900
- 900_01【Third ventricle第三脳室 Ventriculus tertius】 Diencephalic part of the cerebral ventricular system. It extends from the lamina terminalis to the cerebral aqueduct.
→(第三脳室は左右の間脳の間にある背腹方向にスリット状を示す腔である。前壁は終板と前交連によってつくられる。前上部には室間孔が開口し、左右の側脳室と交通し、後方は中脳水道と連絡する。後壁は松果体に入り込む松果体陥凹がみられ、下壁は視床下部によってつくられ、視交叉陥凹、漏斗陥凹がみられる。外側壁を形成している視床と視床下部の境には視床下溝が走る。なお、脳室の前上方部に第三脳室終脳部とよばれる部分がある。)
- 900_02【Corpus callosum脳梁 Corpus callosum】 Transverse nerve fibers connecting the two cerebral hemispheres at the base of the longitudinal cerebral fissure.
→(脳梁は左右の大脳皮質、ことに新皮質を結合する線維の集合したもので、系統発生的には最も新しく、ヒトでは非常に発育がよい。その前後経はほぼ7.7cmである。脳梁は正中断では全体としては釣針状で、4つの部分が区別される。後端部は膨大し、脳梁膨大といい、その前方に続いて水平に走る部分を脳梁幹とよぶ脳梁はその前端では強く屈曲し、脳梁膝をつくる。これはさらに後下方にくちばしのように尖って脳梁吻となり、しだいに薄くなって終板に続く。)
- 900_03【Tela choroidea of third ventricle第三脳室脈絡組織 Tela choroidea ventriculi tertii】 Thin layer of pia mater covered with ependymal cells extending between the right and left tenia thalami.
→(第三脳室脈絡組織は脳軟膜が大脳半球の後頭葉と小脳の間を通り、さらに脳梁膨大と松果体の間(大脳横裂)から入って第三脳室の上壁を作っているもので、上葉と下葉とからなり、両者の間はクモ膜下組織にによって満たされ、1対の内大脳静脈を含む。第三脳室脈絡組織は全体として頂点を前に向けた三角形をなし、その頂点は脳弓柱、底辺は脳梁膨大、左右の外側辺は付着板の内側縁をなす脈絡ヒモによって作られる。この正中部は第三脳室の上壁を形成し、その下面は第三脳室上衣板でおおわれ、ここから下方に向かい、正中線に沿って左右1対の第三脳室脈絡叢がでる。これらは外側方は視床髄条の表面に視床ヒモをもって付着する。第三脳室脈絡組織の外側部は視床の背側面をおおい、さらに外側方に延びて脳弓(海馬采を含む)と分界条との間にある裂隙、すなわち脈絡裂を通って側脳室の中心部および下角に入り込む。脈絡裂の全長にわたってこの部から側脳室に向かい側脳室脈絡叢が出る。これは内側は脳弓ヒモに、外側は脈絡ヒモに付き、前方は室間孔を通って第三脳室脈絡叢に続き、後方は側脳室の中心部から下角に向かって延びる。中心部と下角の移行部では側脳室脈絡叢が肥厚し、これを脈絡糸球という。)
- 900_04【Pineal gland; Pineal body松果体;松果腺 Glandula pinealis; Epiphysis cerebri; Corpus pineale.】 It develops from the roof of the diencephalon and overlies the tectal plate.
→(松果体は円錐形の小体で、後交連の領域で、第三脳室の天井に付着している。これは痕跡的な腺であるらしく、血管の豊富な結合組織の小柱の網工からなり、その網眼の中には神経膠細胞および松果体細胞pinealocytesあるいはepiphysial cellがみられる。サルの松果体細胞はセロトニン(5-HT)とコレシストキニン(CCK)を含んでいる。哺乳類の松果体細胞は、系統発生学的には、感覚神経性光受容体の要素と関係しており、これは、分泌細胞になる物が多いが、間接的に光受容性をもっている。これらの突起の棍棒状をした終末は、血管血管を取り囲む血管周囲腔に接して終わる。松果体の分泌のうちで最もよく知られた物は、セロトニン、ノルアドレナリンおよびメラトニンという生体産生アミンであるが、その他に、サイロトロピン遊離ホルモン(TRH)、黄体形成ホルモン遊離ホルモン(LHRH)およびソマトスタチン(SRIF)のような、視床下部で形成されると同定されたペプチドを、かなりの濃度で含んでいる。セロトニンは、松果体細胞の中で合成されて細胞外の隙間に放出される。ノルアドレナリンは、松果体の実質細胞に終止ししている交感神経ニューロンの中で合成される。松果体は、昼間光の変動に敏感なN-アセチルトランスフェラーゼおよびヒドロキシインドール-o-メチルトランスフェラーゼという2つの酵素の働きによって、セロトニンからメラトニンを合成する。メラトニン合成の毎日の変動は周期性であり、光入力の毎日の周期に直接関係している。光は、日周期を環境の光周期に一致させる。そして、さらに、まだ確認されていない経路を経て、神経性信号が松果体に運ばれることを速やかに遮断するように働く。N-アセチルトランスフェラーゼの活性は、昼夜に高められるが、光にさらすと、酵素の活性が失われる。視床下部の視交叉上核を両側性に傷害すると、この核は網膜視床下部経路を受けているので、松果体のN-アセチルトランスフェラーゼにおける周期がなくなり、その結果、ヒドロキシインドール-o-メチルトランスフェラーゼの活性のレベルが下がる。そのような傷害によって、自発運動の活性の日周期および栄養補給と水飲み行動の両方の日周期がなくなる。雄のネズミでは、視交叉上核の傷害によって、正常な発情周期がなくなる。網膜視床下部路は、視交叉上核の構造との直接の相互作用によって、松果体のはたらきを変える。環境の光は、日周期をその周期に一致させる働きと伝達する働きをもっているとみなされ得る。内在性振動発生装置を光周期にのせるための光後下はゆっくりであるが、信号伝達に及ぼす光の後下は速やかである。そして、それによって、光によってN-アセチルトランスフェラーゼが速やかに“消失”することと、持続光によって日周期が妨げられることを、おそらくは説明できるであろう。視交叉上核からの単一神経路が、松果体によるメラトニン形成に関係する両酵素を調節しているが、これらの結合についての詳細は、なお、あきらかになっていない。間接的に証明された根拠は視交叉上核から松果体への神経路には、視床下部の灰白隆起の領域、内側前脳束および中間質外側路への中継路が含まれることを示唆している。このように、松果体は、交感神経ニューロンを経て受けた信号をメラトニンという内分泌物に変換させる、神経内分泌変換体ともいうべきものであるらしい。松果体の分泌は視床下部の働きを変化さえるが、それは、内分泌が心身の血液循環あるいは、脳脊髄液に入ってからののちに作用する。松果体のセロトニンとメラトニンの日内変動は、光入力の周期に応じて起こる。松果体活動のこれらの周期性変化は、この腺が生物学的時計としてはたらいて、生理学的過程と行動学的過程とを調節する信号を出していることを示唆している。これらの変動は日周期circadian rhythmsと呼ばれ、環境からの刺激が存在すれば、ほぼ24時間周期を示すだけである。松果体実質の腫瘍は、性的機能を低下させて思春期を送らせるが、他方、松果体を破壊するとしばしば早発思春期を伴う。これらの観察は、松果体が、性腺および生殖器系に抑制的影響を及ぼすことを示す実験的研究の結果と一致する。)
- 900_05【Tectal plate; Quadrigeminal plate蓋板;四丘体板;四丘板 Lamina tecti; Lamina quadrigemina】
→()
Galen, Vein of
- 900_06Galen, Vein of【Great cerebral vein大大脳静脈 Vena magna cerebri; Vena cerebri magna】 Short vein between the union of the two internal cerebral veins and the beginning of the straight sinus.
→(ガレン大静脈ともよばれる。大大脳静脈は脳梁膨大部の下方に位置し、左右両側の内大脳静脈および脳底静脈が合流してつくられる短い静脈幹である。脳梁膨大部の近くで後方および上方に走行し、大脳鎌と小脳テントの結合部の前方に流し直静脈洞となる。大大脳静脈の全長は平均12mm(範囲8~25mm)と短いが、非常に重要である。大大脳静脈には、1対の脳底内大脳静脈、1対の内大脳静脈、1対の脳底内大脳静脈、1対の脳底静脈、1対の後頭静脈および1対の後脳梁静脈が注ぎ込む。ローマ在住のギリシャの医師Claudius Galen (130-201 ?)による。)
- 900_07【Superior sagittal sinus上矢状静脈洞 Sinus sagittalis superior】 It lies within the root of the falx cerebri and extends from the crista galli to the confluence of sinuses.
→(上矢状静脈洞は大脳鎌の上縁に沿って、盲孔から静脈洞交会まで縦走する。この上矢状静脈洞は尾側にいくに従い大きさを増す。またこの縦走する静脈洞の中央部には、数や大きさがさまざまな裂孔すなわち静脈裂孔がある。)
- 900_08【Quadrigeminal cistern; Cistern of great cerebral vein四丘体槽;大大脳静脈槽 Cisterna quadrigeminalis; Cisterna venae magnae cerebri】 Space spreading out between the splenium of corpus callosum, tectal plate, and superior medullary velum. It contains the great cerebral vein, quadrigeminal arteries, and pineal body.
→(大大脳静脈槽ともよばれる。四丘体槽は脳梁と視床の間で中脳被蓋のすぐ後方に位置するやや広がって伸び出たクモ膜下腔で、背側から外側にかけて取り巻いている大大脳静脈槽を、臨床では迂回槽cisterna ambiensと呼んでおり、重要なクモ膜下層である。その理由は、このクモ膜下層の中に、大大脳動脈(great vein of Galen)、後大脳動脈、上小脳動脈などが存在するからである。これらのクモ膜下層のほとんどは、核磁気共鳴画像撮影法(MRI)やCTによる画像で見ることができる。)
- 900_09【Straight sinus直静脈洞 Sinus rectus】 It commences at the union of the great cerebral vein and inferior sagittal sinus and runs within the root of the falx cerebri at its junction with the tentorium cerebelli to the confluence of sinuses.
→(直静脈洞は、小脳テントに付着する大脳鎌のところ後走する静脈洞。下矢状静脈洞と大大脳静脈が合流してでき、一般にやや左側に偏して走り、横静脈洞に合し、静脈洞交会に注ぎ込む。)
- 900_10【Cerebellum小脳 Cerebellum】 Part of the brain situated above the rhomboid fossa.
→(Cerebellumは、「大脳、脳」を意味するcerebrumの指小形で、「小さい脳」という意味である。Cerebrumは、「頭」を意味するギリシャ語のkararan由来する。 小脳は筋、関節などの深部組織、前庭、視覚、聴覚系などからの入力を直接あるいは間接的に受け、眼球運動を含む身体の運動調節を司る。小脳は正中部の虫部と外側部の小脳半球とに分けられる。いずれも多数の小脳溝により小脳回に細分される。この中、特定の小脳溝は深く、これにより小脳回の集合ができる。これを小脳小葉とよぶ。ヒトでは小脳は深い水平裂により上面と下面とに分けられ、虫部とそれに対応する半球に九つの小葉が区別される。系統発生的には小脳は前葉、後葉、片葉小節葉の3部分に分けられる。前葉は系統発生的に古く古小脳(Paleocerebellum)ともよばれ、脊髄小脳路、副楔状束核小脳路、オリーブ小脳路の一部、網様体小脳路などをうける。後葉は系統発生的に新しく、新小脳(Neocerebellum)とよばれる。とくに半球部は虫部より新しく、橋核、主オリーブ核などを介して大脳皮質と結合している。前葉と後葉とは第1裂により境される。片葉小節葉は原小脳(Archicerebellum)とよばれ最も古く前庭系との結合が著明である。後葉とは後外側裂で境される。後葉には虫部錐体と虫部垂との間に第2裂がある。ヒトの小脳小葉の形は他の動物のものと大きく異なりる。小脳全体は灰白質と白質とからなる。灰白質には小脳皮質と小脳核とがある。小脳皮質は小脳小葉の表面をなし遠心性軸索を出すPurkinje細胞と皮質内での結合を行う細胞とからなる。小脳核は深部にあり、室頂核、球状核、栓状核、歯状核の4核からなる。小脳皮質にはその結合から三つの縦帯が認められる。すなわち、正中部の虫部皮質、外側部の半球皮質および両者の境界部の虫部傍皮質である。虫部皮質のPurkinje細胞は室頂核に、虫部傍皮質は球状核と栓状核に、半球皮質は歯状核に投射する。小脳の中心部の白質塊は髄体とよばれ、遠心性および求心性繊維から出来ている。ここからは白質が分枝して(白質板)、小葉に分かれる。全体として樹の枝のようにみえるので、小脳活樹と名づけられている。小脳は三つの小脳脚により、延髄、橋、中脳と結合している。これは小脳の遠心路および求心路の通路となっている。 小脳の発生 development of the cerebellum:小脳は後脳の菱脳唇から発生する。後脳の菱脳唇は翼板の背外側につづく背内方に突出する高まりで、胎生2ヶ月の後半において急速に増大し、小脳板とよばれるようになる。左右の小脳板の間には菱脳蓋の頭側半分が介在するので、頭側部では左右の小脳板は相接しているが、尾側部では広く離れている。菱脳の中央部を頂点とする橋弯曲が高度になると、この部の菱脳蓋の左右方向の拡大によって、左右の小脳板の尾側部はいよいよ高度に引き離され、左右の小脳板は菱脳の長軸に直角な一直線をなすようになる。これと同時に左右の小脳板の頭側部(今では内側部)が合一するので、結局、正中部が小さくて左右両部が大きい単一の小脳原基が成立する。正中部からは小脳虫部が、左右両部からは小脳半球が形成される。 増大していく小脳原基の背側部には、やがて中部から半球に向かって走る溝が次々に出現して小脳を区画する。胎生5ヶ月のおわりには小脳虫部における10個の主な区分(小脳葉)がほぼ完成する。これらの小脳葉はそれぞれ固有の発育を行うが、その間に第2次、第3次の溝が生じて、各小脳葉を多数の小脳回に分ける。このような形態発生の結果広大な表面積を獲得した小脳の表面には小脳皮質とよばれる特別な灰白質が形成され、これに出入りする神経線維はその深部に集まって小脳白質を形成する。 小脳原基においても菱脳室に接する内側から表面に向かって胚芽層・外套層・縁帯の3層が分化する。胚芽層は神経が細胞をつくりだすが、胚芽層から発生するのは小脳核の神経細胞と小脳皮質のPurkinje細胞およびGolgi細胞である。小脳原基が3層に分化するとまもなく、外套層の表層部にやや大型の神経芽細胞が出現し、小脳板の背側面(表面)に平行に1列にならぶ。これがPurkinje細胞の幼若型である。ついで小脳板の尾側端部の胚芽層でさかんな細胞分裂がおこり、ここで生じた未分化細胞は縁帯の表層部を頭方に遊走して、小脳原位の全表面をおおう未分化細胞層を形成する。これを胎生顆粒層という。 胎生顆粒層の細胞は胚芽層における細胞分裂が終わるころから活発な分裂を開始し、神経細胞をつくりだす。この神経細胞は縁帯およびPurkinje細胞の層を貫いて、Purkinje細胞の層の下に達し、ここに新しい細胞層(内顆粒層)をつくる。胎生顆粒層からは、このほかに縁帯の中に散在する籠細胞や小皮質細胞が生ずる。必要な数の神経細胞を送り出すと胎生顆粒層における分裂はやみ、本層は速やかに消失する。一方、Purkinje細胞は縁帯の中に多数の樹状突起を伸長させる。縁帯はPurkinje細胞の樹状突起で満たされて厚くなり、核をあまり多く含まな灰白層となる。このようにして小脳の全表面は、表面から灰白層・Purkinje細胞層・内顆粒層の3層から成る小脳皮質でおおわれることになる。)
- 900_11【Subarachnoid space; Leptomeningeal spaceクモ膜下腔;軟膜腔;軟膜間隙 Spatium subarachnoideum; Spatium leptomeningeum; Spatium leptomeningicum】 Space between the arachnoid mater and pia mater that contains arachnoid connectivetissue fibers and cerebrospinal fluid.
→(クモ膜下腔はクモ膜と軟膜の間の空間で、繊細な線維性の柱が縦走し脳脊髄液で満たされている。軟膜は脳および脊髄の表面に直接付着するため、脳表面が深く陥凹する所(大脳皮質の深溝など)ではこの空間は非常に広がる。部位によってその広さが異なり、特に広くなっている部分をクモ膜下層という。その主なものは、延髄背側面と小脳下面の間にある小脳延髄層、大脳外側窩にある大脳外側窩槽、視交叉の周囲にある交叉槽、両側の大脳脚の間にある脚間槽、大脳横裂中で大大脳静脈槽に続く迂回槽、橋の腹側にある橋槽などがある。これらのうち、小脳延髄層は最も大きく、大槽ともいわれ、ここへ第四脳室正中口および外側口が開く。脳脊髄液採取のため大後頭孔の下からこの槽が穿刺される(後頭下穿刺)。クモ膜下腔には脳に出入りする血管・神経が走る。)
"Magendie (Majendie), Foramen of
- 900_12Magendie (Majendie), Foramen of【Median aperture第四脳室正中口;第四脳室正中孔;菱脳正中口 Apertura mediana ventriculi quarti; Apertura mediana rhombencephali】 Unpaired opening above the obex for the drainage of cerebrospinal fluid.
→(マジャンディー孔とも呼ばれる。第四脳室正中口はカンヌキの直上にある髄液の通路。脳脊髄液は第四脳室正中口と外側口からクモ膜下腔に出ると、脳と脊髄のまわりに拡散し、これらを浮かべる「水のクッション」を形成する。脳脊髄液はテント切痕を通り、大脳半球の下面および凸面に沿って頭頂部まで上行し、そこでクモ膜顆粒によって上矢状静脈洞その他の静脈に吸収される。脳脊髄液の一部は脊髄神経および脳神経の根にも直接吸収される。またクモ膜下腔にある静脈からも直接に吸収される。脳脊髄液は一日約500ml産生される。脳室と中脳水道で約35mlの脳脊髄液を容れ、全クモ膜下腔には約100mlの脳脊髄液が含まれる。フランスの生理学者François Magendie (1783-1855)によって発見された。このほかに脊髄後根が知覚性線維から、前根が運動性線維からなるというBell-Magendie's lawにその名を残す。
第4脳室は、正中口と左右の外側口を通じてクモ膜下腔と交通している。すなわち、これらの2種の開口こそ、脳室内の脳脊髄液がクモ膜下腔に流れ出る道であるから、胎生期や乳児期にそれらがすさがると水頭症を起こす。)
"
- 900_13【Posterior cerebellomedullary cistern; Cisterna magna; Great cistern後小脳延髄槽;小脳延髄槽;大槽 Cisterna cerebellomedullaris posterior; Cisterna cerebellomedullaris; Cisterna magna】 Dorsal cistern between the cerebellum and medulla oblongata into which the median aperture of the fourth ventricle opens. It can be accessed through the foramen magnum.
→(後小脳延髄槽は小脳の延髄背面との間にある最大のクモ膜下槽で大槽とも呼ぶ。ここには第四脳室正中口ならびに外側口が開いて、脳室系とクモ膜下層の脳脊髄液の接点となっているため、脳室の脳脊髄液を得たいときにはこの槽に穿刺(後頭下穿刺)を行う。)
- 900_14【Interthalamic adhesion; Massa intermedia視床間橋;中間質 Adhesio interthalamica; Massa intermedia】 Inconstant fusion (70-85%) of the right and left parts of the thalamus.
→(視床間橋は背側視床の内側面は第三脳室に面し、上衣層におおわれ、その中央よりやや前方には視床間橋(中間質)がある。橋状に左右の視床を結ぶ。これはヒトでは退化的で、しばしば欠如する(20%)。)
- 900_15【Body of fornix脳弓体 Corpus fornicis】 Middle, unpaired portion lying below the corpus callosum that is formed by the union of the two crura of the fornix.
→(脳弓体は脳梁の下にある脳梁の中央部で脳弓柱に続いて後走し、脳梁幹の下面と癒着しており、また左右が正中部で癒着している。脳梁幹の後部では再びこれと離れ、脳弓脚となる。)
Monro, Foramen of
- 900_16Monro, Foramen of【Interventricular foramen室間孔 Foramen interventriculare】 Opening between the lateral and third ventricles behind the genu of the fornix.
→(モンロー孔ともよばれる。左右の側脳室と第三脳室とを結ぶ連絡孔。スコットランドの医学者Alexander Monro II (1733-1817)により、1797年に発見された。彼の名前はモンロー・リヒター線Monro-Richter lineにも残っている。)
- 900_17【Septum pellucidum透明中隔 Septum pellucidum】 Thin dual layer of fibers stretched between the corpus callosum and fornix with an irregular slitlike space between them. It divides the anterior horns of the lateral ventricle from each other.
→(透明中隔は左右の側脳室前角を分離する一対の薄板である透明中隔板と、その間の狭い間隙である透明中隔腔からなる。透明中隔腔は成人ではしばしば閉鎖し、左右の透明中隔板が密着する。透明中隔腔は脳室ではなく、その内面には上皮細胞層が証明されない。透明中隔板は脳梁と脳弓の間に張られているが、発生学的には終脳胞の内側面の一部が脳梁の発達のため前頭葉から分離されたもので、痕跡的な大脳皮質の構造を示す。透明中隔は元来の中隔野の後部の一部で、中隔野には透明中隔のほか、前交連と終板の前にある終板傍回、梁下野、中隔核などが含まれる。)
- 900_18【Anterior commissure前交連 Commissura anterior】 Commissure located anterior to the fornical column. It is readily visible in the anterior wall of the third ventricle.
→(間脳の前交連は第三脳室の前壁をつくる終板の後ろにある横走線維束である。前部は小線維束で、左右の両側の嗅脳系を結び、後部は大きな線維束で、左右両側の側頭葉に連絡する。前交連は小さな密な線維束で、脳弓柱の吻側で正中線を横切る。これは全体として自転車のハンドルに似た形態をしていて、肉眼標本では明瞭ではないが、2つの部分から構成される。前交連の小さい前部は肉眼標本ではあきらかでないが両側の嗅球を連絡している。大きい後部は主として両側の中側頭回および下側頭回の間を連絡する。)
- 900_19【Frontal lobe前頭葉 Lobus frontalis】 Portion extending from the frontal pole to the central sulcus.
→(前頭葉は中心溝の前、そして外側溝の上にある。前頭葉の上外側表面は3つの脳溝によって4つの脳回に分けられる。前頭葉には、1次運動野はBrodmannの脳区分でいうと領域4(中心前回から中心傍小葉)を中心に錐体外路系の中枢があり、身体の反対側の随意運動を起こす。Betzの巨大細胞が特徴的であるが、この細胞からの線維は皮質脊髄路の3%程である。運動前野(2次運動野)はBrodmannの領域6,8,44など(中心前回の前部から上・中・下前頭回後部)にある錐体外路系の運動中枢。この部は一次運動野の活動プログラム化に働き、障害されると習得した運動が障害される。通常の運動障害はなく、失行と呼ばれる。前頭眼野は中心前回で、顔面支配領域の前方に位置する(主に8野で6,9野の一部)。眼球や眼瞼の共同運動の中枢である。補足運動野は上前頭回内部に位置し、姿勢や運動開始と関係するらしい。運動性言語中枢はBrodmannの領域44,45(三角部)に位置する。Brocaの言語野ともいい、言語発声に必要な口から口頭の筋を統合支配する中枢で、運動野と連絡して発声運動を行うという。この部が障害されると意味のある言語を発声できなくなる運動失語が生じる。運動前野は大脳皮質の前頭葉の前方を広く占有している連合野である(Brodmannの9,10野)。前頭前野は脳の極めて広範囲から上方を集めて行動のプログラミングを行う。靴紐を結んだり、ボタンをかけるなどの学習・経験による複雑な組織化された運動の遂行と関係がある。背側運動前野は運動の企画や準備に対応し、腹側運動前野は物体を認知して動作へ変換する情報に変えるといわれる。)
- 900_20【Cranial pia mater; Leptomeninx脳軟膜 Pia mater cranialis; Pia mater encephali】 Delicate, vascular cranial membrane. It forms a loose connective-tissue sheath lying on the surface of the brain and passing into the sulci, and thus also covering the cranial vessels.
→(脳軟膜は脳の表面をくまなくおおう薄膜で、脊髄におけるよりも密に脳に付いている。軟膜は脳室壁が上衣層のみからなる部位(上衣板)の外表面をおおい、脈絡組織を作り、上衣板と癒着している。脈絡組織から脳室内に血管に富む脈絡叢が出ており、その脳室面はやはり上皮板によっておおわれる。この部分における上衣板の上衣細胞は立方系で、単層を無し、脳脊髄液を分泌すると考えられている。脈絡組織には第四脳室脈絡組織と第三脳室脈絡組織がある。)
- 900_21【Optic chiasm; Optic chiasma視神経交叉;視交叉;視束交叉 Chiasma opticum; Chiasma fasciculorum opiticorum】 Decussation of medial optic nerve fibers between the optic tract and optic nerve.
→(視神経交叉は視床下部の漏斗の吻側にある扁平な線維板で、視神経線維が交叉しているところ。視交叉の背側から両側に開いて出る線維束は視索である。第三脳室の終板と灰白隆起の間で視交叉は第三脳室の底の一部を成す(視交叉陥凹)。視交叉はその上面で(終板の前方)前交連動脈と接し、下面はトルコ鞍の鞍隔膜の上に乗っている。眼球網膜の鼻側半からの線維は交叉して対側へ行き、側頭半からの線維は同側を交叉せずに後方へすすむ。下垂体前葉から発生する腫瘍が視交叉を圧迫することがある。)
- 900_22【Chiasmatic cistern交叉槽;視交叉槽 Cisterna chiasmatica】 Cerebrospinal fluid-filled space surrounding the optic chiasm.
→(交叉槽は視交叉の下方および前方にクモ膜下腔が拡張したもの。)
- 900_23【Hypothalamus視床下部 Hypothalamus】 Basal portion of the diencephalon. It consists of the floor and, from the hypothalamic sulcus onward, the basal portions of the walls of the third ventricle. It extends from the lamina terminalis to just posterior to the mammillary body and is visible on the base of the brain. It is composed of individual areas that can be distinguished histologically to a greater or lesser extent. It functions as an autonomous control center sending hormonal and nerve efferents.
→(視床下部は間脳の中で、内臓機能、自律機能および内分泌機能と最も関係が深い部分である。これらの機能のすべてが、感情的および情動的行動と密接に関係している。第三脳室の側壁の下部および底にあたる。脳底面からみると、吻側から数えて、視交叉、漏斗、灰白隆起、乳頭体とつづき、漏斗の先端は下垂体に連なる。背側は視床下溝により視床と境されており、吻側は終脳の視索前野に、尾側は中脳被蓋と中脳中心灰白質に、尾外側は視床腹側部に移行する。通常、矢状面に平行な三つの帯状領域、すなわち、視床下部脳室周囲層、視床下部内側野、視床下部外側野に区分される。これらの間を多数の細かい神経線維が主として吻尾方向に走っている。視床下部は前後径が約10mmである。視床下部は内部環境を正常に維持する機序に関与し、また心悸亢進、瞳孔散大、“冷汗”の分泌などの情動反応の表出にも一役を演じている。大脳皮質を除去し、背側視床を除去した後でも、怒り反応はあらわれる(「みかけの怒りSham rage」)。さらに、視床下部は成長、性的成熟など新地あの成熟過程にも関与している。したがって、視床下部を損傷すると、広汎で顕著な内分泌性、代謝性、行動性(情動性)の以上が一緒に起こってくることになる。視床下部は下垂体ホルモンによって内部環境に影響を及ぼすが、さらに脳幹網様体や自律神経系を介しても同様の働きを示す。視床下部への情報は通常の入力神経系によって伝達されるばかりでなく、視床下部のニューロンは内部環境からの物理的および化学的刺激(血液の温度など)にも反応する。植物性機能の中には、その統御中枢が視床下部自体に存在するものもあるが、呼吸や心臓の活動などの機能に関しては、視床下部はもっと下位の中枢に対する修飾器として働いている。)
- 900_24【Interpeduncular cistern脚間槽 Cisterna interpeduncularis】 Cerebrospinal fluidfilled space behind the chiasmatic cistern and bounded laterally by the temporal lobe and cerebral crura. It contains the oculomotor nerve, bifurcation of the basilar artery, the origin of the superior cerebellar artery, and the posterior cerebral artery.
→(脚間槽は橋底の吻側で乳頭体の腹尾側にあるクモ膜下腔の拡張部で、クモ膜が両側頭葉間に張って間脳底をおおう形になり、クモ膜と間脳底の間に槽を形成する。この中に動眼神経がある。)
- 900_25【Basilar artery; BA脳底動脈 Arteria basilaris】 Unpaired vessel that arises from the union of the right and left vertebral arteries and extends in the basilar sulcus of pons to the site where it divides into the posterior cerebral arteries.
→(脳底動脈(BA)は左右の椎骨動脈は脊髄の腹側面で合一して1本の脳底動脈となる。脳底動脈は脳底を前進し、橋の前縁で左右の後大脳動脈に分かれる。小脳前下面に前下小脳動脈を、内耳に迷路動脈を、橋に数本の橋枝を、小脳上面に上小脳動脈を与える。左側の椎骨動脈は通常は右側の椎骨動脈よりもずっとよく発達している。そのため、大きい方の椎骨動脈が閉鎖すると重大な結果を招くことがある。脳底動脈は橋底面の正中部にある脳底溝の中を吻側に走り、鞍背のレベルで2本の終枝、すなわち後大脳動脈に分岐する。後大脳動脈と後交通動脈との吻合によってウィリスの動脈輪が閉じる。)
- 900_26【Spinal arachnoid mater; Arachnoid of spinal cord脊髄クモ膜 Arachnoidea mater spinalis; Arachnoidea spinalis】 Thin, avascular membrane attached to the spinal dura mater by surface adhesion. Its connective-tissue fibers extend to the pia mater.
→(脊髄クモ膜は脊髄と硬膜と軟膜の間にある血管を含まない薄膜で、内皮細胞でおおわれた多数の細い結合組織線維の小梁によって軟膜と結合されている。特に頚部から胸部にかけてこれらの小梁が背側正中部で多く、強くなり、上下に続いた中隔を作る。これを中間頚部中隔という。クモ膜と軟膜との間には比較的広いクモ膜下腔があり、ここには脳脊髄液がある。脳クモ膜にみられるような槽を作らない。脊髄クモ膜下腔は臨床的に腰椎穿刺に利用される。穿刺は脊髄損傷を避けるために脊髄円錐より下方(第3,4腰椎間)で行う。その際に高さの基準としてヤコビの線Jacoby's lineが選ばれる。ヤコビの線は左右の腸骨稜の最高点を結ぶ線で、およそ第4腰椎の棘突起の高さに相当する。)