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- 612_01【Sublingual vein舌下静脈 Vena sublingualis】 Larger vein coursing lateral to the hypogiossal nerve.
→(舌下神経の側方にあり、やや太い。 (Feneis))
- 612_02【Submental veinオトガイ下静脈 Vena submentalis】 Companion vein of the submental artery. It anastomoses with the sublingual and anterior jugular veins.
→(オトガイ下静脈はオトガイ下動脈に伴行する。舌下静脈および前頚静脈と吻合。)
- 612_03【Vena comitans of hypoglossal nerve舌下神経伴行静脈 Vena comitans nervi hypoglossi】 Vein accompanying the hypogiossal nerve.
→(舌骨舌筋の下および外側を舌下神経とともに走り、通常は舌下静脈に注ぐ。)
- 612_04【Lingual vein舌静脈 Vena lingualis】 Vein of the tongue that mostly lie near the lingual artery.
→(舌静脈は舌からの舌深静脈と舌背静脈、ならびに顎下腺、舌下腺からの舌下静脈が合して形成される。舌下静脈は舌下神経伴行静脈をも受ける。舌骨舌筋に対して舌動脈は内側を通るのに対して、舌静脈はその外側を通過する。内頚静脈または顔面静脈へ注ぐ。)
- 612_05【External palatine vein外口蓋静脈;口蓋静脈 Vena palatina externa; Vena palatina】 Conveys blood from the lateral tonsillar region of the palate and pharyngeal wall to the facial vein.
→(外口蓋静脈は口蓋扁桃の側方部と咽頭壁の血液を顔面静脈へ運ぶ。)
- 612_06【Facial vein顔面静脈 Vena facialis】 Vein beginning at the medial angle of eye that lies behind the facial artery and then beneath the submandibular gland.
→(顔面静脈は顔面動脈の分布域である顔面浅部からの静脈を集める。顔面静脈は内眼角から始まり(眼角静脈)、顔面動脈の後ろに沿って斜めに下方に走り、内・外頚動脈、舌下神経との浅側を後下方に向かい、舌骨の高さで内頚静脈または外頚静脈にそそぐ。顔面静脈は吻合に富み、また顔面の深部の静脈や頭蓋内の静脈(硬膜静脈洞)とも連絡している。たとえば、顔面静脈は内眼角の付近で、眼窩内の上眼静脈の根もと吻合し、さらに頭蓋腔内の顔面静脈洞とも連絡する。また、鼻や上唇の近くでも深部の静脈と連絡する。)
- 612_07【Sternocleidomastoid muscle胸鎖乳突筋 Musculus sternocleidomastoideus】 o: Two-headed muscle arising from the sternum and clavicle, i: Mastoid process; superior nuchal line. Rotates the face to the contralateral side and bends the head to the ipsilateral side. Bilateral contraction elevates the face. I: Accessory nerve, cervical plexus (C1-C2).
→(胸鎖乳突筋は側頚部にある強大な斜めに縦走する浅層の筋。胸骨柄前面と鎖骨の胸骨端から2頭をもっておこり、両頭は合して強い筋腹をつくって後上方に走り、乳様突起および後頭骨の上項線につく。作用は複雑で、両側が同時に働くとオトガイを上げて後頭部を片側が働けば頭を対側にまわすが、その浅オトガイが対側に向かって上り、頭は逆に同側に傾く。支配神経は副神経外枝と頚神経叢筋枝(C2, C3)であり、したがって僧帽筋と同系の筋である。また、第6咽頭弓に発生する鰓弓筋で、鎖骨上窩を囲む2頭(胸骨頭と鎖骨頭)をもって始まる。胸骨頭は胸骨柄の上縁から、鎖骨頭は鎖骨の胸骨端から起こる。筋膜は頚筋膜浅葉に鞘状に包まれており、斜め上方に向かって幾分螺旋状に回転しながら頚部外側面を横切り、よく発達した腱となって乳様突起と上項線に停止する。筋の表面は、起始部で腹側に、停止部で外側に向く。参考:副神経外枝の僧帽筋枝は、外枝がこの筋に入る前に分かれることと、筋内で分かれて再び外に現れることがある。胸鎖乳突筋はドイツ語ではKopfnicker(頭をこっくりとうなずかせる筋)と呼ばれるが、これは作用の点からは正しくない。この筋が片側だけ収縮すると、頭はその側へ傾き反対側を振り向いて、あたかも「首をかしげる」状態になる。また両側の物が同時に収縮すると、頭を胴体にめり込ませるように働くのえある。Musculus sternocleidomastoideusというラテン名はあまりにも長たらしいので、米英では多少簡略化してsternomastoid muscleともよぶ。片側の胸鎖乳突筋が先天的に短い場合、または出産時の外傷などによって瘢痕化して短縮すると、この筋の作用を考えればすぐわかるように、頭は病側へ傾くと共に健側にねじれたままの状態になるこれを斜径torticolis, wryneck(性格には筋性斜径)といい、かなり頻度の高いものである。略語(SCM))
- 612_08【External jugular vein外頚静脈;外側浅頚静脈 Vena jugularis externa; Vena jugularis superficialis dorsalis】 Vein lying between the platysma and supetficial layer of cervical fascia and usually emptying into the subclavian vein. It is fed by the following veins.
→(外頚静脈は側頚部の皮下静脈であり、頚部のみならず頭部の表在性静脈血を集める。後耳介静脈と下顎後静脈が合して下顎角の後方ではじまり、広頚筋におおわれて胸鎖乳突筋の表面を斜めに下行し、大鎖骨上窩で鎖骨下静脈にそそぐ。下顎後静脈前枝を介して内頚静脈と連絡しているので、これら2静脈ならびに鎖骨下静脈とともに胸鎖乳突筋を斜めに取り囲む動脈輪を形成している。受け入れる静脈根は後頭静脈、後外頚静脈、頚横静脈と肩甲上静脈、前頚静脈である。)
- 612_09【Superior thyroid vein上甲状腺静脈 Vena thyroidea superior; Vena thyroidea cranialis】 Companion vein of the superior thyroid artery. It empties into the facial or internal jugular vein.
→(上甲状腺静脈は甲状腺上部におこり上甲状腺動脈に伴行する。上喉頭静脈ならびに胸鎖乳突筋静脈を受け入れる。胸鎖乳突筋静脈は内頚静脈に直接そそぐこともある。またしばしば甲状腺下部におこる中甲状腺静脈がみられる。)
- 612_10【Superior root of ansa cervicalis; Superior limb of ansa cervicalis上根(頚神経ワナの);下行枝(舌下神経の) Radix superior (Ansa cervicalis); Ramus descendens nervus hypoglossus】 Root lying for a short distance on the hypoglossal nerve, then descending along the medial side of the internal jugular vein and passing into the inferior root.
→(頚神経ワナの上根は第一・第二頚神経から発する神経線維で、舌下神経と伴行した後、分枝して頚神経ワナの中で下根とつながる。舌骨下筋群を支配する。)
- 612_11【Internal jugular vein; Jugular vein内頚静脈 Vena jugularis interna】 Main vein of the neck that extends from the jugular foramer to the venous angle.
→(内頚静脈は脳、顔と頚の浅層からの血液を集める。この大きな静脈は、後頭蓋窩の後静脈孔で、S状静脈洞から直接つながって始まり、内頚動脈についで総頚動脈に沿って下行し、鎖骨下静脈と合して腕頭静脈に終わる。上端と下端では肥大しており、それぞれ頚静脈上球ならびに頚静脈下球とよばれる。内頚静脈に注ぐ根として蝸牛小管静脈、咽頭静脈、舌静脈、上甲状腺静脈、顔面静脈、下顎後静脈がある。内頚静脈と鎖骨下静脈とが合流するところを静脈角angulus venosusといい、左側の静脈角には右胸管が開口し、右側の静脈角の近くには右リンパ幹が注いでいる。)
- 612_12【Common carotid artery総頚動脈 Arteria carotis communis】 Artery of the neck without any branches. It runs on both sides of the trachea and larynx and passes deep to the sternocleidomastoid. It arises on the right from the brachiocephalic trunk and on the left from the aortic arch.
→(総頚動脈は頭部に血液を送る血管の主幹。右は腕頭動脈の枝、左は大動脈弓の上行部より出る。そのため左総頚動脈は右のものよりも4~5cm長い。総頚動脈は枝を出さず、気管・喉頭の両側を上行し、甲状軟骨上縁の高さで音叉のような形をなし内・外頚動脈に分かれる。分岐部の後側には頚動脈小体が存在する。また分岐部のないし内頚動脈始部の壁はやや薄く膨隆しており(頚動脈洞)、舌咽神経の枝を介し血圧を感受するという。)
- 612_13【Anterior jugular vein前頚静脈;前浅頚静脈 Vena jugularis anterior; Vena jugularis superficirlis ventralis】 It commences at the level of the hyoid bone and, after crossing under the stemocleidomastoid, often drains into the external jugular vein.
→(前頚静脈は下顎部の静脈を集めて舌骨付近にはじまり、正中傍部皮下を下行して頚部下端に達し、外側に曲がって外頚静脈又は鎖骨下静脈に注ぐ。しばしば左右が合して正中線を下行し頚正中静脈をなす。左右の前頚静脈は胸骨上隙で交通して頚静脈弓をつくり、またしばしば胸鎖乳突筋前縁に沿って流れる静脈(頚斜頚静脈)を介して外頚静脈と交通する。)
- 612_14【Subclavian vein鎖骨下静脈 Vena subclavia】 Vein lying between the anterior scalene muscle and sternocleidomastoid. It extends from the internal jugular vein to the lateral border of the first rib.
→(鎖骨下静脈は第一肋骨の外側縁からの腋窩静脈の直接の続き。鎖骨の内側端で内頚静脈と合して腕頭静脈を形成するまでの部分を指す。前方は鎖骨と鎖骨下筋に、後方は前斜角筋を隔てて鎖骨下動脈に接し、下方は第1肋骨上面の鎖骨顆上脈溝に接する。まれに動脈と伴行して前斜角筋の後方を通ることがある。枝として①胸筋枝、②背側肩甲静脈、③胸肩峰静脈がある。)
- 612_15【Digastricus muscle; *Digastric muscle顎二腹筋 Musculus digastricus; Musculus biventer mandibulae】 o:Mastoid notch, i: Digastric fossa. It has an intermediate tendon that acts on the lesser horn of the hyoid bone by means of a connective tissue sling. Raises the hyoid bone and opens the mouth.
→(顎二腹筋は舌骨の上方にある細長い筋で中間腱で前腹と後腹との2腹に分かれる。その後腹をもって側頭骨乳突切痕で起始し、斜め前・下方へ走る。舌骨付近で後腹は中間腱に移行し、この腱は二分した茎突舌骨筋によって挟まれ、かつ線維性滑車によって舌骨に固定される。前腹(顎舌骨筋からは皮膚側へ位置しているが)は中間腱から起始し、下顎骨内面で下顎下縁近くの二腹筋窩に停止する。顎二腹筋の前腹(下顎神経の枝である顎舌骨筋神経の支配)と後腹(顔面神経の支配)とは神経支配が異なることは注意を要する。下顎が固定されているときには、舌骨を引き上げる。舌骨が固定されているときは下顎骨を後下方に引く。両者は発生学的にも由来を異にし、前腹は顎舌骨筋・口蓋帆長筋などとともに咀嚼筋と同類(鰓弓のうち顎骨弓mandibular archに属する筋)であり、後腹は茎突舌骨筋・アブミ骨筋などとともに顔面表情筋と同類(鰓弓のうち舌骨弓hyoid archに属する筋)である。ちなみに、咀嚼筋は下顎神経で支配され、顔面表情筋は顔面神経支配である。このように発生学的な由来を知れば、色々な筋の支配を整然と整理することができる。)
- 612_16【Anterior belly of digastric muscle前腹(顎二腹筋の) Venter anterior; Venter mandibularis (Musculus digastricus)】 Portion of the digastric muscle that extends from the mandible to the intermediate tendon. I: Nerve to mylohyoid.
→(顎二腹筋の前腹は下顎骨から中間腱までの部分。顎舌骨筋神経から支配を受ける。)
- 612_17【Mylohyoid muscle顎舌骨筋;口底隔膜 Musculus mylohyoideus; Diaphragma oris】 o: Mylohyoid line, i: Median fibrous raphe and body of hyoid bone. It forms the muscular floor of the mouth; supports the tongue. Raises the floor of the mouth and the hyoid bone. Draws the mandible inferiorly. I: Nerve to mylohyoid.
→(顎舌骨筋は両側性に下顎骨の内面側から舌骨筋線の部分で起始する。左右両筋部は後方で収斂して、正中縫線で合一して筋板を形成し、この筋板は舌骨体に付着し、かつ両側下顎骨半を連結する。両側顎舌骨筋は口底隔膜を形成する。)
- 612_18【Retromandibular vein下顎後静脈 Vena retromandibularis】 It extends from the union of several branches in front of the ear to the facial vein.
→(下顎後静脈は下顎頚の内側つまり耳管腺内で浅側頭静脈と顎静脈が合してはじまり、顔面静脈と合して内頚静脈に開口する。下顎後静脈は前枝と後枝と二分かれた形で耳下腺の下面から出る。そののち前枝は顔面静脈と合流する。後枝は後耳介静脈と合流し、外頚静脈を形成する。浅側頭静脈は表在性の静脈で、中側頭静脈、顔面横静脈を受け入れる。深在性の顎静脈は側頭下窩に広がる翼突筋静脈叢にはじまる。この静脈叢は顎動脈の分布域から血液を集め、中硬膜静脈などの硬膜静脈、深側頭静脈、前耳介静脈、耳下腺静脈、顎関節静脈、鼓室静脈、茎乳突孔静脈などを受け入れる。)
- 612_19【Omohyoid muscle肩甲舌骨筋 Musculus omohyoideus】 o: Superior border of scapula, i: Body of hyoid bone. It is divided into two bellies by an intermediate tendon that passes over the jugular vein. Hence it also tenses the pretracheal layer of the cervical fascia.
→(肩甲舌骨筋は、肩甲骨上縁で肩甲切痕の内側から、そのほか上肩甲横靱帯から起こり舌骨に向かう。中間腱により下および上腹に分けられる。参考:上腹と下腹は別の神経枝を受ける。)
- 612_20【Sternohyoid muscle胸骨舌骨筋 Musculus sternohyoideus】 o: Posterior surface of manubrium of sternum and sternoclavicular joint, i: Body of hyoid bone.
→(胸骨舌骨筋は、前頚部舌骨下筋の1つ胸骨柄の後面と胸鎖関節から起こる。上方に向かって正中線に近づき、舌骨体の上縁に停止する。作用として舌骨を下げる。神経支配:脊髄頚神経ワナを介して上位頚神経参考:上端と正中甲状舌骨靱帯との間に舌骨後包(不対)がある。)
- 612_21【Jugular venous arch頚静脈弓 Arcus venosus jugularis】 Connection between the right and left anterior jugular veins in the suprasternal space.
→(頚静脈弓は左右の前頚静脈が胸骨上隙で結合するもの。)
- 612_22【Transverse cervical veins頚横静脈 Venae transversae cervicis; Venae transversae colli】 Veins accompanying the transverse cervical artery.
→(頚横静脈は頚横動脈に伴行し外頚静脈下部にそそぐ。)
- 612_23【Cephalic vein橈側皮静脈 Vena cephalica】 Epifascial vein arising at the root of the thumb. It courses in the lateral bicipital groove and passes between the deltoid and pectoralis major (deltopectoral triangle; Mohrenheim's fossa) to the axillary vein.
→(上肢の橈側縁を上行する皮静脈で、尺側皮静脈とともに発生初期における上肢の辺縁静脈(Randvenen)に由来する。手背静脈網の橈側部に発し、前腕の橈側縁を上行し、途中で前腕の前面・後面より静脈を入れ、肘窩の外側縁を経て、上腕二頭筋の外側にある外側二頭筋溝上行し、次いで大胸筋と三角筋の間の溝を通り、鎖骨の直下で深層に入って腋窩静脈にそそぐ。肘窩の付近では、外側前皮神経と伴行する。Cephalicaはギリシャ語のkephale(あたま)の形容詞形だからv.cephalicaは直訳すれば「頭静脈」である。腕の皮静脈になぜこのような名前が付いているのかはっきりわからない。一説によれば、むかし橈側皮静脈から血を採ると(これを瀉血bloodlettingという)、疼痛が治ると信じられていたからだともいう。)
- 612_24【Axillary vein腋窩静脈 Vena axillaris】 Continuation of the subclavian vein. It extends from the lateral border of the first rib to the inferior border of the tendon of the pectoralis major.
→(腋窩静脈は上肢の静脈を集める。大胸筋の下縁の高さで上腕静脈からつづいておこり腋窩動脈の内側に沿って走り、第1肋骨の高さで鎖骨顆上脈に注ぐ。枝として①外側胸静脈、②胸腹壁静脈、③乳輪静脈叢がある。)