcus頭頂後頭溝;頭頂後頭裂 Sulcus parietooccipitalis; Fissura parietooccipitalis】 Deep furrow anterior to the cuneus that divides the occipital and parietal lobes.
→(頭頂後頭溝は頭頂葉楔前部と後頭葉楔部との境をつくる非常に深い垂直に走る溝。頭頂葉と後頭葉を分ける。)
- 886_43【Sulcus of corpus callosum; Callosal sulcus脳梁溝 Sulcus corporis callosi】 Groove between the corpus callosum and cingulate gyrus.
→(脳梁溝は脳梁と帯状回の間にある溝で、脳梁に沿って走るから前頭葉からはじまり、頭頂葉にわたっている。)
- 886_44【Lateral longitudinal stria外側縦条 Stria longitudinalis lateralis】 Paired, longitudinal band of nerve fibers on the corpus callosum that is covered laterally by the cingulate gyrus. It receives efferent fibers from the hippocampus.
→(外側縦条は帯状回の両外側縁の近くで、灰白質を伴って前後に走る細い縦条。嗅脳の一部。)