890
- 890_01【Tectum of midbrain中脳蓋;四丘体 Tectum mesencephali; Corpora quadrigemina】 Part of the mesencephaIon lying on the tegmentum of midbrain.
→(中脳蓋は中脳水道が通り、屋根状になった脳背側部。上丘と下丘が含まれる。)
- 890_02【Superior colliculus; Optic tectum上丘;視蓋 Colliculus superior; *Tectum opticum】 It is connected to the visual pathway.
→(上丘は中脳蓋つまり四丘体の前半分を形成するあまり高くない隆起であり、大脳皮質と同様に層構造を示す。上丘の層は灰白質と白質とが表面から内部に向かって次のごとく交互に配列する。①帯層(主として線維よりなる)、②灰白層(浅灰白質)、③視神経層(浅白質層)、および④毛帯層で、これは中間部と深部の灰白質および白質を形成する。上丘浅層は主に網膜および皮質視覚野からの線維を受け、視野における物体の動きの探知に関係する。上丘深層は多様な入力(つまり、体性感覚系および聴覚系、運動活動に関わるニューロン、網様体の各領域)を受け、脳幹網様体と同様の解剖学的、生理学的特質を持つ。上丘の浅層と深層は、形態学的にも線維連絡の上からも、さらに生化学的にも線維連絡の上からも異なるが、空間的な整合性に関しては互いに密接に関連する。浅層からの投射線維は主に視覚関連核に至る。一方、中間層及び深層からの線維は頭部、眼球運動に関わる広い領域に投射される。上丘を反射中枢とする定位反射(指向反射)とは、視野に入った興味を引く対象物が視野の中心に来るように、頭と眼球を動かす反射である。)
- 890_03【Pulvinar of thalamus視床枕 Pulvinar thalami】 Posterior, freely projecting portion of the thalamus.
→(視床枕は視床の後部と背外側を形成する大きな灰白質塊で、これの尾方は、内側膝状体、外側膝状体および中脳の背外側面の上に張り出している。視床枕は視床枕核群ともよばれており細胞学的にはかなり均一であるので、局所的な位置関係を基にして細分される。視床枕を形成するのは、明るく染まった、中等度の大きさの、多極性の細胞で、それらの細胞の分布密度と配列は、視床枕の部位によって異なっている。視床枕の前部の細胞は小さく、明るく染まり、散在性に配列している。下部は、視床枕の主部から、上丘腕の神経線維によって隔てられており、散在性の濃染する細胞で構成される。外側部を、外側髄板から広がる斜めの線維束が横切っている。視床枕の諸核は、長い、上行性の感覚神経路からは入力を受けてはいないが、その下部は、上丘の浅層のいくつかの層からの投射を受けている。局所的には、この投射は、反対側の視野の半分に相当する。視床枕の下部とそれい隣接する外側部とは、線条野を含む後頭葉の皮質と相互に結合する。視床枕の下部とそれに隣接する外側部はそれぞれ、反対側の視覚野の半分が復元され、網膜の部位局在的に、次の各部に投射している。すなわち、①皮質の18野と19野と、②有線野(17野)で、そこでは、線維が、顆粒層の上にある諸層に終止する。これらの結果によって、3つの視覚局在性をもった系統の入力が、視床(外側膝状体、視床枕の下部、およびそれに隣接する視床枕の外側部)から、一次視覚野に達し、しかも、そのいろいろな層に終止することが明らかになった。視床枕の下部から17野、18野および19野への投射は、膝状体外視覚神経路の中の最後の連絡を形成する。(視床枕の下核に隣接している部分以外の)視床枕の外側核は、側頭葉に投射し、同じ領域と相互に連絡している。視床枕の内側部は、上側頭回に投射しているらしい。)
- 890_04【Medial geniculate body内側膝状体 Corpus geniculatum mediale】 Part of the auditory pathway that is connected with the inferior colliculus.
→(内側膝状体は、視床の尾方腹側面で、外側膝状体の内側方、大脳脚の背方に位置する。この核は、視床における聴覚の中継核であって、聴放線を出す。下位脳幹にある聴覚の中継核群とは違って、両側の内側膝状体の間には交連線維による連絡がない。内側膝状体は、明瞭な細胞構築と連絡から更に幾つかの部分にに分けられる。内側膝状体は内側部、背側部および腹側部と呼ばれる三つの主要な部分から構成される。内側膝状体のこれらの細区分域は、普通の組織学的標本では区別するのが容易ではないが、Golgi標本では明らかである。内側膝状体腹側核は、内側膝状体の吻尾方向の全長にわたって広がり、内方が、下丘腕によって境されている。内側膝状体の他の大きな部分とは違って、腹側核には、明確な層板構造がある。腹側部の細胞の大きさと形は、かなり一定しており、房状の樹状突起をもつ。房状細胞の樹状突起と下丘腕の神経線維によってできた層状構造は、らせん形、または、弯曲した垂直の板状を示す。下丘からの求心性線維は特定の層板にはいり、そのまま同じ層と連絡しつづける。内側膝状体の側腹部にある層板構造は、外側膝状体のそれに類似しているが、細胞の層が有髄神経線維帯によって区切られることがない。内側膝状体の腹側部に生理学的な性質によって地図をつくると、この細胞層は音の高低に一致した局在と関係しており、高い周波数の音は内側に、低い周波数の音は外側に復元される。内側膝状体の腹側部のニューロンから聴放線が起こり、一次聴覚野に終わるが、ここでは、音の周波数が空間的に配置されている。一次聴覚野からは内側膝状体の腹側部に終わる両方向性皮質視床線維が起こる。膝状体皮質線維と皮質膝状体線維は、両者とも同側性である。ヒトでは、内側膝状体の主な皮質投射は、膝状体側頭葉放線、あるいは聴放線を経て、側頭葉上面の隆起部(横側頭回)に達する。皮質のこの投射野(41野)は、音の高低に一致した局在をもっている、すなわち、高音は内側方に、また低音は前外側方に復元される。内側膝状体の背側部には、幾つかの核が含まれ、それらの中には、膝状体上核と背側核がある。背側核は、内側膝状体の尾方の高さでは顕著であり、外側被蓋野からの投射を受ける。この外側被蓋野は上丘の深い層から、外側毛帯に隣接する領域へと広がった領域である。内側膝状体の内側部の大細胞性部は、下丘、外側被蓋および脊髄からの入力を受ける。内側膝状体の中の層構造を示さない部分はすべて一次聴覚野を取り囲む皮質の帯状部に同側性の線維を送っている。)
- 890_05【Medial root of optic tract内側根(視索の) Radix medialis tractus optici】 Its fibers pass beneath the lateral geniculate body to the superior colliculus.
→(視索の内側根は内側への線維束。主として上丘に向かう線維束。)
- 890_06【Optic tract視索 Tractus opticus】 Portion of the visual pathway between the optic chiasm and lateral geniculate body that is visible on the surface of the basal part of the brain.
→(視索は視交叉と外側膝状体の間の視覚路で左右の視索は視床下部と大脳脚基底部を回って後外方へ走る。これらの線維の多くは外側膝状体の中に終止するが、小部分は下丘腕となって上丘および視蓋前域にまで続く。外側膝状体からは膝状体鳥距路が起こり、これが視覚路の最後の中継路をなす。視索前域は対光反射と関係し、上丘は眼と頭の反射運動より視覚刺激を追跡することと関係している。網膜視床下部線維は、両側性に視床下部の視神経交叉上核に終止する。この網膜からの直接の投射は、機能的には神経内分泌調節と関連している。)
- 890_07【Lateral geniculate body外側膝状体 Corpus geniculatum laterale】 Part of the visual pathway that is connected with the superior colliculus and visual cortex.
→(外側膝状体は、視床の後下面よりわずかに突出している1対の小さな卵形の塊の外側部分。視覚系における視床の中継核であり、内側膝状体の吻側外側方、大脳脚の外側方で、視床枕の副側方にある。この核には、細胞が層状に配列した構造があり、横断切片では、門を腹内側方に向けた馬蹄形をしている。視索の視交叉および非交叉性線維は、この門を通ってはいり、一定の正確な様式に従って分布する。ヒトと霊長類では、外側膝状体を構成するものは、6つの細胞層であり、これらは2つに大別される。同心円状に並んだ6つの細胞層は、介在する線維帯によって区切られ、慣例では、腹内側方の門の領域から始めて、1から6まで番号が付けられている。外側膝状体の背側核を区分すると、大細胞性部(1と2層)および小細胞性部(3~6層)となる。外側膝状核の背側部の2つの領域は網膜の神経節細胞から求心線維を受ける。外側膝状体の小細胞性の層を構成するのは、腹背の方向に順に3,4,5および6層であり、容易に区別される。これらの諸層を外側方にたどると、4層が6層と、また、3層が5層というように対をなす2層が1組になって癒合する。網膜から外側膝状体への投射は正確で、視索の交叉性線維と非交叉性線維とはそれぞれ、別々の層に終わる。すなわち、交叉性線維は1,4および6層に終わり、一方、非交叉性線維は2,3および5層に終わる。交叉性網膜膝状体線維関係のある2つの特殊な性状が構造に反映されている。単眼性の視野は半月形であるが、これは反対側の網膜の内側半の最も内部にある受容要素によって受け取られる。網膜のこの部分にある神経節細胞は、反対側の外側膝状体の二重層の部分に交叉性に線維を送る。この二重層は、4層と6層の部分が外側方で癒合して出来ている。網膜の内側半の中にあって、視神経線維が通っている視神経円板(乳頭)には光受容器がなく、[周辺]視野測定[法]で見つけることができる盲点の原因となる。視神経円板(乳頭)は反対側の外側膝状体の中で、4層と6層の中の細胞層が不連続である部位に対応する。ヒトの外側膝状体を通る切断切片のニッスル標本によって、細胞の直線的配列が明らかにされており、細胞の長軸の方向は、各細胞層の軸に垂直である。小細胞性の諸層にある各周囲部は、“投射の方向線”に平行であり、これらの視野中の各点が同じように復元されていることを示している。外側膝状体の中における網膜表面との局所的対応関係は、高度に組織化され、しかも正確である。両眼視による視野の反対側半は、交叉性線維と非交叉性線維とが異なる層に終わってはいるが、外側膝状体のすべての層に投影される。6つの層における投射の場所は、完全にきまっているので、両眼視における反対側の眼の視野の中のどんなに小さな領域でも、6つの層全体を通して、“投射の方向線”に平行して放射状に延びる背腹方向の細胞柱に一致することを示すことができる。外側膝状体を構成するものは、馬蹄形に曲がった6つの薄い細胞層である。しかし、そこに投射してくる場所は正確にきまっている。それゆえ、“投射の方向線”の中の細胞柱は、両眼視の視野のうち反対側の視野に関係する各眼の網膜の中の対応する点からの入力を受ける。両眼視の像の融合は、外側膝状体の中では起こらない。それは、網膜膝状体線維が外側膝状体の異なった層に終わっているからである。(術後長期間生存させた例の)視神経の切片を追って調べると、順応性の変性、またはニューロン越えの変性は、各側の外側膝状体の3つの層に起こる。神経線維、または細胞の変性が起こる層は、網膜からの交叉性線維(1,4および6層)と非交叉性線維(2,3および5層)の配列に従って異なる。網膜の小さい傷によって、同側、対側の3つの違った層の中に“投射の方向線”に従って、一列に並んで配列した細胞集団に、ニューロン越えの変性が起こる。反対側の単眼視野(単眼性の半月形の視野)は、網膜の内側半のもっとも内側の部分における受容器要素と関係しており、これからは、2層性の部分に終止する交叉性の神経線維のみが出ている。外側膝状体における“投射の方向線”は、有線野に加えた傷害によって外側膝状体の中に現れる逆行性細胞変性の研究からも、明らかにすることができる。視野の半分は、局在性をもってそれぞれの側の半球の有線野に部位局在的に投射しているので、外側膝状体の中に逆行性細胞変性が現れる帯状の部分は、それぞれの側で、投射の方向線によって境される。外側膝状体では視野の中心を通る水平線が背腹方向に入る斜めの面に対応し、この面により内側部と外側部が分けられる。両眼の網膜の上半部からの神経線維は、外側膝状体の内側半部に投射し、下半分は、本核の外側半部に線維を送る。網膜の黄斑からの投射は、外側膝状体尾側部のうち視野の中心を水平子午線に相当する面の両側にある。幅の広いクサビ形の部分として示される。黄斑に相当する部分は、外側膝状体の全容積のおよそ12%を占める。視野の中心を通る垂直の子午線に一致し、本核の尾側縁に沿って、内側の境界からの外側境界に及んでいる。外側膝状体は、視索の主要な終止場所である。ここから膝状体鳥距路、あるいは視放線を経て、鳥距周囲皮質(17野)に投射があり、また外側膝状体は、この皮質野から皮質膝状体線維を受ける。本核は、視床枕と核間結合をしている。)
- 890_08【Lateral root of optic tract外側根(視索の) Radix lateralis tractus optici】 Its fibers pass to the lateral geniculate body.
→(視索の外側根は視索の線維。主として外側膝状体に向かう線維束。)
- 890_09【Principal sensory nucleus of trigeminal nerve; Superior sensory nucleus of trigeminal nerve三叉神経主感覚核;三叉神経主知覚核;三叉神経上知覚核 Nucleus principalis nervi trigemini; Nucleus sensorius superior nervi trigemini; Nucleus pontinus nervus trigemini】 Nucleus situated lateral to the motor nucleus that chiefly serves for tactile sensation. It can be divided into two parts.
→(三叉神経主知覚核は上知覚核ともよばれ、外転神経核の上外側にあり、下方は脊髄路核に接し、円い中等大細胞の不規則なぶどう状の集団からなる。主知覚核およびおそらくは脊髄路核の上部は、四肢および体幹に対する後索核と同様に、顔面の識別性触圧覚を中継する物と考えられる。)
- 890_10【Sensory root of trigeminal nerve感覚根;知覚性根;知覚根;大部(三叉神経の);三叉神経根 Radix sensoria; Portio major; Radix nervi trigemini】 Sensory part of the nerve that emerges caudally from the pons and extends to the trigeminal ganglion.
→(三叉神経の知覚根は体性感覚線維で三叉神経の大部に相当し、橋に入り、三叉神経主感覚核と三叉神経脊髄路核に分布する。)
Bechterew, Nucleus of
- 890_11Bechterew, Nucleus of【Superior vestibular nucleus前庭神経上核;上前庭神経核;前庭神経背側核;ベヒテレフ核 Nucleus vestibularis superior; Nucleus terminalis dorsalis nervus vestibuli; Nucleus angularis (Bechterew)】 Nucleus situated above the lateral vestibular nucleus that receives afferents from the ampullary crests. It has projections to the medial longitudinal fasciculus and cerebellum.
→(ベヒテレフ核とも呼ばれる。前庭神経上核は前庭神経外側核の上方背側にあり、その背側を上小脳脚の線維が通る。核の中央には大型細胞があり、その周囲をそれより小形の細胞が取り囲んでいる。Bechterew, Vladimir Michaliorich (Bekhterev)(1857-1927)ロシアの神経学者。1893年からペテルスブルグ大学の教授。1918年に同市の脳精神研究所の初代所長となる。ロシアの神経学の先駆者、聴神経のベヒテレフ核、大脳皮質のベヒテレフ層、ベヒテレフ病(強直性脊椎関節炎)を記述(1892年))
- 890_12【Medial vestibular nucleus in medulla oblongata前庭神経内側核;内側前庭神経核;シュワルベ核 Nucleus vestibularis medialis; nucleus vestibularis triangularis (Schwalbe)】 (Schwalbe's nucleus) Terminal nucleus located lateral to the sulcus limitans that receives afferents from the ampullary crests and the maculae of saccule and utricle. Its efferents travel bilaterally in the medial longitudinal fasciculus to nuclei of the extraocular muscles, Cajal's interstitial nucleus, and into the spinal cord.
→(前庭神経内側核は小型および中型細胞からなり、比較的線維が少ない。これは前庭神経核のうちで最も大きく、舌下神経核の吻側端の高さから外転神経核の高さまで伸び、上方は前庭神経上核と融合する。前庭神経内側核から起こり内側前庭神経核脊髄路を下行する神経線維は反対側の中心頚髄核にも終止する。)
Deiters' nucleus
- 890_13Deiters' nucleus【Lateral vestibular nucleus前庭神経外側核;外側前庭神経核;ダイテルス核 Nucleus vestibularis lateralis】 Smaller collection of cells near the lateral recess of the rhomboid fossa with projections to the anterior horn of the spinal cord.
→(前庭神経外側核はダイテルス核ともよばれる。前庭神経核は4つの小核からなるが、その内の外側核をいう。前庭神経外側核は前庭神経が脳幹内に入る高さにあり、巨大型細胞よりなるが、細胞の数および形には部位的差異が認められる。前庭神経の根線維はこの核の腹側部を通る。ドイツの解剖学者Otto Friedrich Karl Deiters (1834-1863)によって記載された。)
- 890_14【Anterior cochlear nucleus; Ventral cochlear nucleus蝸牛神経前核;蝸牛神経腹側核;腹側蝸牛神経核 Nucleus cochlearis anterior; Nucleus cochlearis ventralis】 Nucleus that can be subdivided into two parts.
→(蝸牛神経腹側核は発育がよく、下小脳脚の腹外側で、蝸牛神経の根の外側にある。蝸牛神経腹側核はその部位と細胞構築によって、前腹側核と後腹側核の2亜核に分けられる。蝸牛神経腹側前核anteroventral cochlear nucleusは吻側で卵円形細胞が密につまっており、また蝸牛神経腹側後核posteroventral cochlear nucleusは蝸牛神経の脳内侵入部近くにあって種々の形の神経細胞よりなるが、そのうちの主な物は多極性である。これらの亜核には音階的配列があり、音階に応じて連続的に対応している。蝸牛神経の線維は脳幹内に入ったのち、規則正しく順番に分岐して蝸牛神経背側核および腹側核の両方に音快的配列をもって終止する。蝸牛神経核内で線維が次々と規則正しく分岐と分布を行うので全ての亜核内で重なりあった周波数配列が認められる。蝸牛神経核では高い周波数に反応する細胞が背側に、低い周波数に反応する細胞が腹側に位置するが、これは蝸牛とは反対の配列である。)
- 890_15【Cochlear nerve蝸牛神経;聴神経;蝸牛神経根 Nervus cochlearis; Nervus acusticus; Nervus octavi; Pars cochlearis; Radix nervi cochlearis; Radix nervi cochlearis】 Collection of fibers passing from the cochlea to the cochlear ganglion.
→(蝸牛神経は内耳神経の一部をなす神経で、内耳道を通り蝸牛に達すると神経細胞体の集団(ラセン神経節、時に蝸牛神経節ともよばれる)を含むようになる。蝸牛神経の末梢枝は蝸牛内のラセン器に達する。ラセン神経節の神経細胞体から出る授受突起が蝸牛神経末梢枝の中を走行し、神経突起が蝸牛神経本幹および蝸牛根を経て中枢の蝸牛神経核に向かう。すなわち蝸牛神経は聴覚を伝える神経であるということができる。なお球形嚢に分布する神経として球形嚢神経があるが、これも聴覚の一部を伝えるする説が有力である。)
- 890_16【Vestibular nerve前庭神経;平衡神経;前庭部(内耳神経の) Nervus vestibularis; Nervus staticus; Pars vestibularis】 Collection of fibers of the vestibular apparatus that travel to the vestibular nuclei. Upper portion of the vestibulocochlear nerve.
→(前庭神経は内耳神経のうち前庭根より末梢の部分。内耳道底に前庭神経節を有するが、これはラセン神経節と同じく双極神経細胞からなり、この点は、前庭神経と蝸牛神経とは発生学的に相同であって偽単極性神経細胞からなる脊髄神経節とは異なる。)
- 890_17【Glossopharyngeal nerve [IX]舌咽神経[脳神経IX] Nervus glossopharyngeus [IX]】 Nerve arising from the third pharyngeal arch. It emerges from the medulla oblongata via the retro-olivary groove, passes through the jugular foramen, and descends obliquely behind the stylopharyngeus. It supplies motor fibers innervating the constrictor muscles of the pharynx and stylopharyngeus; sensory fibers innervating the pharyngeal mucosa, tonsils, and posterior one-third of the tongue (taste fibers); and parasympathetic fibers via the tympanic nerve and lesser petrosal nerve to the otic ganglion.
→(舌咽神経は第九脳神経で以下の3つの主な神経線維束からなる。①咽頭筋層に分布する運動神経線維、②舌の後3分の1の味覚および咽頭粘膜に分布する知覚線維、③耳神経節におもむく副交感神経節前線維、などを含む。混合神経で知覚、運動、味覚の3種の神経線維を含む。その核は延髄中に存し、大部分迷走神経核と共通である。この神経は数根をもって延髄の後外側溝の最上部から出て硬膜に小枝を与えた後、迷走神経とともに頚静脈孔の前部に至り上神経節を作り、頚静脈孔を出て再び膨大して下神経節を作る。とともに脊髄神経節と同じ構造でそのなかの神経細胞が知覚神経線維の起始である。その後しばらく垂直に走り内頚静脈の間、つぎに内頚動脈と茎突咽頭筋の間を下り、この筋の外側を経て前方に曲がり、舌根に分布する。)
- 890_18【Vagus nerve [X]迷走神経[脳神経X] Nervus vagus [X]】 Nerve arising from the fourth and fifth pharyngeal arches. It emerges from the medulla oblongata together with CN IX in the posterolateral sulcus and passes through the jugular foramen. Its distribution area extends into the thoracic and abdominal cavities.
→(迷走神経は第10脳神経で、上方の舌咽神経、下方の副神経の間で延髄の外側から多数の小根によって起こる混合神経で胸腹部の諸内臓に分布する副交感神経節前神経線維(延髄迷走神経背側核に細胞体をもつニューロンの神経突起)を主成分としている。これらの線維が胸腹部を走行するあいだに、きわめてしばしば自律神経叢を形成してどこに神経の本幹が存在するか不明瞭となるため、迷走神経の名がつけられた。また迷走神経には胸腹部の内臓の知覚を伝える神経線維(その細胞体は迷走神経の下神経節内に存在する)、咽頭下部および後頭の筋への運動線維(延髄疑核に発し、咽頭に分布するものは舌咽神経からの枝とともに咽頭壁において咽頭神経叢を形成したのち筋に分布する)、咽頭下部および後頭の粘膜への知覚神経線維、などが含まれる。後頭に分布する運動および知覚神経線維は下神経節の直下で後頭に向かう上喉頭神経となるか、あるいは胸腔内で迷走神経本幹から下喉頭神経として分かれて頚部を反回神経として上行するかして目的の器官に達する。)
- 890_19【Posterior cochlear nucleus; Dorsal cochlear nucleus蝸牛神経後核;蝸牛神経背側核;背側蝸牛神経核 Nucleus cochlearis posterior】 Dorsal cochlear nucleus. Its efferent projections form the posterior acoustic striae, running beneath the floor of the lateral recess of rhomboid fossa to the midline, then diving deeper and continuing into the trapezoid body.
→(蝸牛神経背側核は腹側核よりやや下方の高さで下小脳脚の背外側に接し、菱形窩の聴結節にある。この核は多くの動物では層構造を示すが、ヒトでも多少その傾向が認められる。)
- 890_20【Spinal tract of trigeminal nerve三叉神経脊髄路 Tractus spinalis nervi trigemini】 Descending fibers from the trigeminal nerve for pain and temperature stimuli.
→(三叉神経脊髄路は延髄から橋の横断面上にコンマ状に明確に認められる線維束。脊髄路核の各部の第Ⅰ層と第Ⅲ層細胞から起こる。これらのうち、下部と中間部からの線維は同側性であるが、上部からのものは両側性に下行し、後柱に入る感覚性情報を調節し、種々の反射に関係し、さらに三叉神経支配の受容器と脊髄の体性および内臓性効果器を連絡している。)
- 890_21【Spinal nucleus of trigeminal nerve三叉神経脊髄路核;三叉神経脊髄核 Nucleus spinalis nervi trigeminalis】 Long column of cells in the cervical spinal cord that is bounded rostrally by the principal sensory nucleus, and extends caudally into laminae I-V of the posterior horn of the spinal cord. It constitutes a termination site for protopathic afferents.
→(三叉神経脊髄路核は三叉神経脊髄路の内側にそってあり、橋の三叉神経根のレベルから第二頚髄まで存在する。三叉神経脊髄路の線維は全域にわたってこの神経核の細胞に終止する。細胞構築上三叉神経脊髄核は①吻側部、②中間部、尾側部に分けられる。)
- 890_22【Inferior vestibular nucleus前庭神経下核;下前庭神経核 Nucleus vestibularis inferior】 Group of cells lying inferolateral to the middle nucleus that forms a terminal nucleus mainly for descending afferents from the maculae of saccule and utricle. Its efferents travel in the medial longitudinal fasciculus to the spinal cord.
→(前庭神経核群のうち、前庭神経下核は延髄において副楔状束核の内側から上方へ前庭神経が脳幹に入るまでの高さにあり、主として小型および中型の細胞溶離成る。ただし、その最も吻側部は前庭神経外側核に似た大型細胞から成る。神経線維染色標本で縦走する線維束の認められるのがこの核の特徴である。)
- 890_23【Descending root of vestibular nerve前庭神経下行根 Radix descendens nervus vestibularis】
→(")
- 890_24【Inferior salivary nucleus; Inferior salivatory nucleus下唾液核;下唾液分泌核;延髄の唾液核 Nucleus salivarius inferior; Nucleus originis salivatorius medullae oblongatae】 Nucleus of origin giving rise to parasympathetic (secretory) fibers of the glossopharyngeal nerve.
→(下唾液核は延髄の網様体中に位置する副交感神経節前ニューロン群で、疑核の背側にある。この核の軸索は舌咽神経を通って脳を出て、耳神経節を介して耳下腺の分泌を支配している。上下唾液核の細胞は放散していて網様体の外側部では混ざり合っている。)
Gierke, Respiratory bundle of
- 890_25Gierke, Respiratory bundle of【Solitary tract孤束 Tractus solitarius】 Bundle of efferent fibers from cranial nerves VII, IX, and X to the nuclei of the solitary tract.
→(孤束は被蓋背側部を縦走する細いが明瞭な線維束。孤束核で囲まれ、閂の下方で左右のものが中心管の背側で交叉し、ある距離上を下り頚髄上部へと入る。迷走神経、舌咽神経および顔面神経(中間神経)に由来する内臓求心性線維によって形成されている。下の前2/3の味覚を伝道する神経(鼓索神経)と下の後1/3部の味覚伝導神経(舌咽神経)は主として孤束核の吻側に部に終わる。迷走神経が入る高さとその尾方の孤束は主として一般内臓求心性線維を含み、大部分は迷走神経からくる。)
- 890_26【Nuclei of solitary tract; Solitary nuclei孤束核 Nuclei tractus solitarii】 Column of cells extending from the decussation of pyramids to the middle of the rhomboid fossa. As a functional unit, the nuclear complex receives viscerosensory afferents whose endings are arranged somatotopically. Taste fibers from cranial nerves VII, IX, and X terminate in the anterior portion. As an independent integration center it is connected e.g. with the reticular formation, amygdala, and insular cortex. The current division of nuclei as follows is based mainly on different levels of acetylcholinesterase activity. The various functions of the individual nuclei in humans is unknown.
→(孤束核は延髄背側を矢状方向に走る細い細胞柱で、菱形窩底の下で境界溝のすぐ外側にある。小さい独立核の集まりで一括して言えば脳幹の内臓求心性の核であって迷走神経、舌咽神経、顔面神経からの線維が孤束を経てはいってくる。孤束核は次の数個の部分に分けられる。すなわち、①内側部、迷走神経背側運動核の背外側にある、②背内側、背外側および腹外側亜核、孤束を取り巻く、および③小細胞性亜核、最後野の腹側にある。内側部の細胞は迷走神経背側運動核を吻側にわずかに越え、また、第四脳室より下方へ広がり、反対側の同じ細胞性と合一して迷走神経交連核をつくる。外側の諸核は大細胞性の細胞柱をなし、孤束を一部あるいは完全に取り巻いている。この外側部は孤束のほぼ全長にわたって平行に存在する。吻側では橋下部まで広がり、一方尾側ではその細胞数が減少し、網様体との区別が難しくなる。孤束核の膨大した吻側部(すなわち外側部)は主として特殊内臓求心性(味覚)線維を顔面神経(中間神経)と一部の顔面神経と舌咽神経からくる一般内臓求心性線維を受ける。孤束核の内側部の細胞は多数のニューロペプチドを含有している。すなわち、エンケファリン、ソマトスタチン、サブスタンスP、およびコレシストキニンなどである。同部位にはサブスタンスP含有線維も豊富に存在する。孤束核から起こる二次路系は次の部位に同側性に投射する。すなわち、①疑核とその周辺の網様体、②橋上部の傍腕核、および③味覚に関与する視床の核、すなわち後内側腹側核(小細胞部)である。孤束核から起こるその他の二次線には舌下神経核と唾液核に投射し、舌の運動と唾液の分泌反射を仲介する。孤束核からの迷走神経背側運動核、横隔神経核(第三(C3)・第四(C4)・第五(C5)頚髄の高さ)、および胸髄の前角細胞への投射はせきと嘔吐反射に関与する。孤束核は生理学的に同定された延髄の呼吸“中枢”と同一の広がりをもち、この中枢は疑核とその周辺の網様体を包含する。延髄“呼吸中枢”の細胞は迷走神経のインパルス、および直接の化学的環境変化(CO2蓄積)によって賦活される。別個の昇圧帯と減圧帯からなる延髄の血管運動“中枢”は十分明らかにされていない。最近、心臓血管系の調節に関する神経回路網が重視されてきた。ノルアドレナリン作働性ニューロンの1集団(グループA5と呼ばれる)が橋の下部で上オリーブ核と顔面神経の根線維の間にあり、軸索を孤束核、疑核、迷走神経背側運動核および胸髄の交感神経節前線維のニューロンに投射しており、上記神経回路網の一部と思われる。)
- 890_27【Commissural nucleus of vagus nerve迷走神経交連核 Nucleus commissuralis nervi vagi】 Cluster of neurons above the central canal at the level of the decussation of medial lemniscus. Termination site of fibers from the solitary tract.
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- 890_28【Nucleus of oculomotor nerve動眼神経核 Nucleus nervi oculomotorii】 Nucleus situated at the level of the superior colliculus anterior to the cerebral aqueduct.
→(動眼神経核は第三脳神経、すなわち、動眼神経の起始核であり、動眼神経運動神経細胞の集合である。中脳被蓋の正中線背側部の両側に存在し、中脳中心灰白質の腹方に位置する。動眼神経核の尾側端は滑車神経核の吻側端とほとんど連続しており、動眼神経核の吻側端は中脳の最吻側レベルに達する。動眼神経運動神経細胞はそれぞれの筋支配に対応して局在配列する。すなわち、下直筋支配細胞は核の背側部、内直筋支配細胞は核の腹側部、下斜筋支配細胞は前2者の中間部、上直筋支配細胞は内側部に位置し、それぞれ脳幹の長軸に平行な左右一対の細胞柱を形成する。これらのうち、上直筋支配細胞柱だけは反対側の筋を支配するが、その他は同側の筋を支配する。また、上眼瞼挙筋を支配する細胞柱は正中部に位置し、不対であって、動眼神経核の尾側1/3のレベルにのみ存在する(尾側正中核)。以上の他、副核(Edinger-Westphal核)および正中核(Perlia核)を含めて動眼神経核群とされることがおおい。)
- 890_29【Nucleus of trochlear nerve; Trochlear nucleus滑車神経核 Nucleus nervi trochlearis】 Nucleus situated in the periaqueductal gray substance above the medial longitudinal fasciculus.
→(滑車神経核は下丘の高さで、中心灰白質の腹内側にあり、動眼神経核の直接尾方延長部にあたる。これは動眼神経主核と同様に多極性の大細胞からなり、これから出る根線維は中心灰白質の外側部を背側方でやや下方に走り、下丘の下で完全交叉をおこない(滑車神経交叉)、脳を出る。なお滑車神経核の背側で中心灰白質中には背側被蓋核が認められ、また内側縦束の腹側には腹側被蓋核が区別される。)
- 890_30【Trochlear nerve [IV]滑車神経[脳神経IV] Nervus trochlearis [IV]】 Nerve exiting on the dorsal side, caudal to the tectal plate. It supplies the superior oblique muscle.
→(滑車神経は脳神経中最少のもので、滑車神経核からでて上斜筋を支配する鈍体性運動性神経である。この神経は脳の背側から脳をでる唯一の脳神経で、下丘のすぐ後方で、上小脳脚と上髄帆小帯との間から出て、大脳脚をめぐり、(側頭骨)錐体尖の近くで硬膜を貫いて海綿静脈洞の上壁に達し、動眼神経の外側から上側に向かって前進し、上眼窩裂を通って眼窩内に入り、上直筋、上眼瞼挙筋起始部の上を前内側にすすんで、上斜筋に分布する。)
- 890_31【Mesencephalic tract of trigeminal nerve三叉神経中脳路;三叉神経下行根 Tractus mesencephalicus nervi trigemini; Radix descendens [Nervus trigeminus]】 Fibers for the mesencephalic nucleus of trigeminal nerve that run lateral to the cerebral aqueduct in the floor of fourth ventricle. They convey proprioceptive impulses from the teeth, masticatory muscles, and temporomandibular joints.
→(三叉神経中脳路核の細胞体からの主な突起は鎌状をした三叉神経中脳路を作り、これは三叉神経運動核の高さまで下行し、側副枝を運動核に送るが、大部分は運動根の一部として脳外に出る。)
- 890_32【Motor nucleus of trigeminal nerve三叉神経運動核;三叉神経起始核 Nucleus motorius nervi trigemini】
→(三叉神経運動核は典型的な大型の神経細胞よりなり、全体は卵円形をなして運動根と主知覚核の内側に位置する。核からの線維は知覚根の進入点より内側で脳幹を出て三叉神経節の下を通り、下顎神経に加わる。運動核は中脳路核からの側副枝を受けて2ニューロン反射弓を形成するが、そのほかにも三叉神経二次線維が交叉性および非交叉性に連絡しており、皮膚、舌および口腔粘膜と咀嚼筋との間に反射弓を形成する。皮質延髄路線維の一部は直接両側性に運動核細胞に終止するが、他の線維は網様体細胞を介して間接的に終止する。)
Gasserian ganglion
- 890_33Gasserian ganglion【Trigeminal ganglion三叉神経節;半月神経節 Ganglion trigeminale; Ganglion semilunare】 Crescent-shaped equivalent of a spinal ganglion of the trigeminal nerve lying in an outpouching in the subarachnoid space (trigeminal cavity) above the foramen lacerum on the medial, anterior surface of the petrous temporal bone.
→(ガッセル神経節またはガッサー神経節とよばれる。三叉神経の大きい扁平な知覚神経節で、中頭蓋窩の正中部分に沿った静脈洞に密接して脳硬膜の三叉神経腔にある。オーストラリアの解剖学者Johann Laurentius Gasser (1723-1765頃)によって報告された。彼自身についてはよく判っていない。)
- 890_34【Trigeminal nerve [V]三叉神経[脳神経V] Nervus trigeminus [V]】 Nerve innervating the first pharyngeal arch. The fifth cranial nerve, comprised of two groups of fibers exiting laterally from the pons, innervates the muscles of mastication and supplies sensory information for facial sensation.
→(三叉神経は知覚部と運動部とからなる混合神経で脳神経中もっとも大きい。その知覚部は頭部および顔面の大部分に分布し、運動部は深頭筋、咀嚼筋、顎舌骨筋および顎二腹筋の前腹を支配する。その核は菱脳中に位置し、体性運動性の三叉神経運動核、知覚性の三叉神経主知覚核および三叉神経脊髄路核ならびに咬筋の筋知覚を司るといわれる三叉神経中脳路核などに分けられるが、これから出る線維のなかで、知覚神経線維は集まって知覚根[大部]を作り、運動神経線維は集まって運動根[小部]を作り、橋と中小脳脚との移行部において脳を去る。知覚根は側頭骨錐体部の三叉神経圧痕の上で大きい三叉神経節[半月神経節]を作り、これを出てから眼神経、上顎神経、下顎神経の3枝に分かれる。運動根は三叉神経節の下面の内側に沿って前進し下顎神経に合する。三叉神経は3枝に分かれた後にも各々の神経節を有し、眼神経には毛様体神経節、上顎神経には翼口蓋神経節、下顎神経には耳神経節および顎下神経節がある。これらのうち三叉神経節は脊髄神経節と同じ構造で体性神経系に属するが、他の神経節はその構造上から自律神経系に属するものである。)
- 890_35【Motor root of trigeminal nerve運動根;運動性根;小部(三叉神経の) Radix motoria; Portio minor】 Root emerging from the trigeminal nerve toward the skull vertex and then passing under the trigeminal ganglion, innervating the muscles of mastication.
→(三叉神経の運動根は三叉神経の小根で、三叉神経運動核から出ている線維からなる。大きい知覚根の内側に位置して、橋から出て下顎神経に接続し咀嚼筋へ運動と固有受容の線維を送る。すなわち第一鰓弓に由来する筋で4種の咀嚼筋、おとがい舌骨筋、顎二腹筋の前腹、鼓膜張筋および口蓋帆張筋である。)
- 890_36【Root of facial nerve顔面神経根 Radix nervus facialis】
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- 890_37【Second part of facial nerve root顔面神経根第2部 Pars secunda radicis nervus facialis】
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- 890_38【Genu of facial nerve顔面神経膝;顔面神経内膝 Genu nervi facialis; Genu internum nervi facialis】 Curved facial nerve fibers lying below the facial colliculus and overlying the nucleus of abducens nerve.
→(顔面神経膝は顔面神経が顔面神経管の中で鋭く曲がっているところで、前のほうに進んでいた神経がここで後方へ向きを変え中耳の内側壁に達する(外神経節)。)
- 890_39【Nucleus of abducens nerve; Abducens nucleus (VI)外転神経核 Nucleus nervi abducentis】 Nucleus lying beneath the facial colliculus.
→(第6脳神経、すなわち、外転神経の起始核で、眼筋のうち外側直筋を支配する運動神経細胞群である。第四脳室底において橋の正中線背側核の両側に位置しており、顔面神経膝とともに、菱形窩に低い隆まりを形成する。)
- 890_40【First part of facial nerve root顔面神経根第1部 Pars prima radicis nervus facialis】
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- 890_41【Motor nucleus of facial nerve顔面神経核 Nucleus nervi facialis】 Motor nucleus for innervation of the masticatory muscles located near the level of the exit of the nerve.
→(第7脳神経、すなわち顔面[中間]神経を形成する神経線維のうち、表情筋・広頚筋・アブミ骨筋・茎突舌骨筋などの横紋筋を支配する運動神経線維の起始核であり、橋の最尾側レベルにおいて橋被蓋の腹外側部に位置する。顔面神経核からおこる神経線維は核の背側から出て背内頭側に走り(顔面神経上行根)、第四脳室底の直下で外転神経核の内側部に達してはじめて密な神経束を形成する。ついで、この線維束は外転神経核の頭側レベルで核の背側を外側に向かい顔面神経膝を形成する。ついで、線維束は三叉神経脊髄路核の内側縁に沿うように腹外側に走り(顔面神経下行根)、橋の尾側レベルで脳幹を出る。顔面神経の支配を受ける横紋筋のうち顎二腹筋後腹は副顔面神経核に支配される。副顔面神経核の神経細胞は顔面神経核と三叉神経運動核を結ぶ線上に散在性に存在する。顔面神経に含まれる副交感神経線維の起始核として、上唾液核が記載されている。この核の神経細胞は、橋被蓋網様体の尾側レベルでその背外側部において、三叉神経脊髄路核の内側縁付近に比較的散在性に存在するようである。)
- 890_42【Facial nerve [VII]顔面神経[脳神経VII] Nervus facialis [VII]】 Nerve arising from the second pharyngeal arch. It emerges from the brain at the pontocerebellar angle between the pons and inferior olive and passes with the vestibulocochlear nerve to the petrous part of the temporal bone, which it exits via the stylomastoid foramen. It supplies the muscles of facial expression.
→(顔面神経は第七脳神経である。狭義の顔面神経と中間神経とを合わせたもので、混合神経である。その主部をなす狭義の顔面神経は運動神経で、起始核たる顔面神経核は延髄上部から橋背部にかけてあり、これから出る神経は橋の後縁で脳を去り、内耳神経とともに内耳道に入り、その底で内耳神経と分かれ、内耳神経と分かれ、顔面神経管孔を経て顔面神経管に入り、間もなく殆ど直角をなして後外側に曲がる。この曲がるところは鼓室前庭窓の後上で顔面神経膝といい、ここに膝神経節がある。ついで弓状に後下方へ走り、茎乳突孔を通って頭蓋底外面に出て耳下腺中に入り、耳下腺神経叢を作った後、つぎつぎに多くの枝を出して広頸筋およびこれから分化したすべての浅頭筋(表情筋)、茎突舌骨筋、顎二腹筋後腹、アブミ骨筋などに分布する。以上の運動神経線維とは別に、膝神経節中の神経細胞から出る味覚神経線維が集まって、舌下腺および顎下腺に至る副交感性の分泌線維とともに中間神経を作り、広義の顔面神経の一部をなす。膝神経節細胞は偽単極性で、神経細胞より出る一条の突起はただちに分かれて、末梢および中枢の2枝となる。中枢枝は顔面神経に密接しつつ内耳道を経て脳に入って孤束核に終わり、末梢枝は、いわゆる上唾液核から出て舌下腺、顎下腺に至る副交感性の分泌腺にとともにいわゆる鼓索神経を作り、途中で再び分泌線維と分かれて舌神経に入り、舌体に分布して味覚を司る。)
Willis' nerve
- 890_43Willis' nerve【Accessory nerve [XI]副神経[脳神経XI] Nervus accessorius [XI]】 Nerve arising with two roots forming a single trunk that emerges through the jugular foramen along with CN IX and CN X, before dividing into two branches again.
→(副神経は第十一脳神経である。鈍運動神経で、その起始核は延髄から頚髄の上半におよぶ。したがってその神経根を延髄根と脊髄根とに分ける。前者は3~6本の根をなし迷走神経の下で延髄の後外側溝から出、脊髄根は6~7本の根をなして頚神経の前後両根の間から出て上行して延髄根と合して副神経の幹を作り、舌咽迷走両神経とともに頚静脈孔の前部を通って頭蓋底の外に出、内枝と外枝とに分かれる。内枝は延髄根の延長で、迷走神経下神経節の上端で迷走神経に合し、外枝は脊髄根の延長で下外方に走って胸鎖乳突筋および僧帽筋に分布する。また外枝はその経過中に第3および第4頚神経と交通する。)
- 890_44【Nucleus ambiguus疑核 Nucleus ambiguus】 Nucleus of origin lying posterior to the inferior olive. It gives rise to the motor fibers of CN IX and X as well as the cranial portion of CN XI. It receives afferent projections mainly from the solitary nucleus and reticular formation.
→(疑核はオリーブの背側にある核。舌咽神経(IX)、迷走神経(X)および副神経(XI)延髄根の起始核。疑核は三叉神経脊髄路核と下オリーブ核群のほぼ中間で、網様体内にある細胞柱である。この核は毛帯交叉の高さより下オリーブ核群の吻側1/3部の高さまで広がり多極性のコリン作働性の下位運動ニューロンからなる。この核より出た線維は背側に弧を描き、迷走神経背側運動核からの遠心線維と一緒になり下オリーブ核群の背側の延髄外側面から外にでる。疑核の尾方部は副神経の延髄根をだし、吻側部は舌咽神経の特殊内臓遠心性線維をだす(茎突咽頭筋を支配する)。迷走神経の特殊内臓遠心性線維(迷走神経に結合する副神経延髄根からの線維を含めて)は咽頭と喉頭の筋を支配する。疑核の細胞はNissl染色標本では同定が困難であり、この細胞は線維を出し、副神経脊髄根の一部を構成する。疑核の細胞はコリン作働性であるので、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)により免疫細胞化学反応を行えば、容易に見ることができる。舌下神経核と迷走神経背側運動核の細胞もChAT免疫反応陽性である。)
- 890_45【Posterior nucleus of vagus nerve; Dorsal nucleus of vagas nerve迷走神経背側核;迷走神経後核;灰白翼核 Nucleus posterior nervi vagi; Nucleus dorsalis nervi vagi; Nucleus alae cinereae】 Nucleus lying on the floor of rhomboid fossa lateral to the nucleus of hypoglossal nerve. It is the origin of the visceromotor fibers of the vagus nerve.
→(迷走神経背側核はさらに内側核と外側核とに分けられる。内側核(背側運動核dorsal motor nucleus)は一般内臓遠心性である副交感性線維を出す。外側核は迷走神経支配の領域から一般内臓求心線維が終止する。この核はまた孤束核に含められ、孤束核の内側核として取り扱われることが多い。迷走神経背側運動核は舌下神経核の背外側で第四脳室底に位置する。比較的小さい紡錘形の細胞からなるこの細胞柱は、吻側および尾側共にわずかに舌下神経核を越えて広がっている。この神経核の一部の大きい細胞は粗大なNissl小体と散在性のメラニン色素を含む。迷走神経背側運動核の細胞は副交感神経節前線維(GVE)をだし、軸索は軸索は三叉神経脊髄路およびその核を貫いて延髄外側面より外にでる。迷走神経背側運動核迷走神経性の分泌運動中枢である。迷走神経背側運動核の細胞はコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)に強く免疫陽性を示す。この核を破壊すると、インスリンによって誘発される胃液分泌が大きく減弱する。)
- 890_46【Nucleus of hypoglossal nerve; Hypoglossal nucleus; Nucleus of CN XII舌下神経核 Nucleus nervi hypoglossi】 Paramedian nucleus situated in the floor of the inferior portion of the rhomboid fossa.
→(舌下神経核は第12脳神経、すなわち舌下神経の起始核である。脊髄前角の運動神経細胞群の頭側延長部として、延髄において第四脳室底の直下で正中線背側部の両側に存在し、オリーブ核下端部より内耳神経核のレベルにわたる細胞柱(約2cm)を形成する。内舌筋および5個のうち4個の外舌筋を支配している運動神経核。)
- 890_47【Nucleus of accessory nerve; Accessory nucleus (XI)副神経核 Nucleus nervi accessorii】 Nucleus situated in segments C1-C6 near the anterolateral nucleus. It provides the root fibers of the spinal part of the accessory nerve.
→(副神経核は脊髄の上方6区域(C1-C6)の前角の中央部と外側部を縦に連ねた運動性細胞柱で、ここから副神経がでる。副神経は延髄根(内枝)と脊髄根(外枝)からなる。延髄根は疑核の下端部から起こり迷走神経に合して喉頭(固有)筋や下咽頭収縮筋を支配する。脊髄根は延髄下部から頚髄上部(C5-C6)にかけて存在する副神経脊髄核からおこり僧帽筋と胸鎖乳突筋を支配する。脊髄核は延髄下部では前索の内側部の近くにあるが下方にいくにしたがい外方に移動し、前角外側部に位置するようになる。根は背外方に向かい、側索の背側部を貫いて脊髄を出る。)