1011
- 1011_00【Orbit; Orbital cavity眼窩 Orbita; Cavitas orbitalis】 Orbital cavity that contains the eyeball and its appendages.
→(眼窩は眼球とその付属器とを容れる不規則な四角錐体状の大きなくぼみで、最深部はその後内方にある。錐体底にあたる部はほぼ四辺形の眼窩口で、軽度外下方に傾いており、顔面に開いている。その上縁を眼窩上縁、下縁を眼窩下縁という。眼窩上縁は前頭鱗からなり、その内側半分に2個の切痕または孔があり、その内側のものを前頭切痕(まれに前頭孔)、外側のものを眼窩上孔(まれに眼窩上切痕)とう。眼窩下縁は上顎骨体および頬骨からなり、その下方に眼窩下孔が開口している。眼窩は上・下・内側・外側の4壁を有し、7種類の骨による10部より形成されている。上壁は大部分が前頭骨眼窩面および蝶形骨小翼腹側面よりなり、外側には涙腺窩、小翼内には視神経管があり、ここに視神経および眼動脈を通す。下壁は大部分が上顎骨眼窩面によりなるが、外側の一部が頬骨眼窩面、後方の小部分が口蓋骨眼窩突起により形成されている。また後方から前方へ眼窩下溝その延長部である眼窩下管が走り、これが既述の眼窩下孔に開口する。内側壁は大部分が篩骨眼窩板により形成され、残りの部分のうちの前部は上顎骨前突起および涙骨、後部は蝶形骨体側面最前部によって形成されている。なお篩骨眼窩板上縁と前頭骨眼窩部との間には、前篩骨孔および後篩骨孔があり、前者は鼻腔に行く前篩骨神経および前篩骨動脈を通し、後者は篩骨蜂巣に行く後篩骨神経および後篩骨動脈を通す。また内側壁の前部にある涙嚢窩は、上顎骨の前涙嚢稜と涙骨の孔涙嚢稜との間にあり、稜骨の涙嚢溝が合して形成されたものである。外側壁は前半部は頬骨眼窩面、後半部は蝶形骨大翼眼窩面と上壁の蝶形骨小翼との間には頭蓋腔に通ずる上眼窩裂があり、動眼神経、滑車神経、眼神経、外転神経、上眼静脈などを通す。また外側壁後半部の蝶形骨大翼眼窩面と下壁の上顎骨眼窩面との間には翼口蓋窩および側頭下窩に通ずる下眼窩裂があり、眼窩下神経、頬骨神経、下眼静脈などを通す。)
- 1011_01【Superior oblique muscle上斜筋;上眼球斜筋 Musculus obliquus superior; Musculus obliquus bulbi superior】 o:Medial to the common tendinous ring on the body of sphenoid, i: After a hook-shaped course, obliquely behind the equator. Its tendon passes through the trochlea. Action: Abduction, intorsion, and depression of the eye. I: Trochlear nerve.
→(上斜筋は眼窩傍結合組織すなわち視神経鞘と(おもに)蝶形骨体の結合組織である総腱輪の内側から起こる。上斜筋は眼窩錐体の内側直近の上を前方に走行する。眼球の縁で上斜筋の丸みのある腱は結合組織性の吊り索(滑車)を通過し鋭角で後方に曲がる。さらに上斜筋の腱は上直筋の下でこれと交差し眼球上後側頭部の強膜に停止する。目の動き:視線を内側かつ下方に向ける。)
- 1011_02【Eyeball眼球 Bulbus oculi】
→(眼球は名前のように球状(直径約25mm・体積約8cm3)で、視覚器の主要部をなす。眼窩脂肪体、眼筋筋膜、眼球鞘などに包まれて眼窩中にあり、前方からは眼瞼により保護されている。また眼筋の働きにより球関節に似た自由度の高い体軸性運動を行う。眼球の内部には前方に眼房水、後方に硝子体が満ちて、12~22mmHgの内圧が保たれる。眼球の形状を規定するため、前極、後極、赤道、経線、外眼球軸(前・後極を結ぶ)、内眼球軸、視軸などを用いる。眼球軸は角膜と水晶体前・後面の曲率中心を通る軸で、網膜面では中心窩と円板の中間を通る。したがって水晶体後面の屈曲率中心と中心窩を結ぶ視軸とは一致しない。眼球壁は組織発生的に、①眼球線維膜(強膜、角膜)、②眼球血管膜(脈絡膜、毛様体筋、虹彩支質、角膜内皮、胎児期の瞳孔膜)、③眼球内膜(網膜視部、毛様体・虹彩色素上皮層)の3層よりなる。①と②は中胚葉、③は神経外胚葉に由来する。内部の水晶体は体表外胚葉、硝子体は中胚葉由来であり、眼瞼・眼球膜、角膜上皮は皮膚の表皮の続きである。)
- 1011_03【Vitreous body硝子体 Corpus vitreum】 It consists of about 98 % water and contains trace amounts of protein and sodium chloride as well as a mixture of tiny fibers that become denser toward the surface and form a limiting membrane. Its gelatinous consistency is due to its high hyaluronic acid content.
→(硝子体は薄い硝子体被膜に包まれた無色透明のゼリー状の硝子体液と、はなはだ微細な膠原線維様の細線維が豊富に含まれている。硝子体は網膜盲部である毛様体上皮とは直接接しておらず、両者の間には後眼房が介在する。眼房から眼杯が形成されて生じる硝子体眼房にとりこまれた間葉組織が、水晶体と虹彩・網様体により封じ込められたものである。本来虹彩支質を経て脈絡膜につづき、眼球血管膜の一環をなしていた。胎生期には網膜中心動脈の終末枝(硝子体動脈)が視神経乳頭から硝子体眼房の中心を貫いて水晶体被膜に達しその発生をになうが、妊娠末期に閉鎖吸収される。)
- 1011_04【Orbital septum眼窩隔膜;眼窩中隔 Septum orbitale】 Sheet of connective tissue that is partly reinforced by tendons. It extends from the orbital margin beneath the orbicularis oculi to the outer margins of the tarsi and closes off the orbital cavity anteriorly.
→(眼窩隔膜は眼窩の中の脂肪が前へ飛び出してくるのを防ぐ結合組織性の仕切りである。顔面骨膜と眼窩骨膜から線維を受け、眼窩口をせばめるとともに眼窩縁と上・下瞼板を結合している弁状の線維組織。とくに内眼角と外眼角でこれが発達し、内側、外側眼瞼靱帯という。前者は涙嚢を固定している。眼窩を経て顔面や頭皮へ向かう脈管神経は眼窩隔膜を貫く。)
- 1011_05【Superior conjunctival fornix上結膜円蓋 Fornix conjunctivae superior】 Reflection of bulbar conjunctiva onto the palpebral conjunctiva located high up behind the superior eyelid.
→(眼球結膜が上眼瞼の上後方で、眼瞼結膜へと折り変えるところ。(Feneis))
Mueller's muscles
- 1011_06Mueller's muscles【Superior tarsal muscle上瞼板筋 Musculus tarsalis superior】 Smooth muscle between the musculotendinous junction of the levator palpebrae and superior tarsus.
→(ミュラー筋ともよばれる。上瞼板筋は眼球の毛様体内部にある輪状に走る平滑筋線維。上眼瞼挙筋腱膜の浅板。眼輪筋の眼瞼部(睫毛筋)の後面と上眼瞼皮下に終わる。ドイツの解剖学者Heinrich Franz Mueller (1820-1864)によって報告された。経線方向に走る平滑筋線維はブリュッケ筋Brucke's muscleという。)
- 1011_07【Orbicularis oculi muscle; Orbicular muscle of eye眼輪筋 Musculus orbicularis oculi】 Ringlike sphincter muscle around the eye consisting of various parts. It acts to close the eyelids and support the flow of tears into the lacrimal sac and nose. I: Facial nerve.
→(眼輪筋の外側部にある(外側)眼瞼縫線は筋の後面と内側部のほかは不明瞭である。外眼角と頬骨を結ぶ外側眼瞼靱帯とは別物で、両者は内側部でゆるく結合するだけであるが、この縫線と靱帯はしばしば混同されている。外側部では眼輪筋と骨との結合がないので、眼を強く閉じると筋とともに皮膚が外眼角に引かれて目じりにヒダができるのである。なお、眼裂を開くのは主に上眼挙筋(眼筋)が行ない、大きく開くときは同時に前頭筋によって眉が上がることが多い。下眼瞼は弾力によって元に戻ると思われるが、その動きは小さい。まばたきのとき涙が吸い込まれることは、涙がこぼれそうになると無意識にまばたきを行うことからも判る。その機構として眼を閉じるとき眼輪筋の涙嚢部が涙嚢の壁を引いて広げるという節が有名である。しかし、一般に涙嚢部といわれる筋(Horner筋)が涙嚢と関係のないことは以前から記載があり(Eisler)涙の排出機構にも諸説があった。長嶋1954, 1955は涙道の圧をしらべ、瞼を開くときに涙小管腔が陰圧になって涙が吸い込まれ、瞼を閉じるとき涙小管は陽圧に涙嚢は陰圧になって涙は涙嚢に送られ、さらに瞼を開くとき涙嚢は陽圧となって鼻涙管に排出されるとした。その後の研究も合わせると、Horner筋は瞼閉じるとき涙小管を屈曲・圧迫するもので、これとは別に涙嚢を包む筋膜(涙嚢間膜)から起こるごく小さい筋束(Jones 1957)があって涙嚢を広げるという機構が有力である。このポンプ作用の主力はHoener筋と涙小管にあり、そのほか毛細管現象による吸引、重力による鼻腔への流下なども助けるという。なお、いわゆるHorner筋は涙小管を囲んで眼瞼縁に向かうが、Jonesの筋束は外輪筋眼瞼部の周辺部に合するもので、後者は従来見落とされていたが、または、涙嚢部と区別だれていなかったと思われる。)
- 1011_08【Iris虹彩 Iris】 Round disc with a central opening (pupil) situated in the frontal plane that varies in color in different individuals. It forms the posterior end of the anterior chamber and becomes continuous at its margin with the ciliary body. It has a diameter of 10-12 mm.
→(虹彩は、前頭面に位置し、眼の血管層の前方部分をつくる隔膜で、色に個人差のある円板。中央に開口部(瞳孔)があり、直径は約10~12mm。前眼房の後境界で、その縁は毛様体へ移行する。周囲辺縁は強膜岬角に付着している。瞳孔をかたちづくるあたかもカメラの絞りのような器官で、虹彩内皮、虹彩支質、虹彩筋、虹彩色素上皮層より構成され、血管に富む。虹彩の脈管と神経はは虹彩の動脈としては毛様体縁に沿う大虹彩動脈輪、瞳孔縁に沿う大虹彩動脈輪、瞳孔縁に沿う小虹彩動脈輪、両者を放射状につなぐ小動脈があり、長後毛様体動脈、前毛様体動脈、脈絡膜毛細血管叢より供給される。静脈血はこれらに伴う静脈のほか、渦静脈に流入する。虹彩の神経支配として長毛様体神経(三叉神経由来の体知覚性神経)と短毛様体神経(毛様体神経節由来の自律神経)があり、後者には動眼神経副核由来の節前線維から興奮を受けて伝達する節細胞の軸索すなわち副交感神経節後線維と、内頚動脈神経叢を経て毛様体神経節に達し、節内でそれに合流する胸部交感神経核由来の交感神経節後線維が含まれる。瞳孔括約筋は副交感神経、散大筋は交感神経の支配を受ける。)
- 1011_09【Superior tarsus上瞼板 Tarsus superior; Tarsus palpebrae superior】 Semilunar fibrous plate that is curved like a bowl and forms the upper eyelid. It measures about 10 mm vertically and consists of tough, connective tissue of interwoven collagen fibers. It contains the tarsal glands.
→(上瞼板は高さ約10mmあり、皿状に曲がっている。かたい縺れた膠原線維性の結合組織よりなる。瞼板腺を含む。上眼瞼を広く反転できるのは、ここに上眼板があるからである。とくに日本人では、眼輪筋と瞼板との間に疎性結合組織と脂肪組織があって内輪筋と瞼板とはゆるく結合するので、眼瞼を反転しやすい。上瞼板と皮膚との結合が粗であると一重瞼であるが、結合が密でつよいと二重瞼となる。)
- 1011_10【Lens水晶体 Lens; Lens crystallina】 Lens suspended by the ciliary zonule between the pupil and vitreous body. It measures 9-10 mm in diameter and is about 4 mm thick.
→(水晶体は虹彩の後方、硝子体の前方に位置し、双凸面レンズ構造をもつ。赤道直径約9mm、水晶体軸(前、後極を結ぶ直線)3.7~4.4mm、前面弯曲度から8mm、後面弯曲度~6mm、屈折率1.36(中央部)~1.42(辺縁部)。水晶体は無色透明な水晶体包(前面で厚く、後面で薄い粘液多糖体層で、水晶体上皮の基底膜が発達したもの)におおわれる水晶体質よりなる。水晶体質はより軟らかい上皮と硬い核に分かれやすく、胎児では雌で水晶体包に切れ目をいれるとはじけるように裂ける。生体では前、後極から発する数本の水晶体放線がわずかに認められ、胎児では前後両面放線がわずかに認められ、胎児では前後両面に、たがいに120°に交わる3本の放線(前面逆Y字、後面正Y字形)を示す。水晶体の構成要素は水晶体線維で、発生初期の単層の水晶体胞の後壁の細胞のみが著しく長大化したものである。前面に層単層の水晶体上皮は水晶体胞前壁の原型を保つ。赤道より後面にいくにしたがい長細い六角形の水晶体線維の束へと移行する。胎児期の放線は水晶体線維束の付着点をなす中隔に一致し、前極からおこる線維は後面の赤道近くの最寄りの放線に、前面赤道近くの中隔よりおこる線維は後極へ向かう。水晶体線維は緊密かつ生前と配列するが、微絨毛を出して細い細胞管腔を確保し、水および代謝物質の移送路を形成する。生体の水晶体には血管の神経の分布が認められない。胎児の水晶体包は硝子体動脈により養われるが、妊娠末期に道動脈が閉鎖する。老年者では前後面の弯曲度が減って扁平となり、黄白色を帯びる傾向にある。この変化が進行したものを白内障cataractという。全体の25%を占める水晶体蛋白はα-およびβ-クリスタリンと不溶性アルブモイドよりなり、そのほかにグルタチン、ビタミンCなどが含まれる。)
- 1011_11【Palpebral fissure眼瞼裂;眼裂 Rima palpebrarum】 Opening between the margins of the upper and lower eyelids.
→(眼瞼裂は上下眼瞼縁の間。)
- 1011_12【Inferior tarsus下瞼板 Tarsus inferior; Tarsus palpebrae inferior】 Semilunar fibrous plate forming the lower eyelid that measures about 5 mm vertically. It consists of tough, connective tissue of interwoven collagen fibers and contains the tarsal glands.
→(下瞼板は高さ約5mmあり、皿状に曲がっている。かたい縺れた膠原線維性の結合組織よりなる。瞼板腺を含む。(Feneis))
- 1011_13【Cornea角膜 Cornea】 Transparent, anterior part (1/6) of the eyeball that is anteriorly convex and posteriorly concave. It is 0.9 mm thick in the middle and 1.2 mm thick at the margin.
→(角膜は眼球前方部の透明部分。厚さ約1mm、直径10~12mmの前弯した楕円形の膜で、角膜頂、角膜縁、前および後面を区別する。弯曲度は前面(曲率半径約7.8mm)よりも後面の方が強い。前面は光学的に縦径線が横径線に比してやや強く弯曲し、正視眼ではこの差は水晶体弯曲度の逆の関係により補正されるている。角膜の特徴として、角膜血管が入る辺縁部以外ではまったく血管が存在しない。組織学的に5層が区別される。①角膜上皮、②前境界板(Bowman膜)、③角膜固有質、④後境界板(Descement膜)、⑤角膜内皮)
- 1011_14【Ciliary body毛様体 Corpus ciliare】 Thickened area situated between the ora serrata and root of the iris that contains the ciliary muscle and ciliary processes.
→(毛様体は虹彩支質と脈絡膜の移行部に生後発生する平滑筋(毛様体筋)の束により生じる肥厚部である。経線断面では全体として三角形の断面をもち、3頂点がそれぞれ網膜鋸状縁、虹彩基部、毛様体突起にあたる。毛様体突起には毛様体小帯が結合し、水晶体に連絡する。眼球を赤道面で切断し、その前半分を後ろから観察すると水晶体を一周する毛様体を一眺することができる。鋸状縁につづく、①毛様体輪(幅~3mm)と、②放射状に配列する約70個の毛様体突起とヒダよりなる毛様体間が区別される。輪部には細い経線方向に走る稜線が認められ、これが集中して毛様体突起(長さ2mm、幅1mm、高さ0.5mm)をつくる。)
- 1011_15【Inferior tarsal muscle下瞼板筋 Musculus tarsalis inferior】 Smooth muscle between the inferior conjunctival fornix and the inferior tarsus.
→(下瞼板筋は下結膜円蓋と下瞼板の間にある平滑筋。)
- 1011_16【Inferior conjunctival fornix下結膜円蓋 Fornix conjunctivae inferior】 Reflection of bulbar conjunctiva onto the palpebral conjunctiva behind the inferior eyelid.
→(眼球結膜が下眼瞼後方で、眼瞼結膜へと折り変えるところ。(Feneis))
- 1011_17【Sclera強膜 Sclera】 Membrane of the eyeball composed of interwoven collagen fibers. It has a bluishwhite appearance and is visible through the conjunctiva.
→(眼球の形状を保つ強靱な膠原線維組織層。角膜となっている前部6分の1を除いた部分。前方では隔膜固有質に、後方では篩板から視神経外鞘を経て脳硬膜に、それぞれつづいている。強膜と角膜を合わせて眼球線維膜という。強膜の厚さは眼球後極で~1.0mm、前部で~0.6mm、赤道で~0.4mmである。視神経線維束を通す篩板は後極の内側3.5mm、視神経乳頭の直後方にあたる。視神経は~数十本の掌側としてこれを通る。渦静脈、長・短毛様体動脈および神経が強膜を貫く。強膜はは外から内へ、①強膜上皮、②強膜固有質、③強膜褐色板の3沿うよりなる。虹彩角膜角に沿って強膜固有質が内方へ皮厚し(強膜距)毛様体筋腱により貫かれる。この部の直前に輪状に走る強膜静脈洞(Schlemmn管)があり、眼房水は虹彩角膜間隙(Fontana腔)からこれを通って渦静脈に排出される。角膜縁をとり膜浅い強膜溝の深層にこれらの構造がある。眼球前部の強膜上板毛細血管網に富み、その炎症性変化を臨床的に「網膜充血」という。強膜前部は眼球結膜、後部は眼球鞘(Tenon鞘)によりおおわれる。内面は脈絡外隙を間に脈絡外板に接する。)
Tenon's capsule
- 1011_18Tenon's capsule【Fascial sheath of eyeball眼球鞘;テノン嚢 Vagina bulbi; Capsula bulbi】 Connective-tissue sheath between the eyeball and orbital fat. It is attached posteriorly at the optic nerve to the sclera. It ends anteriorly below the conjunctiva. It is separated from the sclera mostly by the episcleral space.
→(テノン鞘ともいう。眼球後面にある線維膜で後方部は視神経外鞘の周囲をおおって視神経管に達し、前方は赤道を越えて各眼筋停止部から眼筋筋膜に移行する。眼球鞘眼球との間には両者の間の強膜外隙(Tenon隙)を関節腔とする球状関節が形成され、滑らかな眼球運動を助けている。眼筋筋膜のうち、上斜筋膜の延長部は下瞼板に付着する。内および外側直筋膜の延長部は、それぞれ涙骨と頬骨に付着し、内・外側抑制靱帯または内・外側支帯とよばれる。眼球下面では、眼球鞘が肥厚し、とくに眼球懸架靱帯とよばれることがある。フランスの病理学者で眼科医のJaques Rene Tenon (1724-1816)の名を冠する。1806年に記載されている。)
- 1011_19【Inferior oblique muscle下斜筋;下眼球斜筋 Musculus obliquus inferior; Musculus obliquus bulbi inferior】 o:Lateral alongside the nasolacrimal canal, i: Behind the equator. Action: Gaze elevation, abduction, and extorsion. I: Oculomotor nerve.
→(下斜筋は眼窩口内側縁の後方の上顎骨に存在する前涙嚢稜から起こり眼窩下縁と並行に走る。下斜筋は停止部近くで扇のように後方へ放射状に広がり眼球の下後側頭部眼球赤道の強膜に停止する。目の動き:視線を内側かつ上方に向ける。)
Zinn's artery
- 1011_20Zinn's artery【Central retinal artery; Central artery of retina網膜中心動脈 Arteria centralis retinae】 First branch of the ophthalmic artery. It enters the optic nerve about 1 cm behind the eyeball from inferior and extends with it to the retina.
→(網膜中心動脈は眼球の後方約1~2cmのところで下方から視神経に侵入し、網膜の内層(脳層)とに分布しこれらに栄養を与える。)
- 1011_21【Telencephalon; Cerebrum終脳;大脳 Telencephalon; Cerebrum】 Endbrain derived from the prosencephalon. It consists of paired portions (hemispheres, cortex, basal ganglia, and primary olfactory regions) as well as unpaired portions (lamina terminalis, corpus callosum, and anterior commissure).
→(脳を発生学的立場から終脳、間脳、中脳、橋と小脳、延髄の5区分に分けられる。TAでは終脳と大脳を同義語としているが、大脳は前脳(終脳と間脳)および中脳で終脳と大脳は脳の中で最も大きく、その背側面は頭蓋冠の全域を占め、腹側面は前および中頭蓋窩に入っている。大脳は、中心部を形成している間脳と左右の終脳の2部分に分けられる。終脳の一部で嗅覚に関係する部分を嗅脳Rhinencephalon, olfactory brainという。残念ながら定まった意味でいつも使用されるとは限らない。しばしば、辺縁葉または辺縁系皮質に近い意味で広義に使用される。このように解釈されたときには、もはや嗅覚性の部分のみとはいえない。魚類や両生類などでは嗅覚性インパルスを受ける終脳域が主体であるが、ヒトでは古い皮質部分(古皮質といわれる部分)に相当し、その領野は狭い。ヒトの嗅脳は、嗅葉および梁下野からなる。嗅葉は嗅上皮からの細い嗅神経線維束をうける嗅球(篩骨篩板上)とこれから後方につづく嗅索とその後端が広がった部分、すなわち嗅三角に区別され大脳半球の前頭葉下面にある。嗅索を形成する第1次嗅覚系線維の大部分は嗅三角で内側嗅条と外側嗅条とにわかれる(第二次嗅角形線維束)。前者は梁下野に向かい、後方で前有孔質に接する。一方、梁下野(嗅傍野)は大脳半球の内側面で脳梁膝の下、終板傍回(海馬の最前部に相当すると考えられている)のすぐ前方にある小部分である。)
- 1011_22【Levator palpebrae superioris muscle上眼瞼挙筋 Musculus levator palpebrae superioris】 o: Upper portion of optic canal and dural sheath of optic nerve. Its insertion tendon widens anteriorly and divides into a superior and an inferior layer. I: Oculomotor nerve.
→(上眼瞼挙筋は視神経管の縁の総腱輪の外側で視神経鞘から起こり、眼窩上壁のすぐ下で前頭神経の下を通り上眼瞼にいく。上眼瞼挙筋の腱は分離して上眼瞼挙筋浅板と上眼瞼挙筋深板に分かれる。前者は上眼瞼中を縁に向かって進み、後者は上瞼板筋の平滑筋細胞を伴って上眼瞼の瞼板に付く。下瞼板筋は下眼瞼板と下結膜円蓋の間の下眼瞼に存在する平滑筋層である。)
- 1011_23【Superior rectus muscle上直筋;上眼球直筋 Musculus rectus superior; Musculus retus bulbi superior】 o: Common tendinous ring, i: Along an oblique line passing anterior to the equator, 7-8 mm behind the corneal margin. Action: Elevation and intorsion of superior pole. I: Oculomotor nerve.
→(上直筋は、眼球の上部を斜め外側に進んで眼球の周囲に達し、そこで角膜縁の後方約7-8mmの胸膜に停止腱が放射上に胸膜組織と絡まるように停止する。目の動き:視線を外側かつ上方に向ける。)
- 1011_24【Retrobulbar fat; Orbital fat body眼窩脂肪体 Corpus adiposum orbitae】 Fat body filling the spaces around the extra-ocular muscles, eyeball, and optic nerve. It is bounded anteriorly by the orbital septum.
→(眼球は眼窩のなかで眼筋・血管・神経などとともに脂肪組織内に埋まっている。この脂肪組織を眼窩脂肪体という。)
- 1011_25【Ophthalmic artery眼動脈 Arteria ophthalmica】 Artery arising from the anteriorly convex arch of the internal carotid artery and passing under the optic nerve within the optic canal into the orbit.
→(眼動脈は内頚動脈の枝で、頭蓋腔から視神経管を通って眼窩に入る幹動脈である。眼動脈は中頭蓋窩において前床突起の内側で内頚動脈から起こり、視神経管の中を視神経の下を通るが眼窩に入ると、視神経の上を斜めに横切って前内方にすすむ。眼窩でいろいろの枝(①網膜中心動脈、②涙腺動脈、③筋枝、④毛様体動脈、⑤前篩骨動脈・後篩骨動脈、⑥眼窩上動脈・眼窩下動脈、⑧鼻背動脈)に分かれ、眼窩の内容(眼球・副眼器)および前頭部・鼻腔壁の一部に分布する。)
- 1011_26【Optic nerve [II]視神経;視束[脳神経II] Nervus opticus; Fasciculus opicus [II]】 Nerve emerging medial to the posterior pole of the eyeball and extending to the optic chiasma.
→(視神経は脳神経の1つとして扱われてはいるが、実は前脳胞の延長部である。眼球網膜の第8層である神経細胞層中にある多極神経細胞から出る神経線維が集まって出来る神経である。すなわち杆状体細胞および錐体状細胞よりの興奮は網膜の内顆粒層の双極細胞に伝わり、それがさらに神経細胞層の細胞に連絡し、この神経細胞の出す神経突起である線維はまず眼球の後極よりやや内下方の一ヶ所に集まって、視神経円板を作り、強大な神経幹となり、網膜の続きである視神経鞘に囲まれて後内側に向かう。眼球から約15~20mm隔ったたところで、眼動脈の枝である網膜中心動脈およびこれに伴う静脈が外側から入り込み、その中軸を通って網膜に分布する。左右両側の視神経は眼窩後端の視神経管を通って頭蓋腔に入り、次第に相近づいて蝶形骨体上の視神経溝でほぼ半交叉をして視交叉を作り、そのつづきは視索と名が変わって間脳の外側膝状体および中脳の上丘などの第一次視覚中枢に達して、ここで終わる。網膜が眼胚から発達するので経路に相応する。ヒトの視神経は眼球網膜の神経細胞層中にある多極神経細胞から出る100万本以上の神経線維からなる。すなわち、杆状体細胞および錐体状細胞よりの興奮は網膜の内顆粒層の双極細胞に伝わり、それがさらに神経細胞層の細胞に連絡し、この神経細胞の出す神経突起である線維はまず眼球の後極よりやや内下方の一ヶ所に集まって、視神経円板を作り、強大な神経幹となり、網膜の続きである視神経鞘に囲まれて後内側に向かう。眼球から約15~20mm隔ったたところで、眼動脈の枝である網膜中心動脈およびこれに伴う静脈が外側から入り込み、その中軸を通って網膜に分布する。左右両側の視神経は眼窩後端の視神経管を通って頭蓋腔に入り、次第に相近づいて蝶形骨体上の視神経溝でほぼ半交叉をして視交叉を作り、そのつづきは視索と名が変わって間脳の外側膝状体および中脳の上丘などの第一次視覚中枢に達して、ここで終わる。)
Zinn, Anulus of
- 1011_27Zinn, Anulus of【Common tendinous ring of extra-ocular muscles; Common annular tendon総腱輪(外眼筋の) Anulus tendineus communis】 Tendinous ring giving origin to the rectus muscles. It surrounds the optic canal and medial part of the superior orbital fissure.
→(眼筋の4つの直筋群(内側直筋、外側直筋、上直筋、下直筋)は眼窩の後端から起こる。筋の起始腱は全体として視神経管のまわりで輪、すなわち総腱輪をつくる。各直筋は総腱輪から、それぞれ、眼窩の4壁(内側壁・外側壁・上壁・下壁)に沿って前進し、眼球の前半部(赤道より前方)につく。)
- 1011_28【Sheath of optic nerve視束鞘;視神経鞘 Vagina fasciculi optici; Vaginae nervi optici】
→()
- 1011_29【Inferior rectus muscle下直筋;下眼球直筋 Musculus rectus inferior; Musculus rectus bulbi inferior】 o: Common tendinous ring, i: Along an oblique line about 6 mm from the corneal margin. Action: Depression of the eye and extorsion of the superior pole. I: Oculomotor nerve.
→(下直筋は眼球下部で上直筋と同じ方向性をもち、眼球下部の周囲に角膜縁の後方約6mmの胸膜に放射状に停止する。目の動き:視線を外側かつ下方に向ける。)
- 1011_30【Periorbita眼窩骨膜 Periorbita】 Delicate periosteal covering of the orbit that is firmly attached to the bone at the entry and exit sites of the orbit. It is continuous anteriorly with the adjacent periosteum and posteriorly with the dura mater.
→(眼窩の壁をつくる骨を被う骨膜は眼窩骨膜といわれ、骨との結合はゆるく、頭蓋下面の骨膜につづく。また上顎窩裂や視神経管では頭蓋腔の脳硬膜に連なる。)