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- 313_00【Glenohumeral joint; Shoulder joint肩関節;関節窩上腕関節 Articulatio humeri; Articulatio glenohumeralis】 Shoulder joint between the scapula and the humerus.
→(肩関節は肩甲骨関節窩と上腕骨頭との間の典型的な球関節。関節窩は小さく、関節頭としての上腕骨頭の関節面の約1/3の広さにすぎない。関節窩の周縁は、線維軟骨性の関節唇によって補われる。関節包の外側にはこれを補強するとくに強い靱帯がないから、両者の結合はゆるく、関節の自由な運動を可能にする。補強靱帯の代わりをするのは、肩甲骨から起始して上腕骨近位部に停止する肩甲筋群である。関節包は、上方には関節窩の周縁につき、ここで関節唇の外側と癒着し、下方には上腕骨の解剖頚につく。また内側は関節の下方でゆるみがあるから、これが上肢の回転を可能にするが、同時に下方への脱臼をおこしやすい原因となる。関節腔内は上腕二頭筋長頭の腱によって貫かれる。この腱は下方から上腕骨の結節間溝を通って関節腔に入り、上腕骨頭の前面を通って肩甲骨の関節上結節につく。全身の関節のうち最も大きい運動範囲をもち、その運動は屈曲(前方挙上)、伸展(後方挙上)、内転、外転、描円および回旋に分析鎖される。これらの運動は上肢帯の関節(胸鎖関節と肩鎖関節)との共同運動により範囲が増大される。肩甲骨関節窩は、前頭面(左右方向)に向いているのではなく、これより前外方に約30°の角をなす面にあるから(この面を肩甲骨面という)、肩関節の運動もこの面において最も運動範囲が広い。日常、物を書くときや、箸を取るときの上腕骨の位置にもこの面にある。これに属する靱帯として次のものがある。関節上腕靱帯は、関節唇の上前縁よりおこり解剖頚へつく。烏口上腕靱帯は、烏口突起の外側面よりおこり、上腕骨結節間溝の近位端にのび、ここで上腕二頭筋長頭の腱をおおう。 )
- 313_01【Coracoid process of scapula烏口突起 Processus coracoideus】 Hooked process that projects anteriorly from the superior border of the scapula just lateral to the suprascapular notch. Attachment site of the pectoralis minor muscle and origin of the short head of the biceps brachii and coracobrachialis muscles.
→(肩甲切痕と関節窩の間には、烏の嘴のように折れ曲がった烏口突起が前外側方に突出している。烏口突起は烏口腕筋と上腕二頭筋(の短頭)が起こり、また小胸筋が付くための突起である。Koraxというギリシャ語は烏(または烏の嘴ように曲がったもの-ドアの把手など)を意味する。)
- 313_02【Superior transverse scapular ligament; Transverse scapular ligament上肩甲横靱帯;肩甲横靱帯 Ligamentum transversum scapulae superius】 Ligament that lies medial to the coracoid process of the scapula and bridges the suprascapular notch.
→(上肩甲横靱帯は肩甲切痕の上に張る扁平な小靱帯で、その一部または前部が骨化することがある。この靱帯の上を肩甲上動脈が越え、その下を肩甲上神経が通る。)
- 313_03【Spine of scapula; Scapular spine肩甲棘 Spina scapulae】 Rather long bony ridge on the posterior surface of the scapula that is continuous with the acromion.
→(肩甲棘そのものは、尖端が扁平な大突起となって関節窩を越えて突き出ている。この部分を特に肩峰(肩甲棘から肩峰にかけて僧帽筋がつき、三角筋が起こる)と呼ばれ、その突起近くの内側面には鎖骨と連結する小楕円形の関節面(輪郭はあまり明瞭でない)がある。)
- 313_04【Scapula; Shoulder blade肩甲骨 Scapula】 Shoulder blade.
→(胸郭の背側上外部で三角形をした大型の平坦な骨で第2~第8肋骨に被さっており、左右両端は肩鎖関節で鎖骨と、肩関節で上腕骨と関節している。肋骨面(前面)と背面の2面、内側縁・外側縁・上縁の3縁、上角・下角・外側角の3角を区別する。外側角の部分は上縁と外側縁の合するところで肥厚しており、その外側端に楕円形の関節窩がある。関節下の上・下には関節状結節および関節下結節があって、それぞれ上腕二頭筋長頭、上腕三頭筋長頭がおこる。また、関節下の内方はやや細くなっており肩甲頚という。肋骨面は全体に浅くへこんでおり肩甲下窩という。背面の上部には肩甲棘というほぼ水平に走る隆起があり、その尖端は大きく扁平な突起となって関節窩の外方へ突き出していて肩峰とよばれる。肩峰の内側面には鎖骨との関節面である肩峰関節面がある。背側面は肩峰棘によって二分され、上方の比較的小さいくぼみを棘上窩、下方に広いくぼみを棘下窩という。上縁は外側に向かってやや下方に向いているが、その外側端には肩甲切痕という小さい切れ込みがある。また、肩甲切痕と関節窩の間から鈎状の烏口突起が前方に突き出している。語源はローマ時代にはscapulaは「背なか」を意味していた。17世紀にフランスの解剖学者リオランJ.Riolanがギリシャ語のSkaptein(掘る)に由来するscapulaを肩甲骨に初めて採用したという。この骨の形がシャベルに似ているからである。日本では肩甲骨のことを俗に「貝がらぼね」という。)
- 313_05【Glenoid labrum of scapula関節唇(肩甲骨の) Labrum glenoidale scapulae】 Lip of fibrocartilage around the margin of the shoulder joint that augments the bony articular surface.
→(上腕骨頭は球の約3分の1にあたるが、卵円形の関節窩は小さく、関節頭としての上腕骨頭の関節面の約3分の1の広さにすぎない。関節窩の周縁は、線維軟骨性の関節唇によって補われる。)
- 313_06【Joint capsule of shoulder; Capsule of shoulder joint関節包(肩関節の) Capsula articularis humeri; Capsula articularis glenohumeralis】
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- 313_07【Humerus上腕骨 Humerus】 The bone of the upper arm.
→(上腕骨は典型的な長管状骨であるが、上端は半球状にふくらんで上内側を向き、下端は前後に扁平である。上端の半球状の部分は大きな関節面で上腕骨頭といい、その基部の周囲にある浅いくびれを解剖頚という。上腕骨頭の前外側には2個の隆起があり、口蓋側のものを大結節、前内側のものを小結節という。両結節の下部はともに下方へ細長く延び出して、それぞれ大結節稜および小結節稜を作っている。大小の結節および結節稜の間には上下に走る溝があり、結節間溝という。大小稜結節のすぐ下で、上腕骨体に移行する部位は骨折を起こしやすく外科頚とよばれる。上腕骨体は上腕骨の大部分を占める骨幹の部分で、上半は円柱状、下半は三角柱状であり、下端は前後に扁平である。上腕骨体の外側面には、第毛節稜のすぐ下からはじまり、上腕骨体の中央に達する三角筋粗面がある。この粗面の後下方には橈骨神経溝という浅い溝があり、上腕骨体の後面を状内側から下外側に向かってラセン状に走っている。上腕骨の下端部は著しく扁平に広がり、内側方に内側上顆、外側方に外側上顆が突き出しており、内側上顆の後面には尺骨神経溝がある。この二つの上顆の間には前腕の骨と連結する上腕骨窩があり、内側の上腕骨滑車と外側の上腕骨小頭に区別される。前者は中央が浅くくぼんだ円柱状で尺骨の滑車切痕と関節をつくり、後者は小半球状で橈骨頭窩に面している。上腕骨下端部前面には二つのくぼみがあり、滑車の上方にあるものを鈎突窩、小頭の上方にあるものを橈骨窩という。これは肘を強くまげたときに尺骨の鈎状突起および橈骨頭がはまりこむところである。また、後面には滑車のすぐ上方に楕円形の深いくぼみがあり肘頭窩という。これは肘をまっすぐに伸ばしたときに尺骨の肘頭がはまりこむ場所である。鈎突窩と肘頭窩はうすい骨質をはさんで前後面から互いに相接しているが、このうすい骨質に孔があいていることがあり、これを滑車上孔という。内側上顆の上方にはまれに小さい突起がみられることがあり、これを顆上突起という。顆上突起と内側上顆の間には靱帯が張り、その間を正中神経が通過する。また、この靱帯からは円回内筋の一部がおこる。)
- 313_08【Biceps brachii muscle上腕二頭筋 Musculus biceps brachii】 Two-headed muscle that attaches on the radial tuberosity and extends with the aponeurosis brachii toward the ulna to blend into the antebrachial fascia. It acts in elbow joint flexion and forearm supination. I: Musculocutaneous nerve.
→(上腕二頭筋は、長頭が関節上結節に起始し、短頭は烏口突起に起始する。二頭筋の長頭(長いのは腱の部分のみ)は上腕骨頭を越え、結節間滑膜鞘に包まれて、結節間溝へ入る。共通の筋腹の終止腱は、肘窩の奥で、橈側粗面に停止する。腱性の帯である上腕二頭筋腱膜は終止腱から分かれ、前腕筋膜に放散している。肘関節を屈曲すると、上腕二頭筋は特に突出する。なぜならば、この筋は関節から離れて、上腕筋によって前に押し出されるからである。機能として肘関節に作用して前腕をまげる。上腕前面に力こぶをつくる。筋腹の内外両側の溝をそれぞれ内側二頭筋溝および外側二頭筋溝という。前者を尺側皮静脈、後者を橈側皮静脈が走る。長頭の件は滑膜に包まれながら肩関節腔を貫く。また上腕骨の結節間溝を通るところでは、結節間滑液鞘に包まれる。)
- 313_09【Long head of biceps brachii muscle長頭(上腕二頭筋の) Caput longum (Musculus biceps brachii)】 o: Supraglenoid tubercle. Abduction of shoulder joint.
→(上腕二頭筋の長頭は肩甲骨の関節上結節より起こり、橈骨粗面および尺骨に停止する。作用として肘関節の屈曲、肩関節の外転と軽度の外転。)
- 313_10【Intertubercular tendon sheath結節間腱鞘;結節間滑液鞘 Vagina tendinis intertubercularis; Vagina synovialis intertubercularis humeri】 Expansion of the articular cavity along the tendon of the biceps muscle.
→(結節間溝にある腱鞘で、上腕二頭筋腱をいれる。)
- 313_11【Epiphysial line; Epiphyseal line骨端線 Linea epiphysialis】 Line visible on radiographs and in sections of bone that marks the former site of the epiphysial plate.
→(X線像で骨端接合部が閉鎖した後に、1条の細い線が残って見えるが、これは骨端接合部瘢痕(骨端線)といわれる。)